牙が赤く染まる時 6
散々身体検査をされ、ロイは既に立つのもやっとな程体力を失っていた。
囚人服を着せられ、両手に手錠をかけられ、やっと開放される。
ぐったりしているロイを両脇から看守が抱え込み、監獄房へと引きずっていった。
「A-3棟看守のジムです。ロイ・マスタングの部屋の鍵を。」
「ご苦労さん。へぇ〜こいつがそうか…」
看守長は舐め回す様にロイを見つめ、ニヤリと笑いながら鍵束を看守に渡した。
所長からは丁重に扱えと指示が出ているが…
新人の囚人は色々洗礼を受けなければならない。
自分らはそれを止めに入らなければいけないのだろうか…
「ま、こんな別嬪さんじゃ、すぐに手がついてしまうだろうけど。」
ロイの髪をぐっと掴んで、自分のすぐ傍まで近づけさせる。
小太りの男は息が臭く、ロイは嫌悪感で顔が歪んでいく。
「さっさと情報を吐いちまいな。そうしたらすぐに釈放させてやるよ。」
にたぁ〜と笑いながら更に髪をぐっと掴みあげ、歯を喰いしばっているロイの唇をべろんと舐める。
思わず顔を逸らして、きっと睨みつける。
本来なら直立不動で話さなければならない階級の差。
まして自分は国家錬金術師。将来も有望と目されていた筈だ。
こんな下衆にいい様にされるほど私は落ちたのか…?
「クスクス、いいねぇ〜その眼。その反抗的な態度。こいつは一番奥に入れてやろう。」
「あそこにですか!?しかし所長の指示では独房にせよと…」
「うるせーなー。他の囚人どもに顔見世しなきゃいけねぇんだ。この方が手っ取り早いぜ。」
その眼が何時まで保てるかな…?
鍵束をジャラジャラ鳴らしながら、看守長は自らロイを監獄棟に連れて行く。
ずらりと並ぶ檻の中には多くの猛者どもが罵声を浴びせていた。
「ひゅ〜〜いいねぇ!新人さんか!」
「ほら、こっち見ろよ!可愛がってやるぜ!」
馬鹿にするように笑う声に、ロイは屈辱を感じながらも無視を決め込む。
こんな輩の相手をする必要はない。
私が注意を払わねばならないのはただ一人…
握っている情報は、どれだけの価値があるのだろうか。
これから訪れるだろう屈辱に耐えねばならないほどの情報なのだろうか。
今の軍に報告するべきなのか否か…
まだ…判断がつかないのは事実。ではどうするべきか。
「ほら、さっさと入れ。」
ぐんと押されてロイは一番奥の房の中に突き倒された。
よろけながらも体勢を整え、ぐっと唇を噛み締めながら両手を看守長に向けた。
「はぁ?何やってんの。」
「何って…手錠を外して…」
看守長は鍵束をくるくる回しながら鼻で笑うように檻を叩いた。
「反抗した戒めだ。明日の朝までその格好でいな。」
ニヤニヤと笑うその顔には明らかに欲望も含まれている。
「馬鹿を言うな!監獄房に入ったら両手の拘束を取るのは常識だぞ!」
「常識?それは俺が決める。ほら!新人だ。可愛がってやれ!」
背後から感じる数人の男の気配。
「へぇ。随分威勢のいい子が入ってきたじゃないか。」
太い声が背中に突き刺さるように感じられた。
ロイが振り返ろうとした時、ガシッと頭をつかまれ、そのまま鉄格子に押し付けられた。
「看守さんよ?こいつと遊んでもいいの?」
「あぁ。ここのルールを教えてやれ。」
「だってさ。まずは皆とご挨拶だ。」
ロイの腕を掴み、そのまま振り回すように檻の中央に向きを変える。
4人の男が舌なめずりをしながら立ち上がり、自分に腕を向けてきている。
「ま…て!私は…」
「ロイ・マスタング大佐。焔の錬金術師。名前ぐらいは知ってんだろう?」
貴様らは極悪非道のテロリストだったんだ。こいつに掴まった奴もいるんじゃないか?
