ゲームを征する者〜Second stage〜 18
柔らかい日差しの中でロイはバルコニーで風に当たっていた。
爽やかなそよ風が頬に触れると、その心地よさに思わず眼を閉じる。
そういえばここ数年仕事ばかりでこんなにも休んだ事はなかったな…
ここに居たからと言ってゆっくり休めたわけではなかったが。
「こんな所にいたんですか。]
部屋の中からハボックがお盆を持ってやってきた。
その上には冷たく冷えているだろうオレンジジュースと、皿いっぱいの果物。
バルコニーに設置してあるテーブルのそれを置くと、ロイを背後から抱きしめる。
ロイは少し身体を硬くしながらも、抵抗もせずに黙ってハボックに抱かれたままだ。
「随分と大人しくなりましたね。これも調教の成せる業…?」
くいっとロイの首を引き寄せ、既に濡れているその唇にキスを落とす。
軽く触れる程度から徐々に深く…
歯を食いしばって抵抗する事も無く、ハボックの舌を受け入れされるがままに絡めあう。
糸を引き合うほど唾液を注ぎ込むとロイの舌が烈しく反応し始める。
「んっふぅんん…」
いつしか体勢を変え、ロイははボックに向かい合わせになり、その首にしがみ付く。
ハボックはロイのシャツをたくし上げ、既に立ち上がっている胸の突起を軽く摘んだ。
「はっああ…」
「ほら、キス一つでもうこんなになってる。どうです?もう俺無しじゃ…」
ハボックのその言葉を聞いた途端に、ロイの眼に光が戻る。
すっと唇を離すと、その短い金髪に指を絡めだした。
「今日が最後だ。」
そうポツリと呟くと、にやっと笑って再びは僕の口をそれで塞ぐ。
積極的とも思われるロイの行動と、その言葉にハボックは静かに眼を閉じた。
そう、あの死闘が繰り広げられたゲームは終わり、優勝したハボックはその賞品を受け取り、
約束通りブラッドレイの別荘でロイと二人きりで1週間過ごしたのだ。
その間ロイはハボックの命令に決して逆らってはいけないと命令され、それだけでは足りぬと
首輪を上下に付けさせられた。
首に一つ。そして陰茎の根元に一つ…
射精を遮らないようにそれはロイの陰茎の太さに合わせて伸縮する特注品だった。
「もし命令通りに動かぬ時はこれを使いなさい。」
そう渡された物は手の平サイズのリモコン。赤と青のスイッチがある。
きょとんとしているハボックとロイに、ブラッドレイはそのスイッチを入れて見せた。
「ひぁあああああ!!」
いきなりの下半身への刺激に、ロイは蹲りビクビクと震えだした。
エドがびっくりして傍に駆け寄ろうとするが、ブラッドレイに阻まれそれは叶わなかった。
そしてもう一つのスイッチを入れると、今度は首に嵌められた輪から刺激が来るのか、
両手で首を掻きむしる様に悶えている。
ブラッドレイがスイッチを切ると、ロイは肩で息をしながら恨めしそうに睨みつけた。
その瞳の輝きを満足そうに眺めながら再びリモコンをハボックに手渡す。
「上と下、どちらを使うかは状況に応じて判断しなさい。忘れてはいけないのはあくまでも躾の為。」
蹲るロイの顎をグッと掴み、上に立つものの視線で蔑む者を見つめる。
「躾に躊躇はするな。命令に従うまで情けをかけてはいけない。」
お前の足元に見事跪かせて見せよ。
ギラリと光る捕食者の眼に、ハボックも身震いして立ち尽くす。
エドはその眼に憧れ、そうありたいと決意を固める。
こうしてロイはハボックの元に手渡され、その日からロイへの調教が始まったのだった。
バルコニーにあった籐製の長椅子にロイを寝かせるとハボックはシャツを切り裂き、ズボンのベルトを外し始めた。
「確かにいつ何処でやっても構わんと命令されてはいたが…」
せめてそのジュースと果物を食べてからにしてくれないか…?
ぐっとハボックの胸を押し上げ、身体の上半身を起こしてテーブルに置かれたジュースを取ろうと手を伸ばす。
ビリビリッ
「あっああっ!!」
いきなりの刺激にロイは身体を曲げ、ビリビリと震えている首輪に手をかけもがいている。
ぱちんとスイッチを切ると、ハボックがふっと笑いながらロイを再び長椅子に押し倒した。
「言う事を聞かない犬はお仕置きしなくちゃね。」
ハァハァと苦しみながらハボックを睨みつける。
あぁ、その眼…最初のあの日から全く変っていませんね…
俺を全く受け入れていないその眼…
エドの大将を見ていた時のあの眼とは明らかに違う。
一週間…あなたに触れてきました…
でも…
「あんたは俺の物にはなりそうにないですね…」
ポツリと放った言葉に、ロイは別段驚く様子もなくにこりと微笑んだ。
「ゲームは私の勝ちのようだな。」
「いいえ、まだまだ。後一日ありますよ。」
突っ込んで、めちゃくちゃにして、そして抱きしめて、キスをして。
少しでも俺の匂いを注ぎ込む。
それで俺に平伏すとは思わないが。
首筋に唇を当てるとロイは小さく喘ぎ、ハボックの背中に腕を回した。
これも今だけの行為。判っている。そのはず…
だがその行為に期待してしまう俺も末期なのかな…
「大佐。今夜はお別れパーティでも開きましょうか。」
「んっあっ…パーティ…?」
明日の朝になれば魔法が解けあんたは犬から俺の上司に戻る。
触れる事の出来ない誇り高き焔に…
ロイの両足を抱えグッと前進するとロイはたちまち甘美な声をあげだした。
快楽に震える陰茎の根元にはまだあの首輪がしっかりとはめられている。
それを優しく撫でながらハボックは更にロイを攻め続けた。
打てば響く身体は俺に従順な訳ではない。
とろんとした虚ろな瞳は俺を素通りして誰かを想っている瞳。
ゲームは完全に俺の負けです、大佐。
俺は大佐を跪かせる事は出来なかった。
あんたは鋼の大将のモンです。俺も認めますよ。
でも俺だってそう簡単に負けるのは男として悔しい。
少し…もう少し抗ってもいいですか…大佐。
最後の夜を思い出深く過ごしましょうや…
To be continues.