ゲームを征する者〜Second stage〜  9        




        「大変です!参加者達が暴動を起こしました!」


        慌ててVIP席にやってきたSPがブラッドレイに助けを求める。
        ブラッドレイは眉をピクリと動かし、その言葉に耳を傾けた。


        「暴動…?」

        「命をかけて焔を得るくらいなら、皆で協力して奪い取ろうと言う行動に…」


        それ程までにしてこの焔の大佐を欲しているのか。
        先ほどのキンブリーとの情事が刺激となってしまったか。

        「私の定めたルールに従えぬ者はすべて失格とみなす。」


        すくっと立ち上がり、サーベルを手にして控え室の方へと向かっていった。



        会場は騒然となり、観客席にいた参加者達も動揺が隠せない。


        「暴動…?裏で暴れているのか?」
        「フム…確かに皆で協力して奪い取れば、確実にモノには出来るが…」
        「だがそれは大総統閣下に反旗を翻すのと同じ行為。かなりの危険を伴うぞ?」


        命がけで試合をして勝ち進むのと、閣下に逆らって奪い取るのと、どちらがリスクが少ないか…


        「エド。お前はどうする?」
        ヒューズが意地悪く問いかけた。
      
        皆に弄ばれ、ロイに自分以外をご主人様と呼ばせるこのゲームをこれ以上続けさせるか…?


        「当然。俺はゲームを続けるよ。俺が必ず勝つ自信はあるから。」
        大総統に逆らうなんて事出来ないじゃん。

        くすくす笑いながら鎖に繋がれて醜態を晒す恋人の方に眼を向ける。

        「ハボック少尉は?」
        「俺もゲームの方がいいっすね。暴動に参加したところで閣下にばっさりが落ちですよ。」

        だったら勝ち進んで手に入れる方が確実だ。
        
        ヒューズは苦笑しながらすっと立ち上がり、VIP席の方へと足を進めた。
        エドとハボが驚きながらも、同じ様にロイの傍へと向かっていく。



        会場にいた参加者たちはまだ自分のするべき立場を決められず、ただ事の成り行きを見守っていた。



        「ロイ…大丈夫か…」
        「ヒューズ…」

        羞恥心で顔を赤らながらジャラリと音を立てヒューズの方に顔を向けた。
        
        「お前を狙って裏で暴動が起きているそうだ。何かあるといけないからここでお前を守ってやるよ。」
        頬に手を添え額にキスを落とすと、エドがたちまち嫉妬で怒りを露にする。


        「手ぇ離せ!大佐は俺のモンなんだぞ!」
        「まだ大将のものとは決まってませんよ。俺のモンになるかもしれないんだから。」
        「どっちにもやりたくねぇーな…」

        3人の睨み合いが続く中、くすくす笑う声が響き渡る。



        
        「全く…歴史は繰り返すですね…大佐…」



        控え室に向かう入り口から、聞きたくもない声がこだまする。



        「イシュバールでもそうでした。大佐を巡って奪い合いが始まり…」
        「やめろっ!」
        「生き残った部隊の仲間で大佐を所有し…」
        「やめろ!!!」



        「そして最後は私だけのモノに…」

        「キンブリー!!」


        ゆらりと姿を現したキンブリーに、ロイは凄まじい形相で睨みつけた。
        手枷は外され、囚人服には返り血らしきものがこびりついている。

        「警備員はどうした。」
        「さぁ。粉々になって飛び散りましたから。」

        その表情は恍惚で、さらりと言い放つその残酷な行為に、エドもハボックも戦慄を覚える。
        爆破する事を快楽に置き換えるこの男…

        ロイを守る為にこの男と一戦交じ合うか…

        じりっとにじり寄るキンブリーに、エドもハボックも臨戦体制をとり始める。
        ロイはただ怯え、動かせない腕をジャラジャラ鳴らし、その場から逃げ出そうと無意味な行為を試みていた。



        
        「このゲームの内容を大総統閣下から聞いた時、懐かしい昔をすぐ思い出しましたよ。」
        
        ロイの体がぴくっと反応する…

        「美しき焔を巡り、邪な男達が争いあう…まさにあの時と同じ。」

        止めろ…

        「最初のきっかけは何でしたっけ…?あぁ、そうそう。最前線で作戦に失敗し、部隊が孤立してしまったのが
         きっかけですかね。」

        止めろ!!!

