牙が赤く染まる時 4
セントラルに向かう列車の中でも、ロイへの尋問は続いていた。
客車と客車の間に連結された貨車の中で、ロイは天井から吊るされた手錠に両手を拘束されていた。
上半身は軍服を着ていたが、下半身は曝け出している。
その下腹部には下級兵士が数人群がっていた。
眼の前にグラン准将が椅子に座ってロイの痴態を眺めていた。
「ふっああ…」
「どうだ?話す気になったかね?」
自慢の髭を撫でながらゆっくりとロイに近づいていく。
グランが来ても兵士達は気にも留めず、夢中でロイの陰茎や後孔を貪っていた。
一人の兵士は裏筋から先端にかけて丹念に舌を這わせ、もう一人は後孔に指を数本入れ中を掻き回している。
グチュグチュと卑猥な音が貨車内に響き渡り、まるで耳から犯されているようでもあった。
虚ろな眼で自分よりはるかに階級の低い兵士達を見つめるロイを、グランは髪ごと掴みあげた。
「あっああ!」
「どうだ、イキたいだろう?挿れて欲しいのだろう?だったら全てを吐きたまえ。」
テロリストの名前を。
コード番号を。
そして暗号名を
「はっんん…」
ぐっと口を結ぶロイに、グランは苦笑しながらその唇を舐め回す。
「貴様は強情で手強いな。だからこそ閣下自ら尋問するとおっしゃっているのだがな。」
荒い息と迫り来る快楽の中で、ロイの瞳が強く揺れる。
「あなたが…軍に反旗を翻していないとは限らないでしょう…」
「何だと!?」
「私はまだ、真実を把握しておりません…誰が味方で誰が敵なのか…」
それが解るまでは私の情報を話す訳にはいきません。
私の部下がテロリストと行動を共にしたとは限らない。
もしかしたら今軍と名乗っているのは反政府軍なのかもしれない。
それを統率しているのがあなたなのかもしれない。
「私は、私の真情の元、誰に何を話すかを判断します。」
下らぬ尋問は時間の無駄。早々に解き放って貰いたいですな。
「そうすれば私は自分の無実と部下の真実を晴らして見せますよ。」
ジャラリと鎖の音を立てながら不敵に笑うロイに、グランの頭に血が昇っていく。
バシッバシッと大きな音を立ててロイの頬を殴りつけると、その反動でロイの身体は大きく揺れた。
「貴様!!言わせておけば!」
グランの怒号に流石の兵士達も一瞬動きを止めた。
だがグランはその兵士達に眼を向け、烈火のごとく怒り出す。
「何をしておる!もっと責め立てろ!屈辱と苦痛を与えるんだ!」
真っ赤な顔で怒鳴りつけるグラントは対照的に、冷ややかな眼で見つめるロイ。
兵士達は僅かに躊躇したが、乱れた髪から覗くその眼に欲望が刺激され、再び白い身体に吸い付いていった。
「んっ…」
すっと立ち上がり震える唇を重ねると、ロイは戸惑う事無く舌を突き入れる。
驚く兵士をよそに、ロイは咥内で繰り広げられる攻防に巧みな技を駆使していく。
絶妙な舌捌きに兵士の腰は砕け、ガクガクと足を鳴らしてその場に座り込んでしまった。
「しょ、将軍…自分はもう…」
ズボンの前をしっとりと濡らしてしゃがみ込んでいる兵士に、グランは侮蔑の表情で見据えていた。
ロイを見れば、屈辱など微塵も感じられぬ勝ち誇った表情で微笑んでいる。
上を目指す為に数多くの上官と褥を共にしたロイにとって、こんな青二才の兵士を
腰砕けにさせるなどお手の物なのだ。
その顔にグランの堪忍袋の緒が切れたのか…
「貴様!!もう許さんぞ!中央に到着する前にわしが責め殺してくれるわ!」
未だ纏わり付いているもう一人の兵士をなぎ払うと、グランはロイの腰をグンと掴み
先走りが流れ出ている陰茎を太い手で掴みあげた。
「はっああっ!」
「叫べ!喚け!命乞いをしろ!」
閣下のお手を煩わせるまでもない!わしの手にかかれば貴様とて…
だがロイは微笑を絶やさず、グランの唇にそっとキスを落とすと、耳元で囁いた。
「時間切れのようです…准将閣下。後30秒で到着です。」
その言葉と同時に列車がブレーキをかけ、ガタンと揺れながらスピードがみるみる落ちていく。
ロイの宣言通り、30秒ほどで列車は停まり、セントラル到着を知らせるアナウンスが鳴り響いた。
「貴様!!」
「後は中央司令部でお話を伺いましょうか。」
静かに…だが眼が眩むほどの輝きを放つ瞳に、グランは拳を振り上げ殴りつけた。
2〜3発顔を殴り、揺れる身体を押さえつけ腹を蹴り上げる。
ごほっと胃液を吐き出し口端から血を流すロイに、容赦なく拳が振り落とされた。
「止めろ!准将!殺してはならん!」
威圧的な空気が貨車内を包み込み、グランははっとなって振り返った。
「ブラッドレイ…大総統閣下…」
震える腕を額に寄せ、敬礼をかざす。
鋭い眼光に身動き取れなくなり、その場に立ち尽くしてしまった。
ゆっくり近づく隻眼の独裁者に、グランはまるで仔犬の様に怯えていた。
「愚か者が!マスタングは情報を握っているのだ!それを引き出さず殺しては何の意味もなかろう!」
「はっ…しかし…」
「後は私が引きうけよう。ご苦労だった。」
何かを言わんと身を乗り出すが、ブラッドレイのその一言で全てを飲み込まざるを得なくなる。
グランは拳を握り締めながら、背中を向けたままこちらを見ようともしない独裁者に敬礼をかざし
貨車から出て行った。
後に残されたのは、未だ吊るされたままのロイと隻眼の独裁者。
受けた暴力で息も荒いロイにブラッドレイはゆっくり近づいていく。
「元気そうでなによりだ、大佐。」
「閣下も…ご尊顔を拝謁でき、誠に恐悦至極…」
ごほっごほっと咳き込み、口から血を吐き出す。
白い肌に染まる赤い血が、ロイの妖艶さを寄り一層引き立たせる。
「色々話して貰うぞ…マスタングよ…」
そう言いながら漆黒の髪に指を絡ませ、まるでペットを撫でる様に優しく触れていく。
きっと睨みつけるその瞳に、ブラッドレイは小さく微笑んだ。
何と言うゾクゾクするこの緊張感。
これから繰り広げられるだろう貴様と私の駆引き。
それを思うと身も心も躍りたくなるほどだよ。
「まずは第3中央刑務所で旅の疲れを癒して貰うとするかね。」
ぱちんと指を鳴らすと側近の兵士が鎖を外し、倒れこむロイを抱えて外の護送車へと連れて行く。
第3中央刑務所。
そこは凶悪犯が収容されている悪名高い刑務所だった。
To be continues.