腐った林檎たち 26
ギリギリッと締め上げられ、エドの意識は遠のいていく。
あと少し締められたら絶命するその寸前にフッと手の力が弱まった。
「ぐっ、ゴホッゴホッ…」
ドサッと床に落とされ、いきなり肺に空気が入ってきた苦しさにエドは暫く咳き込んでいた。
「大丈夫か」とも一言も声をかけず、ブラッドレイはただ黙ってその光景を見つめている。
心配する様子もないブラッドレイに、エドは少し恨めしそうに見上げた。
「酷いや…」
「私に嘘ばかりつくからだ。嘘つきにはお仕置きをしないとな。」
お互い顔を見合わせ、クスクスと笑いかける。
まだ少し苦しそうに咳き込むエドに、ブラッドレイはやっとその手を差し伸べた。
その手を掴むとエドはそのままブラッドレイの腕の中に吸い込まれていく。
エドもブラッドレイの首に腕を回し、二人はどちらからとも無く口付けを交わす。
クチュクチュと厭らしく音を立て、互いの下を絡めあう。
ようやく離れた時エドの顔は恍惚としていて、はっきりと欲情しているのがわかる。
クーデターへの緊張からか…ブラッドレイを殺そうとしている興奮からか…
ブラッドレイもそれを敏感に察知し、エドの首筋に唇を落としていく。
「やぁっ…駄目…時間が…ない…」
「嘘をつけ。やめて欲しい訳無かろうて。お前のここは既に準備万端だぞ?」
エドの両足に片足を割り込ませ、その中心に手を添えると、ズボンの上からでもそこが大きくなっている事が
はっきりとわかった。
器用に上着を脱がせ、シャツをたくし上げ、その小さな胸の突起に舌を転がしていく。
抵抗するフリをしていたその腕も、今は自分を愛撫する人の頭を押さえつけていた。
「隠し通路に連れ込んで何をするつもりだった?」
「あっ…ハァァ…あ…なたを後ろから…刺すつもりだった…」
巧みな愛撫と共に、エドの知っている事すべてを引き出そうとする…
ブラッドレイだけが出来る技。エドももう抵抗は出来ない…
喘がされるまま、すべてをブラッドレイに告げてしまう…
「刺して…私の命を取って、そしてどうするつもりだ…」
「知らない…俺…のするべき事…はそれ…だけだったから…」
ベルトを外し、下着ごとズボンを下ろし露になったエド自身に直接手を添えていく。
キスと胸への愛撫だけでエド自身はもうはちきれんばかりに肥大していた
「あぁあああ!もう!!お願い!!」
「まだだ。もう一つ答えて貰わないとな。」
顔をしかめ、ブラッドレイの焦らしながらの愛撫に耐えている。
今のエドなら知っている事のすべてを洗い浚い話してしまうだろう…
エド自身を優しく指でなぞりながらエドの耳元に囁く。
「何故そうまでしてユノーの言いなりにお前までがなる…?お前はマインドコントロールはされていないと見たが?」
「あぁっ、はぁぁ…俺は…別に…やぁ!!んんっ!!」
ぎゅっとエドの陰茎を掴むと、そのまま上下に擦りあげる。
そのタイミングと力加減が絶妙で、エドは狂ったように声をあげた。
エド自身の先から流れ出ている液によりブラッドレイの手と陰茎が擦れクチュクチュと卑猥な音を立てている。
自身からの刺激の他に…耳からも犯されている様だ…
あと一息で頂点に達する…エドはググッと身体をそらせ、その時を待つ…
「んっ…あぁ…?」
ふいにブラッドレイはその手を止め、透明の液で汚れた手をエドの胸にこすり付けていた。
「あああ…大総統…お願い…イかせて…」
「では質問に答えよ。お前が何故命令通りに行動する…」
「このまま私を殺すつもりだったのか…?ユノーの言うがままに…?」
目に涙をためながら、エドはブラッドレイの腕を握り締めその胸に顔を埋める。
肩を震わせ…握るその手に力が篭もる…
「クーデターが成功しないと…失敗したと大佐が判断すると…あの人は自らの命を絶つ…」
「そうユノー将軍に命令されているんだ…すべての責任をあの人になすり付けて…」
だから俺は命令通りにするしかなかった。
大佐を死なせる訳にはいかない…クーデターは成功させなきゃいけない…
「でも成功させるにはあなたを手にかけなきゃいけなかった…俺…どうしたらいいのか分からなくて…」
エドはブラッドレイの胸の中で声を殺して涙を流した。
その姿にブラッドレイは黙ってエドの髪を優しく撫でる。
軍の狗になり、元の身体を取り戻すまでは決して泣かないと誓っていたあの少年が…
私と…マスタングとの狭間で苦しんで…涙まで流して…
許さぬぞ…ユノー…
私の大切な玩具を壊したに飽き足らず、可愛い子羊まで苦しめるとは…
「エドワード、お前はもう関わらなくていい。後は私に任せなさい。」
「でも!大佐が…」
「マスタングの事も大丈夫だ。自害なんて決してさせないよ。」
あれの命を奪うのはこの私なのだから…
自ら命を絶つなどさせて堪るものか!
