尻には静かに責める例のモノが入ったままだった。 睡眠に落ちては絶頂がやってきて邪魔をする。眠いのに。この刺激を少しでも和らげる方法があるのなら、教えて欲しい。 睡眠中に襲うその波はよりいっそうハイになって感じまくるのだ。理性が少なくなっているから自然に感じてしまうのだろうか。けれど前を弄ることも擦り付けることも出来ずに、だた喘いでいた。 夢うつつで絶頂に犯され、イかせて欲しいと泣きながら寝る。そんな状態の時に、足の拘束が解かれた。 俺はまた来た、と思っただけで、もしかしたらイかせてもらえるかも? と言う期待の方が大きかった。 もうやられることなど何とも思ってなかったのだ。 するとそいつはひと声も発することなく、いきなり俺の尻に突っ込んできた。 「あぅっ‥」 狂った身体にはそれは欲していた刺激で。 俺の身体を労ることなく動き出されても、今の俺には気持ちがいい。 「んんっ‥くんっ‥あ‥も‥、もっと」 ガツンガツンと来る一突き一突きに思いがこもっている。 こんなに感じるのはどうしてだろう。 俺は何度突かれても、もっともっとと喘いでいた。 今までの男と違ってこいつは全然終わらない。こんなに突かれたらあの絶頂が来てしまう。 前を触って。 扱いてもらわないと射精出来ない。 俺はずっと出口を探しているのだ。 定期的に深く、強く突かれ続けて、やはり予想通り乾いた絶頂に到達する。 「あああっ‥、んんっ‥、あぅっ‥んん」 突かれる刺激とオーガズムと。 たまんない。 身体中で痙攣してその刺激が凄いことを伝える。 も、耐えられない‥。 この切ないほどの快感をこれ以上感じ続けたら、理性を持った人間ではなくなりそうだ。 いや、いまでももう人とは呼べないかもしれない。人間ならこんな酷い扱いは受けない。これは感情を持たない性欲しかないケモノの扱いだ。 「あ‥ああっ‥ん、く、も‥、やめ‥っ」 俺は人間だ。考えることも出来るし、気持ち良さが手に入るなら何でもする訳じゃない。 けれど今の俺は、どう見てもケモノとか言えない状態だった。男のモノを悦んで銜え、尻を振って悦び続ける‥。 どんな相手が来てもそれが気持ちいい。どれほど突かれても俺は満足出来ない。 ただただ出口を求めて彷徨うだけだ。 「イっ、イき‥た‥い、あっ‥あんっ」 イきたくて仕方ないので、必死になって頼んでみる。 この男はどれくらい保つのだろうか。いつまでこの調子で突かれ続けるのだろうか。 俺は前立腺を擦られ続け、絶頂で喘ぎ続け、イかせてもらえない苦しみで吼え続けた。 喘ぐ力も無くなるくらい死にそうになって、ようやく相手の男が達した。 それまで一切俺のモノには触れてくれなかったのに、一緒にイくようにと言うことなのか寸前から扱いてくれて達することが出来た。 それが余りにも気持ち良くて、その快感に酔っぱらう。 思い切り吐き出して大満足してベッドへ沈み込んだ。 「どうだい。気持ち良かったかい」 一言も発しなかった男が突然口を開いた。その声には聞き覚えがある。なんだよ、イイに決まってるじゃないか。 「よっ‥よかった‥」 まだ弾む息を整えきれなくて、でも満足したことを伝えたくて素直に返事をした。 「今までの相手と比べてどうかな。やっぱり誰が相手でも気持ちがいいのかい?」 「そっそんな‥こと、ない‥」 「私のことなど忘れていたようだね」 その力強いセックスをする男は片桐教授だったのだ。 どうして俺はあの深いストロークを受けて分からなかったのだろうか。 ただセックスに溺れていた自分が恥ずかしい。 「だが私だと知らなくても私が一番いいと思っただろう?」 悔しいくらいに自信がある。大学教授でセックスに自信を持ってる男なんて、片桐さんの他にはいないだろう。 「うん‥凄‥い‥」 力の限りを尽くしたようなセックス。これもまた頭脳だけの勝負で生きてきた、体など鍛えてなさそうな教授という肩書きからは想像出来ない。 力の限りを尽くしたと言ったが、実はこれでも小出しにしているのだ。そして教授はまだまだやれる。 この教授が本気を出したらどうなるんだろう。相手のことなど考えもせず、がむしゃらに突き進んだら? でもそう言ったら、そんなことをするのが若い証拠だ、と言って鼻であしらわれそう。教授は培ってきた年齢に誇りを持っているから。それだけ充実した人生を送ってきたのだろう。 その誇り高い男に俺は惚れているのだ。 尻にはまだ片桐教授を銜えたままで、俺は目隠しを取ってくれと頼んでみる。 教授はそれを無視して両手を繋いでいた鎖を外してくれた。