教授‥服を着ているのに、濡れるのに。 俺は頭のどこか冷めた部分でそんなことを考えていた。服が濡れること、と言うのは無意識で避けると思うんだけどそうじゃないのかな。 それともそんなことを考えられなくなるほど俺に夢中? 俺しか見えてない? 教授のキスは熱い。 俺が今までに体験したキスの相手は大部分が女の子だった。もちろん男とだって無い訳じゃないが、数少ない体験では無理矢理されたと言う感じ。感じるとかなんとかよりも、口の中に他人の体液が入る気持ち悪さの方が勝っていた。しかも男なんて! 女の子なら違うけど、男だと思うだけで遠慮したかったのだ。 少し現実と今の状態とが混じり合っていた。記憶が錯乱する。 教授のキスは熱い。 どうして同じ男なのに教授だけには熱いと感じてしまうのだろう。 今も俺の口中を這い回る舌が、上顎とか歯の付け根とかを巧みに撫でていく。俺はそれだけで息が上がる。 教授のキスは熱い。 呪文のように何度も何度も俺の頭にこの言葉が浮かんでくる。 熱いのは愛情があるから? その愛情の度合いによって熱さを感じるのだろうか? 合わさった唇から教授の熱が痺れるように身体中に回る。 俺はこのキスに酔っている? 俺はキスだけで前を昂らせ、心臓を高鳴らせ、身体の体温を沸騰させ、下の口を切なくさせて教授のモノを待っていた。 「‥‥ん‥」 鼻から漏れる息が苦しいことを物語る。教授はどんな思いでキスをしているのだろうか。 恋人ならそんな思いも、言葉が無くても通じるのだろうか。キスするだけで伝わるのだろうか。 分からないのは俺が教授に惚れてないからなんだろうか。 ただ思うのは合わさった唇が熱いと言うことだけ。 流れ込む熱で火傷しそうになる‥その‥事実だけ。 「キス一つでそんなに善がってくれると、やはり勘違いしそうになるな」 顔を離した教授は今までの少し危ない感じでも、自信満々の顔でもなく、何故かギュッと切なくなる表情だった。それは苦笑いと言ったらいいのか。俺が教授のことを思っていると言い切っていたのに‥、自信がなかったのだろうか‥。 やっぱり俺の口からハッキリと言われないことには不安で仕方ないのだろうか。 そんな‥泣きたくなるような思いだったのに、身体は一気に火が着いてしまった。 「教授‥、抱いて」 教授は先ほどの顔を一瞬で引っ込めると俺を膝立ちの格好にさせ、服のままで風呂に入ってきた。 両手は繋がれているから下げることは出来ないけど、バックから突かれて声が上がる。 教授のこれが欲しかった。 もっと、もっと深くまで‥入れて、突いて、抉って。 あんな血の通ってないモノじゃなく、教授自身でイかせて欲しい。 教授は単純に突くのではなく、2〜3回ごとに俺を抱き締め、後ろから唇を這わし、ペニスを扱き、乳首を摘んだ。 早く‥早く。もっと早く。ただただイかせて欲しかった。もっと乱暴に壊れるほどに突いて欲しかった。 俺のこの身体に教授だけの残像を残して欲しかった。 それなのに教授は俺の首筋を舐めていた。両手は胸の敏感になった所をクリクリと摘んで回す。 「んんっ‥ぁぁ‥ん‥」 「こら、そんなに締め付けるな。アキラを楽しませる前にこちらがばててしまう」 「や‥、も‥う、イか‥せて」 「まだダメだ。アキラはまだまだ満足してないだろう。身体で私無しではいられないと覚えてくれないとね」 「だっ‥て、イきたい‥。もっ‥狂‥う」 熱くなった身体では耐えるなんてことは出来そうになくて。 けれど教授は俺の身体を弄ることの方に夢中になっている。 触れ合っている所からも熱が伝わってきて、それだけで凄く熱い。もっときつく抱き締めて欲しい。一つになるくらい深く突き刺して欲しい。 教授との繋がりを願ってる自分もいるけど、イかせて欲しいとだけ願ってる自分がいるのも事実で。それはこんな身体にされてしまったのだから仕方ないことだと思う。 けど‥こんな身体にしたのは教授だったのだろうか。俺は気を失うような連続攻撃に精神も記憶もおかしくなっていた。 ビクビクと身体を震わせて、胸からの刺激に耐える。教授はイかさないためなのか、わざとと思えるほど少し前からペニスには触ってくれなくなった。 後ろから覆い被さるようにして俺に抱き付く教授。唇はキスを繰り返し両手は乳首から離れない。教授の服は濡れて生地が重くなっている。その生地が素肌に擦れると自分一人だけが裸なのだと気付かせてくれる。 やだ、教授の肌に触れていたい。もっともっと熱い抱擁を受けていたい。 俺を愛しているのなら、態度で示して欲しい。 ああ、でもそうなんだ。俺は教授の愛情を疑っているわけではなくて、独り占めしたくて別れると脅してるのだ。 