2月14日 7



「もう、終わりにしよう」
 そう倉知に言われた時、頭の中が真っ白になった気がした。
 何か言わなくてはいけないことがあるのに、それが何か解らない。
 俺は倉知のことが好きだ。何を今さら、と言われても仕方ない。自分がどんなにひどいことを彼にしたのかも忘れてはいない。
 それでも、ああ、そうだ。
 俺は言うつもりできたのだ。倉知に今までのことを謝罪して、また最初からやり直すことができないかと訊きにきたのだ。

 馬鹿だったな。俺はそう思った。
 倉知は俺のことなんか好きじゃない。好きな相手は別にいる。だから、彼のそばには別の人間がいるのだ。
 今、倉知と俺の間に立っている男性は、倉知よりも少し身長は低い。それでも、まっすぐに俺を睨みつけてくる。俺たちの関係を知っているのか、それとも知らないのか、そんなことはどうでもいい。少なくとも、悪い男ではなさそうだということが重要なのだ。
 この男性は、俺から倉知を守るようにして立っている。そして倉知は、そんな彼をひどく優しげな眼差しで見ていたと思った。

「ごめん」
 俺はやっとのことでそう言った。喉の奥が張り付いているようで、掠れた声しか出なかった。
「本当に、今まで悪かった」
 俺はそう重ねて言ってから、そっと倉知の顔を見つめた。色の白い頬。きつく引き結ばれた唇。
 その唇に触れたくても、触れることはできない。 触れてはいけない。
 もちろん、俺が倉知のことを好きなのは変わらない。今までひどいことを彼にしてきた分、今度は俺ができることを精一杯しなくてはならない。
 倉知が望むなら、何でもしよう。
 彼のために。俺ができることを。
「友人に戻れるか?」
 これは俺の我が儘だと思う。もしも厭だと言われたら、それで終わりだ。むしろ、顔も見たくないと言われても仕方ない。
 しかし、倉知は強ばった表情のまま、小さく頷く。
「友人に戻ろう」
 彼が囁くように言うのが聞こえると、少しだけ俺の胸が温かくなった。
 それと同時に、切なくもなった。
 もう、何があってもそれ以上の関係にはならないと、宣言したも同じだから。
「じゃあ、また会社で」
 俺はかろうじて微笑みを浮かべると、そのまま自分のアパートへ歩き始めた。振り返りはしなかった。もしも振り返ったら、あの二人が部屋に入るのが目に映る。そんな光景は見たくなかったのだ。

 ホワイトデーが近い。
 去年の今頃は、倉知と一緒にデパートに足を運んだ記憶がある。去年も今年と同じで、会社の女性陣からチョコレートをもらったし、そのお返しに何か買わなくてはいけなかったから。
 今年は、倉知を誘うわけにはいかない。倉知は俺と一緒にいるのも苦痛だろうから。
 こうしてみると、俺って友人と呼べるような男は、職場には倉知くらいしかいなかったなあ、と思う。
 もちろん、他の連中とも会話をするし、話をしていて楽しい。でも、休日に一緒に行動するなんてことは倉知以外の人間とはなかった。
 結局、倉知と友人に戻ると言っても、何もなかった頃の自分たちには戻れなかった。俺は倉知に声をかけるのも躊躇うし、倉知もそうだろう。職場で必要最低限の会話だけをして、昼食もほとんど別々に取った。
 あれ、こんなので友人と言えるんだろうか?
 俺はそうも考えたが、何だかもう、どうでもいいような気がした。
 一緒に行動しなければ、俺は倉知のことを考えずにいられる。倉知が別の男性といたことも、忘れてしまえるはずだ。いや、忘れられなくても気にせずにいられるはずだ。
 考えてはいけない。
 考えてはいけない。

