ゲームを征する者 13
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ギシッ…
最愛の人とソファーに一緒に座っている。
しかもその人はシャツだけを身に着けて、後は何も着ていない。
潤んだ瞳は、完璧に自分を誘っている。
首に回された手が、溶けてなくなってしまわないかとその感触を確かめる。
「大佐…」
その人の存在を確かめるように名前を呼ぶ…
軽く口付けをし、首筋へと唇を移動させる。
きゃしゃに見える体は、実際は均等にバランスが取れた筋肉質の体で、見た目も美しい。
欲情しているから尚更だ。
白く陶器の様な肌は、ほんのり紅く染まり、まるで透き通るように美しさを助長させていた。
シャツのボタンを一つ一つ外していく。
手をはたかれるのではないかと内心ビクビクしながら…
ロイはその間もハボックを見つめ続け、決して眼をそらさなかった。
「あんまり見つめんで下さいよ…」
「どうしてだ?」
「…恥ずかしいじゃないですか…」
二人同時にクスッと笑う。
つい先程まで犯るか犯れるかで攻防を繰り返していた二人…
何を今更恥ずかしい事があるだろうか…
はだけた胸を弄りながら、小さな突起に口付ける。
「あっ…」
小さく喘ぐその声は、確実にハボックの下半身を刺激した。
あ〜〜たまんねぇ…
どこぞの高級娼婦よりも刺激的だぜ、全く…
それを舌で転がすように愛撫を繰り返すと、たちまちロイの顔が艶っぽく歪んでいく。
もっとその顔を見ていたかったが、ハボックは舌を下腹部の方へと移動させた。
ロイ自身はすでにしっかりと起ち上がっていて、先走りでトロトロに濡れていた。
「なんだ…俺がしなくったってすっかり準備できてるじゃないですか…」
少し意地悪く言い放ち、ハボックはロイ自身をギュッと掴みそのまま擦りあげた。
「はぁああああ!」
触れられた瞬間、ロイは甲高い声を上げ、体を震わせて反応を示す。
「あぁ、駄目ですよ…そんなに声を上げちゃ…」
「ハァ…ハボ…」
ロイの眼が涙で潤み、早くと訴えるようにハボックを見返す。
このゲームでロイは大勢の男から欲望の眼をぶつけられていた。
何人かの兵士は直接ロイに触れ、その欲望を注ぎ込もうとした。
ヒューズともした。
ブレダにも挿れられた。
エドとも濃厚なキスを交わし、ハクロにも体を弄られた。
思いがけず、フュリーによってイかされたが、それだけでは到底物足りない…
そう…今、ロイの体は、中途半端に刺激され、内部につけられた焔は激しく燃え盛っていたのだ。
敏感ににそれを察したハボックは、ロイへの愛撫もそこそこに己を取り出し、秘所にあてがった。
迫り来る感触に、ロイはハボックの腕を掴みきつく握り締める。
「つっ!!」
爪を立てられ、そこから薄っすらと血が滲む…
内股に手を添え、大きく開かせ、一気に中を貫いた。
「ああああああ!!!」
ズブズブと中をハボックの肉棒が支配していく…
すべてを飲み込み、完全に一つになった時……どちらともなく口付けを交わす。
大佐…愛してます…
たとえ、夜が明ければ俺の手の届かない所に行ってしまっても…
たとえ、明日になればすべて元通りになったとしても…
ハボックが腰を使い動き始めると、ロイがそれにあわせて甘い喘ぎ声を上げる。
一度先端まで引き抜き、一気に最奥を突き上げる。
その度にロイは痙攣を繰り返し、頭を振ってもっとと懇願する。
「いい!ハボック…もっと!もっと激しく!!」
「大佐!そんな嬉しい事言わないで下さいよ…」
手放したくなくなっちゃうじゃないですか…
不意にロイの両手を掴み、グイッと自分の方に引き寄せた。
体を起こされるような形になり、ロイはハボックの上に座るような体位にさせられた。
「ひぁああああ!!」
ロイ自身の体の重みで、ハボック自身がロイの体に深く突き刺さる。
ロイの腰を抑えて、上下に落としながら、ハボックは胸にキスを浴びさせる。
ハボックの背中に腕を回し、ロイは必死にしがみつく…
「も…イく…ハボック…」
「俺ももう限界っす…一緒にイきますか…」
ロイの頭にそっと手を添え、再びソファーに横たわせる。
目尻に流れる涙を、唇でそっと拭って、ハボックは体を思いっきり前進させた。
「んああああ!!」
「あぁっ、大…佐!そんなに締め付けちゃ…」
腰を引き寄せ、ロイの中を激しく掻き回す。掴む所を探して宙を舞う両手をハボックは指を絡ませソファに押し付けた。
上から愛しい人の顔を見下ろしながら、下腹部の動きに集中し、抽出を繰り返す
部屋中に肉と肉とが擦れあう卑猥な音が響き渡り、ロイを耳から犯していく。
「あぁっ、ハボ…もう駄…目…」
押さえていた片手を離し、ロイ自身にも刺激を与え、より一層の快楽を引き出していく。
顎を突き出し、身をそり返し、全身で自分の中にいるハボックを感じていた。
「はああああああ…」
全身を激しく痙攣させ、ロイは白濁の液を飛び散らせ、ハボックの胸と自分の腹を白く汚してた。
「ハァ、ハァ…」
息も絶え絶えのロイだったが、ハボックはまだ達していない…
ハボックは迷わず、そのまま動きを再開した。
「あっ、や、だ…もう…」
「何言ってるんです!俺がまだイってないっすよ!大佐の中でイかせて下さい。」
イったばかりで更に敏感な体になったロイは、小刻みに痙攣しながら我を忘れて喘ぎ続けた。
「あっああ!!ハボック!!」
「大佐!大佐の中、最高っす!!」
「うっん!!」
ぐっとロイの最奥を突き上げた時、ハボックはロイの中にその想いをすべて注ぎ込んだ。
部屋の中は荒く息をつく二人のその息遣いだけがこだまする…
力尽きたようにロイの上に覆いかぶさり、その余韻に浸る。
ブレダが腰砕けになるのも分かるな…
こうも淫猥な体をしているとは思わなかったぜ…
ブレダの情けない姿を思い出し、ハボックはくすっと小さく笑った。
「何がおかしい…?」
「…いえ、ちょっと思い出し笑い…」
「…重い…早くどかんか!」
「もうちょっとこのまま余韻を楽しませてくださいよ〜」
ムードも何もないんだから…
さっきはあんなに魅惑的に俺を誘ったというのに…
ほら、腰を動かせば、中はまだぐちょぐちょで、ちょっと奥をつつけば、下半身を刺激するような喘ぎ声を放つ。
「大佐…もう一回…」
まだまだこんなんじゃ物足りねーよ…
あんただってそうだろう?
