ノーマルなガキを落とすには 後編

 だが跳び蹴りを食らわす体勢ではなく、受け止めるかどうしようか一瞬悩む。両腕の下がった俺になんと健一は飛びついてきた。ガシッと体当たりを喰らわされて、多少はよろけるが、受け止めることには成功した。女子供じゃないんだから、簡単には受け止められないだろうが。てめぇのデカさと重さを考えろよ。

「あいちゃんって怒ってたって絶対受け止めてくれるよね」
 その目にはもう怒りの炎は見えず、俺の顎をそっと撫でると、ごめんね、と呟いた。
 こいつ‥、こんな緊迫したシーンで俺を試しやがったな。
 俺は健一を抱いたまま、助手席のドアを開け、乱暴に押し込める。そして荷台の自転車をロープで固定すると運転席へ乗り込んだ。

「なんだよ、ちゃんと謝ったのに、まだ怒ってんのかよ」
 口を開けばヤバそうな言葉しか出てこないのが分かってるので黙り(だんまり)を決め込む。
「なにをまだ怒ってんだよ。あいちゃん、大人げないぞ」
 健一はずっとブーたれていたが、とある場所まで走ってきたら大人しくなった。

「はぁ〜? 怒ってると思ってたらこれかよ」
 呆れたように溜息を付く健一をトラックから引っ張り出し、腕を掴んで建物の中に入る。
 所定の手続きを済ませ、部屋に連れ込んだ。ずっと無理矢理に見えるくらい腕を引っ張っていたのだが、ドアを閉めた瞬間にそのドアに押しつける。
 そしてドアに縫い止めたまま、健一にキスをした。

 貪り食うかと勘違いするほど濃厚な口付けをどれほどの時間していたのか。相手の息遣いが苦しそうなのに気が付いて、ようやく抱き締めていた両手を緩めた。
「お前なぁ、あんまり可愛いこと言うなよ。あんな路上でポロッと」
「なっなんだよ。あいちゃんが感謝の気持ちがないって怒ってたんじゃんか」
「そりゃそうだけどよ。あんな所で可愛らしい台詞聞かされたり態度取られると、その場で犯したくなる」
「ほんっと野蛮人。あいちゃんって野生の本能のまま、生きてない?」
 ったく、もう。こんな姿、他の男の前で見せてないだろうな。どれだけ俺がお前に参ってるか、知ってるのか?

 健一は女優に惚れてるだけあって、思いっきりノーマルだ。俺は男のみ。しかも健一はもろ好みのタイプだった。アパートへ泊めたのだって当然だが下心満載で。どうやってノーマルのガキを落とすか、一時は悩んだんだが、そこはそれ。男なんて単純だから。身体的に気持ち良ければ、割合簡単に精神的な気持ち悪さは負ける。
 酒盛りの後、健一のモノを咥えてやったらあっさりだった。もちろん即オカマほったわけじゃねぇぞ。一気に恐怖するのは目に見えてるからな。
 徐々に、徐々に、慣らしていってなんとか身体はモノにした。まあ、健一もあんまり深くは悩まないタイプだったのも幸いしたよな。
 学校ではそれなりにもててたらしいけど、ソメイユに狂ってるとばれてからはあんまり女の子も寄ってこないらしい。俺的には虫除けに丁度いい。

「おお、俺は自分の直感に従って生きてるんでね。もしもあの時口をきいていたらヤらせろとしか言えなかった」
「うそー、信じらんない。大体さぁ、男相手に勃つってことも未だに信じられないのに、あんなところでヤらせろとかどうして出てくるわけ?」
「そりゃお前が可愛いからだ」
「可愛いって俺は男だよ? しかもかなりゴツい」
「男でもなんでも可愛いものは可愛い。なんか悪いか?」
「ん〜、なんか納得行かないけどまあいいや。あいちゃん、ちゃんと迎えに来てくれたし。俺のこと大事に思ってくれてるってのは分かるから」
 ニコリと微笑まれてまたもや撃沈する。
 こいつ、絶対男を誑し込む何かを持ってるぞ。

 到底我慢が効かなくてその場で健一の服を剥ぎ取っていく。下着も脱がし、素っ裸にすると‥。
「なんだよ、お前だって勃ってるじゃねえか」
「よく言うね、こんな所へ連れ込んで、これからやります、ってばっかりにさせておいて、勃たない方が変じゃないの?」
 まあそうだな。ラブホなんて目的はただ一つ! ヤるために入るんだから。
「だがそれは俺とやると気持ちいいって思ってるからだろ?」
「そっそりゃそうだけど‥」
「じゃあ別に男相手でも勃つのは分かるだろ」
 健一を脱がせたあと、自分も服を脱ぎ捨てる。
 俺の状態を見た健一は、
「あんたには負けるけど」
 そう言って笑った。

 昨日から風呂に入ってないと言う健一の意見が優先され、何でもいいからとにかく一発ヤりたかったのに阻止される。
 風呂場でソープ嬢のように洗い上げてやり、泡の力を借りてその場で突っ込む。ようやく本懐が果たせて気持ちが穏やかになる。溜まってる男ほど危ないものはない。