 あの二人が、別れてしまえばいいのに。

 そんなことは、考えてはいけないのだ。

「その後、どうした?」
 携帯電話の向こう側から、由梨の冷やかすような声が聞こえてきて、俺は戸惑いながら言葉を返した。彼女から電話をしてくるのは珍しい。
「どうしたって何が?」
 俺はアパートでテレビを観ながら、ぼんやりとソファに寝転がっていたところだった。仕事が終わって、通常だったら夕食を作っている時間帯だったが、あまり食欲がないせいか、冷蔵庫の中に冷えていた缶ビールを飲むだけで終わりそうだ。
 俺は携帯電話を肩と顎に挟んだままの状態で、テレビから視線をそらさずに続けた。
「由梨こそ、どうしたんだ。何かあったのか」
「私は何もない。ただ、君の思い人がどうなったのかと思って電話した」
 明らかに彼女の口調は楽しそうなものだったから、俺は内心うんざりして黙り込んだ。由梨のことは確かに好きだ。特別な好きではない。気に入っている、というくらいのレベル。それに気づいたのは、倉知のことを真剣に考え出してからだ。
 倉知に対する感情と、由梨に対する感情は違う。最初は同じだと思っていた。同じように、一緒にいて楽しかったから。
 でも、明確に違うのだ。
 由梨と別れても、すぐに割り切ることができた。仕方ないと思うことができた。
 でも、倉知の場合は……。
「どうなったと言われても」
 俺は言い淀んだ。由梨と会話をするのは楽しいとは思うが、今は会話をする気分にはなれない。
 しばらく沈黙したまま、何て応えようか考えていると、由梨の声が少しだけ気遣うようなものへと変化した。どうやら、それとなく察してくれたような気配がする。
「悪かったな、いきなり電話して」
 やがて、由梨は申し訳なさそうにそう言った。「また気が向いたら食事にでも誘ってくれ」
「こちらこそ、悪い。……その」
 俺は急に、言う気になった。
 本気で彼女が俺のことを心配してくれているというのが伝わってきたからだ。
「その、ふられたんだ。まあ、当たり前だと思うけど」
「そうか」
 由梨が短く応える。そして、何も言わずに俺の次の言葉を待ってくれる。
「由梨の言った通りだったよ。俺がいい加減なことをしていたからなんだ。もう少し、真面目に向き合えばよかった」
 俺は苦笑混じりにそう言ってから、小さくため息をついた。すると、珍しく由梨が慰めるような口調で言う。
「今からでも間に合わないのか? 君がそう考えているなら、それを伝えてみるのも一つの手だろう。……それとも、もう伝えたのか」
「いや……その、無理なんだ」
 俺の胸がちりちりと痛む。「もうそいつは、別のヤツと付き合ってるから」
「もう?」
 少しだけ、由梨の声が低くなった。どこか、怒っているような口調。もしかしたら、と思って俺は慌てて続けた。
「いや、二股とかじゃない。元々、他に好きなヤツができるまで、そういう約束で寝たんだ。あいつは、他に本命ができたから、俺に終わりにしようって言ったんだよ」
「へえ、結構……」
 由梨は皮肉げな口調でそう言いかけ、すぐにその口調を和らげて笑った。「いや、そうだな、早く別れられて正解だったのかもしれない。長く続けば、お互い失うものもあるだろう」
「……失うもの」
 俺は小さく唸る。
 失うものなんてあるだろうか。得たものは多かったと思う。
 でも多分、こんな関係を続けていれば、俺はやっぱり不満に思うだろう。倉知が俺のものではないことに失望するだろうし、手に入れたいと思うだろうし、あいつを縛り付けてしまうだろう。そのためには、倉知を傷つけることすら選ぶかもしれない。
 ああ、そういう意味では、倉知の気持ちを失ってしまうのかもしれないな。俺に対する友情すらなくなってしまうのなら、確かに別れて正解だ。
「これ以上、嫌われたくないもんなー……」
 俺はつい、そんなことを呟いていた。「本当、ひどいことばっかりしたもんなー……」
 寝転がっていたソファの上で身体を丸め、由梨には気づかれないようにとため息をついた。何だかもうどうでもよくなってきていて、何も考えたくないししたくない。でも、由梨をこれ以上心配させるのも――心配じゃなくて、単なる興味だけなのかもしれないが――避けたい。
「話を聞いてくれてありがとう。そのうち、食事に誘うよ。次は、もうちょっとマシな会話を探しておくから」
 俺はできるだけ明るく言おうとしたけれど、あまり成功してはいなかった。
 すると、由梨は小さく返してきた。
「本当に馬鹿だな、君は」
 そう言った由梨の『馬鹿』の発音は、今までになく優しかった。

