牙が赤く染まる時  12



        「マスタング…どうした…マスタング…」


        ブラッドレイがロイの名前を呼ぶが、その反応は全くなく…
        ただじっと前方を見つめるだけだった。

        ゆっくりと立ち上がり傍に近寄っても、ピクリとも動かない。
        痣だらけの頬を撫でても瞳が揺れる事も無かった。


        本当に壊れたのか…?それ程弱い生き物だったのか…?


        ブラッドレイは光を失っている漆黒の瞳の中を覗き込む。
        僅かだが揺らめきを感じると、ロイの髪をぐっと掴みあげた。

        「うっあ…」
        「成る程。自己催眠をかけたか。」
        強い痛みを帯びているはずなのにロイの顔は歪む事無く、ぼぉっとブラッドレイを見つめていた。


        自己催眠。外からの強い刺激に耐えるべく、自らに催眠術をかけ何も感じないようガードする術。
        

        何らかのきっかけで術から覚めるが、それは本人しか解らない為、一生そのままの兵士もいる。
        敵に掴まった場合に多く用いられた業だったが、当人にとっては諸刃の剣でもあるのだ。


        「参ったな、マスタングよ。これではどんな尋問をしても効果はない。」
        そしてお前からコードを聞き出すのは至難の業となったぞ?

        そういいながらもまるで楽しそうに微笑みながらロイの身体を撫で回す。


        「お前の解除コードは何だ…?」
        どうすればお前の意識を取り戻せる?
        どうすれば私を突き刺すその瞳の輝きを取り戻せる?

        人形の様にされるがままのロイにブラッドレイは構わず机に押し倒す。

        Tシャツに簡易ズボンの囚人服はたちまち切り裂かれ、傷だらけの肌が露出していく。


        その痣の一つ一つを舌でなぞると、敏感な身体はすぐに反応を示した。

        身体は紅潮し、乳首はぷっくりと起ち、陰茎の先からはトロトロと透明な液体が流れ出す。
        その素直とも言える反応に、ブラッドレイは苦笑する。


        既に半分立ち上がっているロイ自身にそっと手を這わすとカリの部分に爪を立てぎゅっと握り締めた。


        「んっああ…」
        「催眠状態に入ってもここは素直に反応する。くくっ、流石はマスタング大佐。」

        虚ろな眼のまま喘ぎ声をあげるとブラッドレイはそのまま上下に擦りあげた。
        たちまち太さと強度が増し、先走りの汁もドクドクと流れブラッドレイの指を汚していく。


        湿ったその指を秘部にあてがうと、そこはヒクヒクと欲しそうに誘っていた。


        ズブリと指を中に挿入すると、ロイの身体がビクンと跳ね上がる。
        中を乱暴にかき回しても、声さえあげるが明らかに意思の無い喘ぎ声だった。


        「つまらぬ。お前の悲鳴を聞かないと私も面白くない。」

        ズブッと指を引き抜くと、緊張していたロイの四肢はがっくりと崩れ、机に力なく横たわった。
        身動き一つしないロイに、ちっと舌打ちして、それでも身体を撫でまわす手を休めない。


        解除のポイントを探すかのように、ロイの性感帯を刺激していく。
        一向に意思を示さないロイに、ブラッドレイは少し苛立ち始め、机をバンと叩いた。





        「つまんないのならさっさと止めれば?」


        不意に発せられたその声に、流石のブラッドレイも驚き振り返る。




        「エド…か…?」
        「こんにちわ、大総統。ずいぶんとお久しぶり。」
        

        鉄格子の向こうで子供らしい笑顔を見せながら、その金色の瞳は強い光を帯びてブラッドレイを睨みつけている。
        明らかに敵意を見せているエドに、ブラッドレイは苦笑した。


