緑色の恋心 4
グラン准将…?何故ここに…
何故と思うほど私は動揺していたのか。
セントラルから逮捕命令が出ていたんだから、グラン准将が来てもおかしくはないんだ。
しかしよりによって何故あいつが…
エドは!?
あのキメラはどうしているのか!
キメラの居た部屋に向かうが、葉や幹を揺らす事無く大人しくしていた。
蔦も普通の植物のようにしな垂れている。
とりあえずは大丈夫だな。
私はガウンの襟をなるべく正し、声のする方へと足を向ける。
私の気配を感じると、兵士達が一斉に銃を突きつけた。
慌てず両手を挙げ、階級を告げてグラン准将の方に視線を向けた。
ゆっくりと近づく大柄な男に、私は心の中で思いっきり嫌な顔をする。
勿論、表情は変えないさ。
「グラン准将閣下!こんな所にこんな時間にご苦労様であります!」
平たく言えばこんな時間に来るなんて遅すぎるぞ。中央司令部は何をやっているんだ。
「マスタング大佐…?こんな時間にこんな所で、しかも何て格好かね?」
鼻で笑う様に見下す准将に、私は嫌々ながらも敬礼をかざす。
「研究所の中を調べていたところ、誤って薬品を被ってしまい、不本意ながらここのシャワー室を借り、
今出てきたところであります。」
「部下も残さず一人で調べていたのか?」
「はっ、私でしか調べられない事があり、それは引き続き調査を。他はまた明日再開する予定であります!」
「ほぉ、それはまた随分と仕事熱心なものだな。」
目の前まで近づく。嫌悪感で眉が歪む。この男から出る体臭は大嫌いだ。
「中央からの命令ですから。」
「ここでいい点を取ればセントラルへの出世も叶うという事か?で、ルカー博士は見つかったのか?」
「いえ…我々が来た時にはもうもぬけの殻でした。」
「ふん、取り逃がしたのか。やはりお前は無能だな。」
ごつごつしたその腕を、ガウンの胸倉に回す。
両襟を掴むと、いきなり左右に引き剥がす。
「何をっ!?」
そう言って私は小さく顔を歪ませた。
グラン准将が私を引き寄せ、文句を言いたかった唇を塞いだのだ。
体臭が絡みつく上に、きつい口臭が私を狂わせる。
差し込まれる舌に対応を迫られる。逃げる事も出来ない。
そう…受け入れるしかない。
星がたった一つ多いだけなのに。
「他の者は引き続き調査を。わしはマスタング大佐の報告を聞く、いいな。」
グラン准将の部下達は、皆一斉に敬礼をすると、くるりと向きを変え、別の部屋へと行ってしまった。
残されたのは、私のこの男だけ。
肌蹴た胸から手を滑り込ませ、執拗に乳首を弄っている。
嫌悪感に苛まれるが、性感帯でもあるが為に感じてしまう。男と言うのは厄介なものだ。
それを自分のテクニックのお陰と勘違いしている馬鹿を相手にしなくはならない。
さっさと終わらせて、私は錬成陣を写し取らなければ…
グラン准将がひょいと私を持ち上げ、横抱きで隣の部屋へと連れて行く。
まるでお姫様のように抱きかかえられ、少しプライドが傷ついた。
「グラン准将閣下……どこで…」
犯すのですか、と言いかけて止めた。この男を悦ばせるだけだ。
口を真一文字に閉じると、嗜虐心を煽ってしまったのか、グラン准将はこの上なく嫌な笑顔で笑いかける。
「部下の目の前でやってもよかったのだがな。貴様はその方が感じるだろう?」
「だが部下に見せるとこの後の仕事に差し支えるからな。今回は勘弁してやろう。」
ニヤニヤ笑いながら連れてこられたのは、あのキメラが居る書斎。
博士の物なのだろうか、大きな机の側に私を降ろし、机に手を付くような格好をさせられた。
その真横に…あのキメラが…鋼のが居るのに…
「准将閣下…ここは…」
「何をおびえている。ここには誰も居ないぞ。それに机でやるのは日常茶飯事ではないか。」
背後から准将の腕が忍び寄り、ガウンの隙間から何も履いていない下腹部へと伸びていく。
情けなく萎えている陰茎を掴むと、まるでテクニックもない手つきで擦りあげていった。
女を抱く時でもこんな風に粗こつなのか…?