「……頑張って立ち直ってくれ」
 やがて、由梨がこう続けた。「君の友人、倉知君だったか、少し前に話をしたよ」
「倉知、が?」
 あまりにも突然のことだったので、俺は思わず起き直り、携帯電話を強く握りしめていた。由梨の声は少し低いから、聞き漏らさないようにと必死に耳に押し当てる。
「スターバックスで声をかけられてね、君のことを心配していた」
「心配……」
「少しね、ほっとしたんだよ、私は。ああいう友人がいれば、君も楽だろうと思った」
 心臓がひどく暴れていて、俺はいつの間にか右手を胸元において深呼吸をしていた。
 落ち着け、落ち着け。
 何で倉知が由梨と?
「何を喋ったんだ?」
 俺はかろうじてそれだけ言葉にすると、由梨が小さく唸るように応える。
「君の好きな相手が会社にいるらしいと言ったよ。どうやら、彼はまだ君と私が付き合っていると思いこんでいるようだったからね」
「何で」
「何で?」
「いや、由梨に訊いたんじゃない。何で、倉知は由梨に会いに行ったんだろう」
「それは君の方がよく解るんじゃないか。友人なんだろう?」
「……いや、よく解らない。友人だけど……」
 心配してた? 倉知が?
 でも、なぜ由梨と?
 混乱して上手く言葉が出てこない。
 すると、由梨が困惑したように続けた。
「当人に訊いたらどうだ。私に訊かれても答えられないよ」
 それはそうなんだろうが。
 俺は色々考えてみるものの、よく解らなかった。ただ、厭な予想だけは色々と思い当たる。
 暴れていた心臓が、だんだんゆっくりになった。
 どうせ、訊いたって何もできないんだ。そう思ったら、考えることすら馬鹿馬鹿しい。
「そうだな、そうしてみるよ。でも別に、たいしたことじゃないだろうし、訊かなくてもいいかもしれない」
 俺はどこか投げやりな口調になりつつ、もうこれ以上由梨との会話も続けるのも面倒になって、そう締めくくった。
「……友人までなくすなよ」
 すると、由梨が何かを感じたかのようにそう言って、俺は息を呑む。
「君は、人付き合いが下手だ。多分、自分で考えている以上にね。正直な話、恋人なんていつだって作ろうと思えば作れるだろう。でも、友人はそうではない。……さっきの君の言い方は、気に入らないな。たいしたことないだろうと切り捨てず、もう少し真面目に向き合った方がいい。もしも、いい加減な気持ちで友人づきあいをしているのならね」
「……いい加減じゃない」
 俺はぎりぎりと痛む胸に手を置いて、低く言った。
 いい加減なことをしているつもりはない。あいつと接触しないのは、倉知のためだ。全部、あいつのためだ。これ以上、迷惑をかけないために。

 でも、本当にそうだろうか?
 俺は、心のどこかでそう思う。倉知に迷惑をかけないために、そう自分に言い聞かせているだけじゃないのか?
 逃げている。倉知から逃げている。
 そうなのかもしれない。
 でも、そうだとしてもかまわないじゃないか。
 今のままで、いいじゃないか。
 これ以上、苦しいのは厭だ。もう、充分だ。
 逃げたっていいじゃないか。

「ホワイトデーのお返しって買ったか?」
 俺は仕事が終わってから、帰宅の準備をする倉知へ声をかけた。
 彼と話をするのは本当に久しぶりのことだ。あまりにも久しぶりだったし、俺たちの間には色々とあったから、声をかけてしまうまでがとても緊張した。
 倉知に声をかけず、このまま逃げ続けてもいいと思った。でも、やっぱりそれは厭だった。少しでも倉知に近い場所にいたい。もしも、倉知がそれを許してくれるなら。
「……いや、買っていない」
 倉知は驚いたように目を見開いて、しばらくの間息を詰めたまま俺を見つめ返していた。しかし、我に返ったように彼は呼吸をして、強ばった表情で応えた。
「じゃあ、一緒に買いにいかないか。倉知が迷惑じゃなければ」
 俺は少しだけ、彼の視線を避けるように俯きながら言った。多分、この誘いは断られる。それとも、倉知は俺のことを気遣って、俺と一緒にいるのが苦痛だとしても頷くのだろうか。
 ……心臓が痛い。
「ああ、別にかまわない」
 倉知の平坦な声が聞こえて、俺の心臓が冷えた。やっぱり、倉知はこういう性格なんだな、と思う。
 本当に迷惑じゃないのか? 我慢しているだけじゃないのか?
 そう訊きたかったけれど、「迷惑だ」と思っていても彼は言わないだろう。そういうヤツだ。
「じゃあ、一緒にデパートにでも寄ろう」
 俺はできるだけ、以前と変わらない態度になるように気をつけながら言った。自然な態度にしないといけない。落ち着いて、変なことを言わないようにしよう。
 色々考えながら、倉知と一緒に会社を出る。外は少し寒かった。

