緑色の恋心   6




私はまず研究所の書庫を調べる事にした。

とにかく何かしらの成果を見せないと、グラン准将は納得するまい。
それにはあの錬成陣を解明しないとな。


それらしい書物は調査隊が皆調べていき、本は散乱している。
明らかに違うだろう本を別に纏め、残った本を一冊一冊確認していく。

「違うな…」
読む本すべてが空振りだ。
資料となるものはすべて持って逃げたのか?
それとも、何処か別の場所に隠してあるのか…?

ありえるな。

貴重な研究資料を、こんなに分かりやすい所に置くとは思えない。
ましてや人体錬成だ。万が一軍に見つかったらただではすまない。

そう思い、手に取った一冊の本を確認したら部屋の中を捜索しようと決め、本を開く。


「!これは!!」

ルカー博士の…日記…?
一行だけ書かれた文字。まるでメモ書きのような日記。
それも取り留めのない事ばかりだった。

だが、全体を通して読む。

「成る程…これは暗号日記のようなものだ。」
一行目『石灰50グラム』
二行目『客人来る。』
三行目『落ち葉数枚』
四行目『肥料を貰う』

この他に数式らしき数字が並べてあるメモ書きもあった。構築式の一部か…?
この本すべてが錬金術に関する日記なんだな。

私はこの本を持って、錬成陣のある部屋に向かう。
数式を合わせると、やはり錬成陣の一部に一致した。

「この日記を読んでいけば解明できるかもしれない。」
私は夢中で日記を読みふける。


どれくらい時間がたったのだろうか…


ふと見上げた時計は2時を指していた。
もうこんな時間か…流石にお腹が空いたな。

ハボックが持って来てくれた袋を見る。
だがそこにはもう食べるものは入っていなかった。

「困ったな。ここから町までは随分あるしなぁ。」
何よりキメラを置いていけない。もし私がいない時にグラン将軍が来てしまったら…

キメラの葉にそっと触れると、幹をゆさゆさと揺らして反応する。
私だというのが判るのか…?中々賢いな。
一本伸びてきた蔦に、私も指を絡めて挨拶をする。

「なぁ…お前。ここに何か食べる物はあるか…?」
…と聞いても今のお前じゃ理解出来るはずはないか…

ふぅとため息を着き、そして台所で何かを探そうと立ち上がった。


すると、幹からシュルシュルと数本の蔦が現れ、一斉に別の部屋へと伸びていく。
何だ!?誰か来たのか?

私はその蔦の後を追いかけていった。

その先には…台所…?


「鋼の…何をしているんだ…?」
蔦が台所の扉を開け、中から何やら取り出している。
それは小麦粉の袋で、蔦は器用に袋を明け、ボールを取り出し中に注ぎ込む。
そして冷蔵庫を開け、卵を取り出した。

二本の蔦でこれまた器用に卵を割り、同じくミルクを取り出し、そしてかき混ぜる。
器具を使ってかき混ぜるかと思ったら、自らの蔦の先でかき混ぜている。

べとべとになった蔦の先端は、水道の蛇口を捻って洗い流す。

「…お前…随分と器用なんだな。」
感心しながら見ていると、蔦の先が私の手を掴んで、コンロの前に連れてきた。
そしてスイッチを差し、私を見つめる。

「成る程。点けろというのか。」
やはり植物キメラだけあって、火には弱いらしい。
もう一本の蔦がフライパンを持ってきて、コンロの上に乗せ、そして油を持ってきた。
私の手をやはり取り、油を注げと催促する。

「ああ、判った。自分で焼いて食べろというんだな。」
材料までは作ってやったから、後は自分でやれという事か。
鋼らしいというか何と言うか…

私は苦笑しながら、キメラが用意してくれたパンケーキの元をフライパンに注ぎ込んだ。
そういえば砂糖は入れなかったが…まぁ、甘い物は余り好みではないから良いか…

何とか焦がさずにパンケーキを焼き上げ、火を止める。
お皿はないのかと探していると、蔦が用意して持ってきてくれていた。

「あ、有難う。」
随分と気が利くな…ここは鋼とは大違いだ。
お皿にパンケーキをあけると、蔦が器用にそれを持っていてしまう。

「おい、どこに持って行くんだ?」
蔦の後を追いかけると、そこはダイニングテーブルのある部屋で、イスとそしてナフキンが用意されてあった。
驚いていると、蔦がイスを引き、座れと呼びかける。