        「周りは敵に囲まれ、食料も底を尽き始め…極限の精神状態で一人の部下があなたを押し倒した。」

        「どうせ死ぬなら一度あなたを犯してみたかったと…」

        人は死の恐怖に打ち勝つには快楽に没頭するしかない。
        数人の兵士が協力して必死で本部と連絡を取るべく奔走していたロイを拘束監禁し、
        次から次へとロイを犯し続けた。


        私が駆けつけた時、あなたは何人の男にその身を許していたのですか?        


        「その時の大佐の姿はあまりにも美しく…誰もが自分のモノだけにしたいと願い、そして争いが起きた。」
        全裸で横たわるロイに触れるべく、部隊全体が我先に突進していく。

        邪魔をするものは殺す!そう叫びながら。
        極限状態の精神が部隊の人間の思考を麻痺させ、本能のままに行動させた。

        まるでメスを巡って死をかけて争うオスの獣の様に…



        ようやく争いが収まった時、部隊の人数は半分に落ちていた。


        「あなたただ一人を巡って…敵にやられたのではなく、仲間割れとはね。」
        
        静かに語られるイシュバールの真実…
        ロイは拳を握り締め、ヒューズは震えるロイの肩に手を添えた。

        エドは眼を見張りながらもキンブリーから眼を離さず、きっと睨み続けている。


        ハボックは胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけ気持ちを落ち着かせる。


        「部隊の主導権を握った私は皆を統率し、そして争いの種となる大佐をみんなの所有物にする事に決めました。」
        「そう…あなたは部隊の皆のペットに成り下がったのですよ…」

        皆で大佐を可愛がる。それは楽しい1週間でしたね。

        くすくす笑いながら昔を懐かしむ様にロイを見つめ、舌で上唇を舐める。
        勝ち誇った様にヒューズやエド、ハボックを見つめ、鼻で笑い飛ばす。


        「特にリーダーだった私には従順でしたよ…このメス猫は。」
        靴を舐めろと言えば躊躇なく舐め、足を広げろと言えば雫をたらしながら悦び勇んで開いた。

        一人では満足せず、二人、三人をいっぺんに相手をし、部隊の皆の飢えを満たす。

        貪欲な性欲は死の恐怖すら打ち払い、我々の部隊は着実に本部へと近づいていった。


        「昼間は部隊を率いる上官として働き、夜は我々の足元に跪き愛撫を強請る。」
        部下の物を咥え、背後の孔に誘い込み、淫らによがり狂うその姿。 
        逃げる事もせず、ただ与えられる快楽に没頭していく。       

        すべてを諦めていると言うより、率先して奉仕しているとしか思えなかったその行為。

        「判ったでしょう?この焔のメス猫は私のモノなんですよ。いまさら所有権を巡って争った所で私に敵う筈がない。」
        「大佐…あなたの口からもそう言ったらどうです?自分のご主人様は誰なのか…」

        そうすればこんなゲームすぐに終了させる。
        すべてを爆破させ、あなたを奪い、そして死ぬまで可愛がってあげますよ。


        ヒューズを始め、皆がロイに集中した。
        先程のキンブリーの愛撫で、ロイはあの言葉を言いかけた…

        そして今も酷く怯えている…


        「大佐っ!!その言葉言ったら俺は許さないからな!」
        エドが息巻くのをハボックが止め、ロイの方へと眼を向ける。

        「大佐…俺も聞きたいっすよ。あんたのご主人様って誰ですか?」
        エドの大将ですか?
        独裁者ブラッドレイ大総統ですか?

        それともこのキンブリーですか…?

        俺には一部の望みもありませんか…?