 倉知と一緒にいると、余計なことを考えてしまう。
 あの男とは上手くいってるんだろうか、とか、あの夜、倉知たちはあの後、何をしたんだろう、とか。
 夜道を歩きながら、俺は時々隣を歩く倉知の横顔を盗み見た。何の感情も表れない横顔。ただまっすぐ前を見つめている瞳。
 俺は軽く頭を振って、頭の中に駆けめぐっていることを忘れようとした。
 そうでないと、まともに会話なんてできない。
「何人分買うんだ?」とか、「予算はどのくらい?」とか、他愛のない台詞を彼に投げる。すると、倉知も静かにそれに応えてくれる。
 でも、こうして話をできているというのに、淋しいと思う。でも、これって以前の関係に戻っただけだろ? 以前は、こんな会話ばかりしてたじゃないか。何も変わってないじゃないか。
 考えているうちに、だんだん怖くなってきた。
 気づいてしまったからだ。もう、以前と同じになんて戻れないんだ、と気づいたら、とても怖くなった。

 デパートの中は賑やかで、どこもかしこも人間であふれている。ホワイトデーのための売り場もそれなりに盛況だったが、そこで商品を選ぶ男性たちは、あまり長く考えずに適当に棚の物を選んでレジに持っていってしまう。だから、売り場の回転は速かった。
 俺も、何を買うのかなんてことはどうでもよかった。必要な数さえそろえば、もうそれでいい。
 俺はずっと無言で陳列棚を見つめ、適当に選んでレジへと向かう。そして、会計を済ませると倉知の買い物が終わるまで待つ。倉知もまた、ずっと無言だった。
「夕飯、どうする?」
 買い物が終わって、やっと会話を再開させる。俺は倉知を見ることができず、ただぼんやりと辺りを見回しながらそう訊いた。
「藤崎のいいように」
 倉知の返事は素っ気ない。俺はつい、苦笑した。
 心臓が軋んでいるような気がした。俺の中から、変な音が聞こえるような気がする。
「……駄目だよな」
 やがて、そっと口を開く。「あんまり、俺と一緒に行動しない方が倉知はいいだろ?」
「……どうして?」
 俺はデパートの出口へ向かって出していたが、倉知の困惑したような口調に気づくと、彼の方を振り向いて続ける。
「あのときのヤツと付き合ってるんだろ?」
「あのときのヤツ?」
「倉知のアパートに泊まったヤツ」

  一瞬の間の後、倉知が眉を顰めた。
「城ヶ崎が……何?」
  明らかに戸惑っているらしい表情。俺も困惑する。だから重ねて訊く。
「付き合ってるんだろ?」
「城ヶ崎と?」
 城ヶ崎というのか。俺はまた歩き出した。デパートの外を出ても、やはり人通りは多い。だから、あまり変な会話はできない。できるだけ、冷静に言葉を選ばなくてはいけない。
「隠さなくてもいい。性格が良さそうなヤツだったし……倉知が惚れてるなら、きっといい男なんだろ」
「惚れてる……」
 倉知が途方に暮れたように繰り返す。それから、彼は静かに首を振った。
「何か、誤解している」

「誤解じゃないだろ」
 俺は倉知から目をそらし、歩き始めた。倉知がどんな表情で俺を見ているのかなんて知りたくないし、あの男――城ヶ崎とやらの顔を思い浮かべている倉知なんか見たくなかった。
「俺、応援するよ」
 心臓が、変だ。
「倉知のことが好きだから、応援する」
 苦しい。
「上手くいっていればそれでいいんだ」
 痛い。
 それでいいなんて嘘だ。

「ごめん、意味が解らない」
 気がつくと、倉知は道ばたで足をとめ、ぼんやりと俺を見つめていた。それに振り返って気づく。
「帰ろう。送るよ」
 俺は彼に微笑みかけ、そう言った。「食事はしない方がいいよな。城ヶ崎ってヤツが心配するだろう」
「藤崎」
 倉知は不安げに俺を見つめたままで、そこから動こうとしなかった。
 俺も倉知を見つめ続ける。
 言ってしまおうか。少し悩む。自分の思いを伝えるということは、俺を楽にさせるだろう。でも、倉知を困惑させるかもしれない。苦しめるかもしれない。
 もう嫌われているなら、何を言っても変わらないだろう。でも、これ以上嫌われたら?
 どうしよう。
 どうしよう。