「あ、ああ…」
促され座ると、パンケーキのお皿が目の前に置かれ、そしてナイフとフォークが用意される。
グラスも用意され、ワインを注がれ、すべての準備が整ったらしい。

「お前は随分と躾されているのか?手際が良いぞ。」
クスッと笑いながらパンケーキを一口口に入れる。


「甘い…そして上手いぞ…?」
砂糖は入れなかったはず…何故甘みが…

蔦がすっとパンケーキの上に来て、一滴樹液を落としてく。
それを指ですくって舐めてみる。

「甘い…これが…」
まるで蜂蜜のように甘く、そしていい香りがする。
料理上手で気が利く。まさに理想の女房だな。

パンケーキをすべて平らげ、私が席を立つと、蔦は食器を掴み台所へと持っていく。
見ると、水を出して食器を丁寧に洗っていた。
勿論洗剤は使っていない。
蔦の先端から出される樹液が洗剤の代わりになるらしい。

環境にもいいキメラ…か。
苦笑交じりで研究室の部屋に戻る。
キメラは葉を揺らして私を出迎えた。


「お前は便利だな。」
そっと葉に触れ、優しく撫でる。
それに応える様に蔦が私の頬に触れてきた。
穏やかに笑いながらキメラの横にある机に座り、私は再び日記に目を向けた。




それからずっと私は机で日記と格闘していた。
一行一行を繋げ、入れ替え、一つの文章にしていく。
そこから導き出される情報を整理し、錬成陣に当てはめていく。
少しずつ分かってきた、博士が極めた錬金術。


「…治療薬…でも作っていたのか…?」
導き出される結論はみんな薬や治癒に関する事ばかりだ。
このキメラに関する情報は一つもない…

いや、諦めるな。まだ日記の半分しか終わってない。
必ず見つけ出すよ、鋼の。

そして…私の元に戻って来い…



「ピンポーン」


ドアの方から呼び鈴が鳴る。
キメラの蔦が数本飛び出て、すっと玄関の方へと向かっていった。
「きゃっ!」っと言う声から、それが彼女だと分かる。

「こらこら止めなさい。」
「大佐…これは一体…」
ホークアイ中尉の身体の周りに纏わりつく蔦をそっと払い、彼女を招き入れる。

「博士が作ったキメラだよ。」
「いえ、それは判りますが…何故大佐の言う事を聞くんでしょう。」
「さぁな。同じ事をハボックも言ってたぞ。」
流石に彼女に人間性だとは言えず、言葉を濁す。


「簡単に作れそうな食材をお持ちしました。それと、博士についての報告を少し…」
「有難う。こっちへ。」
キメラのいる部屋に案内し、私はイスに腰掛ける。
中尉にもイスを用意したのだが、断られた。そういう所は分別のつく人だ。

「まず、博士の近所での評判ですが、特に悪い噂はなく、ただで薬も貰えると良い事ばかりでした。」
「それと、この近辺の浮浪者が年々減っているという話も聞きました。」
「浮浪者が…?それは何か対策をしたからなのか?」
「いえ、町ではそう言った対策はしていないそうです。」
「それから…浮浪者仲間から聞いた話ですが…」

ホークアイ中尉がちらりとキメラに目を向ける。
何か情報を掴んだのか…?

