緑色の恋心 5
シュルシュル…
葉が擦れ合うような音が耳に響いてくる…
ひんやりと冷たい感触が頬を伝っていく。
「…?お前か…」
ソファで横になっていた私の周りに、数本の蔦が覗き込む様に集まっていた。
私の背中に回りこみ、私を起こすかのような動きをする。
「判った、判った…今起きるから…」
前髪を書き上げ、窓の方を見つめる。
快晴なのか、朝日が燦々と部屋に注がれていた。
「お前も少し日光浴した方がいいんじゃないのか?」
蔦にそっと触れると、ピクンと動き、そのままシュルシュルと幹の方へと収まっていった。
欠伸をしながら洗面所に行き顔を洗う。
何か食べ物でもあればいいが…なければどこからか調達しないと。
「うぁっ!!何だよ!これ!」
玄関の方から悲鳴に近い叫び声が聞こえてきた。
あの声は…
「大佐〜〜〜何とかしてくださいよ〜」
「ハボックか。早かったな。」
「あんたが早く持って来いって電話してきたんでしょうが!!!」
夜中にいきなりかけてきて叩き起こされたんっすからね!
ぶつぶつ言いながら、ハボックにしつこくまとわり付く蔦を払いよけている。
警戒しているのか、敵とみなしているのか、時折強く突っついていた。
「イテッ!全く!何なんですか!これは!」
「さぁな。博士が作ったキメラだろう?」
「そんな事は判ってます!何でこんなに攻撃的なんすか!!」
顔にまで蔦がまとわり始めている。そろそろ止めないとな。
「よしよし…こいつは私の部下だ。敵ではない。止めなさい。」
蔦とハボックの間に割り込み、優しく話しかける。
すると、さっきまで攻撃的だった蔦は一斉に動きを止め、するすると幹の方に帰っていった。
「…何であんたの言う事は聞くんですか!?」
「人間性だろう。」
鼻で笑いながら、ハボックが持って来た紙袋を受け取る。
着替えと、生活用品と…
「おっ!?ドーナツ持って来てくれたのか。」
「腹減ってるんじゃないかと思いましてね。」
「助かるよ。腹ペコだったんだ。何も食べるものなさそうだったからな。」
一口ドーナツをかじりながら、コーヒーをいれようと台所に向かう。
コーヒーメーカーが置いてあり、豆もすぐ側の棚にある。
すべてをセットし、熱いコーヒーを手にして私はキメラの居る部屋へと向かった。
何故だか判らない…
このキメラの側に居たかった…
机に軽く腰掛け、ドーナツを頬張りながらハボックの報告を聞いていた。
「朝一でグラン准将がやって来て、陣頭指揮とって捜索中ですよ。」
「中尉には3日間の休みを取ると言ってくれたのか?」
「まぁね。思いっきり嫌な顔されましたが。」
「仕方がないさ。3日間でこのキメラの事を調べないとこいつは中央研究所送りにされる。」
揺れる葉にそっと触れる。
するすると一本の蔦が伸びてきて、私の手に優しく絡みつく。
「まるで手を握り合ってるみたいっすね…」
すぐ目の前に聞こえたハボックの声に、驚き振り向く。
その瞬間に、ハボックに抱き寄せられ、そのまま唇を塞がれた。
抵抗も出来ずに舌が咥内に進入してくる。
逃げようとしても、身体のでかいハボックに力で敵う筈もなく、されるがままに咥内をかき回されていく。
長い長いディープキスを終えると、ハボックは私の腰を持ち上げ、机の上に腰掛けさせた。
右手がガウンの中に滑り込む。
「やっハボック!止め…」
「何で?昨日グラン准将に散々犯られたんでしょ?いつも准将相手の後俺の所に来るじゃないっすか。」
あいつはテクニックがまるで無いから、自分だけ気持ちいい思いしてあんたは不満足で。
「いつも俺の所に来てその疼きを解消してあげてるじゃないですか。」
右手の動きは止まらず、首筋に唇が吸い付く。
ガウンの紐を左手で器用に解く。
二丁拳銃を扱うハボックの得意技のひとつ。右手で私自身を弄び、左手でシャツのボタンを外していく。
勤務中の僅かな時間での情事で身に付いた裏技とでも言うのか…
そのまま机の上に寝かされ、ハボックが顔を近づける。
半分起ち上がりかけている陰茎に手を添え、すっぽりと咥え込んだ。
「うっああ…」
「?あんまり反応しませんね…昨日准将、結構善かったんですか?」
「ちが…」
「それとも我慢できなくて一人でヌきました?」
裏筋を舐め回しながら、後孔に舌を進めていく。
丹念に唾液を塗りつけ、指を一本滑られた。
「ひんん!!」
「結構硬いですね。緊張してる?一体何に?ここには誰も居ないですよ…」
誰も居ない…?とんでもない!
