13. 心音


「ほらー、早く起きろよぉ〜」
「うぅ…まだ眠いんだ俺は」
「…5秒以内に起きないと、嫌いになっちゃうよ?」

ガバッと滝本は起き上がった。

「俺に嫌われるのは、嫌なんだ?」
「………この野郎。惚れた弱みにつけこみやがって」
「こういうのは、有効活用しないと…ね?」
「こいつっ!」
「あはははっ、くすぐった…!」

横腹をくすぐってくる滝本の腹を、俺もくすぐってやる。
それでもやっぱり滝本の方が上手のようで。
俺は泣くまで笑わされ続けたのだった。






「なぁ、仕事でパーティに参加することになってるんだけどさ。譲も来るか?」
「え?」

朝食を食べなら、俺は滝本の顔を見つめた。
仕事でパーティということは、デザイナーの人たちが集まったりするのだろうか。

「それに俺が参加してもいいわけ?」
「ああ。結構、知り合いを連れてきてる奴も多いからな。どうだ? ご馳走とか、食べれるぞ」
「お前なぁ、俺が食べ物で釣られるとでも思ってるのか。俺はいかないよ」
「まぁ、お前の意見なんて関係ねぇけどな。もうメンバー表に参加者として登録しちまったし」
「はぁ!?」

勝手に登録しているところにも腹が立つが、にも関わらず意見を訊いてきたことが気に食わなくってしょうがない。
どうせ反映されないのなら、わざわざ訊かなければいいのに。

「最低だな、滝本」
「何とでも? 俺は少しでも長くお前と一緒にいる時間が欲しいんだよ」
「っ…」

そういう風に言われてしまうと、言い返せなくなってしまう。
滝本ってやっぱり我侭で、最悪で、最低で、嫌な奴だ。
そのくせ嫌いになれないんだから、俺はどうかしてる。

「まぁ、もう仕方ないから行ってやるけど。でも着ていく服が…」
「その点については心配すんな。俺がちゃーんと用意してあるからさ」
「…変な服じゃないだろうな」
「スーツなんだけど…。何? もっとエッチな格好が良かった?」
「誰が!」

俺は朝食を口に担ぎ込むと、席を立った。
長いこと一緒に過ごしていて分かったけれど、このテの話になってくると、滝本は危険だ。
決まって手を出してくるからな…。
そんなわけで逃げるようにリビングから出ようとしたのだが、腕を掴まれてしまった。
恐る恐る振り返れば、ニッコリと微笑んでいる滝本がいて。
でも、目は笑っていないわけで。

「無駄な抵抗はしない方がいいぜ、譲?」

泣きそうになりながら手を振り払おうとするのだが、滝本の指は離れない。
そればかりか、更に強く握ってきた。
駄目だ、このままじゃいいようにされてしまう…!

「たっ、滝本! 仕事に行かないとな? なっ!?」
「ああ、行くぜ。食後のデザートをたっぷりと楽しんでからな?」
「ッ………!!」

デザートなんて今日は用意してない。
だから、もしかしなくっても、それって…。

「いただきまーす」
「うわわああっ!!」

やっぱり俺のことですかー!?
滝本は俺を壁に押し付けると、唇を奪ってきた。
手首を押さえつけられてしまい、抵抗することが出来ない。
朝っぱらから何を盛ってるんだよ、もう!
昨日だってしたばかりなのに…っ。

「ぁ…っ」

そのときのことを思い出して、全身が熱くなる。
駄目だ駄目だ!
思い出しちゃいけない…っ。
そう思うのに、一度思い出すともう止まらなくって。
滝本の指使いとか声とか、そういうのをリアルに思い出してしまって、体がどんどん火照っていく。

「…お前、ココ目茶目茶反応してんじゃねぇか」
「だっ…だってぇ…あう!」

股間をギュッと握り締められて、俺はその場に座り込みそうになった。
滝本の洋服を掴んで堪えると、それに彼は気を良くしたらしく、下着の中に手を入れてきた。

「あんっ! …もっ、やだー! 滝本ってすぐにエッチなことする!!」
「たりめぇだろ。気持ちいいこと好きなんだから。それが好きな奴相手だったら尚更だ」
「あのなぁ…っ。この、エロエロ大魔王!!」
「うぉ!? 魔人から大魔王に変化しやがった!!」
「良かったな滝本! 昇格だ!」
「嬉しくねぇよ!!」

滝本はそう言うと、亀頭を強く擦ってきた。
それだけで腰砕けになりそうなほどの快感が身体を襲い、脚がガクガクと震える。
袋を優しく揉みしだかれ、後ろを指で弄られると、もう声を抑えることなんて出来なかった。

「ぁはっ、あ…ぁあん、ひぅ…ッ」
「とろっとろだな、ココ。なぁ、そんなに俺の指…美味しい?」
「ふぇっ、あぁ…!」

気力を振り絞って睨み付けると、滝本は楽しそうに微笑んだ。
それから、自身を取り出すと、俺の蕾に宛がった。
その熱さに息を呑むと、滝本は耳元に口を寄せてきた。

「俺の、欲しくねぇ?」

頷いちゃ駄目。
流されちゃ駄目。
そう分かっていても、身体は正直に反応してしまうわけで。

「あ…おね、がぁい…俺の中、いれ…ああっ!!」

言い切る前に、熱柱が挿入された。
その衝撃に息つく間もなく激しく揺さぶられて、苦しさと快感から涙が溢れる。
何度も注挿を繰り返され、簡単に絶頂へと追い上げられてしまい、俺は滝本にしがみつきながら自身を弾けさせた。
それでも滝本は、脱力して倒れそうになる俺の身体を支えながら腰を動かし続ける。

「はっ、はっ…ぁあ…あんっ、だめ…」
「何が駄目なんだよ…っ」
「んんんっ!」

たとえ俺がイッても滝本は達していないため元気なわけで、挿出の勢いは衰えない。
先端部分が敏感な部分を容赦なく擦っていき、俺は彼の洋服を握りながら、意味を持たない声を上げ続ける。
といっても力が入らないため、握りしめる、だなんてことは出来ないのだけれど。

「やんっ…もぉむりぃ…っ」
「でもここ、ぎゅうぎゅう締め付けてくるんだけど?」
「ひぁあっ、そ…あぁん…」

滝本は腰を揺すりながら、俺の耳朶を舐め上げた。
その感触に全身がブルリと震え、後孔が締まるのが自分でも分かった。

「どうなんだよ、譲?」
「んん…意地悪ぅ…っ」
「俺、意地悪なことするの大好きだからな。お前の泣き顔、好きだぜ?」
「ぁっ…う…この、エロエロ…魔神…っ」
「うーし、よく言った譲! じゃあ神に昇進した俺のもんを、得と味わってもらおうじゃねぇか!」
「ああああっ!!」

強く突き入れられて、脳にズガンッと大きな衝撃が走った。
それは紛れもなく、意識が飛ぶ音なわけで。
俺は「ぁぅ〜…」と情けない嬌声を上げ、滝本にもたれかかりながら、再び絶頂を迎えた。




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