ゲームを征する者〜Second stage〜 3
ヒューズとハボックとアームストロングが闘技場に辿り着いたのは日がくれて少し経ってからだった。
迎えのトラックには乗らず、街で馬車を借り、食べ物を調達し、やっと到着したのだった。
他にも数人が到着していたが、トラックに乗って行った大勢のつわもの共は一人もいなかった。
「やっぱりトラックに乗らなくて正解だったな。」
「彼らはどうなったのでしょうか…」
「さぁ?さしずめ中央にでも強制送還されたんじゃないっすか?」
気にも留めずにタバコに火をつけ馬車を降りるハボックに、ヒューズもアームストロングも苦笑する。
闘技場の傍まで来た時、入り口に一人の男が立っていた。
整然とした顔立ちで、しかし見るからに軍人臭い
ヒューズ達を初め、その場に辿り着いた強者達がその男の方へと集まって行く。
男は大体が集まったのを確認すると、皆を引き連れ闘技場の中へと誘導していった。
闘技場の中に昔の戦士達が待機していたと思われる広場があった。
その広場には数人の男が待機しており、連れてこられた参加者達を手際よく案内していく。
その中のリーダー的な男が声をあげた。
「ゲームに参加する方は、階級章に名札を付け、この箱に入れてください。階級章のないものは名札のみで結構です。
また、国家錬金術師の方は銀時計を名札と共に入れて下さい」
「済んだ方はこちらへ!僅かですが食事と飲み物を用意してあります。そこでお寛ぎください。」
ヒューズ、アームストロング、ハボックも肩の階級章を外し、名札を付けて箱に入れた。
だがくつろぎのスペースには行かず、そのまま闘技スペースの方へと歩いていった。
「あくまでも疑うんっすね。大総統閣下の事。」
「当たり前だ。敵国に進入した時、食事を用意されてはいそうですか?と喰うか?」
そう言いながら、買ってきたパンにかぶりつき、広場へと足を踏み入れた。
「ほぉ〜〜」
アームストロングが思わず声をあげ感動する…
月明かりに照らされた土のフィールドが、幻想的な光景を拡げていた。
ここで死をかけたゲームが繰り広げられていたとは…
そして今まさに同じゲームが開催されようとしている…
「本当にここでやるんすかね…」
「やるだろうよ…その為の闘技場だ。『戦士の魂が眠る墓』とはよく言ったモンだよ。」
ヒューズは深い溜め息をつきながらこの闘技場のどこかにいるだろう、主催者に向って叫びだした。
「さっさと始めやがれ!!そして焔を早く解放しやがれ!!」
アームストロングは上着を脱ぎ、ハボックは腰の拳銃に弾を込め始める。
他にも参加者達が続々とフィールドに集まり、戦いの準備を始める。
その様子を観覧席から楽しそうに見つめているエドがいた。
「皆準備万端って感じだよ。そっちはどうなの?」
観覧席の奥にある控え室で甘ったるい声が響き渡っている。
ハァハァと荒い息遣いの中でくちゅりと言う卑猥な音も交差する。
「あぅんん…やっ…」
「もう少しだ…ほら、随分いい顔になってきただろう…?」
うつ伏せに倒れているロイの顎を背後から抱え込み、ぐっと引き上げる。
眼は虚ろで、口端からは涎が零れ落ちていた。
「エ…ド…」
手を伸ばして助けを求めようとするが、エドは鼻で笑いながら背後にいるブラッドレイの傍に近づいていった。
「もう皆集まってきたよ。早く始めないと暴動がおきるかもしれない。」
「まぁ、待ちなさい。マスタングの乱れ具合は今一つだからね。」
ぐぐっと自分の方に引き寄せ、膝の裏側を持ち上げ、自分の膝の上に座らせた。
背後から前を弄び、そのまま下の方に指を這わして、秘所に指を咥えさせる。
グチュグチュと中をかき乱し、その快楽を引き出させた。
「うっんん…はぁはあああ!!」
弄るだけ弄られ、だが一番のポイントには触れられない。
じれったい感覚がロイの体の中を駆け巡り、身体中が敏感に反応し始めていた。
「…なんか凄く色っぽいね。見ているだけで身体が熱くなっていく…薬でも使ったの?」
舌舐めづりをしながらロイの顎をつつっと、指でなぞり、親指を口の中に押し込み咥内を犯していく。
「いや、何も使ってはおらんよ。薬はマスタングのいい所を引き出す反面、彼のの理性も吹き飛ばすから
面白くないのだよ。」
ほら、見てごらん…快楽に身を沈めながらも、理性を纏うこの眼を…
「この眼を屈辱に濁らせるのが楽しいのだよ…エドワード。だから薬はなるべく使いたくないのだ。」
それに薬など使わずとも、この感度の良い身体は打てばちゃんと響いてくれるからね。
クスクス笑いながら、ロイの陰茎を激しく擦りあげる。
甲高い喘ぎ声をあげながらロイの身体がビクビクと痙攣し始めた。
あと一息で絶頂に達しようとしたその時…
「ふっあぁああ!!」
根元をリングで締め上げられ、それ以上イク事は許されなくなってしまった…
ぶるぶると震えながら背後のブラッドレイの肩をぐっと掴み、涙目で訴える。
イかせて欲しいと…
「お前をイかせる事が出来るのは、月の女神が照らす勝者だけだ。果たしてそれが誰になるか…」
すっとロイを横抱きに抱えあげ、ブラッドレイは観覧席の方へと歩いていく。
後からエドも続き、二人は戦いの場へと姿を現した。
「力ある者達よ、よく来た。私はこのゲームの主催者である。」
ブラッドレイの声に、フィールドにいた参加者達が一斉に観覧席の方へと眼を向けた。
大総統が姿を現し、やっぱりと思う者と、少し驚いている者と…
