命の重さ 2




「カカシさん、なんでここに居るんですか!?」

カカシはニコニコと下からイルカを見上げる。

但し、イルカの部屋の居間で。


「お帰りなさい、イルカ先生。
あんまり遅いから、迎えに行こうかと考えてたんですよ?」

「あんたが、いきなり任務に指名するからです!
最長3ヶ月も里から離れるんですよ?
引き継ぎが大変だったんですからね」


イルカはドカドカと居間を横切り、寝室に向かった。


「だってね、ちょっと特殊な任務だから……」


カカシは言いながら、イルカの後をついて寝室に入った。


「特殊?どういう事ですか?」


問いかけながら、イルカはベストをハンガーにかけ、鞄を定位置に置く。


「事前に調査に行った忍が、行方不明になってるんです。
でもね、ターゲットはまだ子供なんですよ。しかも一般人」


答えながら、カカシは寝室を出るイルカの後を追った。


「まだ詳しく聞いてないので、よくわかりませんが。
相手は護衛に忍を雇ってるんですか?」

「それは無いです。依頼主が親だから。
それより、おなかすきました」


タイミングよくカカシのお腹がぐ〜っと、うめいた。

イルカはため息をつくと、素早くエプロンを身につけた。




簡単に冷蔵庫のものを炒め、味噌汁を作る。

15分ほどで作ると、二人は遅い夕飯をとった。

食後の茶をすすり、カカシが話始めるのをじっと待つ。

まだちゃんと任務の事を聞いてないのだ。


「イルカ先生の作る物は、なんでも美味しいから不思議です」


子供みたいな笑顔で、カカシにそう言われるのは嬉しいイルカだが。

今は時間がない。

任務は明日からなのだ。


「誉めてももう、何もでませんよ。
それより、そろそろ説明してください。」


イルカは仕事モードに切り替え、カカシを見つめた。


「イルカ先生がそう言うなら、仕方ないなぁ。」


カカシはうっすら頬を染め、バリバリと頭をかく。


「任務は火の国の呉服屋・衣倉の長子を暗殺する事です。
まだ14才ほどですが、なかなかの切れ者らしくて
2度も失敗してるらしいですよ」

カカシは厄介でしょ?と、茶をすすった。

確かに、厄介だ。

標的は自分の命が狙われているのを、知っているはず。


「失敗したのは忍ですか?」

「1度目はチンピラ。
2度目はどこぞの抜け忍らしいです」

「本来カカシ先生なら単独で、問題ない任務ですよね?
サポートを必要とした理由を聞かせてください」


カカシは何かを警戒している。

イルカはそう考えた。


「失敗した奴ら、返り討ちにあって死んでんの。
しかも大きなスプーンで抉られた、そんな感じでね」

「まるで何かの術、みたいですね」


衣倉に潜入して、情報を集めるのが俺の任務か。

実の親に命を狙われた子供……。


「イルカ先生は警戒心の強い相手でも、知らず知らず
懐に入れちゃうタイプですから。
だから指名したけど、くれぐれも焦って無茶しないで〜ね」


カカシはふざけた言い方をしたが、目が真剣にイルカを見つめていた。

カカシほどの忍に頼られたのだ。


「肝に銘じます。
カカシさん、よろしくお願いします」


イルカは上司になるカカシに頭を下げた。


「此方こそ、よろしくね」


カカシはイルカの手を両手で包み、ニッコリ微笑んだ。



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