『リシェルVSエニシア 試練の五番勝負』 VSギアン



 ここで閑話休題。人間、誰しも一生の内に一度は輝く季節というものがある。彼にしてみてもそれは同じだった。
 初期状態で四足。横切り。直接攻撃を防ぎつつ攻撃できる優秀な待機型。回復にうってつけの霊属性。
 ゲーム序盤。本当に序盤のそのまた序盤に限るが彼の存在は輝いていた。それがいつしか……
 早ければ頭数の揃う5-bの戦闘時に、遅くともシンゲンの加入する8-bまでには彼はサポートとしてすら使われぬ二軍へと姿を消す。
 以後、出番は14話番外の強制出撃ぐらい。それにしたって初期配置からそのまま放置で置いていかれる始末。
 ギャレオを遅れてきた直接攻撃のエースとして持て囃したファミ通の攻略本でさえ彼を擁護することはできなかった。
 シマシマさんでもタフガイにすればまだマシに使えるのに。ああ、なにゆえエルゴは彼にこのような過酷な運命を与えたのか。
「姉さんはいいよね……どうせ僕なんか……」
 どこぞのレヴィノス弟並のコンプレックスを抱える彼、その彼のこのSSにおける出番は刻一刻と迫っていた。


「ハハハハハ。よくここまで来られたな。リシェル。だが、それもここまでだ」
 あからさまにやられ役テイストな口上を述べながらギアンはたから笑う。
「知ってのとおり僕の送還術のまえではゴレムにエレキメデス。君を4最強ユニットの一角にたらしめている双璧は意味を成さない」
 多くのプレイヤーを鬱陶しがらせることにおいては群を抜く自身の特殊能力を誇るギアン。
 最もS召喚術や必殺技で毎度リンチされてあの世送りにされまくったけど。
「頼みの綱のメイドも一回限り。君一人で僕に勝てようはずもない。さあ、いくぞ」
 初手から幽角獣の響界種としての力を解放するギアン。かつてない強敵がリシェルの前に立ちはだかる。


 プシュー 撲殺終了。さしもの送還術も直接攻撃に対しては意味を成さなかったのである。  
「何故だ!何故だっ!何故だぁぁぁぁぁぁぁあああ!!どうしてこの僕が召喚師ユニット相手に真っ向から殴り負けるぅぅぅううう!!」
 響くのは負け犬の遠吠え。リシェルは一笑して、それに答える。
「っていうか人生やり直したばっかでしょ。今のアンタって」
「ハッ!まさかっ!?」
 気づいてギアンは自分のステータスを見る。するとそこには
「なはぁぁぁぁぁあああっ!!やっぱりレベル1ぃぃ!!!」
「ふっ、無様ね」
 堕竜状態から只で元に戻れるはずもなく、経験地の一切が白紙にされた。
 こんな状態ではレベル50のリシェルと殴り合いが成立するはずもなく。
「うっ……ぐっ……酷い……扱いがあんまりじゃないか……これでも僕……本編のラスボスなのに……」
 もはや威厳の欠片もなくギアンは一人泣き崩れる。
「今までで一番楽だったわ。さて、これで残すはエニシア一人。フフフフフ」
 最終STAGEを前にリシェルは邪悪にほくそ笑む。だが、そんなときだった。
「今、誰か僕のことを笑ったか?」
「その声、まさかっ!」
 突如、後ろからかかる聞き覚えのある声。果たして声の主の正体とは(いや、もう冒頭でバレバレっしょ……)