「よし、これでようやくちゃんとヤれるな」
「はぁっ? 今ヤったでしょ。たった今。俺、ケツが痛いって言ってるのに」
「あんなの前座。いやそれとも前戯って言えばピッタリか」
「なんだよ、オッサンのくせに。一回やったら果てろよな」
「ふん、俺はまだ若い。お前に合わせるくらいは出来るぞ。ほら、来い」
 多少は渋っている健一をベッドへ押し倒す。その上に覆い被さって両手を押さえる。俺の身体と腕力で押さえ付けられ、すっかり無防備になった唇に食らいついた。

 健一は快感から入ったくせに、キスもそうは嫌がらない。あんまり思い入れがないんだろう。女とも違うしな。
 程々に味わい、身体をずらしていく。首筋から鎖骨、鎖骨から乳首へと。乳輪沿いに生えてる薄い毛を唇で挟んで引っ張りつつ、両手で悪さを繰り返す。
「あっ、まっ、待って」
 少し強めに力を入れて摘んでやると身体が仰け反る。敏感な反応で触ってるこっちが嬉しくなる。程々に反応を楽しんでから次へいく。
 一回した、と言い張るくせに、またしてもギンギンに勃ち上がってる所を咥えてやる。先端に舌の先をねじ込み、粘り気のある体液と一緒に舐め回す。

「わっ、あっ‥、や‥。た‥まん‥ない」
 健一は俺の髪に両手を絡め、引き剥がしたくなるくらいに感じているらしい。ジタバタと暴れる奴を押さえ込み、これでもかってくらいに舐めまくる。
「やっ、もっ、もう‥、降‥参」
 腹筋がよりいっそう硬くなり、快感を堪えているのか、出すのを堪えているのか判断がつかない。
 いったん口を離すとジェルを付けて今度はアナルへ指を突っ込んだ。
「うっ、とっ途中で止めるなよ」
 そのままイかせてもらえなかったのが不満らしいが、イくなら俺と一緒にだ。

 指の本数を増やしつつ、前立腺を嬲り続ける。その間もペニスは舐めてやる。
 そうすると焦らされまくって、健一は泣き出すのだ。
 まあ、泣くと言ってもビービー涙を流して泣くわけじゃない。セックス中の「泣く」は喘ぐってことだ。
 短い母音と激しい息遣い。健一からはそれしか聞こえなくなる。何もかもが見えなくなって来た頃合いを見計らって、自分のモノを突っ込んだ。

「うあっ‥」
 そういうことに使う器官じゃない所へ無理に無理なサイズを突っ込む。もちろん入れられる方は苦しいだろう。それは思うが止められない。
 一瞬でヘニョリっとなったモノを手で握り締めて扱く。
 復活するまで動きは手だけにして待つ。元気になってきてからようやく動き出した。
 初めは慣れるようゆっくりと。さっき風呂場で突っ込んだときはちと無理させたからな。こっちが我慢できなかったから。 また処女のように締まってしまった所をつつきながらほぐす。
 締め付けられて痛いほどだったが、時間を掛けたら熱くとろけてきた。
 既に健一自体は出来上がってる。あとは最高の瞬間を演出してやるだけだ。

 押し倒した足を、も一つ無理させて割り広げる。より深く、より一体感が増すように。
「スパート掛けるぞ」
 そう声をかけると健一は頷いた。もうこの状態から早く抜け出したかったのだろう。
 先ほどまでとは全く違う音が部屋中に響き渡る。肉体がぶつかる音と湿った音が混じり合って、どう聞いてもヤってる音になる。俺は体力に任せて健一を突きまくる。少しでも長く、少しでも激しく、少しでも回数が増えるように。
「ハッ、アッ、あい‥ちゃん、もう‥ダメって」
 健一にあいちゃんと呼ばれて俺もダメになった。
 必死で堪えていたがもうたまらん。
 イくぞ、とかけ声をかけると、健一は自分で自分のモノを扱き、俺の最後の猛攻に合わせて吐き出した。
 健一がイったその顔とその事実が俺をも一気に解き放つ。まるで一回目のように勢いよく吐き出したのだった。

「もう‥、前言撤回。絶対あいちゃんって俺が壊れてもいいって思ってるでしょ」
 尻が痛いと騒ぐ健一。
「うっ、すまん。どうしても我慢が効かない」
「なんで女じゃダメなの。あいちゃんなら女の方から寄ってきそうなのに」
 まあ、寄ってくるならお水な女くらいだけどな。昔は悪さもよくしたし、そう言うところへも行くことが格好いいと勘違いしてた頃もあった。しかしやっぱり女ではあまり役に立たず、フェラだけしてもらって帰ってくることもしばしば。さすがに若い頃は出来ないことはないくらいに溜まっていたから、行っても困るようなことはなかったが。
 都会へ出れば売専などで男も買えるが、地元じゃ無理だ。
「なんとかなったはなったが、年くってからは無理だな」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだ」
 ふ〜ん、とあんまり納得はしてなさそうだが、それ以上は突っ込んでこない。今、こうなってしまった以上、自分も同じ立場だと思っているんだろう。
 まあ、この年になってからこんなに燃えるとは思わなかったがな。我ながらビックリだ。それだけ健一に惚れてるってことになるんだろうな。

「お前が壊れてもいいなんて微塵も思っちゃいないが、理性が吹っ飛んじまうくらい参ってるってのは事実だから」
 俺の告白を聞いて満更でもない顔をしている健一。

 まあ、ソメイユから卒業するのをオッサンはゆくっくり待つさ。

終わり

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