誰が為に出来る事 2
ぴちゃぴちゃと卑猥な音が鳴り響く。
両手を固定され、成す術もない土方の身体に容赦なく舌が吸い付いてくる。
3枚の舌が身体中を舐め回し、流石の土方も顔をしかめて身をよじった。
「おや?そんなに気持ちいいのかい?」
「ちがっ!あっ…」
「ほぉ、ここがいいのか。君は反応が良くて楽しいよ。」
びくんと身体を振るわせれば、男達は悦んでそこを執拗に攻めてくる。
無駄な筋肉のない整った裸体は、紅い跡がそこら中に着けられていた。
「さて、ここを弄ったらどう反応してくれるかな。」
男の一人が土方の中心で反り起っている陰茎に顔を近づけて行く。
先端をぺろりと舐めると、トロトロと白い液体が溢れてきた。
「おやおや。ひと舐めでイってしまいそうだよ。」
「それは堪え性のない。ちゃんと躾けないと。」
「根元を縛っておこうかね。」
そう口々にいいながら男は鞄から何やら取り出し、土方の側でそれを見せ付けた。
「ほら見てごらん。可愛いだろう?首輪と同じピンク色だ。」
ゴムバンドの様な輪っかを嬉しそうに土方の頬に擦り付け、それを陰茎にしっかり取り付けた。
「ひっあっ…」
「これでお漏らしはしないな。では存分に楽しませてもらおうか。」
ぐいっと腰を掴まれ、そのまま男の一人が前に前進する。
両膝を押さえ、開かせ、唾液と先走りの液で湿った秘部に己を押し込んでいった。
「うぁああああ!」
「くっ、流石にいい締め具合だ。」
じりじりと奥へと侵入され、土方は身体をそらしてその痛みに耐えていた。
根元まですっぽりと土方の中に納まると、そのまま土方の顔を覗き込んだ。
痛みに耐えられなくなったのか、虚ろな瞳には涙が溜まり、それが益々嗜虐心を高めさせる。
「そんなに気持ちいいのかね?待っていなさい。すぐにもっと良くしてあげよう。」
にやっと笑いながら男は今度は己をゆっくりと引き抜いていく。
先端まで抜くと、一気に最奥へと突き上げた。
「ひぁああ!!」
悲鳴をあげ、本能的に逃げようとするが、両脇からがっしり押さえられてそれは叶わなかった。
ぐんぐんと奥まで侵入され、身体を反らして快楽に耐えようとする。
だが両脇から手が伸び、挿入されて更に大きく肥大した土方自身を擦り始めた。
「ああ…はぁああ。」
「ほら、根元がパンパンに腫れてるよ、土方君。」
「辛いのかね?外して欲しかったらちゃんと言う事聞かないと駄目だぞ?」
「どうなのかい?土方君。」
ズッ、ズッと卑猥な音を立てながら、男の一人は激しく腰を動かし挿抽を繰り返す。
リズミカルな動きにあわせ、両脇の男は身体中を撫で回す。
その刺激にすでに理性は半分失われ、口からは喘ぐ声しか聞こえなくなっていく。
「んっ、もう出すぞ。勿論中にだ。」
動きが早くなり、腰をぐっと掴まれる。
不意に動きが止まると、中でドクンと痙攣しながら熱いものが放たれた。
中が液体で溢れていくのを感じながら、土方も身体の力が抜けていく。
ハァハァと息遣いも荒い中、ずるりと陰茎が抜かれ、その感触に思わず顔を歪める。
ドロリと白い液体が秘部から流れ落ちるのを指で掬い取り、それを土方の唇に擦り付けた。
「ちゃんと飲めたね。偉いぞ。」
「さ、次は私だ。」
「わ、私も!もう我慢できん!」
終わったばかりの秘部に男の凶器が再び侵入していく。
ひっと声を上げようとした時、ぐいっと顎を掴まれ驚く間もなく咥内に陰茎を押し込まれた。
上と下から攻め立てられ、だが土方はイかせて貰えない。
全身に迸る快楽に気が狂いそうになりながらも、土方は必死で耐えていた。