        


        「私は…」

        拳を握り締め、鎖の音を立てながらキンブリーの方に振り向く。


        「私は…誰の物でもない!」

        「私が部隊のペットに成り下がったのは、これ以上犠牲を出さないための苦肉の選択だった…」
        「部隊を孤立させてしまったのは私の責任でもあった…故に甘んじてそれを受けたに過ぎない!」


        「ペットに成り下がっても、私は焔の誇りを捨てた訳ではない!貴様に平伏した訳ではない!」




        「私は私自身のものだ!誰の物でもない!」
        すべては生き残る為の手段。心から貴様の事をご主人様と思った事はない!



        強いその口調に誰もが言葉を失い、ロイの姿を見つめていた。
        その眼は迷いのないまっすぐな瞳で、その輝きは穢れてはいない。


        異様な雰囲気が漂う中、突然VIP席の背後からすさまじい叫び声と共に血だらけの巨漢の男が飛び出してきた。


        「うぉぉ!!!この焔は俺が貰った!!!」
        「貴様っ!暴動起こした参加者の!」
        「ロイを守れ!エド!ハボック!足元を狙うんだ!」

        エドとハボックが体制を整えた時…



        ザクッ!!!!


        「ぐおぉぉ!!!!」

        背後から血飛沫が飛び散り、断末魔を上げながら、巨漢の男はばったりと倒れこんだ。

        その背後には上着を脱ぎ捨てサーベル片手に巨漢の男を見下ろすブラッドレイが立っていた。


        「お前は誰の物ではないと…?」

        その威圧感は今まで感じた事の無いほどの凄まじさ…
        キンブリーでさえも背筋が一瞬凍るほどだった。


        「閣下…私はっ!」
        「お前は誰の物ではない。この私の物だと言うのがまだ判っておらん様だな。」
        軍に属する者すべてがブラッドレイの狗。

        今まで暴動者を切り捨てていたのか、返り血を浴びたその身体は熱を帯び、表情は紅潮している。
        体から湯気が上がり、まさに今、ブラッドレイは気分が最高潮に達していた。

        「もう一度聞くぞ。貴様のご主人様は誰だ?」
        つかつかとロイの傍に近寄り、その漆黒の髪をぐっと掴み上げる。
        ヒューズもエドもハボックも、キンブリーさえも声をかけることに戸惑いを覚えた。


        「言わぬか…!」
        「わ…私は…」

        私は誰の物ではない…だが今この独裁者に逆らえば…
        そう…生き残る為の手段…上へ昇る為の駆引き…



        「私は閣下の狗です…」


        ぐっと眼を閉じ、その屈辱に耐える。
        その姿がブラッドレイを喜ばせる。

        ロイの前に立ちはだかり、徐にジッパーを下ろす。
        戦いで興奮していたのか、すでに太く成長していたブラッドレイ自身をロイの口元にあてがう。


        無言の圧力がロイを襲い、否応なしにそれを口に含まざるを得なかった。

        「んっんん…」
        先端を舌で嘗め回していると、ブラッドレイがロイの後頭部を掴みぐっと喉奥まで含ませた。

        むせ返し、息を吸おうにもそれも出来ず、ロイはただ前後に動くその肉の棒を舌で受け入れるしかなかった。
        ドクンと脈打ち、ブラッドレイもその動きを早める。

        イクのか…
        ロイが絶望に眼を閉じ、その瞬間を待つ。

        口の中に出され、それを全部飲み干せばすむ事…
        そう思った矢先、それはロイの口から抜け出し、目の前に晒された。


        ビュッ…


        白い液がほとばしり、ロイの顔を犯す。
        頬にべっとりついた精液をブラッドレイは楽しそうに擦り付け、屈辱にわななくその唇を塞いだ。

        ゆっくりとその歯列をなぞり、咥内を犯していく。
        まるで自分の所有権を見せ付けるかの様に、ねっとりと口付けを交わしていった。


        いくらか興奮が収まったのか、乱れた服を調え、VIP席に腰を下ろすと傍にいるヒューズ、エド、ハボック、
        キンブリーに眼を向けた。


        「どうするかね?まだゲームを続けたいか?」
        「キンブリー。警備員を爆殺したようだな。お前も正式にゲーム参加とするか?」
        それともここで一刀両断されたいか?

