牙が赤く染まる時 18
暗闇のテントの中、クチュクチュと言う卑猥な音が鳴り響く。
「あっ…んん…」
「ここ。跡が付いてる。」
誰に犯られた?大総統?グラン准将?
身体中に付けられた所有印を、意地悪く指でなぞっていく。
そこを押さえられる度にピクンと体が震え、反応を示す。
恐怖、はある。出来る事ならエドを突き飛ばして逃げ去りたい。
だが両手を拘束され、身体に跨れてはそれもままならない。
何より…エドが触れるその感触が心地よいものに感じられた。
「大佐…まだ恐い…?俺、このまま大佐を抱いてもいいの?」
「エド…」
答える代わりに唇を重ねた。
「はっう!!」
異物が進入する感覚に、一瞬ロイの体が強張る。
だがすぐに黒髪を優しく撫でられ、その行為がロイの恐怖を薄めていった。
片足を掴まれて大きく身体を開かされる格好になっている。
エド自身が静かに奥へと挿入していく。
はっ、はっと息も荒く、だが確実にエドを自分の中へと受け入れていった。
そして終に根元まですっぽりと咥え込むと、先端が最奥のポイントを焦らすように刺激していた。
「エ、ド…あっんん…」
「何?どうして欲しいの?」
俺、男抱くの初めてだし。女だって抱いた事無いし。
「SEXの仕組みは知っているけど、実践は初めて。教えてくれる?大佐。」
挿入したまま一向に動こうとしないエドに、ロイはただ焦らされるだけ。
ガシャガシャと腕を動かし、腰を揺らしてエドを妖しく誘い出した。
「う、動いて…エド…早く…」
「動けばいいの?」
小さく笑った様な口調で、エドは愛しい人の願い通りに腰を一度引いていった。
「う…あああ…」
ズルリと抜かれる感覚に、ロイの身体は完全に火が点き、恐怖も忘れて喘ぎ始める。
カリの部分まで引き抜くと、エドはそのまま一気に奥へと突き入れた。
「ひぃああ!」
「うっ、きついよ!大佐。もっと緩めて!力抜いて!」
首を振って痛みと快楽に耐えるロイに、エドの言葉は届かない。
やれやれと肩をすぼめながら、エドは液を流し続けているロイの陰茎を指でそっと撫でた。
ビクンと体が震え、たちまち秘部への力が緩んでいく。
ゆるくなった所をエドはすかさず出し入れを繰り返し、ロイの肩を押さえ込み奥へと突き上げた。
「やああ!エド〜!」
「気持ちいいでしょ?俺とすると。」
ロイの眼から生理的に涙が流れ、その雫をエドが唇で拭う。
少し安心した表情で見つめるロイに、エドはふっと笑って耳元で囁いた。
「刑務所内で見ず知らずの男に犯されるのとどっちが気持ちいい?」
たちまちロイの目がカッと開く。
「うああっああ!」
悲鳴をあげ、身をよじってエドから逃げようとするが、繋がったままの身体は動く事さえままならない。
それどころか、自分の中でエド自身が揺れ動き、ロイの膣内を擦りあげる。
体中が震え、悪夢が脳裏に蘇ってくる。
薄汚い男達が自分に覆いかぶさってくる。
孔と言う孔を塞がれ、ひっきりなしに白濁液を飲まされ、中に注がれた。
身体中にまるでヒルの様に舌が這い回り、全身舐められていない所など無いくらいだった。
終わる事の無かった悪夢。
嫌悪感でいっぱいになっているはずなのに、身体は快楽を求め、何度となく頂点に達していく。
自分に近づいてくる男は皆、自分を犯していく。
迫り来る恐怖を心の奥底に押し込んだ。
蔑む言葉に、笑って答えて余裕を見せ付けてやった。
押し潰されそうなプレッシャーに、唇を噛み締めながら黙秘を貫いた。
私は…この試練に耐えて…耐え抜いたはずなのに…
「エド……」
「そう…あんたは耐え抜いた筈なんだ。」
だから恐くない。俺はあの刑務所の男たちとは違う。
俺だけじゃない。ここにいるもの皆…
だからあんたの願い通りにする。
このまま止めて欲しいのなら俺は止める。
「あんたの思うままに…」
静かに眼を閉じ息を整えるロイに、エドは優しく髪を撫でてキスを落とした。
「エド…イかせてくれ…」
「いいよ。天国まで昇りな。」
きゅっと膣内を締め上げると、エドの顔が少し歪み、そしてすぐに恍惚になる。
ズッ、ズッと中を突き上げていくと、ロイの身体は小刻みに震えだす。
空いている手で陰茎を掴むと、動きに合わせて擦りあげる。
ガシャンと手錠の音をさせ、ロイが激しく身をよじった。
「ふああっ!イクっ!」
「イっていいよ。俺、もうちょっとかかりそう。」
クスッと笑いながらグンと奥へと己を進入させる。
最奥のポイントに当たったのか、ロイの身体がググッと反り返ると、中心の先から白い液体が飛び散った。
「はぁあっ、はぁ…」
「はい、よく出来ました。」
にっこり笑ったエドが、身体中に飛び散った精液をなぞりロイの頬に付ける。
ぼんやりと見つめているロイにウィンクをすると、うっすらと差し込む光に向かって叫びだした。
「いいよ!入ってきなよ。とりあえず一回イかせたから。」
何を言っているんだ?と言う表情でロイは光のある方向に眼を向けた。
ばさっと布切れが舞い上がり、テントの入り口らしき所から、人影が二つ浮かんでいた。
「流石はエドワードさん。よく恐がらせずにイかせましたね。」
「へへ!俺のふか〜〜い愛情のお蔭。」
ネ、大佐。
そう微笑みながらまだ繋がったままのロイの頬にキスをする。
今のは…アイザック!?
そう思った瞬間、ロイの中から恐怖が湧き上がっていった。
また…いい様に犯される…!?
「や、何故…っ、エド!離せ!」
「まだまだ。このままじゃ俺だけしか大佐に近づけない。」
ま、俺はその方がいいんだけどね。
硬直しているロイの中に、エドがグンと突き進む。
その刺激に、否応無しに身体が震え、声をあげてしまう。
「あ、んん、エド!待て…」
「もう一人…あんたの病気を治す人がいる。」
今から俺達二人で大佐を愛してあげる。
大佐の中に刻み付けられた傷跡を、俺達が舐めてあげる。
「大佐に触れようとする者達から俺達が守る。だから恐れないで…」
俺達はあんたを決して見捨てたりはしない。
アイザックとは違うもう一つの影が、ゆっくりと近づいてきた。
「大佐…」
一言発したその声に、ロイの漆黒の瞳が激しく動揺した。
「ハ…ボック…」
エドとは違う、大きな手がロイの額を優しく覆う。
柔らかい唇が触れられると、全てを受け入れる様に瞳を閉じる。
拘束していた両手の手錠を外し、ハボックはロイを背後から抱きしめた。
大きな手は胸を弄り、首筋にキスを落としていく。
「っああ…」
「大佐…このまま続けてもいいっすか?」
「俺も…まだ抜かないでもいい?」
二人分のキスの嵐が、ロイの全身を覆っていく。
ああ…いいよ…このまま…
最後まで答える前に、エドがその唇を奪う。
ハボックの手は全身を撫で、ロイの陰茎をきゅっと掴みあげる。
荒い息遣いだが次第に落ち着いていくロイに、アイザックは小さく微笑んでそのままテントを後にした。
To be continues.