グラン准将の奥方様は苦労したのだろうな…
右手を下腹部に、左手を胸に回し、鼻息を荒くしながら首筋に吸い付く。
声を出したらあのキメラが気が付くのではないか…
そう思い必死で声を殺そうと唇を噛み締めた。
「部下を気にしているのか?貴様らしくないな。」
ぎゅっと陰茎を握るとわざとらしく先端に爪を立てた。
「ひっあああ!」
「そうだ、その声を聞かせろ。」
太い足を間に挟み、私の両足を大きく開かせる。
胸を弄っていた左手を後孔に回し、ぐぐっと指を突き入れた。
「はぁああ…」
「ほぉ?随分湿っているぞ?風呂上りだからか?」
準備万端だと判断したのか愛撫もそこそこに指を引き抜くと、ガウンの裾をたくし上げ腰を密着させてきた。
私は次に来る衝撃に耐えるべく、机の淵に指をかけた。
秘部にぬるっとして冷たく硬い感触が当たる。
それがメキメキと音を立て、入り口を押し広げていく。
「うっ、ああ…」
「行くぞ。力を抜け。」
命令口調でそう告げると、私の腰を一気に引き寄せた。
「うあああああ!」
「相変わらずいい締め具合だな、マスタング大佐。」
乱暴に腰を打ちつけ、自分の快楽だけを味わっている。
これじゃ私は辛く不快なだけだ。
まだキメラの鋼の方がずっと善かったぞ…
「あっうんん…」
「東の田舎に来て早々に貴様を味わえるとはな。わしは運がいいのか?」
くすくす笑いながらピストン運動を繰り返す。
私は逆に運が悪い。多くの上層部の中でもあんたは最低のテクニックの部類に入る。
呼び出しを受ける度に最悪の夜を迎えているんだ…
私が演技で善がって見せてると言うのにそれすら判らず、自分のテクが優れていると自惚れる。
ブラッドレイ大総統閣下は最高のテクの持ち主だったな…
などと考え、意識を集中させていなかった所為か、あまり喘がないのが気に障ったのか。
グラン准将が腰を掴んでぐっと上体を起こさせた。
角度が変わり、中の肉棒が別の肉壁を擦り、思いがけずいい気持ちになっていく。
「ふぁああ…」
「どうだ。気持ちよかろう。貴様は淫乱だからな。これぐらいの刺激では足りんか?」
ジュッジュッと突き上げ、不安定な体位は次に来る刺激が判らず、予測が付かない。
それが不思議と快感へとつながり、全く持って不本意ながら私はこの男に感じてしまっていた。
「い…いい!ああ…」
「そら、もうすぐイクぞ。」
腰の動きが早くなり、中で肉棒が暴れまくる。
グラン准将が中でイクより前に、私が果ててしまった。
「んああっああ…」
「何だ?わしより先にイッたのか!」
ハァハァと力なく机にうつ伏せになっていると再び身体を起こされる。
そのまま床に押し付けられ、四つん這いの格好をさせられた。
そう…目の前にあのキメラが…
私を見つめているかの様にじっと…動かない。
顔を強張らせていると、背後にグラン准将が圧し掛かり、再び動きを再開する。
まるで情事をエドに見られているようだ…
「はっああっあ!」
「ほら、もっと腰を浮かさんか!」
「将軍…もう…」
「はっ、堪え性のない淫乱な奴め!」
吐き捨てる様に侮蔑の言葉を投げ、グラン准将は大きく最奥へと突き上げる。
ドクンと震えながら中に大量の精が放たれた。
頭を押さえつけながら己の欲望を残らず注ぎ込むと、グラン准将はずるりと引き抜く。
支えを失った私の身体はそのまま床に倒れこんだ。
キメラは!?エドは?
必死の思いで顔を上げ、キメラの方に目を向ける。
葉は動く気配はなく、穏やかそのものだった。
少しほっとしながら、ゆっくりと身体を起こす。
早く錬成陣を写生しなくては…
シュルッシュルッ…
私の気配を感じたのか、小さく音を立てて蔦が一本私の方に伸びてきた。
グラン准将に見えないよう、私はとっさに身体を起こし、蔦を隠す。
蔦が私の頬に触れ、そのまま身体に触れてくる。
「鋼の…?心配してくれたのか?私は大丈夫だから…」
今は大人しくしていてくれ…もしグラン准将に見つかったら、研究所に送られてしまう。
そう心で話しかけ、蔦をぎゅっと握り締めた。
その手に…自分の精が付いていた事も知らずに。
途端に蔦が数本、幹から現れ、私の身体に巻きついてきた。
驚き焦る私を尻目に、身体中を撫で回す。
「や、止めないか!鋼の…」
出来る限り小声で言ったのだが、蔦にそれが伝わるはずもなく。
後孔に蔦が進入した時、身体中を這っていた蔦の動きがい一斉に止まった。
エド…?どうし…た…?
