ゲームを征する者〜Second stage〜 15
「大…佐…」
「エド!」
鎖が伸びきる最大の所までロイが身を乗り出し、苦しむ恋人の身を案じている。
「俺…あん…たを…守ら…なきゃ…」
「もういい…エド。早くGive Upを…」
「嫌だ…あんた…は俺の物…」
必ず優勝してそれを証明するって誓ったんだ…
口端から赤い血を流し、涙を流しロイの頬に触れる。
首を僅かに傾げながら段々冷たくなっていくエドの手の温もりを感じ取る。
「エド…Give Upを…」
「あんたは!そんなに少尉に優勝して欲しいの!?」
息巻いて放った直後にごほっとまた血を噴出した。
エドの赤い血が、ロイの白い肌を淫猥に染めていく。
ハァハァと小刻みに息を吐き、顔を歪ませロイを見つめる。
「…私はお前の物だ…エド…何があっても…それは変わらない…」
「でも…負ければ…あんたは少尉の物になっちゃう…」
それは嫌だ…よりによってあんたの忠犬がご主人様になるなんて…
「エドワード…どの道お前はもう闘えまい。潔く負けを認め、ハボックにマスタングを捧げよ。」
ブラッドレイが優しく諭す様にエドの背中を撫でながら語りかける。
今ままで見せていた無慈悲な独裁者の表情ではない…
本気で可愛いこの小悪魔を思いやっている様だった…
だがエドは小さく首を振り、ブラッドレイの胸の中に顔を埋める。
その間にも咳き込む度に血を吐き、息は段々弱くなっていく。
全く…鋼の名にふさわしい頑固者め…
「では主催者の権限で勝敗を決めさせて貰おう。」
はっと顔を上げ訴えるような眼で見つめられ、一瞬決意が鈍るが構わずそのまま言葉を続けた。
「エドワードはもはや戦う余力はなしと認め、ハボックの優勝とする。」
おぉ〜と言う歓声の中、ハボックはブラッドレイの背後から近づき、エドの傍らに膝を付いた。
「大総統閣下、解毒剤は…?」
「…おかしな奴だな。マスタングを奪う為にこのゲームに参加し、さっきまでこやつの命を奪う勢いでは
なかったのか?このまま放っておけば恋人の座が空くぞ?」
クスッと笑う独裁者に、ハボックがあからさまに嫌悪感を示す。
こんな状況下にこの人は何を言ってんだ??
可愛いあんたの弟子を助けようという気は本当にあるのか?
「大将がここで死んでしまったら大佐の心から一生離れなくなりますからね。」
「俺は心の中に誰かを思いながら生きる人を愛する程器用ではありませんから。」
ゆっくりロイの傍に近づき、その肌に触れていく。
だがロイの意識はエドに向けられ、ハボックの手の刺激には全く感じていなかった。
ほら…ね。俺の存在すら気づかない。
こんな大佐なら俺は要らない。
俺が…辛すぎるっすよ。
「エドワードを助けるにはお前の協力が必要だ。構わんな。」
「いいっすよ。これで大将に借りが一つ出来た。」
後々のいい取引に使えそうだ。
「宜しい。では今ここでマスタングを犯せ。」
さらりと言い放ったブラッドレイの言葉に、ハボックもロイもエドすらも一瞬唖然となった。
「なっ!?」
「閣下!!今はそんな時では!」
「今ここで賞品を受け取れって事ですか??」
そりゃ、優勝したんだから大佐は1週間俺の物ですけど…
何だって今ここで、しかも大将が苦しんでいる眼の前で…?
「マスタングもずっと弄ばれるだけだったからさぞかしイキたいであろう。遠慮はいらん。
勝利者から存分にイかせて貰え。」
そしてその白い愛液をお前の最愛の者に注ぎ込むがいい。
「それが解毒剤でもあるのだ。マスタングよ。」
ふっと小さく笑うブラッドレイに、ロイもハボックも戦慄を覚えた。
何てこった。大佐の精液が解毒剤!?
と、すると毒その物もそれから作られたって…事…??
