牙が赤く染まる時  11



        「どけ!ほら、そこを開けろ!」

        怒号と共に、クワンがロイを抱えて房内に飛び込んできた。

        囚人用のベッドに寝転ぶ仲間を払い、ロイをうつ伏せにそっと寝かせた。


        「水持ってこい!それと、シーツを破いて包帯を作れ!」

        リーダー格のクワンの言う事に誰も逆らう事は出来ず、他の囚人は言われたままに動いていった。


        水を空き瓶に注ぎクワンに渡すと、それをクワンがぐっと口いっぱいに含ませる。
       
        ブシュッ!!
        「ひっあああ!!」

        ロイの背中に水を霧吹きのように吹きかけると、ロイが悲鳴を上げて背中を反らす。

        「痛てぇか、だろうな。ちょっと我慢しろ。」
        クワンは仲間に命じて、ロイの四肢を押さえつけさせた。

        何度も水を吹きかけ、傷に残った精液を洗い流す。
        それを繰り返すうちにロイの意識はまた飛ばされていた。

        「クワンさん、こいつまた犯られてたんですか?」
        「えへへ、じゃ俺たちも楽しみましょうぜ…」
        囚人たちがロイの肩に手を触れようとした時、クワンがその手をパシッと叩く。

        訳が分からない表情で立ち尽くす囚人仲間に、クワンがにやりと笑ってロイの肩にそっと触れた。

        「これは俺のペットだ。誰にも触らせねぇ。」
        そのまま肩を抱き、上半身を起こさせて自分に引き寄せる。

        首筋をぺろりと舐めながら、そばに用意されてあったシーツの包帯を手に取った。

        「おい、支えてろ。おかしな真似するんじゃねーぞ。」
        凄みを利かせて命令すれば、囚人たちは震え上がり、誰もロイを襲おうとはしなかった。

        クワンは慣れた手つきでロイの背中に包帯を巻いていき、そのまま横向きに眠らせた。


        「誰も触るんじゃねーぞ。いいな。」
        そう強い口調で命令し、クワンもロイの隣のベッドにごろりと横になった。


   
        ブラッドレイを始めとする将軍たちの尋問が終わった後、ロイはあの広場にそのまま放置されていた。

        当然、視姦していた囚人達が群がり、意識を失っているロイを無理やり起こし、そのまま犯し始めた。

        「うっああ!」
        「あんな姿見せられちゃ、俺たちの我慢も限界だぜ?」
        背中からは鞭で打たれた傷が血を流し、また精液が身体中に塗りたくられ、その塩気が痛みを更に強める。
        囚人達は構わずロイを仰向けに寝かせ、欲望のままに貫いていった。

        押し込まれる度に、中に溢れている精がどろっと流れ出していく。
        抽出を繰り返される度に背中が擦れ、ロイは悲鳴を上げてその痛みに耐えていた。

        その悲鳴が更に囚人たちの嗜虐心を助長させていく。

        あまりの痛みに、ロイの思考は完全に麻痺し、眼は虚ろで光を失っていった。

        ただ快楽だけを感じる淫欲なペットに成り下がっていた。


        意識を失ったわけではなく、だがあれほど強く輝いていた瞳も暗く澱んでいる。
        瞳の焦点が合わなくなったロイを、囚人達は構う事無く犯し続けた。


        そんな絶望的な中、クワンが自分の棟から駆けつけた。
        看守に賄賂を贈り、または弱みを握っている看守を脅し、クワンは別の棟からロイを連れ戻しに来たのだ。


        群がる囚人達を払いのけ、ロイを軽々と抱え、看守が命令するのも聞かずに黙って自分の棟へと連れ戻す。


        そして背中の傷の手当てをし、今はゆっくり休ませる事が先決とベッドに寝かせた。
        自分の物と宣言してしまえば、よほどの事がない限り誰も手を着ける事はないだろう。