ここには鋼のが…
エドが居るじゃないか…
「い、嫌だ!ハボック!今日はいい!」
「冗談。ここまで来て俺が止まる訳ないっすよ。」
指が2本に増え、肉壁を中で擦る。
前立腺の辺りで少し爪を立てて刺激をさらに強くさせる。
これをやられると、もう私自身歯止めが効かなくなってしまう…
「あっああ!ハボ…」
「気持ちいいっすか?あんたはこれが好きですモンね。」
指の動きは活発に、ハボックは下を陰茎に再び移し、先端を大きく舐め回す。
びくびくと身体が痙攣し、ハボックの頭をぎゅっと掴む。
「ああ!!!」
ドクンと大きく脈打ち、私は達してしまった。
部屋の中に青臭い臭いが立ち込める。
「はっあぁ…」
「少しは満足しました?」
にっこり笑いながら顔を近づけ唇を塞ぐ。
精液の味がするキス。それを舌で絡み取りながらハボックの頭を抱きしめた。
勿論こんなんじゃ足りない事ぐらいハボックも判っているのだろう。
右手が私の足を大きく開かせ、露になった後孔に下半身を押し付ける。
左足をハボックの背中に置き、「催促」をすると、ハボックはにやりと笑ってズボンのチャックを下ろす。
いつも思うが…でかいな…
ぐぐっと入り口を広げて進入してくる。
私は背を逸らして息を吐きながらそれを受け入れる。
恍惚とした眼をしていると自分でも感じながらハボックに身体を委ね、息を合わせていく。
シュル…
シュルシュル…
はっとした瞬間、冷たい感触が私の頬を伝う。
同時にハボックが一気に奥まで突き上げ、私の身体は反り返り、喘ぎ声を上げていた。
「あっあっ!ま…て!ハボ…」
「何言ってんすか。ほら、あんたの中だって気持ちいいってぐいぐい締め付けてますよ。」
私の腰を掴んで挿抽を激しく繰り返す。蔦がいるのに気がつかないのか…?
蔦は頬を優しく撫でながら、身体をなぞっていく。
その間もハボックは攻め続ける。
後ろの刺激と蔦の愛撫が私を狂わせていく。
これじゃまるで3Pだ。しかも部下とキメラに攻められて…
胸を這い、乳首をなぞり、ハボックの突き上げで揺れる陰茎に絡みつく。
2〜3回擦りあげたあと、繋がっている箇所に蔦が向かっていった。
太くて大きいモノが突き刺さっているそこに、蔦がぬるっと触れてきた。
「?何だ?これ…」
動きを止め、冷たく感じるそこを覗き込む。
蔦が結合部分をなぞっていて、私はそれが結構いい具合に感じていた。
まさか…蔦も私の中に入ろうとしているのでは…?
