命の重さ 8





翌朝カカシはイルカに起こされ、しぶしぶ出ていった。

イルカとしては少しの照れと、任務に対するケジメとしての行動だった。

今は命の危機がある。

カカシのペースにのってはいけない時なのだ。

イルカとカカシが任務に就いて、あっと言う間に1ヶ月の時が過ぎた。

情報収集の結果、やはり何処にも他里の忍びの介入はない。

ユウゲツの住む丘の向こうの離れには、古株で飯炊きをする老婆以外

誰も行き来した様子はなかった。

老婆自身はただの一般人、あやしいのはターゲットのユウゲツ自身だと、

そう結論づけた。

そして夕刻、イルカはユウゲツのもとに訪れていた。


「海彦さんは忍者を見たことありますか?」


ユウゲツはなんの含みもなく、真っ直ぐな目でイルカに尋ねた。


「ありますよ。
故郷では畑仕事や、イノシシが出た時に忍を雇うんです」

「イノシシは分かりますが、畑仕事も?」


ユウゲツにとっては疑問なのだろう。


「ユウゲツ君ぐらいの、新米忍者達が来てくれるんですよ」

イルカはナルトの顔を心に浮かべ、当然のように語った。

ユウゲツはそんな任務もあるんですね、と神妙な顔をした。


「どうしてそんなに忍者が気になるの?」


イルカは気をつけて、なんでもないようにたずねた。


「…祖父が、忍者みたいな人だったので。
僕は…忍者になりたいです」


ユウゲツはためらいながらも、最後は強い意志をのせて言い切った。


「ユウゲツくん…」


イルカから見るユウゲツは、何かを悟っている様に見えた。


「海比古さんには、聞いて欲しかったんです」


ユウゲツはイルカの手に、自分の手をそっと重ねた。


「ぁあ!!」


丘の方から突然声が上がり、足音が近づいてきた。

行商人姿のカカシだった。


「なんでそんな簡単に手なんか握らせてんの!
アンタはオレのでしょ!!」


カカシは素早くイルカを引っ張り、背後に隠した。

ユウゲツはポカンとしていたが、イルカが腕を引っ張っられた時に

痛がったのを見て、カカシを睨みつけた。


「海比古さんは嫌がってます。
離して、さっさと出て行ってください」


ユウゲツの表情は、幼いながらに男の顔になっていた。


「ガキのクセに、ずいぶん生意気言うじゃないの。
オレは大人の付き合いしてるわけ。
ガキには出来ないね」


カカシは素早くイルカを抱きしめ、ユウゲツに見せつける様に深い口づけをした。


「…うっ!」


イルカは抵抗したが、カカシの舌が器用に動くたびに力が抜けていき

遂には支えられていた。


「ちゃんと見てた?わかったでしょ?」


カカシはユウゲツを挑発する様に見下ろした。


「海比古さんは嫌がっていた…。許さない!」


ユウゲツはカカシに体当たりをくらわせ、庭先から追い出した。

ユウゲツの体の周りに、荒れ狂うチャクラが具現化していく。


「ユウゲツ君!!」

イルカが叫んだ時、チャクラの固まりが死神の鎌の様に

カカシに振り下ろされた。

チャクラが霧散した後に、カカシの姿は消えていた。

カカシの居た辺りの地面ごと、何かにえぐられたように。


「…僕は…また…」


ユウゲツはその場で意識を失った。

イルカは震える身体を強引に動かそうともがいた。

それほどに具現化したチャクラは異質であり、恐怖をもたらしたのだ。

なんとか身体を動かせるようになると、イルカはカカシの居た辺りに触れながら

小さくその名を呟いた。

しばらくそうしていたが、ユウゲツを振り返り抱き上げた。

険しい表情のまま、イルカはユウゲツの家に足を踏み入れていった。


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