「やあ、姉さん。久しぶりだね」
「ルシアン!」
 声の主。それはリシェルの弟ルシアンであった。
「どうしてこんなところに……アンタ帝都の軍学校はどうしたのよ。将来は自由騎士団に入るんだって……
 ってそんなことはどうでもいいからついてきなさい。いくらアンタでもオトリぐらいにはなるだろうし」
 さり気無く酷いことを言いながらリシェルは先を急ぐのだが……
「もう軍学校も自由騎士もないんだよ……姉さん……」
 刹那、広がる殺気。それを感知してリシェルは身を翻す。反応してよかった。先程までリシェルがいたマスをルシアンの横切りが薙いだのである。
「ルシアン!何のつもりよ!裏切り者はクラウレ一人で十分でしょう!アンタもあの焼き鳥よろしく嫌われ者にでもなりたいわけっ!」
「裏切り?違うよ。僕は表がえっただけさ。自分の心に忠実にね」
 問い詰めるリシェルにルシアンは悪びれることもなく答える。
「姉さん。姉さんはいいよね。機属性の召喚術師というだけでどのプレイヤーからも重宝され、一軍を約束されて……」
 自嘲を浮かべながらルシアンは訥々と続ける。
「そこをいくと僕なんて……なんでだろうね。おなじ姉弟なのにここまでユニットとして扱いに差があるのは……」
「そんなのアンタが雑魚過ぎるのがいけないんでしょうがっ!こっちだって最強召喚術がアンタとの協力専用で迷惑してんのよっ!」
「姉さんには分からないよっ!雀の涙ほどの経験地のために人生やり直しさせられ、そのまま放置で装備まで引っぺがされた僕の気持ちなんか!」
 常にパーティーのエースの地位を約束された姉と万年三軍固定の弟。ああ、惨い。同じ血を分けた姉弟だというのに。涙なしでは語れぬ物語である。
「だから僕は誓ったんだここにいる同士たちと共に。姉さんをはじめとする一軍キャラたちへの復讐を。さあ、おいでみんな」
 ルシアンの呼びかけに答えるがごとく続々と彼の同士が姿を現す。その顔ぶれは。
「地味地味ってネタにされているうちはまだ幸せなんですよ」 帽子を被った自警団兄
「やれやれだぜ。まったく」 どっかの楽園の島在住のシマシマさん
「帝国軍人を舐めるな」 どっかの駐在……ではなくどこぞの紫電の右腕な人
 性能談義スレでもシリーズ最弱の呼び声高き精鋭たちの姿である。
「揃いも揃って微妙よね。アンタ少しは友達選びなさいよ」
「フッ。確かに僕らは一人ひとりは弱小。だが、そんな僕らも束になれば……さあいくよ。みんな」
「「「おおう!!!」」」
 ルシアンの声と共に勇者達は一斉にかける。果たして彼らの下克上は成功するのか?


「てやっ!どうだ!」
 静かなる勇者の槍。それはゴレムの壁に阻まれる。つうか6足当たり前の4世界で3足の槍使いなんてどう使えと。
「出てきなっ!」
 孤高の守護者は召喚術で攻撃する。本気でいくにゃー。ポクッ!ダメージ14。最低値。パラの振り方も中途半端だから。
「ぬ、うんっ!」
 コイツにいたってはもう論外。どこをどう使えば直接攻撃のエースになれるのですか?教えてファミ通。
「もう哀れ通り越して涙が出てくるわよ……安らかに眠りなさい。ボルツテンペスト!」
「「「ぬぐわぁぁぁぁぁぁあああ!!」」」
 限界ダメージ104と麻痺レベル1を叩き込まれて勇者達はあえなく散る。
「ああ、みんなっ!」
「仮面●イダーキッ●ホッパー風に登場してもルシアンは所詮ルシアンよね」
「くっ、うぅぅ………」
 そもそも如何ともしがたい実力差があるから一軍と二軍とに分かれるのだ。
 そんな基本にもルシアンは気づいていなかった。
「ここまでなのか……やっぱり僕はここまでの男なのか……」
「諦めるな!ルシアン!」
 するとさっきまでへ垂れてたレベル1の男が激を飛ばす。
「ギアン……」
「ルシアン。君と僕とは互いに競い合うことを誓った強敵(とも)同士のはずだろ。その君がこんなことで諦めてどうする」
 このSSはエニシアENDの設定のはずなのだが何故かギアンENDでのライバル宣言を持ち出す。
「さあ、いこうか。今度は僕が力を貸す。君は迷うことなく自分の道を突き進めばいい」
「そうだねギアン。ようし、喰らえ姉さん。僕らの友情のコンボ。召獣連撃!ムーンアルクス!」
 とライの見よう見まねでパクリの連携技を敢行する。回避不能の必殺の一撃。それが見事にリシェルを捉えて

 ボクッ ダメージ10

「「……………………………」」

 まあ、そりゃそうだ。人生やり直し放置組みが頑張ったところでこの辺が関の山。
「フ、フッフッフフ。あんた達、よくも舐めた真似してくれたわねぇぇ!!」
「「どひぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!」」
「お望みどおり纏めて吹き飛ばしてあげるわよ。喰らえバニシングビーム!!」
「「「「「ぴぎゃぁぁぁぁぁっぁぁあああああ!!」」」」」
 哀れ。ギシアンコンビは傍で麻痺ってた勇者達ともども纏めて吹き飛ぶ。彼らの下克上はこうして悲劇で幕を閉じたのであった。


「役立たず」
「酷っ!」
 言葉通りのヘタレ参謀にエニシアは冷たく言い捨てる。
「まあ、いいよ。決着は自分の手でつけたほうがいいよね。今度こそ本当に最後だよ。リシェル」
 かくして決戦は最終STAGEへ。どんな結末が待ち受けるのか。勝つのはリシェルか?エニシアか?


 待て次回。

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