ゲームを征する者〜Second stage〜 8
「ペットだと…?」
キンブリーの放ったその言葉に、ブラッドレイがピクリと反応する。
私がマスタングを見初めたのはイシュバール戦線の後からだ。
その頃から確かに苛め甲斐のある狗だったが…
まさか私より先にこやつに調教されていたとはな…
「さぁ、鳴いてみて下さい、大佐。あの頃の様にいい声で。」
「あっあああ…」
キンブリーの手がロイの身体を撫で回し、その声がロイの過去の傷をえぐり出す。
ハァハァと荒い息がこだまし、見ている者の下半身を刺激していく。
「気に入らない…」
「エド…?」
「大佐は俺の物なのに…何だよ!ペットって。」
過去に何があったか知らないけど、大佐は俺だけの物なんだから!
それは大総統にだって同じ!大佐が大総統に犯されても結局は俺の物だった。
なのに何だ!あの表情。
俺にだってあんな顔しない。
「あんな欲しそうな顔!!気に入らない!!」
絶対あのキンブリーって奴をぶっ飛ばしてやる!!
「くそ!!さっさと試合始めろ!!いつまで触ってやがるんだ!!」
エドの怒鳴り声にロイがピクリと反応する。
キンブリーがそれを見逃すはずが無い。
「ほぉ…今はあの子があなたのご主人様なのですか?」
「ちが…」
「でも無駄ですね。あの子はあなたを支配する事は出来ない。」
あなたのご主人様はこの私ただ一人…
それは長い年月が経っていても変わる事はない。
キンブリーはその手をロイ自身に伸ばし、再び扱き始める。
もう片方の手をロイの口に入れ、指でその中を犯していく。
湿り気を得ると、背後から秘所へとその指を挿入した。
「ひっああっ…んん」
「あぁ、相変わらず暖かい。あなたの中の熱は昔と変わらない。」
指を少しづつ増やし、中でバラバラに動かすと、途端にロイの身体が痙攣し始めた。
キンブリーに身体を預ける様に背中を密着させ、愛撫の継続を強請る。
顎を上げ、唇を半分開き、中から舌をちろりと覗かせるその姿…
あまりの妖艶さにブラッドレイですらも眉をひそめた…
「ほら…もう我慢できなくなってきた…さぁ、言いなさい、大佐。」
「以前の様に…私の事を…」
「ご主人様と…」
グッと指を押し込み、亀頭のくびれに爪を立てた。
ロイの背中がしなやかに反り返り、振り乱れる髪が汗を飛ばし、より一層の淫猥さを引き立てる。
恍惚としたその表情は悦んでいる様にも見えた。
ロイの口が動き出し、ある言葉を発しようとする。
「ハッアァ…ご…主…」
「そこまでだ!キンブリー。マスタングから離れよ!」
淫靡な雰囲気が一気に崩れ、凄まじい威圧感が辺りを支配する。
いつの間に抜いたのか、ブラッドレイはサーベルの剣先をロイの喉元に突き立てていた。
「マスタング…その言葉は勝利者にいう言葉だ。今ここで発すればその喉掻っ切るぞ!」
ごくりと唾を飲み込むだけで剣先が突き刺さるのではないかと錯覚するくらい、間近に迫っている。
ロイの思考を占めていた快楽は一気に覚め、目の前の独裁者への恐怖が支配する。
「申し訳…ありま…せん…閣下…」
何故私が謝らなければならない…
こんな理不尽なゲームの賞品となり、二度と会わなくてすんだ筈の男に弄ばれ…
過去の傷を曝け出され…
エドにも…ヒューズにも…ハボックにも知られた…
イシュバールのあの悪夢…
部隊のペットに成り果てたあの屈辱…
忘れたくても身体が覚えていた…
この男の声を聞いただけで芯から来るこの疼き…
もしこいつが優勝でもしたら私は…
「何を考えておる…マスタング…」
離れたキンブリーと入れ替わるように、ブラッドレイがロイの背後に寄り添った。
グッと後ろから顎を掴み、自分の方に顔を向かせる。
「覚えておけ…今の主人はこの私だ。」
「軍に属する者全てが私の狗。特にお前は…」
つつっと指をはわし、ロイ自身の先端にそっと触れる。
「お前は私の玩具だ。」
意志も人権も何も無い。ただ私の言うがままに動けばよい。
キンブリーの時とは違う、嫌悪感に満ちた表情でその愛撫に耐える。
唇を噛み締め、喘ぎ声を漏らさないように拳を握り締め顔を歪ませる。
それが返ってブラッドレイを始めとする欲望に満ちた男達を誘うと言う事を、ロイは未だに理解していない。
全く持って良い表情をする…クク…
耳元で囁き、汗ばむその頬に舌を這わす。
その光景をキンブリーは笑いながら見つめていた。
「何がおかしい…?」
「いいえ…大総統閣下ともあろう方が嫉妬など、醜いものだと思いまして。」
「嫉妬だと?」
ロイから手を離し、すっと立ち上がってキンブリーと向かい合う。
方やペット…方や玩具…
共に主人を名乗る男が睨み合う。
「大佐は私の物ですよこんなゲームをしても無駄です。」
「お前が優勝すればお前の物だ。だが今は主催者である私の物だ。」
手に入れたくば勝ち進むがいい。
ただし貴様の物になるのは一週間だけだ。
見下ろす様にキンブリーを睨みつけ、その優位な立場を誇示する。
キンブリーも負けずにブラッドレイを煽っていく。
「一週間。充分ですよ。私のペットだと言う事を思い出させるには10分で充分。」
勝ち進んで必ず取り戻す。
舌なめずりをしながらロイにウィンクを投げると、キンブリーは控えていた警官に手枷を課せられ、
そのまま控え室へ下がっていった。
参加者の脳裏に先程まで見せたロイの淫らな姿が焼きついている。
自分もあの様に大佐を鳴かせてみたい…
1週間…たったそれだけの期間…だがそれでもあの焔を自由に出来る。
部隊が消えたのは1週間。その間にペット化されたのなら…
自分の足元に跪かせる事は不可能ではない!
そういう邪な想いが辺りを交錯していった…
フフ…いい雰囲気だ…
「楽しいかね?マスタング大佐。お前を巡って欲に塗れた男共が命を凌ぎあう。」
楽しい筈が無い!!
そう訴えるような眼でロイはブラッドレイや会場の参加者達を睨みつけた。
それが更なる欲望を生む事とは露知らず…
「そのうち、イシュバールで何があったのか詳しく話を聞くとしよう。」
その言葉にロイがビクッと反応した。
フム…余程の事があったようだな…
部隊が連絡を途絶えた事。あの二人を覗いて全滅した事。
つまりは真相を知るのはキンブリーとロイの二人だけ…
一人は終身刑で刑務所の独房に拘束されていた…
面白い寝物語となりそうだ…
「次の対戦相手は…」
ブラッドレイが箱の中に手を入れ、対戦相手を選ぼうとしたその時…
「大変です!!参加者たちが!」
SPの一人が慌ててブラッドレイの傍に駆け寄ってきた…
To be continues.