対決2

 虎王の身辺として存在している全てのことを把握してるつもりでいるからには、冬哉くんの携帯番号もメールアドレスも知っている。メールは指定受信していたら無駄なので、取り敢えず電話を掛ける。もちろん時間割だって調査済み。今日は二時限目の講義がないから、今から一時間は暇にしてるはずだった。
 しかし八回コールしても冬哉くんは出なかった。十回鳴らしたらいったん切ろう、そう決めて残り二回を待った。十回目のコール終了間際、本当に切ろうとした矢先に冬哉くんは出た。
 急いでいたのだろうか。少し息を弾ませつつ返事をくれる。
 私からの電話なんてかなり驚いたみたいだったけど、中庭のベンチがある辺りの後ろの芝生にいるから、と言うことだったので出向く。ほんとは学食で何か甘い物で釣りながら話したかったのに。
 互いに顔はイヤになるくらい知ってるのに、挨拶をする程度でまともに話したことはない。可愛い冬哉くん、人のいい彼はきっと頼まれてくれるだろう。

 外へ出ればまだ凄く寒い。三月に入って季節は春になったとは言え、上着もなしに外出するのは風邪を引きに行くよう。
 それなのに捜して見つけた冬哉くんはデニムのシャツに綿のカーディガンのみという軽装。おまけに何だか男が絡んでいた。
「なっ‥、ちょっと待って。こんなことしてどうしたいんですか」
「だから言ってるだろう。付き合って欲しいって。断るなら諦める代わりに一回やらせてくれって」
「だから俺もさっきから言ってるでしょう。俺は男なんだってば」
「だが都築にはヤらせてるんだろう? だったらいいじゃねぇか。一回くらい減るもんじゃないし」
「ヤダってば。絶対減るから」
「気持ち良くしてやるから」
 冬哉くんを無理矢理抱き締めていた男は最近やたらと虎王にまとわりついてる男だった。やけに馴れ馴れしいと思っていたら、なんと冬哉くん狙いだったとは。
 確か空手部にいてメチャクチャ強いはず。このままでは冬哉くんが血を見る。
 そう思って焦った瞬間、冬哉くんが言ったとは思えないようなキツ〜〜イひと言が飛び出した。
「気持ち良く、って虎王先輩より大きいの? 生身の物じゃなきゃイヤだよ」
「‥都築ってデカいのか?」
「当然、先輩‥ゴムだって海外の物じゃないとキツイっていつも言ってるよ」
「ぐ‥‥、輸入もん‥。そっそんなにデカいのか‥」
「それくらいじゃなきゃ物足りなくて欲求不満になっちゃうよ」
 空手部の田所と言う名前だったと思った男は、抱き締めていた腕を緩めると悔しそうに走り去っていった。
 よかったぁ。私が出ていった所で収まるかどうか分からない。虎王が来るのを待っていたら手遅れになりそうだった。

「冬哉くん!」
「あっ、白坂会長」
「もう‥、いい加減に会長は止めてよ」
「えっと、そうでした。白坂先輩。用事ってなんですか?」
 冬哉くんが高校に入学したその時、私は生徒会長をやっていた。虎王は会計から外れたがらなかったし、下条先輩の後を継ぐ者が必要だったから。冬哉くんはその当時会長と覚えてからずっと呼び名が変わらない。
「ええ、用はあるのよ。大事な用が。だけど今は危なかったわね」
「危ないって?」
「だって田所さんって空手の有段者でムチャクチャ強いって‥、断ったらどうなっていたか」
「えっと、俺が危なかったの?」
「そっ、そうよ。今襲われてたじゃない」
「えーっと、襲われてた訳じゃなくて、交際を申し込まれてたって感じかな」
「だっだけど‥無理矢理‥」
「無理矢理って言っても、ちゃんと話せば分かってくれるから」
 ダッダメだ。こんな甘い考えの子を一人で放っておいたら、いつか大変なことになる。
 冬哉くんを狙ってそうな輩は大方排除したつもりだったけど、まだどこに伏兵が潜んでるか分からない。もう少し気を配らないと。夏を過ぎてから虎王の本当の恋人は冬哉くんで、私はカムフラージュと言う噂を密かに流した。密かな噂程より素早く回るものはなく、大学一の有名人、都築虎王のことだ、流した次の日には全校生徒の知る所となった。
 さすがに虎王を敵に回そうという強者はいなかったのに‥。
 どっかでやってるのを見られてしまったのだろうか。ちょっと虎王にも釘を刺しておく必要があるわね。