4人の囚人が一斉に声をあげる。
「知ってるぜ!てめぇ、俺の組織を壊滅状態にしやがった。」
「俺の親友がいたグループもやられた。俺の仲間も殆どこいつが指揮していた部隊にやられたんだ。」
ロイの腕を掴んでいた男も、首筋に息を吹きかけながらニヤリと笑う。
「俺を忘れちゃいねぇだろ?マスタング大佐。」
お前の焔は俺の弟を焼き殺した。俺の眼の前で。
どういう訳でこんな檻の中に入れられたか知らねーが、ここに来た以上、先客に奉仕するのが慣わしだ。
殺さず、生かさず…快楽だけを感じればいいようにしてやるから。
「はな…せ…」
5つの殺気を全身に受けながらも、そのプライドだけは失わない。
男が背後からロイの前を掴むと、静かに優しく揉み解す。
ズボンの中に手を差し入れ直接触れると、ロイの身体がビクッと震えだした。
他の4人もロイに群がり、シャツをたくし上げ、ズボンを剥ぎ取っていく。
露になった双丘の谷間に指を差し入れると、グチュッと音を立てて中へと進入していった。
「おい、もう準備万端じゃねーか。それとも既にやられてきたか?」
「違いねぇ。こいつ妙に色っぽい顔してやがるからな。」
「仲間の間じゃ、こいつを生きて捕えて死ぬほど突っ込みたいって輩が大勢居たんだぜ?」
まさかこんな檻の中で多いが叶うとは思わなかったぜ。
高笑いをしながら、男達はロイの全身を舌で犯していく。
床に這い蹲らせ、腰を高く上げさせ、リーダー格の男がいきり立ったものを秘部にあてがった。
「んっああああ!」
「いい声だ。死んでいった同胞にも聞かせてやれるよう大声で鳴けよ。」
身体検査で受けた液が充分に残っていて、男のモノを難なく受け入れていく。
思わずあげた喘ぎ声に興奮したのか、別の男がロイの咥内に肉棒を突き刺した。
前と後ろから一斉に突き上げられ、ロイは苦痛と屈辱で眼を閉じる。
他の男がロイの下に回りこみ、プルプルと揺れる陰茎にしゃぶりつく。
もう一人は己の肉棒をロイの身体に擦り付け、全身を白く汚していく。
看守長はその様子を暫く見届けながら、フンと鼻で笑ってその場を立ち去っていった。
「あっああっ…」
「本当にいい身体をしてやがる。病み付きになりそうだ。」
「こいつ、おしゃぶりも相当上手いですぜ?おい、何処でこんな技覚えたんだ?」
「どうせ上官相手に出世の為に足開いてたんだろ。」
そして俺達を追い詰め捕え、壊滅状態にしてまた出世する。
リーダー格の男がぐんとロイの奥へと突き上げると、ロイは背中を反らして悶え狂う。
もう既に何回とイかされている。
東方司令部と列車内でグラン准将と下士官に。
検査室でブラッドレイ大総統と看守達に。
だがそれらは皆軍の関係者だった。だからまだ我慢できる。
だがこれは…こいつらは…
自分が捕まえたり、壊滅状態にさせたテロリスト達。
上から見下し、容赦なく監獄へと送り込んでいった。
そんな奴らに今良い様に喘がされ、悶え狂わされ、奴隷の様に扱われる。
誇り高き焔を持つ者としては耐えがたい屈辱。
これも試練の一つなのか…
あのコードと暗号名を言えばここから開放されるのか…
あの男の名前を言えば出して貰えるのか…
ハボックとの関係を言えば…
「…ハ…ボ…」
漆黒の瞳から涙がつぅっと零れ落ち、ロイはそのまま瞳を閉じた。
「…るよ…」
「…?なんだ??今なんて言った?」
ロイの周りに群がっていた男達がいまだ押さえきれない欲望に翻弄されながら次々とロイを犯していた。
今まで抵抗の意思を示していたロイの動きがふっと止まる。
「信じるよ、お前を。ハボック。」
とことん信じて、破滅するのも悪くない。