ロイはハボックにそっと唇を合わせると、そのまま片足で蹴り倒して自分から無理やり引き抜かせた。
「っいって!!!何すんっすか!」
ソファから転げ落ちたハボックは、その際に打ち付けた後頭部をさすりながら上官を睨みつけた。
「調子に乗るな。一度だけといったはずだ。」
きつい言葉で、しかし表情は柔らかく、まるで純粋な青年をからかう娼婦のようでもあった。
「…これ以上は…許してくれ…」
哀れむような眼でハボックを見つめる…
どうして…なんでそんな眼で俺を見るんです…?
「…誰か想う人でもいるんすか…」
「………」
ロイは何も答えず、ただ黙ってハボックを見つめている。
「エド…ですね…」
あんたの心を占めている幸運な奴は…
ロイは静かに笑いながら眼を閉じると、シャツのボタンを留め始めた。
「何で…あんな子供に…あんた程の人が…それこそ選り取りみどりなのに…」
納得できないっすよ!大佐!
大将があんたに会う前から、俺は大佐の事が好きだったのに…
「子供…だから…何の邪心もなく私を求めてくれる…」
「純粋に…ただ真直ぐに…私を愛してくれる…」
少し照れるようにロイは自分の恋人の話をし始めた。
その顔は、今まで見たときよりも穏やかで、至福に満ちているようにも思えた。
「…子供っていったって…大将の噂は聞いているでしょ…あんただって…」
大総統、ブラッドレイとの関係を…
「それに、かなり強引なやり方であんたを抱いたって噂も…」
そこまで言いかけてハボックは言葉を詰まらせた…
見上げたロイの顔が、あまりにも幸せそうに微笑んでいるからだ…
「大佐…?」
「エドは…子供だから…体は大人だけど、心がまだ子供だから…」
「だから時々暴走する。自分の性欲をコントロールできなくて…」
「それをしっかり受け止める事が出来るのは、私と大総統閣下だけだ…」
この身でエドを守る事が出来るなら…少しでも彼の心を癒せる事が出来るなら…
「私は喜んでエドに体を委ねるよ…」
大総統閣下はどう考えているかは分からない。本当にエドの事を思って彼を抱いているのか…
それでも私では補えないところを閣下が埋めてくれるのなら…私はその関係に眼をつぶろう…
すべては愛しいエドワードの為に…
ハボックは、初めてロイの本心を垣間見る事が出来たような気がした。
と、同時にそれは完膚なきまでにロイへの恋心を叩き壊された事でもあった。
あぁ…どうやったって、俺は大将に敵わないって事っすか…?
「夜が…明けるな…」
「そうっすね…」
窓の外を見ると、東の空がかなり明るくなってきていた。
このままこの部屋で朝を迎えてゲームオーバーって言うのも悪くない。
ロイもハボックもそう感じていた時…
『ゲームに参加している諸君、頑張っているかね?』
突然聞こえてきた声に、ロイは凍りつき、呆然と立ち尽くした。
大総統閣下…どうして…一体何を始める気だ…?
『そろそろ夜明けだが…景品は見つかっただろうか?』
『どこかに隠れて朝を迎えようとしているかもしれない。
このままゲームオーバーになるのは、主催者としても不本意だ。』
『そこでだ。いい情報を教えよう。』
「何言ってんだ?この人は…」
「全東方司令部内に放送しているようだ…このまますんなりと終わらせてくれないようだな…」
『大佐は手袋を駄目にしている。新しい手袋を取りに必ず自分の執務室に向うだろう。』
『そこで待っていれば容易に捕まえる事が出来るぞ?もし来なくても手袋はないのだ。全員で協力して捕まえよ!』
何て事を!!
とんでもない事をそそのかしやがって!!
「大佐!早く執務室に行って手袋とって来て下さい!今ならまだ時間はあります!」
ハボックが言う前にロイは部屋を飛び出していた。
ハボックはロイの軍服を拾い集め、その後に続く。
廊下の一番奥の部屋。司令官室と書かれたその部屋のドアを開けた時…
ドアの入り口で立ち尽くすロイを見つけ、「何してんすか、早く…」と声をかけそこで止まる。
「エド…」
「待ってたよ…大佐…随分と魅力的な格好してんじゃん…」
ロイの机に腰掛け、あどけない笑顔で微笑む。
東の空は更に明るくなっていた…
To be continues.