「けれど凄い啖呵切ってたじゃない。もうダメだって思ったからでしょう」
「ううん、素早くキッチリと諦めてもらうにはこう言うのが一番だって虎王先輩に教えてもらってたから。白坂先輩を待たせるのも悪いと思って。初めて使ったけどね」
 仕方なさそうに笑うその顔は高校の頃のあどけなさが少し抜けて、ちょっとだけ男を匂わせた。と言っても充分に童顔で、まだまだ可愛くてしょうがなかったけど。絶対大学生には見えないな。けど‥初めて使うってあなた。そんな状況に陥ったことが何度もあるってこと?
「じゃあ、本当に襲われたらどうするつもりだったの?」
「うん、向こうが裸になるまで大人しくしてて、全部を見せられたら溜息付けって」
 ひゃ〜、それはきつい‥。相当なダメージを与えられそう。男の証しを哀れまれたんだからヘタすれば不能になりそう。
「けどそんなコトしてくる奴なんだから、逆ギレされたらどうするの?」
「うん、男なんだから多少殴られても我慢しろって。操を守れって女の子みたいな事言われたよ。けど命の危険を感じたらヤらせてやれって言われてるけど、先輩以外とはそんなことしないって約束してるから、絶対拒否のつもりではいるよ‥って、なに初めての人に、しかも女の人にベラベラと話してるんだろ、俺‥」
 冬哉くんは話してる内容にようやく気が付いたようで、真っ赤になって照れる。
「えと‥白坂会‥じゃなかった、白坂先輩も虎王先輩のこと好きなんだよね。俺‥関係持っててご免なさい。でも先輩は俺で遊びたいだけだから。あんまり気にしないでね。て言うか先輩の相手してるんだからそれくらいは百も承知だと思うけど」
 今度は本当にすまなさそうにニコリとした。ああ、なんてイイ子なんだろう。虎王や狼帝くんじゃなくても抱き締めたくなる。
「ね、取り敢えずここは寒いから学食へ行こう」
 私は本当の恋人じゃなくて、振りをしているだけだって知ってるのに。私が片想いしてるって思い込んでる冬哉くんは気遣ってくれる。片想いと言えばそうなのかもしれないけど、虎王が誰と付き合おうと私はあの人のそばで一生仕えることさえ出来れば幸せよ。こんな気持ちは冬哉くんには分からないかな。

 身長172センチの私と近い背丈の彼は私の隣を歩き出した。チラチラと盗み見をする。
 つるんとした肌はふわふわのほっぺと相まって常に触ってみたくなる。目はそんなに大きくないくせにパッチリしていて非常に可愛らしい。鼻は邪魔をしないようすんなりと通っていて、高くも低くもない。一番の特徴は唇だろうか。男の子にしてはちょっとだけポッチャリ気味で、それが妙な色気を醸し出しているのだ。決して美少年ではないけど、大学内で美少年コンテストをやれば誰も何も言わなくても絶対上位に入ってくる、と断言出来る。残念ながら我が校ではナンバーワンコンテストと称して、いい男を選ぶものしかないんだけど。それでも冬哉くんはベストテンには入っているわ。
 人には嫌われることのない、得な顔をしている冬哉くん。でも彼にとっては得ではないのかも。もうほんの少しだけごつかったら、こんな風に男に抱かれる、なんて羽目には陥らなかったかもしれないから。
 冬哉くんみたいに底抜けに明るい性格じゃなかったら、相当落ち込んでることだろう。それとも彼は元々そういう素質を持っていたのだろうか。虎王は当然見抜いていて‥?
「虎王先輩は授業中だよね? 白坂先輩も虎王先輩と同じ授業を取ってるって聞いたけど、今はいいの?」
 う〜ん、鋭い。のんびりしてるように見えるけど、天然故に少しでも不自然な所にはすかさず突っ込みが入る。虎王が言ってた通りだわ。これはかなり侮れない。

 学食まで来たが、そこそこ人がいるのでその隣の喫茶コーナーに入る。ヘタな喫茶店に行くより美味しいコーヒーを飲ませてくれるし、ここのショコラケーキは絶品だ。私はケーキセットを二つ頼むと、冬哉くんはなんと飲み物をホットココアにした。
「でもケーキもショコラだよ? チョコだらけで凄く甘そうだけどいいの?」
 当然だけど私はコーヒー。見てるだけで甘くなりそうな取り組み合わせで、思わず尋ねてしまった。
「ええっ? 女の人でもダメなの‥。男と入るとね、見てるだけで胸焼けするから止めてくれって言われるから。このチャンスに食べたかったんだ‥」
 気分悪いなら断ってくるね、と席を立った冬哉くんを引き止める。
 噂通りの超が付く甘党。なのに全然太ってなくて羨ましい。身長も同じくらいなら、体重も同じっぽい。
「大丈夫よ。私も甘い物大好きだから。ただ男の子がって思ってちょっと聞いてみたくなっただけ。それにお酒も強いって聞いてたから。まさかそこまで甘党じゃないだろうって勝手に思い込んでたの。ごめんね」
 そんな、謝らないで。と言いつつ、冬哉くんは安心したようだった。

