腐った林檎たち  21











        セントラル郊外から更に車で30分ほど走った所にあるユノー将軍の別荘に黒塗りの車が玄関に到着した。





        だが家からは誰も出てこない。あたりはシンとしている。



        車から降りた初老の男は、そのまま自分で玄関を開け中に入っていった。











        「わざわざのお越し、恐縮であります!将軍閣下!」

        玄関に一歩入ると、数人の貴族将軍が並んでユノーを出迎えていた。





        「全く!不注意だぞ。事が起きる前にあの家を悟られるとは。」

        「私がヒューズ達を見晴らせていたから良かったものの…」





        見るからに不機嫌そうなユノーは出迎えの将軍などに眼もくれずリビングの自分のお気に入りの椅子へと腰掛ける。

        召使がコーヒーを持ってきてもそれに手を着ける事もなく、代わりにブランデーを持ってこさせた。





        クイッと一気に飲み干すと、少し落ち着いたのかリーゼルを傍に呼び寄せた。







        「マスタングはどうしている。」 

        「はっ、こちらに移ってからは部屋に監禁してあります。大人しく眠っているかと。」

        「鋼君は?」

        「かなりショックを受けているようですが、大分落ち着いてきました。閣下に話があるといっておりましたが。」





        フム…報告を聞けば、マスタングは親友や部下に躊躇なく焔を発したと言う。

        エドワードも弟を振り切ってマスタングを選んだ。





        直前に嗅ぎ付けられたのは痛かったが、まぁ、これなら明日は上手く行くだろう。







        「よろしい。話を聞いてやろう。エドワード君を私の部屋へ連れてきなさい。」





        はっ!と敬礼をかざし、リーゼルはその場を後にした。



















        「さて…私はこの結果を大いに喜んでいるよ。エドワード君。」

        「…あんたの為じゃない。大佐の為だ。」

        「くくくっ、それでもだ。君は大佐の為なら私の命令に従うと言う事を身をもって示してくれた。」





        厭らしく笑うユノーに目を細めながら、エドは溜め息をつき、言葉を続けた。





        「で…俺は明日何をすればいいわけ?」





        クーデターを起こすんだろ?大佐がそれを指揮するんだろ?



        だったら俺は何をすればいいんだ?







        ユノーは飲んでいたブランデーのグラスをテーブルに置き、厳しい顔でエドを見据えた。







        「君には大総統の息の根を止めて貰いたい。」







        いきなりとんでもない事を言われ、流石のエドも驚きを隠せなかった。



        大総統…ブラッドレイの命を取れって事か…?





        「随分大事な事を俺に任せるんだな。」

        「君の様な少年がまさか刺客とは思わんだろう?」



        演習部隊が大総統府に到着後、マスタングがリーゼルを襲い、大型の武器を奪う。

        それはバルコニーで演習を視察している大総統目掛けて放たれる。





        「君はまずその攻撃を阻止して貰う。あぁ、できれば派手に防いでくれ。」

        見目の良い優秀な錬金術師が大総統を救ったと皆に噂されるように…な。





        「なんだってそんな事。放っておけばそのまま大総統もおじゃんじゃないか。」

        「くくっ、ただブラッドレイの首を取るだけでは意味がないのだよ。エドワード君。」





        意味ありげに笑うユノーを見て、エドは益々困惑していく。









        ただのクーデターじゃなさそうだな…このおっさん、何を考えているんだろう…











        「で、防いだらその後どうなるんだ?」

        「大総統暗殺に失敗した反乱分子達はそのまま武器をとり、軍の主要部分を占拠していく。」

        「それで?」



        「大総統がいたバルコニーにも兵士がなだれ込み、大総統を除く軍の首脳陣は一時拘束される。」





        ??ブラッドレイも拘束しないのか…?訳わかんないや。





        ユノーは傍にあったブランデーをまたグラスに注ぎ、くいっと飲み干した。

        かなりお酒が入ったのか、顔はほんのり赤くなりいつもより饒舌になっている。



        「ブラッドレイはバルコニーから君が連れ出す。『ここは危険だから』とか何とか言ってな。」

        「逃げる途中で背中から刺せって事?」

        「まぁ、そんなところかな。自分と救ってくれた少年がまさか自分を殺す刺客とは、あやつも想像できんだろう。」





        随分とブラッドレイを見くびってないか…あんた。

        あの人はそんなに甘くないぞ…







        俺が背中から刺そうとすれば、俺の剣が奴の心臓に達する前に俺が真っ二つにされちゃうだろうな。







        「逃げ延びる場所は後で教える。そこに着いたらブラッドレイを殺せ。」

        「お前の使命はこれだけだ。裏切るなよ。裏切ったらマスタングに命じてお前を殺させる。」







        愛しい者に焼かれるのはどんな気分なんだろうね…ククク…







        ユノーはエドの金色の髪に指を絡ませ、さらりと払い落とさせる。

        さらさらと流れるように髪がなびくと、ユノーの喉がごくりとなった。





        あぁ…このおっさん欲情してる…まずい雰囲気だな。



 

        「じゃ、俺は明日に備えて寝るよ。子供は早く寝なきゃ!」

        ユノーの手を払いのけて、エドはドアに向って左手を伸ばした。

 





        ガツッ!!