        優越を示すように薄笑いを浮かべ、その返事を待つ。
        エドは俯きながらもすくっと立ち上がり、右手を剣の状態に錬成してブラッドレイの方を見た。

        「俺はやるよ。大佐は俺の物だと言うことを見せ付けてやる。」

        ハボックもタバコを消し、銃の弾を確認し直して腰に装着した。

        「俺も続けます。正攻法で手に入れるのはこれしかないのだから。」

        キンブリーは両手を挙げ、同じ様に薄笑いを浮かべた。

        「私も参加者として認められるならそうさせて頂きたいですね。」
        優勝したら恩赦で無罪放免…とは行きませんかね。


        ブラッドレイは満足したように高らかに笑い、キンブリーにサーベルの剣先を向けた。


        「それは許さん。だが独房に一週間マスタングを放り込んでやろう。」
        その間過去の傷を舐めあうがいい。

        「大佐が私を主人と認めたら?」
        「その時はマスタングもろとも孤島の監獄へ送ってやる。」

        キンブリーはにやりと笑い、「約束しましたよ」と悪魔の様に囁く。

        3人は元居た観客席に戻り、キンブリーも控え室に戻ろうとした時、ブラッドレイが引き止めた。



        「部隊がマスタングを所有し、争いを収め、マスタングも犠牲を出さぬ為と甘んじて受けたことはよく分かったが…」
        「救援部隊が到着した時、生存者はお前とマスタングだけだった。」

        部隊も本部のすぐ傍まで撤退でき、あと一息だった。
        マスタングをペットとして飼い慣らしたのなら、何故他の兵士は全滅した?

        「お前が独り占めをするために部隊を全滅させたのか?」
        「…閣下はそうお思いで?」
        

        ブラッドレイはうなだれるマスタングに眼を向け、ふっと笑った。

        「いや…私なら全滅させず、そのまま部隊ともども救援され、そしてその後もマスタングを飼い慣らす。」
        それなら生存者は数人のほうがマスタングも意のままになるだろう。


        キンブリー一人だけになるのは奴にとっても利益にはならない…
        マスタングを奪ってどこかに脱走するならまだしも…

        「すべてを知る者を消し去ったというのか…?」
        あのマスタングが…?舞台の全滅を防ぐ為に身を捧げた筈なのに…


        「何故お前は真実を話さなかった?」
        すべての罪を背負い、貴様は無期懲役、マスタングは中佐へ昇進。
        キンブリーが無差別に爆破させたのではない。マスタングが意図して部隊を全滅させた…


        「私が何も語らなかったのは、私という存在を大佐の胸に刻み付けるためです。」
        

        真実を闇に葬ってしまえば、それを知るのは私と大佐のただ二人。
        同じ過去を共有し、その傷を舐めあう事も出来る。

        現にロイはキンブリーの姿を見ただけで怯えきっていた…




        「解せぬな…マスタングはそんな卑怯な男だったのか?」
        「…真実は時としてその姿とはまるで違う結果を示すものですよ。」

        それを信じるか信じないかはあなたの自由です。閣下。


        そう呟くと、キンブリーは控え室へと戻っていった。



        暴動で参加者は半分に減ってしまった。
        そして残ったもので再びゲームを開始する。



        歴史は繰り返す…

        その言葉がブラッドレイの胸に引っかかっていた。




        だが会場の雰囲気が冷めて来たのを感じると、ブラッドレイは箱を取り出し、中から名札を取り出した。



        「ゲームは続行する!次の対戦は…」


        その言葉に会場内が一瞬緊張が走った。





        月はまだ高く光り輝き、邪な夜はまだまだ続く…
                


 
       
        To be continues.




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