瀬人様総受け物語14〜闇の世界(マハード)編〜
突然辺りが明るくなり、周りの景色が見えてくる。
…何だ…ここは…?
漆黒の闇の中に、無数の階段と無数の扉。
これが奴の言う「闇の世界」だというのか?
「ここは名も無きファラオの住まう所。魂の休まる場所。」
俺の背後でマハードが囁く。
!?いや、マハードではない!お前は!?
「聖なる黒き魔術師。私は魂を精霊に宿し、永遠にファラオにお使えする。
ほら、私の他にもファラオに使える精霊たちが、あなたの恥辱を見物していますよ。」
くすっと笑いながら、マハードは俺の脚を抱え、ぐんと押し込んだ。
「ふっああっ!」
喘ぎながら辺りを見回す。
エルフの剣士…竜騎士ガイヤ…これは遊戯のデッキのモンスター!?
「ほら、あなたが嫌う弱小モンスターも居ます。そうだ。アレにあなたを犯させましょうか?」
マハードが指差す先には、いつも苦しめられてきたあの小さなモンスターが
愛くるしく笑っていた。
くっ!こんな低級モンスターに犯されるなんて冗談じゃないぞ!
必死で身体を動かし、その場から逃げようと試みる。
だが背後からマハードが俺の身体をがっしり掴んで離さない。
「くっ!離せ!」
「ここから逃げられるとでも思っているのですか?」
耳元でくすっと笑いながら、マハードは己を引き抜き、オレを前方へと突き飛ばした。
「あっ…」
倒れる身体を何とか起こし、俺は考える間もなくその場を走る。
だがすぐに行き止まり。変な風に延びている階段が進路を塞ぐ。
「ひっあ!」
背中を何かが這いずって来た。
振り返ろうとした瞬間に、無数の黒い塊が俺の身体を覆ってきた。
「やっああ!!」
増殖したクリボーが、あらゆる性感帯をその毛並で触れてくる。
愛撫するわけでもなく、ただ毛並を身体に擦り付ける。
それが思った以上に俺に快感を与えてきた。
「あっああ!」
嫌だ…こんなモンスターに感じてしまうなんて…
全身を這いずり回るこの弱小モンスターを振り払えられないほど、
俺は体力を奪われていた。
「んんっああ…」
自然に喘ぎ声を発してしまい、長い毛が肌に触れる度に身体中が痙攣して
俺を絶頂へと導いていく。
「こんなモンスターに感じてしまうほど、あなたは淫乱なのですか?」
四つん這いに伏せっていた俺の顎を、緑色の宝玉が付いた魔道士の杖で
ぐいっとあげさせる。
誇り高き黒い魔術師の顔は、俺を蔑み、憎しみの表情に覆われていた。
「ここでこのまま快楽に溺れさせ、魂を崩壊させてしまおうか。」
そうすればあなたは魂の抜けた人形と化す。
そう、それがいい。私の魂はファラオのすぐ側に居るのにファラオは私に気がつかず。
あなたの魂はこんなに離れているのに、あなたはファラオに一番近い所にいる。
「快楽に溺れた雌犬になって、一生この闇で抗うといい!」
嫉妬に狂ったマハードは、その杖を俺の身体に向け、光を放とうとしている。
クリボーに身体を押さえ込まれ、俺は動く事は出来ない。
「や…めろ!」
そんな俺の声を聞く筈ないか。
俺は歯を食いしばり、その衝撃に備える。
闇の世界にまばゆい光が立ち込めていく。
俺の周りにいたモンスターたちは皆光にかき消されていった。
「うっああ!」
マハードも例外ではない。
うめき声を上げながらその姿が薄く消えかけている。
「ファラ…オ…何故です…」
その言葉を残し、奴は消えていった。
光は徐々に小さくなり、だが確実に俺に近づいていた。
「誰だ…?」
「…お前の知ってる遊戯ではないことは確かだ。」
聞き覚えのある声。
だが遊戯ではない。全く同じだが、同じではない。
光の中から現れたのは、古代エジプトの装束を身に付けた遊戯に良く似た男だった。
「…アテム…と言ったな。」
「覚えていてくれたか。セト。」
微笑むその顔も答えるその声も遊戯そのものだ。
俺がお前の名前を呼べばお前の記憶は蘇ると奴は言っていた。
では、今記憶は蘇ったのか?
「俺はお前の知る遊戯の一番奥底にある過去の記憶。遊戯の魂そのものではない。」
だからお前が俺の名を呼んでも、俺の記憶は呼び起こされない。
記憶そのもの…?
何だか訳が判らなくなってきた…
「ふっ、『訳が判らん』と言う顔をしているな。」
「こう色んな物をいっぺんに見せられてしまってはな。」
アテムが俺の頬に手を添える。
温もりも同じ。これは奴の過去。奴自身。
この記憶の男が遊戯と一つになったら…
俺の知ってる遊戯ではなくなってしまうのだろうか…
「アテム…」
「…現世に戻れ。お前の遊戯が待っている。」
俺はまだ、記憶を蘇らせる時期には来ていないようだ。
だから今はお前の記憶を無くしておこう。
「待て!アテム!俺は…」
「同じ顔、同じ声。でもお前はセトじゃない。」
俺のセトはこの世にはいない。
冥界で…俺の事を待っている。
マハードも叱り。ここにいるマハードは真のマハードではない。
「俺と遊戯が一つになるには、遊戯の方がまだ未練が多すぎるようだ。」
くすっと笑いながら、アテムは俺を引き寄せ、抱き締めた。
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