けれど一纏めにされた両手はまだくっついたままだ。 教授はその繋がった両手を自分の首に掛けると、そのまま俺を引き起こした。 俺は教授に跨ったまま抱っこされてる形になる。 抱き締められてキスされる。 ああ、顔は見えなくても教授のキスだ。見た目スリムな教授は実は脱いだら結構凄い。その逞しい身体に抱き締められて、熱いキスをされる。下には教授そのものを銜え込んで、灼熱の棒は中で脈を打つ。 こんなに愛されているのに、どうしてこんなに不満なんだろう。これと同じ事を奥さんにもしているのだ。それを思ったら心が嫉妬で燃え上がる。 俺は‥その自分の嫉妬心に耐えられなかったのだ。そのいやらしさに耐えきれず教授にも邪見に振る舞ってみた。 けど、突き放そうとすればするほど教授は俺に教えてくれる。どれだけ自分が愛されているのかを。 もう‥降参するしかない。奥さんがいたっていいじゃないか。 この快感も、この刺激も、そしてこの愛情も、最高のものをくれるのは教授だけなのだ。 俺はきっと初めてと言っていいだろう。自分から積極的に教授の唇と舌を貪った。 もう、どれだけでも好きにして。 あんたに好きにしてもらえるなら本望だ。 心の中ではそんな殊勝なことを呟いていた。 長いキスが終わると俺の目隠しを取ってくれた。久しぶりでまぶしさに目がくらむ。回りがハッキリ見えない。けれど教授の顔だけは目に飛び込んでくる。教授は目を見つめながら言った。 「どうかな。私がいないと耐えられないと分かったかな。ずっと私のそばにいてくれると約束するかい?」 どうしてこの男はこうも自信満々なんだろうか。けどもういい、俺はあんたに降参したんだから。 「約束する。俺はあんたに惚れているから。奥さんにも同じ事をしていると思ったら嫉妬で身が焦げると思った。だからいっそ離れてスッキリしようと思ったんだ」 俺は教授を再び抱き返すとハッキリと告白する。 「アキラ。私には君しかいない。妻とは離婚することが決まった」 「えっ‥、でっ‥でも‥」 余りの衝撃に言葉が出てこない。 言葉の変わりに目から何かが零れ出す。 うそ、嘘だろう。 「アキラ。ずっと言ってるだろう。私は君に惚れていると。君だけが唯一愛した人間だ」 「けど、けどっ‥」 怒濤に流れる涙で上手く言葉が綴れない。 「ああ、とても大切な女性だったよ、彼女は。俺は別れたくなかったんだよ。世間の汚いことから一生守ってあげたかった。だけど彼女は気付いていたんだ。俺が彼女のことを妹のような感情でしか見ていないと言うことを」 教授は今までのすまして大人ぶった話し方を捨て、自分のことを俺という。 「彼女は小さい頃虐待を受けていてね、立ち上がれないほど精神的に弱っていた。俺が盲腸で入院したときに出会ったんだ。儚くて消え入りそうで、どうしても俺が守ってやらなきゃいけないと思い込んだよ」 教授もまた俺を抱き締めたままで話す。俺には教授の顔は一切見えない。抱き締められて動けない俺は教授の背中を見つめるだけだ。 「強引に結婚して、強引にその家から引き離した。少しずつ笑顔も増え、笑ってくれることが嬉しくて俺は幸せだと思っていた。彼女も幸せだと思っていた」 教授はそこで俺を抱く腕に力を込める。 「だが、あまり抱かない俺に彼女の方は疑問を感じたのだろう。自分が愛されてないのかと。ただただ同情だったのだろうと。当然だと思う。俺は自分がゲイであると打ち明けてなかったから」 奥さんともこんな情熱的なセックスしてると思っていたけど違うんだ‥。 「俺は同情で結婚したと思われたくなかったんだよ。本当に彼女を愛しているから」 そこで俺の心が凍り付く。やっぱり‥奥さんが一番なんじゃないか。 「でもそれは勘違いだと長い話し合いで分かったんだ。俺が愛してると思うこの感情は肉親に持つ親愛の情。俺は心の底から彼女のことを妹だと思っていたようだ」 妹‥なんだ。けれど奥さんは教授に惚れていたんじゃないだろうか。 「例え妹でも、他にどんなに好きな相手がいても、何かが起こったら必ず俺は彼女の方を助けるだろう。それほど俺は深く彼女を愛してる。アキラ、君は後回しになる。それだけは理解して欲しい」 気持ちが俺のモノならそんな贅沢は言わない。 「彼女は俺のその気持ちを理解してくれてね。ずっと俺の家族でいてくれた。だけど、俺は君と出会ってしまった‥」 教授も悩んだのだろうか。 「正直言うと浮気は時々していた。これは男の構造上仕方ないものだった。どこかで溜まっているものは抜かないとね。君にも惹かれていたけど大学を卒業するまでの間と割り切っていたつもりだった」 |