私の身体からハボックへと移動し、そのままするすると上へと上がっていく。
そしてハボックの顔に触れ、その人物確かめるかのようになぞっていった。
「な…んすか…?これ…」
「キメラの蔦だ。お前が誰かを確かめているのだろう。」
いや…きっと私を抱いているのは誰かを確かめているのでは…
頬に触れ、髪に触れていく蔦にハボックは不快に思ったのかもしれない。
SEXの途中を邪魔されたのだ。仕方ないと言えば仕方ないが…
「止めろ!あっちに行け!」
絡みつく蔦をパシッと叩き落とす。
動きを止めた蔦は、ゆっくりと私の方に向きを変えじっと見つめた。
ハボックは邪魔者がいなくなったと思い行為を再開する。
蔦に見つめられながら、私はハボックの腕を掴み、その動きに合わせ腰を振る。
嫌だ…そんな眼で見ないでくれ…エド…
私は…君が…
シュッ!!
蔦が突然ハボック目掛けて突進した。
顔に思いっきりぶつかり、ハボックは驚いて動きを止めた。
「いてっ!!何するんだ!」
シュルシュルと音を立て、無数の蔦が幹から這い出てくる。
それらが最初に出てきた蔦につられる様に、私とハボックを見つめ、そして行動に出る。
ハボックの腕と身体に絡みつき、私から引き剥がそうと引っ張り出した。
数本の蔦は私の身体を押さえ、私とハボックは引き剥がされる。
ずるりと抜けていく感触に顔をしかめながら、私はハボックの方へと目を向けた。
蔦がハボックの身体に無数に巻きついている。
腕も左右から拘束され、流石のハボックも身動きが取れないらしい。
私も昨日体験済みだ。このキメラの力は相当なもの。ハボックとてこいつには敵わないだろう。
「やっ!ちょっと何すか!これ!」
自慢の一物をだらりと晒しながら、ハボックは宙に浮かされている。
その姿は滑稽で、私は少し噴出してしまった。
「何笑ってるんすか!!早く降ろしてくださいよ!」
「まぁ、待て。キメラは私が襲われていると思っただけだ。」
私は幹に近づきそっと葉に触れ優しく話しかけた。
「大丈夫…私は大丈夫…だから彼を降ろしてやってくれ…」
ゆさゆさと動いていた幹の動きが小さくなり、蔦が一本私に近づいてくる。
それをそっと手に取り、私の頬に触れされる。
そう…エドの手を取り落ち着かせる様に…
これで降ろしてくれるかと思ったのだが、蔦はますます本数を増やし、ハボックに絡み付いていった。
「ちょ、ちょっと大佐!ますます増えていくじゃないっすか!」
「こら!止めないか!」
幹をさすっても早揺れ動き、蔦は増えていく一方。
その内私の両腕にも絡みだし、ついには私も拘束されてしまった。
「大佐〜〜まさか俺達食われたりしないですよね。」
「さぁな。一応植物キメラだからベジタリアンだと思うが。」
やけに冷静な私に私自身が驚く。
昨日のグラン准将の時と違う…キメラに殺意はない…
そう感じるのは何故だろう…
蔦の一本がハボックの陰茎に絡みだした。
そのテクニックが良かったのか、青い顔して嫌がってたハボックの顔がみるみる恍惚になっていく。
そして終に…
「うっああ!」
ハボックは頂点に達し、その精液をキメラに降り注ぐ。
まるで昨日の私だな。こんな格好でやられてたのか。
唯一つの違いは、ハボックは陰茎だけ。私は後孔にも入れられたが。
ハァハァと息を切らしながら、ハボックは蔦から開放される。
キメラはハボックの精液を蔦で丁寧に回収していく。
「良かったな。キメラにイかせて貰えて。中途半端で疼いていたんじゃないか?」
「冗談じゃないっすよ!!!俺は人間の方がいいっす!」
ズボンのチャックを上げ、ぎろりとキメラを睨みつけている。
流石にこれ以上私を抱こうとは思わなかったのだな。
「さ、もういいだろう。降ろしてくれ。」
近づいてくる蔦に優しく話しかける。
私の頬をなで、首筋をなで…
これ…は…昨日のパターン…?
