腐った林檎たち 13
エドの口内で貪り食うように舌を絡ませ、その快楽を引き出そうとするロイ。
いつもと違う態度にエドは困惑していった。
やっとの事でロイを引き離すと後ろに一歩後ずさりする。
ロイは変わらず微笑み続け、そっと右手を伸ばしてきた。
その手を取っていいものかどうか、エドには分からない…
いや、取ってしまったら大変な事になりそうで、怖くて取れなかった…
ガシャーン!
後方から破壊音が響き、ドアが壊され兵士が入ってきた事を悟る。
エドはドアの方を振り向き、構えの体制をとった。
「ひゃっ、な、やだ、離して大佐!!」
ロイがエドの背後から近づき、そのまま後ろから抱きすくめる。
シャツをたくし上げ、胸を弄るその手つきに思わず声をあげてしまった。
「止めなさい、マスタング。」
渋みのある声でロイを制すると、ロイはすっと手を離しエドを開放する。
荒い息をしてドアの方を見ると、ユノーが黒い笑みを浮かべて立っていた。
「あぁ、すまなかった。この男は今調教中でね。部屋に入った者に奉仕するよう躾けているんだよ。」
「調教…中…?大佐に一体何を…」
「おや、君はマスタングを知っていたのか。なら話は早い。」
呆然と立ちすくむエドの肩をガシッと掴むと、ロイの方に向かせる。
ロイは焦点が定まらないような眼でユノーの方を見つめていた。
「な、にすんだ!離せ!」
「心配ない。マスタングとのキスとさっきの刺激で、今君の中は熱く疼いているんじゃないのかね?」
マスタングは上手だよ…数多くの男を咥え込んでいる、淫乱な娼婦だから。
ユノーは顎をしゃくってロイに合図をすると、ロイはゆっくりと近づき、エドの前で跪いた。
エドのベルトのバックルを外すと、ジッパーを下ろし、エド自身を取り出した。
ユノーの言う通り、先程のキスと胸への愛撫でエドのモノは膨張し、大きく脈打っていた。
「や…だ…あっ…ふんん…」
ロイは丁寧にエドのモノに舌をはわし、上手にそして確実にエドの興奮を高めていく。
両肩を押さえつけられているとはいえ、エドの体術なら簡単にユノーの拘束を解き解くだろう。
だが今のエドはその気力を失っていた。
エドは片手でロイの頭を押さえつけ、更に奥まで咥え込ませる。
ロイはむせ返りながらもエドの求めに応じ、喉の奥底まで咥え、舌を動かし、快楽を与えた。
「んっ…はぁああ…ホン…と上手…病み付きになりそう…」
にやりと笑って腰を動かし絶頂へと導かせる。
ユノーが後ろで満足げにエドとロイを見つめ、後ろで控えていた兵士達に下がるよう命令した。
「んっ、イク…ちゃんと飲んでよ…」
ロイの後頭部を押さえ込み、グッと奥まで咥え込ませ、そのまま中に苦汁を注ぎ込む。
ロイは眼を閉じる事もなく、虚ろな表情でそれをすべて飲み干した。
口端から飲みきれなかった白い液をたらし、次なる命令を待つ。
そんなロイを見つめていたエドは悲しむ様子もなく、ただ薄く笑いながらロイの黒髪に指を絡ませていた。
本来の目的を忘れ、今目の前にいる愛しい人の変貌ぶりにエドは興味深々だった。
「ねぇ…一体どうやったの…?大佐ってかなり頑固で捻くれてたのに。」
どうやってこんなに従順な猫にさせたのさ…
ユノーがゆっくりロイに近づき、その髪にエドと同じく指を絡ませた。
「飴と鞭の使いようだ。だが落ちるのは案外あっけなかったぞ?」
くすくす笑いながらロイの顎をくいっと引き上げる。
「今やマスタングは我らの忠実なる部下。どんな命令でも聞く様に躾けているところだ。」
「その最終的な仕上げ…君も参加するかね?」
エドは少し驚いてユノーの方に眼を向けた。
ユノーは含みのある笑みを浮かべロイの顔の線を指でなぞる。
成る程…大佐が欲しかったら一味に加われって事…
大佐への凌辱の片棒を担がせ、俺を抱き込もうって腹か…
「悪くないね…その条件。」
この人を手に入れられるのなら、悪魔に魂を売っても構わない。
従順っていうのは不本意だけどね。
「では我らの計画に協力すると…」
「…この人を俺にくれるなら。」
エドは顔を上げたままのロイの頬に左手を添え、親指をロイの口の中に入れた。
ロイはその指を何の躊躇もなく舌を使って舐め、淫猥な表情を見せる。
本当に…この人は俺が好きだった大佐なのか…?
「何でも命令通りにするのか?本当に。」
「するさ。この薬欲しさにね。」
ユノーがポケットから取り出した注射器をロイに見せると、虚ろだった眼に輝きが戻りユノーの袖を掴もうとした。
ぱしっとその手を払いのけると、何気に片足をロイの前に差し出した。
ロイはその足を見るや否や蹲り、何の戸惑いもなく靴の先にキスを落とす。
エドはその代わり果てたロイの姿に衝撃を隠せなかった…
まさか…あのいつも人を見下したように高飛車な態度の大佐が…
「ようやくここまで素直になったな。さ、腕を出しなさいマスタング大佐。」
子供に言い聞かせるように優しくそう告げると、ロイは右腕をユノーに向けて差し出した。
つっとその腕に注射をするとロイの眼が恍惚と輝き、たちまち息が荒くなっていく。
「…その薬は…?」
「ちょっと気分がよくなる薬だよ。大量に摂取すれば体の疼きが止まらず果てしない苦痛を味あわせる。」
「量を減らせばその快楽を充分引き出してくれる媚薬となる。」
そしてその快楽を欲しいが為にどんな命令でも聞くようになる…
恐怖と暴力で人を支配する場合もあれば、快楽でがんじがらめにして支配する方法もある。
強靭な精神力を持つロイには後者の方法が一番効果的だった。
いまやロイは、その快楽を与えられるのなら何でもするだろう…
この場でエドを殺せと命令すれば何の躊躇もなく発火布をはめ、指を鳴らすに違いない。
ロイはすがる様な目でユノーを見続けている。
「マスタングが欲しているよ。どうするかね?鋼の錬金術師よ。」
我等と共に来るか…それとも今ここで愛しい者に殺されるか…
「…右手…ちゃんと保管して整備して返せよ。」
「事が始まる直前に返そう。」
「今後俺以外が大佐を抱く事は許さない。」
「よかろう。では私に忠誠を誓え。」
大総統ではなくこの私に…
すっとエドに差し出した右手の甲にエドは静かに唇を落とす。
ユノーは満足げに笑い、ロイをベッドへと促した。
よろよろとふらつきながらロイはベッドへと向かいシャツを脱ぎ捨て横たわる。
その後をユノーが上着を脱ぎながら続いていった。
エドはフッと笑いながら満足しているユノーを見つめている。
馬鹿な奴…あんなキスぐらいで俺が忠誠を誓ったと思ってるのか…?
大総統にだって忠誠を誓ってなんかいないのに。
あんた達の計画なんてどうでもいいんだ。大義名分なんて俺には関係ない。
ただ、愛しい人を俺だけの物にしたいだけ。
その為ならこの国が滅んでも構わない…
あぁ…結局俺も奴らの思惑に乗ってるって事か…?まぁいいか…
今は目の前にぶら下がっている人参に喰らいつくとしよう。
To be continues.