それよりも腕に抱かれているロイの姿に目が釘付けになっていた。
月明かりの薄暗い中で、その白い肌は妖しいまでの美しさを醸し出している。
その肌の白さと相反するような漆黒の髪が、月明かりに照らされて光り輝いている様にも見えた。
腕試しに来ただけの男でさえ、その姿にゴクリと喉がなる。
「ここに集まったものは勇気と用心深さを兼ね備えた者と推察する。」
「トラックに乗り込んだ輩は全て中央に強制送還した。楽をしてこの焔を得ようとする者は
ゲームに参加する資格はない。」
その言葉を聞いたハボックは、ヒューズの方をちらりと見る。
ヒューズはにやりと笑い、ハボックに向けてウィンクをした。
「さて、ゲームの内容だが…恐らく皆が察している様に、これはトーナメント方式の格闘である。」
一瞬闘技場内がざわついた。驚きではない。
望むところだ、と言う意気込みからだ。
「ルールはただ一つ。どちらかが立ち上がれなくなるまでだ。死亡、もしくは再起不能、GIVE UP…何でも良い。」
「どちらかが戦意喪失と見なされた時点で勝負ありと私が判断する。」
「最後まで勝ちあがった者が賞品を受け取る権利を与える。」
そこまで話すと、ブラッドレイはロイを先程エドが作り変えた柱に降ろした。
その柱はアーチ状に変形されてあり、天井からは鎖が垂れ下がっていた。
その鎖にロイの両手をくくりつけ、全裸の身体を参加者に見せ付ける様に配置した。
エドがニコニコ笑いながら柱の横のスイッチを入れる。
柱の根元に設置されたライトが、白い肌を照らし出した。
眩しさに顔を歪ませ、また羞恥心が身体を赤く染まらせる。
ジャラリとなる鎖の音が、更なる官能を呼び起こす。
「勝者にはこの美しき焔を与える。但し一週間。私の別荘で二人きりで過ごす権利を与えよう。」
「殺したり、再起不能にしなければ、何をしても良い。一週間で飼いならせるか…それもゲームの一つだ。」
ブラッドレイはロイに近づき、うな垂れているロイの顎をくっと持ち上げ、顔のラインを指でなぞる。
苦痛に歪むその表情が、全ての男たちの欲望を駆り立たせる。
ただ一人、ヒューズを除いては…
ブラッドレイの背後から、先程の階級章や名札、銀時計が入った箱を持った男がやってきた。
エドの方を見て、手招きをする。
「エドワード、お前の銀時計も名札と共にこの箱に入れなさい。」
こくんと頷き、時計を取り出すと、名札をつけ箱に入れる。
ブラッドレイはその箱をフィールド上の参加者達に見せ、こう説明した。
「トーナメントの組み合わせは、私がこの箱から名札を取り、その場で決める。最初の組み合わせは…」
ブラッドレイが箱の中に手を入れる。
参加者達が固唾を呑んで見守っている。
「アームストロングとデリマ、この両名だ。前へ出なさい。」
アームストロングは身体中の筋肉を鳴らしながら一歩前に出て、デリマと名乗る男も前に出て行く。
「他の者は控え室で待つか、このまま観覧席へと移動し戦いを見るか、好きにせよ。」
そう言い放ち、ブラッドレイは観覧席のVIP席へと腰を下ろした。
「俺は出番が来るまでここにいてもいい??」
「駄目だ。お前も参加者の一人だ。皆の所で待つか控え室に行きなさい。」
チェッと舌打ちしながら、エドはロイのすぐ傍までやって来て膝を折る。
虚ろな眼でエドを見つめ、その眼にエドは身体中が痺れていく。
ぐっと後頭部の髪を掴み、荒々しく唇を奪った。
ぴちゃぴちゃと音を立てながらロイの全てを舐めとる様に貪り食う。
ようやく離して、その濡れた唇を指で拭いながらエドはにやっと笑いかけた。
「待ってて…俺、必ず優勝してあんたを取り戻して見せるから…」
この後のゲームも、俺が勝つに決まってる…あんたは俺の物なんだから。
そう言い放ち、クルッと身を翻して控え室の方へと向った。
知った顔が居たのは分かっていたが、そこへは向いたくなかった。
ロイの浮気相手のヒューズと顔をあわせたくなかったからだ。
ヒューズもエドが居る事を分かっていたが、会えて声をかけようとはしなかった。
こんなゲームが開催された原因を、ヒューズが一番理解していたからだ…
やれやれ、と頭をかきながら、しかし悪びれた様子もなくこのゲームを楽しんでいる様にも見える。
「エドもまだまだ未熟だな…」
「は?なんスか?」
「いや、何でもない。お?始まるみたいだぞ?」
上半身裸のアームストロングが錬成陣が描かれた甲当てを付け、臨戦体勢を整えていた。
デリマも上着を脱ぎ、タンクトップ姿で体勢を取る。
「我が代々アームストロング家に伝わる格闘技を世に知らしめるチャンス!」
「けっ、国家錬金術師をねじ伏せる絶好の機会だぜ!」
二人の戦いが始まろうとしていた時、一人の部下がブラッドレイの傍に近寄りそっと耳打ちをした。
その報告を聞くやいなや、ブラッドレイは黒い笑みを浮かべそのまま待機させる様指示を出す。
「これは面白い宴になりそうだ…果たしてエドワードは無事にお姫様を助ける事ができるかな?」
とっておきのラスボスを用意したからな。
クスクス笑いながら、ブラッドレイは官能的な姿を晒すロイに眼を向け、用意されたワインを口にする。
「ゲームを開始せよ!」
ブラッドレイの一言で、ロイを巡る熾烈な戦いの幕が切って落とされた。
To be continues.
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