        「何か用かね?それよりも、どうやってここに入ったのかな?」
        ギリッと拳を握り締め、鋭い眼光でエドを睨みつける。

        負けじとエドも睨み返し、二人の間に眼に見えない火花が散っている様だった。
       
        「あんたがくれたこれのお蔭。」
        これを見せたらすんなりと入れてくれた。さすが大総統様様だな。


        そう言いながらポケットから銀の時計を取り出し見せる。
        国家錬金術師の証を見せ、「見学したい」と言えば大抵の公共機関は応じてくれる。

        ましてや欲にまみれた看守が蔓延るここでは、権力や権威に弱かった。


        エドとロイの関係を知らない看守長は、15歳の子供にぺこぺこと頭を下げながらロイの所まで連れて来たのだ。


        ブラッドレイは顔を僅かに歪めながら、エドの侵入を安々と許してしまったその事実に苦笑した。
         
        まさか正面から堂々と進入してくるとは思わなかったな。


        エドは表情を変えず、机に半裸状態で横たわるロイをじっと見つめた。


        「大佐はどうした。何で動かない。」
        先程から俺の声が聞こえている筈なのに何の反応も示さないのは何故だ…

        ガチャンと鉄格子を叩いても、ロイの反応はなく、エドの方に顔を向ける事もしなかった。


        まさか…まさか壊れた…?

        間に合わなかった…?もう手遅れか…?


        「人形と化したマスタングに何の興味もないだろう?」
        ゆっくりとエドの方へと近づくブラッドレイに、エドは両手を合わせようと身構える。

        「あぁ、ここで錬金術はやめた方がよい。」
        「所々壁に描かれてる錬成陣…のせいか…」

        身構えた両手をすっと降ろし、体術の構えを見せ敵意を示す。


        愚かな…この私に立ち向かって勝てると思ってか…


        ニヤリと笑いながら腰のサーベルに手をかけた。



        絶体絶命…の筈なのに、エドの笑顔は消えようとしない。
        この状況を判っていないのか…?


        「あんた…錬金術の事どれだけ知ってる…?」
        「…一応人並みにな。私は錬金術は使えぬが、手駒にいる以上最低限の知識は身につけておる。」

        ふ〜ん…と感心した様に頷くと、エドは両手をパンと合わせる。


        「ここで使えばどうなるか知っての行動かね?」
        愛しいものと一緒に大勢の人間を犠牲にして心中するつもりか?


        じりっと一歩近づくと、エドも一方後ろに下がる。


        笑みを絶やさぬエドに、ブラッドレイも不愉快に思い、サーベルをシュッと引き抜いた。

        
        
        「錬金術は錬成陣無くして成り立たない。俺が両手を合わせるのも錬成陣をこうして作り上げている様なものだ。」
        「それで…?」
        「錬成陣が崩れれば、正しい錬金術はなしえない。」

        小さく響く爆発音の後に、壁全体が揺れるほどの大きな爆発音が響き渡った。        


        
        「何だ!?何が起こった!」


        ブラッドレイが一瞬怯んだ隙に、エドは両手を離し、腕を剣に錬成させた。
        だが刑務所内の錬成陣は反応せず、エドはそのまま鉄格子を切り裂き、ブラッドレイに向かって一直線に突進した。


        「でぇやぁ!!」
        「愚か者が!」

        ガキッと剣と剣とがぶつかり合い、ブラッドレイはそのままエドとの間合いを詰めていく。
        エドはくるっとバク転し、体勢を整えブラッドレイに向かうように見せかけブラッドレイの横を
        通り抜けロイが横たわる机に向かっていった。



        ガキッ!!


        机の脚を切り裂き、傾く机からエドの方にロイの身体が転がっていった。
        その身体をがっしりと受けとめ、両手の手錠の鎖も切り裂く。


        傷だらけの身体を抱きしめ、エドの表情から初めて笑みが消え、ブラッドレイを本気で睨みつけていた。



        「フッ…お姫様を助けに来た白馬の王子様気取りか…」
        「返してもらうぜ…これはあんたの玩具じゃない。俺のものだ。」

        ブラッドレイは動揺もせず、サーベルを掲げてエド達に近寄っていく。
        抱きしめるその腕に力を込め、エドは両手を合わせて床に手を置いた。


        青白い閃光が光り、ブラッドレイの周りの床が切り立ち、行く手を遮った。


        その間にエドは立ち上がり、ロイを抱えて出口へと向かう。
        だがブラッドレイのサーベルは遮る床をも切り裂き、エドの眼の前にその矛先を突きつけた。



        「私から奪えると思うのか…?」
        「勿論。でなけりゃあんたなんかにこんな喧嘩を吹っかけたりはしないさ。」

        この国の独裁者の横っ面を叩く。相当な覚悟が必要だって事ぐらい承知している。


        ドーンと爆発音が立て続けに起き、火災も発生したのか、刑務所内にサイレンが響き渡る。



        だがこの一角だけは、静かに時が流れているようだった。
               


        To be continues.

     




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