ゲームを征する者〜Second stage〜 16
充実した歓声が恐怖の悲鳴に変わる。
逃げ惑う観客目掛けて容赦ない焔が注がれる。
キンブリーは目の前に立つ人間をことごとく爆破させ、真直ぐにVIP席へと向かってきている。
完全に我を見失っているのか…
それともこれが彼にとって正常な行為なのか…
「ロイ!ハボック!エド!」
ヒューズがVIP席にやってきて、ロイの傍に近づいてきた。
さっと上着を脱いでロイにかける。ロイはかけられたヒューズの手を取り小さく微笑む。
あまりの自然な行動にエドが少しむっとした。
ブラッドレイが4人の前に立ちはだかり、すっとサーベルを抜いた。
「ヒューズ。3人を連れて下がっておれ。」
全く。困った輩だ。
そう言い放つブラッドレイの顔はとても嬉しそうにも見える。
やはりこの戦いの空気に長い間触れ、身体と心が高揚していたのか。
その眼は獲物を狩る捕食者の眼をしていた。
「ゲームの番外編だな。」
上着を脱ぎ万全の体勢を整える。
キンブリーは構わずVIP席へと進んでいく。
大佐…まだ終わりじゃないんです…
歴史は繰り返す…そう言ったでしょ…?
「あのイシュバールでの最後の日同様…私が大佐を救って差し上げますよ…」
それが私のあなたへの最大限の愛情の印。
あなたを惑わす者全てを灰に変える。
髪をなびかせ、キンブリーはゆっくりとブラッドレイの前に向かっていった。
サーベルを抱え直し、愚かにも自分に向かってくる敗者に剣先を向ける。
歴史は繰り返す…?
あの日救援隊が到着した時、キンブリーは半ば気狂い状態で、マスタングは放心状態だったと聞く。
「何があった…?あの日に。」
「別に何も。私が大佐に群がるゴミを排除しただけです。」
私の可愛いペットを傷つけようとした愚かな輩どもを…
キンブリーはそう言うや否や、ブラッドレイ目掛けて突進していった。
ブラッドレイはサーベルを掲げ、紅蓮の炎を迎え撃つ。
愚か者め…この私にお前の術は通用しない…
ニヤリと笑いながらサーベルを突きつけていく。
キンブリーは手に持つ物をすべて爆発物に変え、近寄る事無くブラッドレイに攻撃を仕掛けていった。
放り出される爆弾を、サーベルが見事に一刀両断していく。
切り裂かれたと同時に爆発していくので、あたりは焔と煙で充満し、視界が悪くなっていった。
「大佐!大丈夫!?俺から離れちゃ駄目だよ。」
「エド…」
そうだ…あの時もこうだった…
あと少しで合流地点に到着と言う時に、敵からの襲撃を受け身動きできなくなってしまったんだ。
どうしたら切り抜けられるか…それだけを必死で考えて…
どうしたら生き残れるか…それだけを考えて…
「大佐!俺の後ろに。あんたは今ボロボロなんですからね。」
「奴の狙いはお前だ。安心しろ。俺達が守るから。」
そう…あの時も敵の狙いは私だった…
大虐殺に関わった錬金術師を捕らえ、見せしめにするのが敵の目的だったと後から聞いた…
『キンブリー!私と共に前に出ろ!敵を一掃する!』
『了解。私と中佐となら至極簡単な事。』
私を蔑んできたキンブリーが素直に命令に聞くとは思わなかった。
命の危険に晒されていると言う重大さが理解できたのだろうか…
「そして向かってくる敵を薙ぎ払った。味方の部下と共に…懐かしい思い出ですね、大佐。」
煙の中からロイの眼の前に姿を現したキンブリーは、驚く3人の一瞬の隙をつき、ロイを担ぎ上げ
そのまま広場の中央へと飛び降りた。
「ロイ!」「大佐!!」
「マスタング!?」
全員が広場に集中し、エドは助けに行こうと立ちあがる。
「動くな!来れば大佐の首をへし折るぞ!」
キンブリーはロイの首に腕を回し、もう片方で体中を撫で回していた。
嫌悪感で顔を歪ませる中に、快楽に浸る表情を浮かべている。
身体が…主人の愛撫を覚えているのか…
ブラッドレイの眼が僅かに細まり、サーベルのグリップを握っていたその手に力が入る。
「はっぁ…やぁぁ…はな…せ」
締められている腕を振り解こうと力を入れるが、身体中を這い回る手がその力すらも奪い取っていく。
「ちきしょ!大佐から離れろ!」
エドが大声で叫びながら壁を乗り越え闘技場へと降り立った。
パンと両手を合わせ、右手の機械鎧を剣に変えキンブリーに照準を合わせる。
キンブリーは動じる事もなく、右手の動きも止まらなかった。