 俺はゆっくりと倉知のそばに近寄り、彼にだけ聞こえるくらいの声で囁く。
「俺はお前が好きだ。……誰よりも、一番に」

「俺はお前が好きだ。……誰よりも、一番に」
 藤崎がそう言った時、私はその意味が解らなかった。思考能力が低下するどころか、停止している。
 しかし、やがて私の心の中に怒りがわいた。
 彼に対してこれほどの怒りを抱いたのは、これが初めてだった。それと同時に、私の心の中に穴が空くのを感じた。
「冗談はやめてくれ」
 私は冷ややかにそう言い放つと、藤崎から目をそらしてそのまま歩き出した。もう、買い物は終わった。食事もしないなら、帰宅すればいいだけの話だ。
 藤崎が私の後を追ってくる気配がした。でも、私は彼を振り返ろうとはしなかったし、いっそのことここで別れてしまいたいと思った。もう、会話などしたくなかった。
 何が目的なのか。
 そう考えれば簡単だ。もともと、我々は身体だけの付き合いから始まった関係だ。彼が求めているのは、それだけだったはずだ。
 彼には本命の女性がいる。
 それで?
 私の本命の相手は、城ヶ崎だと思っている。
 それでも『好きだ』という理由は?
 お互いに本命がいるのに、付き合いたいと思う?
 つまり、そういうことだ。やっぱり、遊びの延長なのだ。以前と少しも変わらない。
 悔しかった。
 情けないと思った。
 そうだ、私は怒らなくてはいけない。彼を拒否しなくてはいけない。
 身体だけが好きだと言われても、それでもいいからそばにいたいと思うような、そういう自分にはなりたくない。
 でも、そうなのだ。
 認めたくなくても、事実なのだ。
 セックスだけの関係だと思いながらも、私は彼に抱かれて悦んでいた。彼の心が私になくても、それでもいいと思ったことは事実なのだ。
 私は最低だ。

 ずっと無言のまま歩き続け、やがて藤崎のアパートの前までやってきた。私は彼に挨拶することもなく、そこを通り過ぎて歩き続ける。すると、そこで消えると思っていた藤崎の足音は、アパートの前を通り過ぎてもなお、ずっと続いた。
「じゃあ、明日」
 私は不本意ながらもそう彼に声をかける。もちろん、振り返りなどしない。早く一人になりたかった。
 でも、彼はずっと私の後をついてきて、私のアパートの前まで来てしまう。もちろん、彼を自分の部屋にあげるつもりはないし、黙って部屋のドアの前に立った。
 そこに、藤崎の声が響いた。
「話をしよう」
「必要ない」
 私はすぐに拒否の意を伝えた。でも、藤崎の声はあまりにも真剣で、苦しそうだった。
「話をするのも厭なのか。……迷惑?」
 彼の声が緊張に震えている。私はつい、笑った。そして、足を止める。
 ちょうど辺りには人気はなく、明かりの少ない場所だったからお互いの表情すら解らないほど暗かった。暗闇に助けられて、私はやっと彼の方に顔を向けた。
「そうだな、会話すら厭だと思う。迷惑だ」
 私はできるだけ冷たい声色を選び、そして何でもないことを言っているふりをしてそう彼に告げた。
 途端、藤崎の肩がわずかに震えた。
 よく解らない。何が何だか解らない。
 私はなぜか、声を上げて笑い出していた。笑いたいわけではない。でも、笑ってしまう。
 ひとしきり声を上げて笑った後、私は呼吸を整えてから口を開いた。
「君は他に好きな女性がいる。だったら、その女性と付き合うといい。……もう、私で遊ぶのはやめてくれ」
「他に好きなヤツなんていない」
 藤崎はそんな馬鹿なことを真剣に言う。「お前のことが一番好きなんだ」
「いい加減にしてくれ。もう、充分だろう」
 私の表情から、笑みが剥がれ落ちる。その代わりにこぼれたのは、涙だった。そのことに気づいて、私はアパートのドアに手をかけた。彼のそばから逃げたい。
「もう充分だ。もういい。やめよう。友達だって言ったじゃないか。もう、厭だ」
 涙がとまらなかったから、私は俯くことしかできなかった。
「倉知」
 そっと、藤崎が私の前に立ったのが解る。それが怖くて、つい叫んだ。
「こないでくれ!」
「……ごめん」
 すぐに、藤崎が私から数歩遠ざかって、力なく囁く。そして、また繰り返す。
「でも、本当に倉知のことが好きなんだ。……由梨に相談したのは、お前のことなんだよ」