        その左手を掴み、ドアに押し付けエドの首を締め上げた。



        「くっ、何、すんだよ!」

        「気の強い子猫を飼いならすのが私の趣味でね。どうだ…我ら、更に絆を深めてみては。」





        にやりと厭らしく笑いながらエドの顔を舌でなぞっていく。

        べちゃっとした気色悪い感覚に、背筋がぞっとする。





        両足をばたつかせ、ユノーの大きな手から必死に逃れようと試みた。

        が、しっかりと掴んだその手を外す事が出来ず、その苦しさに一瞬気が遠くなっていく。





 



        「んっんん!?!」

        ユノーの舌がエドの唇を割って進入し、その中を犯していく。

        苦虫を噛み砕いたような表情で全身でユノーの舌を拒否したが、返ってそれがユノーを愉しませる結果になっていた。





        やっと唇を離すとエドは荒い息をして、キッとユノーを睨みつけた。





        「止めろよ!俺は大佐を抱くけど、抱かれる方に興味はない!」

        「欲求不満ならあんたの忠実な人形のグローム中尉でも抱けばいいだろう!」





        「あぁ、あれか。あれも最初は抵抗などして面白かったが、今となっては命令通りに喘ぐから何ともつまらんのだよ。」

        マスタングもいまや人形同然…やはり生きのいい猫の方がそそられるね。



        ユノーがまた顔をエドに近づけてきた。エドは嫌悪感で顔を背け、必死でもがいて逃げようとする。







        冗談じゃない!!あんたなんかにやられて堪るものか!





        「離せ!あんたにやられるくらいなら大佐の焔で焼かれた方がましだ!」



        あんたの腕へし折って、ここから逃げ出して大総統の所に告発してやる!

        それが嫌なら手を離せ!このくそジジイ!!





        エドのあまりの剣幕に、流石のユノーも苦笑しながら手を離した。





        ゴホゴホと咳き込みながらもユノーへの牽制の眼は緩まない。



        

        「まぁ、いい。私は思い通りに動く人形の方が疲れなくてすむからな。年には勝てん。」

        「元気なお前を抱いたら明日の演習に差しさわりが出そうだ。」





        机の傍にある呼び鈴を押すと、すぐにグローム中尉がやってきた。





        「お呼びでしょうか!将軍閣下。」

        「あぁ、呼んだ。私を満足させよ。」



        たった一言それだけを言うと、ユノーはベッド脇の安楽椅子に深々と腰掛ける。



        表情も変えずグロームはユノーの足元に跪き、スボンのチャックを下ろしユノー自身を取り出した。







        「何をしている?早く部屋に戻りたまえ。それとも視姦がお好みか?」



        グロームの髪に指を絡ませながら後頭部を押さえ込み、己を深々と咥えさせている。

        エドは顔をしかめながら足早に部屋を出て行こうとした。







        「あぁ、大佐の部屋には行かん方がいいぞ。」

        「…?何でだよ…」



        グローム中尉から自身を抜き取ると、服を脱ぐように命じ、彼もそれに忠実に従っていく。

        全裸になったグロームを四つん這いにさせ腰を高く上げさせる。





        「んっあっあああっ…閣下…」



        ズブズブと挿入していくユノーに、感情のなかったグロームが始めて人間らしい声をあげた。



        すべてを咥え込ませ、奥まで達すると、ユノーはグロームの陰茎を手に取り擦り始めた。



        

        「ひっあぁぁ!!」

        グロームがピクンと痙攣するのを確認すると、ユノーは腰を使い抽挿を繰り返した。





        グチュグチュと卑猥な音がエドの耳に突き刺さり、思わず耳を塞ぎたくなる…





        「さっさと答えろよ!何で大佐の部屋に行っちゃいけないんだ!」

        「ククッ…判らんかね?私ですら明日の事を思うと興奮してくる…」







        ならば娼婦へと落ちたあやつはどうだろうね…





        他の将軍達は?自分専用の猫だけで満足するかね?











        美しく、気高い黒豹が手に入っているのに…











        「なっ!!他の者に手を触れさせない約束だぞ!」

        「自ら進んで求めてきた時は別だ。行くんならもう少し遅いほうがいいぞ。」





        時間が経てば経つほど淫らに喘ぐからな。あの黒豹は。





        馬鹿にした様に鼻で笑いながらグロームの秘所に腰を打ち付ける。





        その情景に耐えられなくなったのと、ロイの事が気になったのと…

        ドアを壊しそうなくらい乱暴に開けて部屋を出て行った。







        大佐のやろう!俺以外に足開くなって言ったのに!

        薬のせい?いや、それだけじゃない!以前からあの人は色んな男に抱かれてたんだ…







        俺だけを愛してって言ったのに…



        俺だけを感じてって言ったのに…







        



        左手を握り締めながらエドは大佐が監禁されている部屋へと向っていく。











        どうしたら俺だけを見てくれる?

        どうしたら俺の名前を呼んでくれる?





        「大佐っ!!」



        勢いよく開け放ったドアの向こうから数人の喘ぎ声が聞こえてくる…









        「うぁぁっ!!あああ…」





        ベッドの上で数人の将軍に弄ばれているロイの淫らに喘ぐ姿がエドの金色の瞳に映る。

        だらしなく口を開け、恐らく口内に吐き出されたのだろう白濁の液が口端から零れ落ちている。



        

        

        エドの気配に気がついたのか、ロイが目線をエドに向け、フッと視線が合わさった。









        「!!??」







        ロイの顔を見てエドは思わず動揺する…

        どうして…?感情なんて失われたはずなのに…









        「大佐…」

        絞り出すように、やっとの思いで声を出す…







        「………エ…ド……」







        身体全身を弄ばれながらも視線はエドから外さない…

        上下に激しく突き上げられてもその表情は崩さない…









        「………エドワード………」











        その顔はエドを包みこむかの様な表情で笑っていた…









        To be continues.





  
   






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