私の中に溜まっていたものを確かめるかのようにそれを拭い取りながら、蔦は中から這い出てきた。
蔦の先にねばっとした白い液体が絡み付いている。
蔦がそれを私の目の前に持ってくる。
まるでエドが私を責めている様だ。
これは何だ…と…
目を細めて答えに戸惑っていると、背後からグラン准将の声が響き渡る。
「マスタング大佐!何をしておる!さっさと状況を報告せんか!」
服を調え、水でも飲んでいたのか、さっぱりとした顔のグラン准将が私の方に近づいてきた。
駄目だ…今ここに来たら…
「何をしている!早く来んか!」
グラン准将が私の髪を掴み、ぐいっと引っ張りあげる。
その拍子に絡み付いていた蔦が数本ぷちんと引きちぎられた。
「鋼の!?」
「何を言ってる?」
グラン准将が私の前を覗き込む。
蔦の先端が一斉にグラン准将の方を見上げていた。
「…?何だこれは…」
「准将、お下がりくださ…」
最後まで言う前に、キメラが激しく揺れ、幹から一斉に蔦が飛び出した。
数十本にもなる蔦がグラン准将めがけて一直線に伸びていく。
「何っ!?」
「止めろ!鋼の!」
シュッとグラン准将に勢いよく伸びてくる蔦の前に、私が立ちはだかる。
あの勢いなら身体中を切り裂かれるかもしれない。
だが、もしグラン准将に傷を負わせてしまったら、間違いなくこの場で処分されてしまうだろう…
私の身はどうでも…エドワードは守らなくては…
だが蔦は私の目の前でぴたっと停止した。
一瞬の躊躇の後、蔦は私を飛び越え、背後のグラン准将にめがけて突き進む。
「こいつ!このわしを襲うつもりか!!」
自慢のグローブを手に、グラン准将が戦闘体勢に入る。
私は、動かない身体に鞭打って、再び蔦の前に立ちはだかった。
「止めろ!私の為を思うなら止めてくれ!」
両手を広げ、必死の思いでキメラに話しかける。
お願いだ…エドワード。
その思いが伝わったのか…
蔦は動きと止め、一本が私の頬をそっと撫でると、するすると幹に収まっていった。
すべての蔦が収まると、キメラは動きと止め、大人しくなる。
ほっと肩を撫で下ろしていると、グラン准将が私の肩を掴みあげた。
「マスタング大佐!何だ今のは!」
「…博士の研究成果のようです…」
ガウンの襟を押さえ、キメラを見ながら、私は今まで調べて判った事を報告した。
ルカー博士は植物を中心に合成獣を作っていた事。
裏では人間を使った錬成をしていたらしいこと。
踏み込んだ時にはこのキメラしかいなかった事。
だが鋼の事は黙っていた…
まだ何も判っていない。一体何が起きたのか…アルはどこに行ったのか…
本当にこのキメラがエドなのか…
「ふむ、それは興味深い。このキメラを中央研究所に運ぼう。」
「お待ちください!准将閣下!これは私に任せて頂けませんでしょうか!?」
冗談じゃない!中央研究所に連れて行かれたら必ずバラバラに解剖させられる!
何としてでもあの錬成陣を解読し、元に戻してやらなければ…
「貴様に任せろだと?無能のお前にか?」
ふんと鼻で笑い、キメラに近づく。
キメラは全く動かず、じっとその場にたたずんでいた。
「お願いです、閣下。准将閣下の権限で私に…」
「まあ、この件を任されたのはこのわしだからな。お前に任せるかどうかはわし次第だ。」
自惚れ屋のあんたにはこの手が一番利く。とにかく煽て、乗せて、いい方に持っていく。
「よかろう、お前に任せる。ただし3日だ。3日経っていい結果が出なければこのキメラは研究所で解読させる、いいな。」
「はっ!ご好意賜り、恐縮であります!」
心のこもらない敬礼をし、私はほっと胸を撫で下ろした。
だが3日か…これはきついな…
一通り研究所を調べ、何も見つからないことが判ると、グラン准将の隊も引き上げを開始して行った。
研究内容の書類が何一つない。踏み込まれる前にすべてを持って逃げたのか…
ではその成果でもあるキメラを何故置いていったんだ…?
書類を持っていく時間があるのに、錬成陣も残したまま。
「わしはとりあえず引き上げる。明日、貴様の隊と合同で博士の捜索を開始する。指揮はわしが取るぞ。」
「はっ。私はこのキメラの解読に全力を注ぎます。」
「まぁ、出来るだけ頑張るといい。」
馬鹿にしたように笑いながら、グラン准将は軍用者に乗って市街地へと帰っていく。
残されたのはまた、私とキメラだけ。
私はゆっくりとキメラに近づき、その葉にそっと触れてみた。
私に気が付いたのか、キメラはゆさゆさと葉を揺らす。
エド…本当に君なのか…
たいさ…たいさ…
相変わらずこの言葉だけを語りかけ、蔦が私の頬を撫でる。
「明日から3日間ここに泊まるか…」
研究資料がなくても、何かしらヒントがあるかもしれない。
キメラの傍らに座り、幹を撫でながら窓の外を眺めた。
月が少し欠けている。満月にはまだ数日あるんだな。
しばらく眺めていたが疲れもあったせいか、いつの間にか私は目を閉じていた。
キメラのと二人きりだと言うのに…何故だかとても安らぎ、私は安心して眠りについた…
To be continues.