15. 心音


介抱をしてくれるんだと思って、医務室に来た。
その考えが甘いということを思い知らされるのは、やって来て3分経ったか経たないか、そのくらいのことだった。



「やぁっ…スーツ、汚れちゃう…」
「お前ので汚れるんなら、むしろ大歓迎だな」
「馬鹿…っ。あ、あっ…駄目、本当…!」

下から軽く突き上げられて、俺は身体を弓のように反らせた。
滝本は俺のことをベッドに寝転ばせるや否や、服を脱がしにかかったのだ。
前だけを肌蹴させ、ズボンを脱がせ、それから下着を床に投げ捨てると、彼は俺のことを抱えあげて、自分の膝へと向き合う体勢で座らせた。
もちろん、後孔に自分自身を咥えさせて。

「はぁっ…あぁぁ…ッ」

プックリと勃ち上がっている両方の乳首を摘まれて、俺は快感に腰を浮かせた。
それによって、ただでさえこの体勢のせいでいつもより深く咥え込んでいるというのに、より奥に入ってしまう。
滝本はそのまま玩ぶように舌で胸を嬲りながら、俺自身を掴んだ。

「ひっ、あぁ…っ!?」
「同時に弄られるの、好きだよな?」
「あっ、ちが…」
「どこが違うって言うんだよ。こんなにダラダラ蜜を零しておきながらさぁ」

滝本の舌と指が動くたびに、ひくんひくんと中が蠢く。
もっと気持ち良くなりたくて、中を擦りあげて欲しくて、たまらない。
けれど滝本は先程から腰を動かすということをほとんどしていなかった。
たまに突き上げて、俺の反応を愉しむ程度だ。
執拗に胸と俺自身への愛撫をし続ける滝本に、俺は物欲しげな眼差しを向けた。

「どうした?」
「…分かってる、くせにぃ…っ」
「言ってくれなきゃ分からないぞ」

滝本はそう言いながら、俺自身にハンカチをかけた。
スーツを汚さないためなのだろう。
布地に擦られる感覚に、熱が弾けそうになる。
けれどそうなるだけで、やっぱり達することは出来ない。

「あぅ…たきもとぉ、おねがぁいっ…」
「何だよ」
「う、ごいて…?」
「断る」

恥ずかしさを我慢して言ったのに、冷たく言い放たれて、俺の思考は停止した。
滝本と見つめ合ったまま、時間が過ぎる。

「え、と…。今、何て…?」
「断るって言ったんだよ」
「なっ、なな…なんでぇ!?」

今までお願いしなくて動いてくれないことはあったけれど、お願いしたのに動いてくれないことなんて一度もなかったのに。
それなのに、滝本は『断る』と言った。

「ひ、ど…いよぉ。何で…?」
「さぁ? 何でだろうなぁ」

挿れてるくせに、動いてくれないなんて…!
恨めしげに滝本を睨み付けるのだが、彼は一向に動いてくれない。
お願いの仕方がまずかったのだろうか。

「…譲の馬鹿が。何で分からないんだ」

不機嫌そうに呟かれた声に、俺は目を瞬かせた。
譲の、馬鹿…。
ああ、そうか。

「誠二…」

名前を呼ぶと、滝本の肩がぴくりと反応を示した。
そうか、そうだったんだ。
滝本、俺にも名前を呼んで欲しかったんだ…。

「誠二、誠二ぃ…?」
「なっ、何だよ…!」
「お願いだから動いて? 一緒に、気持ちよくなろぉ…?」
「っ……」

中で滝本が大きくなったのが分かった。
俺が名前を呼ぶだけで、感じてくれるのだろうか。
喜んで、くれるのだろうか。

「せいじ…」
「分かったよ。分かったから、そんな泣きそうな顔してんじゃねぇ」
「あっ…んぅ」

滝本が唇を重ねてきて、俺は瞼を閉じた。
すぐに差し入れられた彼の舌に、自ら舌を絡めていく。
聞こえてくる湿音に羞恥が刺激されたのか、頬が紅潮していくのが分かった。
存分に互いの舌と唾液を絡めあったところで唇を離すと、熱っぽい吐息が零れた。
微かに香るのは、いつも滝本が吸っている煙草の匂いだろうか。

「相変わらずキスした後のお前、可愛いな。いつもそうだけど、その顔見ると、我慢出来なくなる」
「する気も…ないくせに」
「まぁな」

滝本のゆったりとした腰の動きに合わせて、中が掻き回されていく。
待ちわびたその感覚に身震いしていると、滝本が微笑むのが見えた。

「誠二、気持ち良い…?」
「ああ、最高に」
「良かったぁ…。あっ、ん…」

互いに抱きしめあいながら、再び濃厚なキスを交わす。
頭の中が痺れて、何も考えられなくなっていく。
ただ、ひたすらに気持ちよくって…。

「あぁあッ!」

不意に突き上げられて、俺は彼の背に爪を立ててしまった。
それでもそれを気に留めることなく、滝本は腰を動かし続ける。
身体がどんどん熱くなっていき、意識が朦朧となっていく。
唇の端から唾液が零れるのを気にもせず、俺は腰骨を滝本に打ちつける。

「ふぁあああっ…あぁ、せいじ…ぃ…ッ」
「くっ、イクッ…からなっ」
「あっ、ああああああッ!!」

俺が限界を超えるその瞬間、中で滝本がドクンと大きく膨れ上がった。
滝本とほぼ同時に絶頂を迎えた俺は、ハンカチに白濁をぶち撒けると、そのまま彼に倒れこんでしまった。
中で滝本自身が脈打つたびに、熱い塊が放たれる。
その都度、俺はビクビクと身体を震わせて、声を漏らす。
長い長い彼の射精はたまらなく気持ちよくて。

「ぁんっ…また、大きくなっちゃったよぉ…」

再び自身が勃ち上がったことに気づき、俺は恥ずかしさに身を捩じらせた。

「馬鹿、動くなよな。俺もまた、したくなっちまうだろ…」
「しよぉ…?」
「…酔うと積極的だな」

滝本は嬉しそうに笑うと、再び腰を動かしだした。
交じりあっている箇所からぐちゅりと卑猥な音がして、溢れた白濁が滝本自身を伝っていく。

「あぅんっ…。もっと、もっと…気持ちよくしてぇ…?」
「ああ。嫌になるくらい、してやるからな」

俺は滝本と口付けを交わすと、彼の動きに合わせて、腰を動かした。




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