「ねぇ、それで何の用だったの? 生徒会長を務めた白坂先輩が授業サボってまでってよっぽどのことだよね」
 え〜っと、冬哉くんの頭の中の生徒会長は狼帝くんのイメージで凝り固まっているのだろうか。確かに私も狼帝くんと同じように学年首位はキープしてきた。だけどこれは虎王が本気を出さなかったからのことであって、言うなれば仮初めの首位。私には勉強だけだったから、順位は自分の存在意義の全てで、大事だった。けれどその大事な順位だって、虎王に比べたらどってことないものになってしまう。私はこの人に仕えるために生まれてきたのだと思うから。惚れてるとかそんな次元ではなく、私にとっての虎王は神。彼なしでは息すら出来ない。


 虎王と初めて出会ったのは中学だった。一年で同じクラスになったのだけど、最初の印象はただ凄く綺麗な男の子、だった。背も高く、ビックリする程整った顔、均整のとれた身体、瞬く間に人気者になり、連日教室には上級生の女の子が押し寄せた。
 見てくれだけでもそんなに人気者になっていたのに、いざ蓋を開けてみたら、運動神経抜群、バレーは破格に上手いし、中間テストのトップは彼、なおかつ社長の息子で大金持ちだった。少なからずとも私はショックだった。勉強だって頑張ったのに。天は二物を与えずって言うじゃない、なのにどうして彼にだけは三つも四つも与えられているのか。情けないことに当時の私には彼の寂しさも、四つもあると言っても、彼がその一つも望んでなどいないことは分からなかった。
 テストの上位成績が発表された紙面上で隣だったと言うだけで虐められ、二人でクラス委員になったからと言って妬まれた。
 その全てを彼のせいだと呪い、呪いつつも惹かれて行く自分は止められなかった。
 一学期の期末試験が終わり、また前と同じように上級生に囲まれていた。ちょっとくらい勉強が出来るからっていい気になるなよ、と。背ばかり高く、ガリガリで陰気でブスな自分がなんとか踏ん張れる所は勉強だけなのだ。それを批判されちゃあ堪ったもんじゃない。
 私はどんなに酷い言葉を浴びせられても、屈しなかった。ただ田舎なのでやることが所詮生温い。教科書を隠されたことくらいはあったが、暴力をふるわれたことはなかった。
 そんな感じで上級生に睨まれていたので、教室でも一人ポツンと浮いていた。さすがに二学期入って学校側も問題として取り上げてくれた。そこへ渦中の虎王がわざわざ私に話しかけに来てくれたのだ。クラス委員をやっているので話しくらいはしたことがある。でも何の用事もなしに声をかけられたのは初めてだった。
 けれど今まで妬み、恨んできた気持ちが押さえきれない。せっかく話しかけてくれたのに、酷く邪険に扱ってしまった。
「あなたのせいで虐められてるの。寄ってこないで」
 と、啖呵を切ってしまったのだ。
 だけど虎王は何にも気にしてないらしく、その日から毎休み時間話しかけてきた。お昼もお弁当を持ってきて、私の机の上で開く。後になって思えば彼は私を守ってくれていたのだと分かったのだけど。その時の私は引っ込みが付かなくなっていたのだ。虎王に対する態度が酷いというので、虐めはもう一つエスカレートした。机には生ゴミが入っていたり、ノートにはブスだの死ねだのと落書きされた。
 そしてとうとう事件が起きた。
 それは二学期の中間試験の成績発表があった日だった。帰りがけにまた上級生に囲まれた。円陣の中に入れられて、死ね死ねコール。私が泣き出すまで続く。絶対に泣くもんか、と踏ん張る私。それはいつまで続くのだろうか。
 そこへもしかしたらずっと見張っていたのかもしれない虎王が出てきた。みんなバツの悪そうな顔をし、照れ隠しに虎王にまで絡む始末。すると虎王は遂に本性を明かしたのだ。
 小さな折りたたみナイフを取り出すと、なんと自分の顔に当て刃を引いた。あの綺麗な顔の頬からは血が流れ出る。自分が切られた訳でもないのにつんざくような悲鳴をあげる上級生たち。
「俺を傷付けたな。この傷跡が疼くたびにお前らにも同じ傷を付けてやる。それとも今、このナイフがあんたの物で、あんたにやられたと証言してもいい。誰一人としてあんたの味方はいない」
 血の流れる顔で少し危ない人のように笑う虎王は正に大魔王だった。その上級生集団のリーダー格の人を脅しつける。
「一生涯後悔しながら生きていくか、それともここで詫びを入れるか、どっちがいい?」
 上級生と言っても、イジメの集団のリーダーと言っても、所詮は中学二年の小娘だ。その子はもう血が見えたことにパニックになり、イメージとかけ離れた虎王に怯え、泣きながらご免なさいを繰り返した。
 そして虎王は私の肩を抱いてその場を離れた。

