愚かなる狂宴 9
肌を合わせあった余韻がまだ残っている頃、アルがホークアイ中尉を連れて戻ってきた。
中尉はロイの顔を見ると、まずほっとした顔をして、それからロイを厳しく叱り付けた。
「体調管理はしっかりして下さい!!」といいながら書類を渡している。
ロイは苦笑しながらもその書類に眼を通す。
エドとアルはそんなロイの姿を見つめながら、そっと部屋を後にした。
「これからどうするの?兄さん…」
「…旅に出よう…アル…」
「??いいの?大佐の傍にいてあげなくても…」
アルは何もかも見透かしたように、エドに問いかけた。
このまま大佐を放っておいていいの?
あの人から守らなくていいの…?
「大佐は…守ってもらうような弱い人じゃないから…」
「それに、俺達の目的は賢者の石を探し出す事だろ?」
「一日でも早く、元の体に戻るのが第一じゃないか…」
エドはそう答え、空を見上げている。
大丈夫…あの人なら…
「あ…兄さん!」
「何だ?ア…」
エドがアルの方を向いた時、そのままその場に凍り付いてしまっていた。
大総統…ブラッドレイ…
「やぁ…エドワード君、アルフォンス君…」
護衛も無しに大総統府内を歩いているのは、偏にその実力の成せる業…
「こんにちわ…大総統…」
「………」
エドが無言で睨んでいると、ブラッドレイはくすくす笑いながら近づいてきた。
「君の兄さんは随分と礼儀を知らないようだね。」
「す、すみません!兄は昔からこうで…」
「黙ってろ!アル!」
エドの怒鳴り声でアルは一瞬たじろぎ、慌てて大総統にとりなそうとしている。
「兄さん!?」
「アル…先に部屋に戻ってろ…」
「でも…」
「いいから行ってろ!!」
エドの剣幕にアルは驚きながらも、静かにその場を立ち去った。
「いいのかね?可愛い弟が傍にいなくて…?」
ブラッドレイが意地悪く囁きながら、エドの傍へと近づいていった。
そのままエドの顎を掴むと、顔を近づけ、唇を奪う。
エドは身動きせず、ブラッドレイを受け入れる。
「…今日は逃げないのか?それとも怖くて逃げられないのかね?」
黒い笑みを浮かべながら、エドの頬を撫でる。
「大佐を…理解するには、あんたを受け入れなきゃいけないと思ってね…」
「私を…?マスタング大佐の為に…?お前に彼を理解できるとは思わんが…」
そう言いながら、ブラッドレイはエドを廊下の影に追いやり、肩を抑え足を割り込ませ両足を開かせる。
エドは何の抵抗もせず、ただブラッドレイの腕をギュッと掴んだ。
「大佐に聞いた…あんた、死にかけた大佐に生きている証を示したんだってな…」
だから大佐はあんたから離れられない…
「でも、この前あんたに抱かれて俺、思ったよ…」
「生きている証を示して欲しいのは、むしろ大総統、キング・ブラッドレイの方じゃないかって…」
エドの言葉に、ブラッドレイは明らかに動揺を見せた。
この…私が…生きている証を示して欲しいだと!?
「あんた…本当に今、生きてんのか…?」
私は…今…本当に生きているのか…
それはブラッドレイにとって彼の真理を垣間見る質問だった。
ブラッドレイはエドの肩から手を離し、エドの髪をそっと撫でる。
エドは突然のブラッドレイの仕草に一瞬戸惑ったが、気にせず彼を睨みつけた。
「旅に出るようだな…」
「まあね…」
質問には答えず話題を変える。
エドも最初から答えを聞きたかったわけではなかった。
「必ず生きて帰ってくるがいい。お前を殺すのはこの私だからな。」
「その言葉、そっくり返してやるさ!」
「お前が戻るまで、マスタングは私が可愛がっておいてやろう。」
ブラッドレイが勝ち誇ったように笑いかける。
「その代わり、俺が元の体に戻ったら必ずあんたから奪い取ってやる!」
キッと睨みつけるエドをブラッドレイは満足げに見つめ返す。
それでいい。その眼が自分が今、生きていると言う事を実感させてくれる…
エドの顎を上に上げ、触れるようにKISSを交わす。
「お手並み拝見と行こうか…鋼の錬金術師よ…」
そう言うと、ブラッドレイは身を翻し、その場から立ち去っていった。
To be continues.
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