何かを言いたそうな二人の顔を見ながらブラッドレイはエドをそっと横たえ、腰のサーベルを引き抜き
ロイの鎖を切り裂いた。
ドサッと床に倒れこみ、ロイは久しぶりに自由の身となり、残された体力を振り絞りエドの元へと這いずりだした。
ハボックがとっさにロイの腰を掴み、自分の方へと引き寄せる。
「やっ、ハボック!離せ!」
「何処行くんです?あんたは俺のものです。大将を助けたいんなら大人しく俺に抱かれて下さい。」
ボロボロの身体で必死に抵抗するロイを、ハボックは容赦なく陰茎を握り締めた。
「はっ…あぁぁ、や…だ…」
「ほら、大佐も協力してくれないと!エドの大将が死んじゃいますよ?」
シュッシュッと擦りあげるとたちまち頭を持ち上げ、先端から蜜を滴り落とす。
その雫を指で絡め取ると、ロイの孔に擦り付けた。
キュと締め付ける肉襞を指でググッと広げていく。
「はっあああ!」
「不謹慎ですね、大佐。自分の恋人が死に掛けてるって言うのに…」
ほら…もう中はぐちょぐちょだ…
苦しむエドにも聞こえる様に、ハボックはロイの孔の中をかき回す。
ブラッドレイは横たわるエドを抱えあげ、ロイの傍まで連れて行った。
震える手を伸ばし、ロイもその手を握ろうと痣だらけの腕を伸ばす。
「駄目ですよ、大佐。あんたは今は俺のものだ。許可なく俺以外に触れる事は許さない。」
差し出したその手を後ろから引っ張り、そのままハボックはロイを貫いた。
「ひああああ!!ハボ…!」
「ほら、腰振って。さっさとイかないとマジで大将手遅れになりますよ。」
グッと腰を打ち付けられ、ロイはあられもない声をあげ反応してしまう。
この長い間…多くの男共に身体を弄ばれ、だが根元をリングで締め上げられていた為自分はイク事が出来ない。
身体が否応無しに悶え、ハボックの突き上げを嬉々として迎えてしまう。
眼の前で愛しい者が苦しんでいるのに…
「エ…ド…」
「名前を呼ぶのも駄目!大佐は俺だけを感じていればいいんですよ。」
そう言うと、ロイの口に指を入れ、その舌を挟み込む。
他の指で咥内をかき回し、快楽を助長させていく。
「んっはぁっ…んんん…」
溢れ出す唾液が口端から流れ出し、それが更なる淫猥さを引き立てる。
「さて…そろそろかな…」
ブラッドレイはニヤリと笑うと、ロイの陰茎に手を伸ばした。
そこはハボックの容赦ない攻めによりフルフルと震えながら蜜をひっきりなしに流している。
その根元のリングまで、撫で回す様に指を這わせていく…
「存分に弾けるがよい、マスタングよ。それがエドワードを救う唯一の方法。」
すっとリングの横にある小さな突起に触れると、パチンと音を立てて二つに割れ勢い良く陰茎が揺れた。
あっあっあああ!!!
突然開放されたロイは堪える事も出来ずにハボックの一突きで達してしまった。
「ハァハァ…」
「何だ?エドの大将に飲ませる前にイッちゃったんですか?しょうがない淫乱猫だなぁ。」
まだ白い液を流し続けている棒にハボックが手を添え、根元から先端までじゅるっと搾り出す。
「うぁあああ…」
「ほう。まだまだ足りないか。さもあらん。これくらいではお前は満足などせぬ。」
「俺もイッてないですからね。」
再びロイの腰を掴み、前後運動を開始する。
背後からロイの陰茎を握り締め、そこへの刺激も怠らない。
間髪入れずの攻めにロイは首を振ってその快楽に耐えている。
エドが…愛しいエドワードが苦しんでいる…
だが自分は手を差し出す事も名前を呼ぶ事も出来ない…
それどころか、他人に抱かれ身体は悦び、意識はかなたへ飛んでいく…
涙眼で見つめるロイに、ブラッドレイは満足げに笑い、抱きかかえていたエドをロイの股間へと連れて行った。
霞んでいく眼の前に、フルフルと揺れる肉の棒。
エドは最後の力を振り絞り、その愛らしい棒に手を添えた。
「んっぅんん…」
「大…佐…を…ちょうだい…」
あんたは俺の…モノ…なんだから…
たとえ僅かな間少尉の物になっても…
たとえ過去に誰かの足元に擦り寄っていたとしても…
大佐は俺だけの物なんだから…
チロリと赤い舌を出し、再び勢いを増し大きく脈打つ欲望の塊を舐め回す。
薄い刺激が余計に快楽を引き出し、ロイの顔に苦悩の表情を浮かべさせる。
後ろからはハボックが引っ切り無しに突き上げ、ロイの中で肉と肉が擦り合わされていく。
ズッと引き出せば逃がすまいと肉壁が引き締まり、グッと押し込めば追い出そうと肉襞がざわめき立つ。
それがハボックの陰茎にとてつもない快楽を生み出していた。
「はっあぁ、あんた最高っすね。成る程、軍部の全員が欲しがる訳だ。」
死の恐怖すら吹き飛ばすその淫靡な身体。
事実エドは迫り来る死を忘れ、ロイの陰茎をしゃぶるのに夢中になっていた。
四つん這いで犯されていたロイをハボックが両足を持ち上げ、背面座位に体位を変える。
ロイの重さで更に奥までハボック自身を咥え込み、また、ハボックが両足をグッと開いて身体を隠す所なく曝け出した。
ロイの身体の中心で見事に天を向いている。
その下では厭らしくハボック自身を貪っている。
「ほら、大将。愛しい人があんたを待ってる。」
淫猥に…あんたを誘い、涎を垂らしてますよ。
ぐいっとロイの陰茎を掴み上げると、蜜を絡めながら先端の鈴口に爪を立てた。
「んっあはああっ」
ビクビクと身体を痙攣し、ハボックの太い腕を握り締める。
透明だった液はまた段々と白く濁っていく。
再びオーガニズムが頂点へと達しようとしているのだ。
エド…愛してるよ…何があっても…それは変わらない。
大佐…愛してる…これだけは誰にも負けないから…
這いずる様にロイの傍に行くと、エドは自身を咥えすっぽりと口の中に収めこんだ。
それを見届けるかのように、ハボックがロイの腰を掴み最奥のポイントを烈しく突き上げる。
一つ突き上げる度にロイは身体をしならせ、髪を振り乱して快楽に没頭していく。
顎を突き出し、眉にしわを寄せ、だが口元は歓喜に笑っている。
会場全体が聞き入ってしまうほどの卑猥な喘ぎ声をあげ、男達の股間を刺激していく。
やっはああああ!