実際に別れたら死ぬほど苦しいと思うけど、これ以上自分よりも愛している存在がいるのかと思うと耐えられなかったのだ。 「いっいや‥、も‥ダメ‥。イかせ‥て。俺‥だけ‥愛し‥て」 それまで虐めるように俺の身体を弄っていた教授は、突然俺の顔に手を掛けた。 そして無理矢理後ろへ捻る。 乗り出してきた教授は食らうようなキスを仕掛けてきた。 呼吸困難‥。 喘ぎにして熱も吐き出せず、これ以上無理なほど口を付けられて鼻からの息も難しい。 それでもいつも落ち着いた教授が、どう猛な野生を感じさせるほど荒々しい態度で俺を求めてくれた。それが堪らなく嬉しくて、脳天に電気が走るほどの痺れで、教授を抱けない手がもどかしくて、必死で唇と舌だけで応える。 ああ、このまま俺だけを見ていてくれたら。 教授の奥さんはとても美人でしとやかで、そして頭もいいらしい。どこにも非が見つからない完璧な女性。そんな人を独りぽっちにさせてまで俺はこの人が欲しいのだろうか。 いや、俺は誰を不幸にしても、どんな目にあってもこの人が欲しかったのだ。 こうして俺を貪ってくれる、俺にだけ本性を現してくれる教授が堪らなく好きなのだ。 苦しくて切ないキスを終える‥。 ああ、一瞬でも離れるところが寂しい。一番大事な部分で繋がっていると言うのに。 「アキラ、君はやはりあくまで私を惑わせるんだね。私が君を愛していることなど百も承知だろう。なのにそんな可愛いことを言って。これ以上私をどうするつもりなのか」 どうするって‥。俺の方が教授にどうかされているというのに。もしかすると教授の方が俺のことを思っているのだろうか。 「イッ‥イかせて。もう‥耐えられない。吐き出さないと苦しすぎる。こんなのは嫌なんだ」 少し刺激が止んだので一気に捲し立てる。 「それはもう少しアキラが楽しんでからにしようか。まだ私が必要だとは思ってくれてないだろう? 私なくてはいられないと思ってもらわないとね」 そう言うと教授は俺の中に入ってるものを動かし始めた。 「ああっ」 一突き目は最奥まで入り込んだ。突然動き出した中は準備が出来てなくて無防備だったのだ。 教授が後ろで笑ってるような気がする。けれど俺はそれを確かめるどころではなくて。必死で繰り出される刺激を耐える。身構えていないととてもじゃないけど身体で受け止められない。 「く‥ぅうんん‥んんっ、あ‥あ‥っ」 何度も何度も突き上げられて、もうその一定のリズムが身体に染み込んでくる。次に来る熱い快感を待ってしまう。 このままイかせて。 このままいさせて。 教授と繋がったこのままで居られたら‥。それは凄く幸せなことじゃないかと思った。 でもそんな考えは下半身に支配されて、無くなった。 「ダッ‥ダメ、もう‥ダメ‥。イか‥せて、イ‥きたいっ」 あんなに何度もイかされたくせに、まだ俺の身体はイきたいと騒ぐ。下半身だけで疼いて狂いそうになっている。腰だけが別の生き物で、こんなに苦しいのにその刺激をもっと欲しがる。 教授の定期的な突きを受けながら、ずっとイかせてくれと喘ぎ続ける。 どれだけ突かれたら教授が果てるのか。俺には想像がつかなかった。永遠に突かれるんじゃないかと思った頃、中で弾けたのが分かった。 教授の身体と、唇と、舌と同じように熱い熱いモノが俺の身体の中に迸る。 壊れそうな振動が無くなっても身体は同じリズムで震えてる気がする。それくらい長く突かれていたのだ。 だが教授は達したが、俺はまだイかせてもらってない。身体は突かれることにくたばっていて息を整えるだけで必死だった。 少しずつ収まってくるとペニスから痛いほどの信号が押し寄せてきた。 俺も吐き出したい! 届かないのに手が何度も触ろうと下へ動く。それは繋がれている鎖を引っ張るだけなのだが、止められない。身体をくねらせて腰を振る。吐き出す刺激が欲しくて堪らない。 後ろにいる教授に尻を擦り付ける。でも尻だけではどうにもならない。 「君はまだそうやって私を誘うのかい」 「俺も‥イき‥たい」 「ずっと私のそばにいると約束してくれたら好きなだけイかせてあげるよ。私がいないとアキラの求めるものは何一つ得られないだろう?」 「やっ‥やだ‥。こんな、酷いコトする‥教授は、い‥らない」 イかせて欲しいばかりで頭は混乱する。死ぬほど好きなはずなのに、身体はもう逃げ出したくなっている。 そして要らないと言えばイかせてもらえるんじゃないかと思ったのだ。 「酷いこと? 何度も言うが私はアキラがとても大切だよ。酷いことなんてするはずがないだろう。まだ、分からないようだね」 そこで俺は要らないと言ってしまったことを、死ぬほど後悔するハメになるのだった。 |