「待て!私はもう!」
そう言った途端、無数の蔦が一斉に私目掛けて迫ってきた。
ハボックの時とは違う、身体中を撫で回し愛撫を繰り返す。
後孔にも蔦が這い、押し広げて解していく。
そして昨日の夜に見せた…キメラの陰茎が現れた。
「鋼の!止めろ!!」
私の声は一本の蔦にかき消されていく。
口内に蔦が突っ込み、粘っこい樹液を注いでいく。
その間に手足の蔦が私の体勢を変え、四つん這いの格好にさせられた。
「ひぁああ!!」
中にずるりと蔦達が侵入していく。
ハボックにすでに挿れられていたので、難なくそれらを受けれる。
絡み合っていた蔦が、今度は私の中で解かれ、数本の蔦が別々の動きをしながら挿抽を繰り返していった。
「あっあっ!!いい!!」
その動きは絶妙で、ハボックのモノとは比べ物にならない。
その結合部分をハボックに見せ付けるように、蔦は私の体勢を変えていった。
鋼のが…ハボックに嫉妬して私を抱いている姿を見せ付けているみたいだな。
身体中が痙攣する。口は開きっぱなし。絶え間なく続く快楽にもう悲鳴に近い喘ぎ声を解き放つ。
固まった様に見つめるハボックと眼が合っても、私の意識はすでにキメラに集中していた。
いい…最高だよ…エドワード…
快楽と共に何故だか至福の時を過ごしている気がする…
「ああああ!!」
びゅるっと二度目の精を放出し、蔦はそれをまた絡め集めて幹へと注いでいく。
ずるっと私の中から蔦が這い出て、するすると幹へと戻っていった。
床に静かに下ろされ私は解放される。
キメラはもう動いておらず、静かに窓際にたたずんでいた。
「…大佐…」
「何も言うな…ハボック。」
私は何事もなかったように、ハボックが持って来たシャツに袖を通す。
「大佐!これ、物凄くヤバイ代物なんじゃないっすか!?早々に処分した方がいいっすよ!」
「だが、博士が研究していた物の貴重な証拠品だ。」
「それに、蔦に何もしなければ大人しいキメラだよ。」
愛しそうに幹に触れるとゆさゆさと葉を揺らしてそれに応える。
何より…これは…エドなんだ…
「これが鋼の大将のはずないじゃないっすか!」
「だが錬成陣の上に鋼のの服が散乱していた。そして鋼のの姿はない。」
「博士と一緒に逃げたんですよ!」
「何故鋼のが逃げなくてはならない?私達の仲間なのに。」
「だからってこのキメラが大将だなって飛躍しすぎっす!」
ハボックの言う事も一理ある。確かに飛躍しすぎかもしれない。
それにあの鋼のがそう簡単にキメラに錬成されるだろうか。
だがこのキメラから感じるエドの吐息…
触れられる時に心に伝わってくるただ一つの言葉…
たいさ…
「それを調べる為に私はここに三日間詰めるんだ。」
「三日で出来るんっすか?」
「出来なければグラン准将にこれは中央研究所に連れて行かれる。」
そしてそこで実験材にされ…二度と会う事は出来なくなるだろう。
「もし…違うのなら鋼のを探せばいい。そして事の一部始終を彼から聞けばすむ。」
「だがこれがエドだったら…私は元に戻してやりたい…」
一生をかけても…元の姿に戻してやりたい…
「…三日で出来なかったら逃亡する気っすか…」
「そうならない様努力するよ。」
にっこり笑ってハボックの頭をぽんと叩く。
飲みかけのコーヒーを手に、私は錬成陣のある部屋へと向かった。
ハボックは追いかけてこない。
暫くしてドアの閉まる音が聞こえてきた。
そして…研究所はまた、私とキメラだけになった。
To be continues.