祭壇の間はこじんまりとした、祭壇だけの部屋みたいだ。
畳で言うところ、10畳くらいの部屋に祭壇。
そして、大人6人+俺。
はっきり言って狭い…。
けれど祭壇には、見覚えのあるものが奉られていた。
「俺の剣!!」
「ショーゴ様の剣は、此方で大事に預からせていただきました。」
白い髭を短めにはやした、わりと若いおじいさんが答えてくれた。
「正式にご挨拶するのは初めてですね。
祭儀官を束ねる職に就いております。
ヨルドと申します。」
丁寧に頭をさげられて、俺も慌ててお辞儀した。
そんな俺に、ヨルドさんが優しく微笑みかけてくれた。
「この剣は代々、魂に使命を刻む役目の方々に受け継がれているものです。
ショーゴ様にも、無事受け継がれて安心いたしました。」
「やっぱり縁があって、俺のとこにきたんだね。
でも、なんで此処で保管してなかったの?」
「役目の方が崩御されますと、剣もまたどこかへ消えてしまう。
そういう物なのです。
恐らく、この剣自体が意志を持っているのでしょう。」
永く存在するものには、魂が宿るっていうやつかな?
「ショーゴ様の体の模様が完成しているか、確認をとる前に
改めて自己紹介させて頂きたいのですが。
よろしいですか?」
フェグリットさんだ。
いつもと違って、なんだかイイ男オーラがでてる。
もしかして、前に言ってた秘密を明かしてくれるのかな?
こんな時になんだけど、ちょっとドキドキワクワクした気分になったりして。
「本来この場にいるのは上位の祭儀官と、賢者殿
国王陛下並びに伴侶だけのはず。
同席を希望した、お前は何者だ?」
レオノアが静かに、でも凄みのある言い方、そして鋭い眼差しを向けてる。
はっきり言って、コワい。
「何も関係ない者が同席したと、レオノア様は気分を害して
おられるのですね。」
「当たり前だ。」
「私が異世界から来た事は、ご存知だと思います。
私はあちらの世界で言う所の、天使と言う者です。
こちらでは精霊に近い存在であり、賢者殿にも近い。」
「ええ。初めてお会いしましたが、近い存在だと感じられました。」
レオノアとユーシスの視線を受けて、ヴァフィトさんが口を開いた。
「この世界は大いなる者より賜った世界。
私は、大いなる者に使える者です。」
なんだろう、この感覚。
聞きたい好奇心はあるんだけど、聞いてしまうのが罪であるような
そんな感じ。
でもフェグリットさんは、皆が理解できるようにゆっくりと話続けてる。
「私は天使の中でも称号を賜っている
大天使ウリエル。
それが私の本来の名です。」
突然、フェグリットさんの背中のから3対の羽が広がった。
耳の場所からも、小さい羽が1対。
頭の上には神々しいって感じの、光り輝く輪が現れた。
宗教に興味ない俺ですら知ってる、大天使ウリエルなんてな…。
周りも圧倒されてる。
「これが本来の姿です。ですが、これでは目立ち過ぎます。
しかも、異世界人にはあまりにも知られた名前ですので
あえて正体は隠させて頂たい。」
「ウリエル殿、そなたは何故この世界に参られた?」
ユーシスが問い掛けた。
他の人じゃ、確かに話し掛けられないオーラが出てる。
「私は大いなる者より、新たにこの世界を見守る任務を賜りました。
そして、我が伴侶となる者も。」
ここに来て初めて、フェグリットさんが人間みたいな表情を浮かべてる。
眼差しの先には勿論、ナーヴァさんがいた。
「尚吾様の身体の模様は、分かる者が見れば全てが理解できる。
私はこの世界に、安定を約束しましょう。」
俺、初めて畏怖ってものを理解できた。
でもさ、フェグリットさんは今まで通りでいいや。
俺自身がそうだから。
王様と同格な扱いなんてされてるけど、庶民なんだよ。
贅沢より、レオノアと二人で居れるなら貧乏でもいいし。
フェグリットさんだってさ、ナーヴァさんと普通に居たいから
衛兵になってんだろうし。
「国王陛下、レオノア殿下。
この者の同席、お許し頂けますでしょうか?」
ヨルドさんの問いかけに、二人は静かに頷いた。
よいよ、俺の番だよ…。
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フェグリットの正体、こんな感じにしてみました。
ファンタジー小説の「始まりから〜」と微妙にリンクしてます^^;