それはこの修羅の時代を生き抜いてきた侍としての精神力からなのか。
それともただ一人の人の為に生き抜く決意からなのか…
「おい、トシはどうした。」
真撰組詰め所内の中庭で、アイマスクをして眠っている一人の青年に声をかける。
ぴくりともしないその態度に、近藤は深い溜息をついた。
土方があの料亭へ向かう為に出て行き、その後を付ける様にこいつが出て行ったのは知っている。
そしてこいつが一人で帰ってきた。
誰とも眼を合わせようとせず、口も聞かずに眠り込む。
つい先頃、天人のお偉方からぐちぐち嫌味を言われたばかりだ。
近々詫びを入れに出向くはずだったのだが…
「沖田。あんまりあいつを虐めるな。」
すっと横に座り、ただその一言だけを告げて中庭の緑を楽しんでいる。
暫く沈黙が続き、沖田がふと話し出した。
「あの人はね…近藤さんの為なら死ねるんだそうだ。」
アイマスクをずらし、その眼で青い空を見つめている。
ずっと昔からそうだったじゃないか。
近藤さんが好きで。近藤さんの思想に惚れて。
近藤さんの生き方に共感して。
近藤さんの為に死ぬ。
「…何を今更…」
「沖田…?」
「土方さんは…近藤さんの為に死ねて…俺の為に生きるんだそうだ。」
俺の為に死んではくれない。俺の為に命をかけてはくれない。
すべて近藤さんの為にあの人の人生はあるようなもの。
そんな事は判っていたじゃないか…
何を今更…
「ほぉ。そいつは凄げぇや。羨ましいぜ、総悟。」
近藤のその言葉に、沖田は目を見開き、じっと見つめていた。
羨ましい…?何が?
近藤さんの為に命をかけられて、俺の為には出来ないのが羨ましいのか!?
「どういう意味ですか?近藤さん…」
すっと身体を起こし、その鋭い目を局長へと向ける。
すべてを切り裂くような視線をも、近藤は軽く受け流し、沖田の髪をくしゃっとかき撫でた。
「死ぬってぇのはな、簡単な事だ。剣先に喉を突き刺せばそれで終わる。」
「ホンのちょっと痛いだけで、後はすべておしまい。苦しいのも一瞬だ。」
そしてその行為は賛美され、死した者はその名を残す。
「だが生きるってぇのは並半端な物じゃねぇ。」
死に物狂いで生き抜いて。生き恥を晒し罵声を浴びさせられ。
屈服を強いられ、歯を食いしばっても生きなきゃいけない。
ひもじい思いをし、誇りを踏みにじられ、それでも生き抜くその気力。
恥晒し、腑抜けと罵られ、生き抜く者はその名に汚点を残す。
「死んで楽になった方がいいかもしれないと何度となく思うだろう。」
「それでもあいつは生き続けるんだ。それも自分の為じゃない。お前の為にな。」
「そんな覚悟、俺には到底出来ない。羨ましいぜ、総悟。」
優しげに微笑み、その頭をぽんぽんと子供をあやす様に叩く。
じっと近藤が見つめる中、沖田はさっと目線を反らして俯いた。
そしてまた、暫くの沈黙が続き、時は静かに流れていく。
「…迎えに行ってくる…」
「ん?何て言った?」
「…3時間そろそろ経つ。迎えに行ってくる。」
鍵を持っているのは俺だから。俺が行かないとあの人は解放されない。
すっと立ち上がった沖田に、近藤はもう何も聞こうとはしなかった。
「近藤さん。」
「ああ?」
「あの人が俺の為に生きるっていうなら…」
ただ生きるだけじゃつまらないですよね。
その言葉を発した沖田の表情を見て、近藤は再び深い深い溜息をつく。
「えらいのに惚れちまったなぁ。トシよ…」
そう呟き、沖田が残していったアイマスクをはめて、そこにごろりと横になった。
To be continues.