5. 不協和音のような僕ら
ピーッという笛の音に、バスケをしていた生徒たちの動きが一斉に止まる。
振り返れば、そこには深町が倒れていて、体育教師が心配そうに駆け寄っていた。
「…深町のヤツ、どうしたんだ?」
岡崎の声に首を傾げる。
俺だって何が起きたのか分からない。
ボールがぶつかったというわけでもなさそうだし…。
「もしかして、寝てる…とか」
「それは流石に」
岡崎の言葉を否定しつつも、案外それが理由かも…などと思っている自分がいる。
う〜ん、実際はどうなんだろう。
もしかして本当に、体調不良だったりするのだろうか。
「保健室に運んでくるから、みんなは試合を続けるように!」
教師の声に、生徒たちが試合を再開しだす。
それでも俺は、参加する気になれなかった。
「岡崎、俺…」
「分かってる。行ってきな、委員長」
「ああっ」
理解ある幼馴染に背を向けて、俺は保健室へと駆け出した。
「馬鹿だろ、深町。試合中に寝るなんて」
まさかね、とか思っていたことが事実だった。
深町は睡眠不足でぶっ倒れたのだ。
「仕方ないだろ。昨日は遅くまでコンビニのレジ係。今朝は早くから新聞配達。倒れて当然だ」
「そう思うのなら、少しは自重したらどうなんだ!」
「委員長に強制される謂れはない」
「深町のことが心配だから言ってるんだぞ!!」
ベッドに身を沈めている深町を睨み付けると、プイと顔を背けられてしまった。
むむっ、相変わらず素直じゃないというか腹立たしいというか…!
「そんなに金が欲しいのかっ」
「欲しいさ。金があれば何でも出来る…とまでは言わないけど。でも、なかったら何も出来ない」
「…そうだけど。でも体調崩したら元も子もないだろ」
っていうか、本当に…どういう生活を送ってるんだコイツは。
「おい深町! 今日はお前の家の様子を見に行かせてもらうからなっ」
「はぁ…?」
「どんな環境で育てばお前みたいな爆睡魔が生まれるのか、確かめてやるっ」
「…好きにすれば」
深町は半ば投げやりに言うと、寝返りを打った。
うん、了承は取れたわけだし。
今日の放課後は深町家に突入だ!
ご両親には深町のふしだらな生活っぷりを、注意してもらおうじゃないか。