 ちょっとだけ略、ネタバレは禁止な方向で


 ああいう集団でしか行動出来ない奴らはトップに立つ者がいなくなればあっけない。一ヶ月程ガーゼや絆創膏を貼って過ごした虎王を見るたびに、コソコソと逃げ回っていた。
 もちろん私も虐められることはなくなった。虎王と一緒にご飯を食べている私が羨ましくて近づいてきた敬子とはすぐに仲良くなった。
 虎王はこの立場を利用しろと言う。そのためならなんでも協力してやると。それで私は親衛隊を作り、規則を作り、虎王をエサにして守らせた。そこからの親衛隊であり、虎王との関係である。
 ちなみに虎王の方には恋愛感情は一切無い。それなら何故彼がここまでして私のことを庇ってくれたのか。その答えは至極簡単で明快だ。「こいつは使えそうだ」と思ったから。ただそれだけ。成績順で二位を取れると言うことは頭も悪くない、虐められても屈しないと言うことは根性がある、そして何より虎王に惹かれていると言う点。自分の手足に使える、彼はそう判断したのだ。
 それじゃあ使えなさそうであれば助けてくれなかったのか。いや、この場合は使えなさそうと判断する前に虐めに遭ってない。だって試験の結果発表で隣だったから目を付けられたのだ。次に頭が良くて虎王のことがそう大して好きではなかった場合は、なんとかして虐めを回避してるはずなのだ。
 バカみたいに意地になって委員を続ける必要もなければ、虐めを真正面から受ける必要もなかったのだから。
 私は私の神を守るためなら例え殺人だって厭わないだろう。虎王教信者と陰口を叩かれたって何の気にもならない。それどころかますます闘志が湧いてくる。そんな陰口を叩いてる奴こそ引き込んでやろうと思う。そもそも陰口を言いたいと考えた時点で相当虎王のことを気にしてるってことなのだから。


「冬哉くんは少し誤解してるわ。生徒会長と言えばみんながみんな、狼帝くんみたいに真面目な訳じゃないのよ。私は高校の頃からよく授業はサボったわよ。ちゃんと時間は計算してね」
 軽くウィンクしつつ、そう言うと冬哉くんはビックリする。
「えーっ! 白坂会長もサボったりしたの〜? 凄いビックリ。狼帝にも教えてやろうっと」
「だってほら。鷹神くんだって相当なものだって聞いたわよ」
「あっ、そっか‥。鷹神も会長してたっけ。すっかり忘れてたよ。鷹神って全然それらしくないから」
「ね、会長って言っても色んなタイプがいるのよ」

 そうなのよ、私たちが一年生の時に会長だった下条先輩だって仕事はほとんど私と虎王がこなしていた。あの人は地元の有名人の息子というだけで当選したようなもんだし、虎王の応援がなかったらそれすら危なっかしかった。即暴力に訴える乱暴者だったし、虎王だってあの綺麗な顔を何度か殴られていた。
 けどそれはわざと殴らせていた感が強いけど。下条先輩は小心者だ。殴ったことに罪悪感を持っている。虎王はその罪悪感をどんどん肥大させ、しまいには虎王に頭を上がらなくさせてしまった。
 もちろん笹原さんというエサはたっぷりあげたけどね。資料室でしょっしゅう笹原さんは犯されていた。生徒会室へは笹原さんを抱きに来ていたようなものだった。
 けれど彼はそれで落ち着いた。親戚がヤクザだとか、祖父が腹黒い政治家だとか、本来理解していたはずのことを改めて悩んだりしてたのだ。
 その家がイヤだとかそう言うことではなくて、自分も冷酷無比に物事をこなせる冷徹な人間にならなくてはいけないと思い、そうしてきたつもりなのに、自分が理想を描いていた像とピッタリの現存する人間がいたのだ。
 彼は思い知った。生まれ持ってくるべき性質なのだと。力だけで押さえるのは違うのだと。彼は力でもって支配できるほどのガタイはあったし、暴力に訴えるのも小心者故に彼の中では有りだったのだろう。それが根底から覆されたのだ。
 まあ、虎王を見てしまえば暴れたくなっても仕方ない気もするけど。そもそも虎王と比べることが間違っているが、それはすぐには分からないから。普通は同じ人間だから、あいつに出来ることは自分にだって出来ると思う。でも虎王は同じ人間なんかじゃないのだ。同じ土俵に立てると思ったら大間違いなのだ。