        おかしな物だ…弟の敵の筈なのに…
        何故にこうも魅了されていくのか…


        この男の行く末を見て見たい。本当に国のあり方を変えられるのか…


        死んだ様に眠るロイの髪にそっと指を絡ませると、クワンもそのまま眠りに着いた。




        夜が明け、各房の点呼が終わると囚人達は皆房から出され、食堂へと移動していく。
        クワンも眼を覚まし、横に眠るロイへと眼を向けた。

        ピクリとも動かないロイに一瞬不安がよぎるが、肩で小さく息をしているのを確かめると
        ほっと溜め息をついてロイの肩に手を伸ばした。

        「おい、起きろ。飯だぞ。」

        だがロイは答えず、顔を向けようともしなかった。


        「おい…?まだ寝てんのか?」
        グイッと肩を引っ張りこちらに向かせると、ロイの両目は開いていて、だが焦点があっていない様に虚ろだった。


        「おい…焔の大佐さんよ…?気は確かか?」

        声をかけても何の反応はなく、ただぼんやりと空を見つめるだけだった。


        壊れたか…?散々弄ばれ、責め立てられ、精神が耐えられなかったのか…?
        ロイの額に手を添え、そのまま顔を撫でてもロイは眼を閉じる事無く見つめ続けている。
        
        「どうしてそこまでして部下を守ろうとするんだ…」
        さっさと吐いてしまえば自分は助かるだろうに。
        たとえ見捨てられないとしても、自分の命を失っては意味ねぇだろうが。

        クワンはそっとロイに口付けして、そのままロイを寝かせ房から出て行った。


        「待ってろ。何か食べるもん持ってきてやるから。」

        本当は傍にいてやった方が安心なんだが…食べるもん食べておかないと脱出の時に支障があるかもしれない。
        他の囚人に頼むのは不安もあるしな。 

        クワンは後ろ髪を魅かれる思いで、駆け足で食堂へと向かっていった。




        それから30分と経たない間にクワンは房に戻る。
        だがその中を見た途端に持っていた食事を全て床に落としてしまった。


        「い…ない…?奴が…」
        看守に告げ、房の鍵を開けてもらうと辺りを見回した。
        隠れる場所などない事は解っていてもそう行動してしまう。
        
        ロイが寝ていたベッドに手をやるとほんのりと暖かさが残っている。

        連れて行かれてまだそんなに時は経ってない…誰だ…?

        俺の物と宣言して、連れ去る勇気のある奴はここにはいない。
        では看守か…?しかし看守が奴を連れ出す必要などない筈だ。

        犯るなら所構わず出来る立場にある。連れ出してどうしようと…



        まさか…また誰か来て尋問を始めたんじゃ…


        いかん!あいつにこれ以上の責め苦を与えれば完全に壊れてしまう!!


        「おい!看守!こっから出せ!大佐を何処に連れて行った!」
        「煩いぞ、クワン。何を大騒ぎしている。」

        看守が警棒を振り回しながら近づいてきた。
        クワンは鉄格子を掴み、大きく揺さぶって怒鳴り散らす。

        「焔の大佐はどうした。」
        「今尋問中だ。お前には関係なかろう。」
        尋問…やっぱりか!くっ、一体誰が…

 
        「諦めろ。お前じゃどうにもならん。大体、あいつはお前の弟の敵だろうが。」
        バンと鉄格子を叩くと、看守は高笑いしながら自分の詰め所に戻って行った。

        クワンは鉄格子をぎゅっと握り締め、がっくりと肩を落とす。


        クソ…どうする事も出来ねぇ。

        耐えてくれ…炎の大佐さんよ…




     
        「どうした…マスタング。いつのも瞳の輝きがないぞ?」


        尋問室で両手に手錠をかけられたまま立たされるロイに、黒い影がゆっくりと近づいていく。
        ロイの眼の焦点は相変わらず合わず、近づいてくる人影にも目線を向けようとはしなかった。


        「あれしきの拷問で心を壊したと言うのか?マスタング。」

        隻眼の瞳が怪しく光る。




        「今日は私一人だけだ。腹を割って話そうではないか。」




        この国の独裁者は椅子に深々と腰を下ろし、立ち尽くすロイをじっと見つめている。




        エド達救出作戦のメンバーがセントラルに到着するのは、まだ半日先だった。




        To be continues.

     




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