「離せ!!それは俺のもんだ!」
「大佐は私のペット。この人は私に一番よく懐いていたんですよ。」
夜な夜な私の靴を舐めながら媚を売り、慰めが欲しくて淫らに腰を振る。
身も心も性の奴隷に成り下がった。
「それはお前が部下の命を盾にしていたからだ!」
苦しい表情のままロイが身悶えながらもはっきりと叫んだ。
命令に少しでも背けば部隊を全滅させると…
だから従った。生き残る為に。
命じられるままに足を開き、身体を曝け出し、秘部を押し付け淫猥に誘った。
キンブリーが勧めるままに部下達は自分に群がり、死の恐怖から逃れる一心で犯し続けた。
一人が後ろを貫けば、もう一人が咥内を犯す。
快楽に打ち震えている肉の棒を二人がかりで攻め立てる。
全身を舐めまわされ、蠢く幾つもの舌がまるで触手の様にロイの身体を容赦なく追い詰めていった。
そして一通り部下達が欲望を満たすと、最後は決まってキンブリーがロイを抱き寄せ、その身体を弄んだ。
ぐったりと横たわるロイの腹を蹴り上げ、身体を起こさせ、己を差し出し「舐めろ」と命令を下す。
何度となく繰り返される屈辱の瞬間。だが自分は黙ってそれに従うしかなかった。
逆らえば…この男は冷たく微笑みながら一人ずつ部下を殺していくだろう。
首を横に振った数、嫌だと叫んだ数、その分を部下の死で補わせる。
自分を犯す部下など放っておければよかったのに…
自ら招いたこの窮地にロイは異を唱える事は出来なくなっていた。
すべては自分の責任…そう諦め性のペットに成り下がった。
屈辱に身を焦がしながらも、それでも部下たちを助けたいその思いで必死で本部と連絡を取り続けた。
一歩一歩後退し、敵の攻撃をかわしながら救援隊が来る事を信じて生き残る作戦を練った。
そして一週間が経ち、ようやく本部と無線がつながり、指定した場所へ向かえば救援部隊と合流できる事になった。
「合流地点のすぐ傍まで来た所で、敵に囲まれ身動き取れなくなった。」
「そうでしたね。そして私と大佐で敵をなぎ払う為に前に出て囮となった。」
今みたいに広場の中央に…
「ほら、見なさい大佐。あの時の様に邪な思いを抱く輩が近づいてきましたよ。」
ゲームに負けた敗者たち…あなたの愛しい者達…
皆、あなたを手に入れようと私に向かってくる…
その言葉を聞いてロイの表情が一気に青ざめた。
エドが周りを見回すと、残った敗者達がここぞとばかりに不適な表情を浮かべ、キンブリーに近づいてきていた。
今こやつに取り入れば美しい焔が手に入るかもしれない。
イシュバールの部隊のように大佐を飼い慣らし、足元に跪かせられるかもしれない。
「へへっ、キンブリーさん…俺達もちょっとおこぼれを貰ってもいいですかね。」
「ここから逃げるのを手伝いますよ。あんたさえいれば大総統閣下からも逃げられますぜ。」
ニヤニヤしながら近づいてくる男達を、ブラッドレイが肩を震わせながら怒りの表情で見つめていた。
私の玩具を奪うつもりか!この私を出し抜くつもりか!
許さぬぞ!皆このサーベルの錆にしてくれるわ!
ブラッドレイも壁を飛び越え闘技場へと降り立った。
「大総統!」
「貴様!マスタングを離せ!」
それは私の玩具だ!誰にも渡さぬぞ!
「ふふふ…そう言って部隊の部下達もあなたを欲してました。」
敵を一掃し、本部と合流すればもう二度とロイを抱く事は適わないだろう。
そう思った部下達はロイを強奪し、軍から脱走してどこかに逃げる、そう画策していたのだった。
そして敵の攻撃に乗じてキンブリーとロイに襲い掛かってきた…
「でも駄目です。これは私のペット。誰にも渡さない。」
そう言いながらキンブリーは一瞬ロイを離し、地面に両手を付く。
開放されたロイは崩れ落ちながらもエドに向かって叫びだした。
「逃げろ!!エド!来ては駄目だ!!」
エドがはっとなって足元を見ると、青く光りだした細い線が眼に飛び込んできた。
キンブリーが着いた所に小さく錬成陣が書かれていて、それが広場の全域にめぐらされた錬成陣へ
連鎖反応を起こしていた。
紅蓮の錬成…
その勢いは凄まじく…
エドを始めとする広場に集まっていた全ての人間を巻き込んでいく。
「エド!!エド!!!」
ロイは狂気の声をあげながら爆風の中を叫び続けた。
To be continues.