 男にとって吐き出す場があると言うことは、裏を返せば帰る場所があると言うことだ。例えその場所(身体)の主(魂)がいなくても。主だって出たままではいられない訳だし、笹原さんは端からでも一目で分かる程虎王に惚れていたから。
 ああ、こうやって考えるとほんと気の毒な男たち。虎王が人を惹き付けて止まないカリスマオーラをばらまいているのが悪いのよ。下条先輩だってほんとは虎王に惹かれていたのだから。羨み妬みながらも理想像に惚れていたに違いないのだ。

「う〜ん、それじゃそんなに大変な用事って訳じゃないの?」
 このノーマルな、色恋沙汰にはとんと疎そうな冬哉くんですら、虎王には惹かれている。あんまりフェロモン垂れ流さないで欲しいけど、冬哉くんは全開で落とそうとした唯一の相手なのだから仕方ない。でも冬哉くんも凄いわよねぇ。この虎王が落とそうとして落ちなかったんだから。まあ、落ちかけた所で狼帝くんのためにお預けしたって感じもあるけどね。
「大変と言えば大変なんだけど、でも大変と言うより大事って感じかな」
「なあに? 俺に関係あることで白坂会長‥じゃなくて白坂先輩との共通項目と言えば虎王先輩のこと?」
 やっぱり鋭いなぁ。一体誰が冬哉はのんびりしていてボケてる、なんて言ってるのか。この感性で狼帝くんのことも気付いてあげたらいいのに。
「やっぱり分かっちゃった? あのね、虎王の光り輝くような経歴に傷を付けようとする不埒な輩がいるのよ。それで冬哉くんにもどうしても協力して欲しくて。お願い」

「へぇー、虎王先輩に対抗しようなんて命知らずな人がまだいたんだね。凄いなぁ、その人。勇気あるね」
「ええ、この地域ではさすがにもういないけれど、東京のモデルクラブ内の人なのよ」
「ええっ、もしかして有名人なの?」
「有名と言えば有名かも‥。冬哉くんは前田美良って知ってる? モデルだからテレビとかにはあんまり出てないけど」
「えっ? 前田美良ってヨッシー? 知ってるよー。先輩が載ってるのと同じ雑誌にもよく出てるし、今ね、深夜の街角のイケメンって番組の司会やってるよ。自分よりいい男の挑戦を受けていてね。会場の女の子たちがボタンで投票してるの。始まったばかりだから五回くらいしかやってないけど、確か五戦全勝だよ」
 しまった‥。彼のスケジュールをモデルクラブへ確認しておくべきだった。テレビに出ていたとは。
「それってどこの放送局?」
「ケーブルテレビ」
 ああよかった。全国区じゃなくて、ケーブルテレビか。後で調べなきゃ。もしも名古屋中心に放映しているのだったらまずい。
「面白いの?」
「う〜ん、男が見てもイマイチかなぁ。女の子の友達が一度見てみろってうるさくて。虎王先輩なら勝てるんじゃないかって、応募したいみたいだったから、俺がちゃんと見てからって思ってさ」
「で、冬哉くんの意見は?」
「そんなの当たり前だよー。虎王先輩が負けるなんてある訳ないじゃん。確かにヨッシーは面白いけど。なんてのか鷹神が先輩には勝てない感じに似てるよ」


 ここまでが白坂さんとの出会い編で、対決することになった経緯です。
 中身は少し抜いてありますが、それは本当に先輩ファンじゃないと耐えられないと思う、先輩賛美が続くからです。(笑)

 ここまでで、白坂さんの人物像と、先輩との関係が分かってもらえたと思いますが、次のページは先輩ファンと、まんせいかファンへちょっとサービスです。(^^)
 サ〜ビス、サ〜ビス〜♪

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