腐った林檎たち  30







        「ユノー将軍のクーデターが失敗したぞ!」





        郊外の別荘近くで待機していたヒューズの元に、そう伝令が走った。







        

        「よし!手筈通りに配置につけ!」

        ヒューズの命令に部下たちがバラバラと別荘入り口に配置する。





        合図と共に中に突入し、あらゆる箇所を押さえていく。

        証拠を押さえ、ユノー将軍がいい逃れ出来ない様に懸命に調べた。



        使用人も拘束し、どんな些細なメモも押収した。







        ハボックたちも同じ様に突入し、今頃家族や親戚等を抑えているだろう。





        だが何だかすっきりしない…





        このリスト上に果たしてユノー将軍は逃げ込むだろうか…



        ブラッドレイですら容易にリストアップ出来るこの場所に…?



        



        「ヒューズ中佐!グラン准将から無線連絡が入りました。」

        「グラン将軍から?何だ?」



        部下からメモを貰うとその内容に一瞬戸惑った。







        『旧大総統府に向え』





        旧大総統府…?確か、今のセントラルから東に50K離れた所にある今は廃墟と化した所だ。

        そこに行けって命令か?でも何故…



        「中佐!とりあえずここは押さえましたが…」

        「ん…将軍はここには来ないだろう。だが部隊は配置して置いた方が良さそうだな。」





        ヒューズは主だった部下は残し、数人の部下を連れて旧大総統府へ車を走らせた。





        まだ詳しい情報は入っていない…ロイはどうなったのか…ユノー将軍は…?

        大総統閣下は無事なのか?エドは開放されたのか?



        「旧大総統府に行ってどうするんだ…?そこにユノー将軍が来るって言うのか…?」

        一抹の不安を抱きながらヒューズは車を急がせた。











 

        「はぁ??旧大総統府ですか?」

        「今伝令が来た。ここはいいから至急そこに向え。」



        はぁ…と頭を掻きながらハボックはユノーの自宅屋敷から離れていった。

        周りには連行されていく家族。この人達もこの後、大総統閣下から粛清されるんだろうな…

        それだけの事をしでかしたんだ…あんたの主人は…



        ハボックは上官から地図を貰い、旧大総統府の場所を確認した。





        にしても、旧大総統府??どこだっけ?そこ。

        何でそんなところに行かなきゃ行けないんだ?



        それより大佐は大丈夫なんだろうか?エドの大将は?





        情報が欲しい…今どうなっているんだ…





        旧大総統府…そこに行けば何か分かるのか…?





        ゆっくり歩いていた足が次第に速くなり、ハボックはいつの間にか駆け出していた。

        そして空いている車を見つけるとそれに飛び乗り、東へと向かって行った。















        ラジオ局と政府議事堂に向っていたフェルゼ達の軍は、やはりブラッドレイ直轄の部隊に急襲され、

        一時撤退を余儀なくされていた。



        ブラッドレイ死亡の情報が入り、作戦の第2段階に入っていた。部隊の指揮はフェルゼに移り、クーデターを起こした

        人形達を追い詰めればよかったのだ。





        だが突然ブラッドレイの部隊が突入し、焦ったフェルゼは思わず反撃してしまったのだ。

        そのまま部隊と合流すればクーデターの真の意味を知らない突入部隊は何の疑問もなくフェルゼ達と共に

        クーデターの一味を拘束していただろう。



        「ブラッドレイが死んだ」という情報がフェルゼの緊張を緩ませた。



        予想外の展開に「計画通りに自分が指揮を取らなければ!」という焦りと思い込みが思考を鈍らせ

        味方の筈の突入部隊を迎撃してしまったのだ。





        こうなってしまっては言い逃れは出来ない。フェルゼは分が悪いと判断し、一時撤退を命令した。







        ここがこういう状態と言う事は、中央司令部と大総統府も同じ状況だろう。

        ユノー将軍閣下はご無事だろうか?マスタングは?



        ブラッドレイ大総統は本当に死んだのか?





        とにかくユノー将軍と合流しなければ…

        ご自宅へ向うか?それとも例の別荘へ?…?



        「フェルゼ将軍!主だった我らの拠点は既に押さえられているとの情報が!」

        「何だと!?失敗が伝えられたのはついさっきだ!あまりにも…」



        早すぎる!?事前に部隊を派遣していたのか?





        すべてブラッドレイ大総統の指揮の下…我らの計画は見透かされていたのか…?







        「ユノー将軍をお探ししろ!何としてでも合流して体勢を立て直すんだ!」

        「将軍!ユノー将軍閣下から無線連絡です!今政府議事堂班と合流したそうです!」

        「そのまま旧大総統府へ迎えとの命令です!」



        旧大総統府…廃墟と化したあの場所…

        我らの最後の砦…







        「全軍に命令を!旧大総統府へ向う。そこで最後の戦いが始まるだろう。」

        我らが勝つか、ブラッドレイが勝つか…





        負けはしない!我らの高貴なる血の力を見せてやる!















        「閣下…出撃の準備が整いました。どちらへ向いますか?」

         



        サーベルと地面に突き立て、静かに眼を閉じて立っているブラッドレイに、グランが恐る恐る問いかける。

        ゆっくりと瞼を開け、後ろで控えているグランに行き先を告げる。





        旧大総統府へ向う…と。





        「はっ!」と敬礼をかざし追撃体勢を整える。

        エドは不思議そうにブラッドレイを見つめていた。



 

        「何だ…?何か聞きたいことがあるのかね?」

        「旧大総統府って…?俺はユノー将軍の家とか俺がいた別荘へ向うと思っていた。」

        「そこは既にヒューズ中佐達が押さえている。ユノーものこのこと待ち伏せしている場所に戻るとも思えん。」





        「旧大総統府は我らにとって懐かしい場所なんだよ。エドワード…」





        上を目指すと誓った思い出の場所。





        「どこにも行く場所がないとしたら、あやつは必ずそこに向う。」

        だからこそリストを作り、ユノーを孤立させあの場所へ向わせるよう仕向けたのだ。





        そういってブラッドレイは再び静かに眼を閉じた。



        まるで遠い過去を思い出すかの様に…







        

        「エドワード…グランに伝えてくれないか。ヒューズ中佐とハボック少尉も旧大総統府へ向わせろと。」

        「あ、はい…でも…」

        「マスタングの為だ。少しでもあやつが心を許した者がいた方がいい。」



        腐敗する前に目覚めさせねば、取り返しがつかなくなる。



        それは私が許さぬ!あれの首を取るのは私なのだから。





        

        ブラッドレイはエドの頭をポンポンと叩き、優しく微笑みかけた。

        エドはそれだけで心が落ち着き、同じ様ににっこり笑いながらグラン准将の方へと駆けて行った。









        すべての準備が整い、ブラッドレイは颯爽と一番先頭の車に乗り込んだ。



        「出撃!抵抗するものは射殺して構わん!だが忘れるな!マスタング大佐だけは生きて捕らえよ!」

     





        ブラッドレイを先頭に中央に配備されている軍の半分が東に向けて出発した。









        エドとアルはブラッドレイのすぐ後ろの車に乗り込む。

        助けなきゃ!何としても大佐を助けなきゃ!







        もう一度抱きしめて貰う為に。もう一度キスして貰う為に。













        もう一度名前を呼んで貰う為に… 









         To be continues.





  
   






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