マスタングの身体を一つ一つ切り刻んで、白い肌を赤く染めさせるのが一番美しい死に様…
「隠し通路には私一人で行く。君はここから逃げなさい。」
エドの肩をグッと持ち、真正面からその眼を離さずゆっくりと語りかける。
でも大総統が…
私の心配などよい。こんな事ぐらいでは死にはしないよ。
とにかく、ユノーの考えている事を突き止めなければ次の手が打てない。
危険は承知でこのまま隠し通路を通って外に出なければ…
「アルフォンス君がヒューズ中佐のオフィスで君を待っている。この混乱で移動してしまったかもしれないが。」
「…アルが待つんなら何があってもそこを動かない…あいつはそういう奴だ。」
「では行きたまえ。弟の元に帰りなさい。君は今、開放されたのだ。」
エドは久しぶりに見せる満面の笑顔でブラッドレイの首に抱きついた。
その前にお願い…イかせてよ…
自らその唇を塞ぎ、舌を絡ませてブラッドレイを妖しく誘う。
一度火を点けられてしまったエドは、もう止まらなかった。
ブラッドレイのベルトを器用に外し、ジッパーを下ろすと黒い凶器を取り出した。
「??クーデターや、俺とのさっきの行為でてっきり興奮してると思ったのに…」
取り出した男根は天を仰ぐどころか、しんなりと萎えて下を向いていた。
「戦う度に興奮していては冷静な判断が出来ないよ。特に君たちが関わっているならね。」
エドの髪を優しく撫でながらそっと囁く。イきたかったら、自分で育ててみろ…と…
上目遣いでブラッドレイを見上げると、妖婦の微笑を浮かべブラッドレイ自身の先端にキスを落とした。
上下に舌を這わせていき、裏筋を舐め、そのまま先端までゆっくり刺激を与えていく。
先まで達すると、もう一度優しくキスをして、口内に頬張った。
「ふっんん…ン…」
舌を上手に使いながら喉の奥まで咥え込んでいく…
ブラッドレイはエドの髪に指を絡めながら静かにその姿を見つめていた。
外ではバタバタと足音が駆け回っている…クーデターを起こしたロイの仲間やリーゼルの部下たちが
司令部内を占拠すべく走り回っている。
いつ何時この部屋に飛び込んでくるかもしれない…
そういった緊張感が二人の興奮を更に高めていった。
「もういい??俺我慢できないよ…」
ある程度太さと硬さを帯びたブラッドレイ自身を手でしごきながらエドはブラッドレイに懇願する。
耳元でそっと…
イかせて…と…
ブラッドレイはフッと微笑むと、エドを自分に尻を向けるように壁際に立たせ、その腰をグッと掴む。
後ろに当てられた質感に、エドの身体が震えだす。
「っつ、あぁあああ!!」
ズブズブとエドの中に挿入していく肉棒に、エドは全身で受け入れていた。
根元まですっぽりと入れると、ブラッドレイは腰を使い前後に動かし始める。
「うあぁ、ああああ!!いい!!大総統!もっと突いて!!」
狂った様に声をあげ、迫り来る快楽に身悶える。
ここ4〜5日ほど散々ロイとやったが、心が通じ合っていない分、エドは全く満足などしていなかった…
いつも抱いた後、何かしら物足りなさを覚え、解消されない性欲に身体がずっと疼いていた…
何度抱いても心の空白は埋められない。何度酷く扱っても心の満足感が得られない。
それでもエドはロイを抱いた。そうでもしないとロイは手の届かない所へ行ってしまいそうだったから…
だが抱けば抱くほど身体の疼きは大きくなり、そして今、ブラッドレイによってその疼きが爆発したのだ。
これを解消させられるのはもうブラッドレイ以外誰もいない。
今、この行為を止められたら、エドは躊躇うことなく邪魔者を消し去るだろう。
グッ、グッとエドの腰に自身を打ちつけ、身悶える少年の欲望に答えていく。
壁に爪を立てその動きに耐える。だがあまりの快感に次第に力が抜けていく。
膝はガクガクと震え、口はだらしなく開きそこからは甘い喘ぎ声が洩れてくる。