ロイは力なくうな垂れていた両腕を、自分に覆いかぶさっていたリーダー格の男の首に回す。
自分に引き寄せ、足をぐっと広げて更に奥まで誘導していく。
溺れるがいい。私の身体に。
多くの上官がそうだった様に、私無しでは生きられなくしてやろう。
私を組み敷くならそれは私が屈服するのではない。
生き残る為に…貴様らを味方につけてやる。
貪るように男の唇を奪い、舌を絡め快楽を高めていく。
ぴちゃぴちゃという音は他の男たちを耳から刺激し、我先にロイの唇を奪いにやってきた。
自ら腰を振り、男の陰茎を肉壁がぎゅっと締め上げるその快感に、男は思わずうっと呻き上げた。
ドクンと大きく脈を打つと、ごぼごぼとロイの中に大量の精を吐き出した。
ハァハァと荒く息をつく男とは対照的に、ロイは余裕の笑みを浮かべ、舌を出して上唇を舐める仕草をする。
「まだ…まだ…足りない。次は誰だ…?」
誘いこむ様な手つきに、フラフラと別の男がロイの中へと吸い込まれていく。
間髪いれずに挿入すると、ビクビクと身体を痙攣させて反応を示す。
次から次へと攻め立てる男たちを、ロイは気丈にも全て受け入れた。
監獄内での宴は明け方まで続く。
そして夜が明けたその日から、ブラッドレイによる尋問が始まるのだった。
その頃、アイザックがいるテロリストグループのアジトでは、新たな仲間の受け入れに喜んでいた。
「ようこそ、ホークアイ中尉。我らのアジトへ。」
「歓迎は結構。ハボック少尉はいるのかしら。」
「中尉!!やぁ!良く来てくれましたね!」
部屋の奥からハボックがタバコを吹かしながら片手を挙げてホークアイに近づいて来た。
バンバンバン!!
いきなりホークアイがハボック目掛けて発砲し、周りのテロリスト達に緊張が走る。
ハボックは壁際に身動きできずに立ちすくみ、咥えていたタバコがポロリと落ちた。
ハボックの顔の真横の壁には銃痕の跡がくっきり残っている。
「い、いきなり何すんですか!中尉!」
「大佐が殴られていた分のお返し。理由はどうあれ、今大佐が苦しんでいらっしゃるのは
あなたのせいでもあるんだから。」
カチャッと銃をしまうと、きりっとした顔を崩さず、アイザックに目線を向けた。
「で、どうするおつもりですか?」
「そうですね、まず2にお伺いを立てないと。」
「2?あなたがリーダーではないのですか?」
アイザックはにっこりと人懐こい笑顔を浮かべ、首を横に振った。
「いいえ、我々は大佐をリーダーとして迎え入れ、その大佐が最も信頼する部下を2にする事にしたんです。」
「最も信頼する部下…?」
「誰が部下だ!!冗談じゃねぇ!!」
ハボックの奥から聞こえてきた声に、ホークアイは思わず驚愕の表情を浮かべた。
まさか…
「やぁ、ホークアイ中尉、お久しぶり。大佐のお守りは何時も大変だな。」
金色の瞳がきらりと揺れ、ずっしりと重い右手で握手を交わす。
「エドワード君…あなたが…」
「そ。アメストリス国解放戦線『赤い牙』の副リーダーって訳。」
金色の三つ編みをピンと指で撥ねて、アイザックの腰をパンと叩く。
「こいつに騙されてそう言う事になった。がなった以上、手は抜かねぇ。本気でいく。いいな中尉。」
15歳の子供なのに、この強い口調と態度。
だが不思議と憤りは浮かばなかった。
「はっ!何なりとご命令を。」
ビシッと敬礼をかざすと、後ろで控えていたブレダたちも同じ様に敬礼をかざす。
エドはにやっと笑いながらテーブルの上に広げられている第3中央刑務所の地図を掴み上げた。
「ではまず、我らがリーダー奪還だ。」
ここにエド対ブラッドレイのロイ奪還の戦いの火蓋が落とされた。
To be continues.