「博士が浮浪者に声を掛け、その人が博士の研究所に言ったきり帰ってきていないそうです。」
「他にも数人の浮浪者が姿を消したという事が判りました。」
やはり…人間を使っての錬成を…

そして鋼のもそれに巻き込まれたのか…

私はキメラの方に目を向ける。
すると、幹から一本の蔦がすっと私の足元に伸びてきた。
靴を触りながらまるでじゃれているように足に絡みつく。

私は気にせず、ホークアイ中尉の報告に耳を傾けた。

「それから他には…?」
「はい、グラン准将の動きですが…」
淡々と報告するホークアイ中尉。それに集中していた時…


シュルッ…


蔦が私の腰に絡みつく。
そして服の上から下腹部に触れてきた。

「なっ!」
「はい?どうかしましたか?」
「あ、い、いや何でもない。続けてくれ。」
ホークアイ中尉が頷き、そして又報告が始まる。
その間にも蔦は下腹部を刺激していく。

私が何とか表情に出さないよう耐えながらいると、それを面白がる様に蔦の動きが過激になっていく。
そして、ついにズボンのチャックを下ろし、私自身に直に触れてきた。

「んっ!!」
「大佐?どうかしたんですか?顔色が悪いですよ…」
「いや…大丈夫だ…疲れが溜まっているのかもしれない…」
額に汗がじわっと滲み出ているのが判る…
拳を握り締め、この刺激に耐える。

だが完全にからかっているのか…それともこの状況を判らないからなのか…

蔦は私自身を取り出し、そして絡み付いて擦り上げる。
先端を刺激し、根元を締め上げ、快楽のポイントを確実に攻めてくる。

足を閉じようにも、いつの間にか増えている蔦が両足首に絡みつき、凄い力で開かせる。
ホークアイ中尉の報告を冷静な表情で聞きながら、下半身はもう爆発寸前だった。

「以上、ご報告致します。」
「ご苦労…引き続き捜索を…頼むぞ…」
「はっ!大佐も余り無理をなさらないで下さい…」
敬礼をして、報告書を机の上に置こうと近づくが、蔦が一本彼女の前に伸びてきてその報告書を取り上げた。

「あ、何を!」
「いや、いいんだ。こいつは私の代わりにそれを受け取ってくれただけだ…」
蔦はするすると私の方に持って行き、机の上にぱさっと置いた。

勿論、その間も机の下では私を弄ぶのは続行されていた。
机から私を動かさない蔦の悪知恵だろう。
だがホークアイ中尉は感心して、これなら司令部に一鉢欲しいですね。と笑っている。


こんなのを司令部に置いたら、私は昼夜問わず犯されるに決まっている…


「では、私はこれで。」
「ああ、ご苦労だった。」
やっと終わったか…
ほっとしていると、蔦が陰茎をぎゅッと締め上げ、私は思わず声を上げてしまった。

「ひっあ…」
「大佐?」
「い、いや…大丈夫だ…」
「顔色が本当に悪いですよ?大丈夫ですか?」
ホークアイ中尉が心配そうに近づいてくる。
だが私は手を挙げ、彼女を止める。
これ以上近づいたらばれてしまうじゃないか…

「本当に…大丈夫だ。それよりグラン准将を見張っていてくれ。」
「はい…ですが…」
「心配ない。ちゃんと休むから…」
蔦は力を弱めたり強めたりしながら私を高みへと導こうと試みる。
冗談じゃない。彼女の目の前でイける訳ないだろう!

「判りました。では私はこれで。」
さっと敬礼して、彼女は私たちに背を向けた。
バタンというドアの音を聞き、私は全身の力が抜けてしまった。


「全く!お前は何という事をしてくれるんだ!」
キメラに向かって怒っても、ゆさゆさと葉を揺らすだけ。
まるで悪戯をしたエドが舌を出して私をからかっているようだった。

数本伸びてきた蔦は、私のシャツのボタンを器用に外していく。

私も中途半端に焦らされたので、身体は火が点いた様に熱かった。


「いいよ…おいで…」
シャツを脱ぎ、蔦の一本にそっと触れる。
数本の蔦が私の身体に絡みつき、絶妙な愛撫が開始された。

「ああ…エド…」


冷たい蔦なのに熱く感じる…



たいさ…


キメラの声も頭の中に響いてくる。



明日…それまでに何かを見つけなければ…
キメラに見事に頂点にいかされ、私はそのまま意識を飛ばしてしまった…



  
To be continues.

     




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