ブラッドレイは後ろからエドの陰茎を掴み、それにも刺激を与えていった。
「やぁっ、ああああ!もう駄目!!イっちゃうよ!」
「構わん。出しなさい。私ももう限界だ。一緒にいこう。」
後ろの動きと、前の動きが早まり、エドの息も速くなっていく…
「あああああ!!!」
ビクビクと身体を反らし、エドはブラッドレイの手の中で果て、ブラッドレイは中出しをせずエドの背中で吐精した。
ハァハァと荒い息をつきながら床にズルズルと座り込む。
ブラッドレイはエドの髪に優しくキスをし、服を調えさせた。
「立てるか…」
「ウン…何とか…」
しゃがみ込んでエドの目線に合わせ、頬に両手を添える。
触れるか触れないかのキスを交わすと、エドはすっと立ち上がった。
「大佐に見つからんようにな…」
「うん。大総統もご無事で…」
繋いだ手を離すのを惜しむかの様にブラッドレイから離れていく。
一度だけ振り向いて、エドは部屋から出て行きアルの元へと向っていった。
「いるのならさっさと出て来い。エンヴィー…」
「だぁーって、お邪魔かと思ってさ。」
窓の外から黒い影がいきなり飛び込んできた。黒髪の…エドと同じくらいの少年。
そしてその左足にはウロボロスの刺青。
「で?どうするの?このままクーデター成功させるの?」
「馬鹿を言え。そうしたら私は死ななければならぬ。」
「いんじゃない?もうこんな人間ごっこやめて俺達の元に戻ったら?」
ニコニコ笑いながらブラッドレイの首に抱きつき、エドの様に甘えて見せる。
だがブラッドレイはエンヴィーの手をそっと握ると自分から引き離した。
「時間がない。お前はすぐにエドに化けろ。一緒に隠し通路に行くぞ。」
「俺、あいつに化けるのはやだ!この姿のままじゃ駄目なの?」
「駄目だ。エドが私をここに連れてくる段取りだったらしい。そして私を背中から指すつもりだったそうだ。」
姑息な手段を使いおるわ。マスタングならもっと堂々と私を狙ってくるだろうに。
「通路出た途端にきっと殺されるよ?」
「多分な。さっさと変身せんか!」
ヘイヘイと言いながらエンヴィーは姿顔立ちもエドそっくりに変身する。
「あっちもそっくりに再現したよ!抱いてみる?同じ感覚が得られるぜ?」
エドと同じ声で、エドと同じ潤んだ瞳でブラッドレイを妖しく誘う。
くいっと顎を持ち上げ軽く口付けを交わすと、フッと笑って突き放した。
「全然違うな。エドワードはもっと甘い香りがする。お前は死人の香りだ…」
人間とは違う…我らホムンクルスの香り…
「馬鹿な事してないで、さっさとついて来い。」
隠し通路の入り口で振り返りもせず中に入っていく。
エンヴィーはふてくされながらも後に続いた。
「協力しろって言うから来てやったのに…随分な扱いじゃない?」
「まだ私をこの国の独裁者でいて貰わねば困るのはそちらであろう?だったら黙って協力をしろ。」
僕をエドに仕立ててどうするのさ。
どうせだからユノーの思惑通りにさせてやるのさ。
ゆっくりと廊下を進み、階段を下り、そして行き止まりまで辿り着く。
この先がどうやら外に繋がるらしいな。
外に大勢いるよ。気配でわかる。ラースだって判ってるんでしょ?
「その名でまだ私を呼ぶな。エンヴィー。」
「ふーん…『まだ』ね…」
含みのある笑顔を見せ、エンヴィーは扉に手をかける。
ギィィィ…
鈍い音と共に光が差し込み、薄暗い廊下を照らしていく…
「構え!」
聞き覚えのある声。この声は…
バタン、とエンヴィーがドアを思いっきり開けた。
大量の光が差し込み、一瞬視界を奪われる。
その光の中に揺れる影が数人…
「リーゼル!?何故ここに?」
「撃て!」
ガガガガッ…
周囲に響き渡る銃声。立ち上がる白い煙…
そして辺りに静けさが戻った時…
ドアの近くで血まみれに倒れるブラッドレイとエドの姿があった…
To be continues.