大きく背中を反らすと動きと止め、同時に身体全体が小刻みに痙攣し始める。
ドクン…
ハァハァと言う息遣いが聞こえると共に、ロイは床に崩れ落ちた。
ズルリとハボックの陰茎が抜かれ、その後孔からも白い湯気が立ち上がり、そこから白濁液も滴り落ちている。
ブラッドレイはエドの傍に駆け寄り、床に伏せっているエドを抱き起こした。
「エドワード…大丈夫か?」
眼を閉じ動かないエドに一瞬の悪夢がよぎる。
まさか…?エドワード…?
「エドワード…?眼を開けなさい!エド!!」
うつ伏せに息を吐きながら身体を起こすロイは、ブラッドレイのその言葉に恐怖で引きつった。
エド!?まさか、そんな事…
「エド!エドワード!!」
もう立つ力すら残されていない筈なのに、ロイはブラッドレイの元にとっさに立ち上がり駆け寄った。
抱きしめているブラッドレイから半ば強引に奪い取り、エドの頬に手を添える。
冷たい頬に吐き出した血がこびり付き、バリバリと音を立てていた。
「エド…愛してる…私のエドワード…」
口端に付いた血を舐め取る様に、そっと口付けを落とす。
だらりと垂れた左腕がピクと動き出し、触れ合った唇がかすかに震えだした。
「たい…さ…」
薄っすらと開かれた金色の瞳に、漆黒の瞳が映し出される。
ロイはエドを抱きしめ、その温もりを感じ取る。
「エド…すまなかった…ヒューズとは何もない。信じてくれ。」
「…うん…信じる…中佐もそう言ってた。俺に悪いって最後まで抵抗したって。」
互いの瞳を映し合い、その言葉が真実である事を確信する。
互いの髪に触れ、どちらともなくキスを交わした。
ホンとにゴメン…俺が馬鹿だった…
判ってくれればそれでいい。ゲームは終わったんだ…
「さて。そろそろいいですかね、大佐。」
ハボックが抱き合う二人の前に立ちはだかり、その後ろには隻眼の独裁者が控えていた。
ゲームは終わってませんよ。まだまだ続くんです。
今度は一週間の…俺と大佐の二人だけの攻防が。
「エドワード、良いな。最初に約束した通り…」
「でも!でも大総統!!」
エドはロイの腕を抱きかかえ、何処にも渡さない仕草を見せた。
ロイはそんなエドを見つめ、そしてすっとその手を離し立ち上がった。
「大佐!?」
「安心しろ、エド。今度は私がゲームに参加するようだ。」
必ず勝ってお前の元に戻る。だから今は耐えて待て。
ゆっくりと、身体を労わる様に前に進み、ハボックの目の前まで来るとハボックの青い瞳をじっと見つめた。
その漆黒の瞳はハボックを吸い込みそうなくらい強く輝いている様にも見える。
「来るがいい、ハボック。私は負けなしない。好きなだけ弄ぶがいい。」
何人たりとも私の心を変える事は出来ないよ…それを証明してあげよう。
何かを言わんとしていたハボックの口を同じそれで塞ぎ、そのまま足元に跪いた。
そして数々の闘いで汚れたその軍靴にそっとキスを落とす。
再び身体を起こしハボックを見据えた時、その妖艶さと気高さに誰もが我を失いかけていた。
誇り高き「焔」…手に入れられるのはその焔でも溶けない「鋼」だけなのかもしれない…
ブラッドレイはその顛末に心から満足していた。
そうでなくては面白くない。マスタングよ。
お前は簡単に誰かになびいては詰まらないのだよ。
さぁ、この若き青年が何処まで黒豹を飼い慣らせるか…
それとも野性の美しさに魅了され、野に放ってしまうか…
ククッ…楽しみが暫く続くようだ…
エドがかなり不貞腐れながらブラッドレイの腕にすがり付いてきた。
そんなエドをそっと抱き寄せ、ブラッドレイは高らかに宣言する。
「これを持ってゲーム終了と…」
ドォーン!!!
「何だ!?」
「どうした?」
控え室に続く筈の階段から爆発音が響き渡り、黒煙が立ち上っている。
その煙の中から人影がゆらりと揺らいでいる。
「ゲームはまだ終わってませんよ…大佐。」
長い髪をなびかせ、両手に包帯を巻いたキンブリーが会場内に姿を現した。
その包帯には、紅蓮の錬成陣が血で描かれていた。
To be continues.