「お前が、城ヶ崎ってヤツのことを好きなのは解ってる。だから、もうこれ以上お前には触れない。でも、解ってて欲しかったんだ。俺は本気で倉知のことが好きだった。誰よりも好きだった。だから、誤解されたまま終わりたくなかった」
 藤崎は私の解らないことを言う。
 顔を上げて彼の方を見つめると、暗闇の中でも少しだけ彼の表情が見えた。苦しそうに私を見つめ、でも真剣な眼差し。とても冗談を言っているような表情ではない。
「泣かせてごめん」
 藤崎はその瞳に苦しげな色を浮かべ、私を見つめ続けている。「俺、馬鹿だから倉知にひどいことばかりした。自分の感情が解らなくて、由梨に相談したりした。そして、真面目に倉知に向き合うべきだと思った。……もう、遅いけどな」
 そこで、藤崎がさらに一歩後ずさる。私を見つめたまま、切なげに微笑みながら。
「俺のこと、好きになって欲しかったよ、倉知」
 急に、目の前が歪んだ。

 何を言ってるんだ。馬鹿なことを言っている。これも冗談の一つなんだろう?
 私は眩暈のする頭を乱暴に振り、低く笑った。
 何か彼に皮肉の一つでも言ってやりたいと思ったけれど、何も言葉が出てこなかった。どんなに考えてもよく解らないのだ。
 やがて私は俯いて囁く。
「城ヶ崎のことは好きだ。ああ、好きだよ」
 藤崎が息を呑む気配。
「でも、彼は友人だ。それ以上でも以下でもなく、彼は友人なんだ」

 私はやがて、顔を上げる。私の言った言葉を、戸惑ったように聞いた彼。藤崎は意味が解らない、と言いたげに私を見つめている。
 それから彼は、震える声で訊いた。
「でも、好きなんだろ? ……俺なんかよりずっと」
「藤崎」
 私はただ笑う。表情の作り方が、これしか解らないような気がしてきた。笑いたいわけじゃない。でも、涙もとまらない。
「好きだから君と寝たんだ。君が私のことを、女性の代わりとしてしか見ていなくても、ダッチワイフの代わりとしか見ていなくても」
 胸が痛い。涙腺が壊れたみたいだ。笑いながら泣く。どうしたんだ私は。
「好きじゃなければ……君と寝なかったよ。私は好きでもない相手と寝られるような人間じゃない。でも君は誰でもよかったんだろう。知ってる、知ってるよ。君は誰でもよかったんだ。私じゃなくてもよかった。それなのに、何で今さらそんなことを言うんだ?」
「倉知」
 藤崎の声が遠く聞こえる。急に不安になって彼の顔を見つめ直すと、藤崎がゆっくりと私の方に近づいてきた。
「こないでくれ」
 私は不安に駆られて言う。「もう厭なんだ。苦しいのは厭だ。だから、友達でいい。もうやめよう。友達でいいよ」
「俺は厭だ」
 藤崎はいつの間にか、私のすぐ目の前に立っていた。ドアを背にして立つ私の目の前に立ち、ドアにその両手をついて私を逃げられないようにしながら言う。
「友達じゃ厭だ。お前が他のヤツと付き合うのを見てるのは厭だ。……苦しい」
「知らない。そんなことは知らない。私たちは友人だろう?」
「倉知」
 藤崎が私の顔を覗き込む。ひどく真剣な眼差しで、でも不安げに揺れる瞳。
「俺のことが好きだから……寝た? 本当に?」
「……嫌いだ。君なんか嫌いだ」
 私は彼から目をそらせなかった。あまりにもまっすぐに見つめられるものだから、逃げることができなかった。
「好きだから寝てくれた? 少しくらいは好きでいてくれた?」
「嫌いだ」
 声が震えた。心臓も震えている。何て情けない。
 でも。
 藤崎が小さく笑う。でもそれは、泣いているようにも見えた。
「嘘でもいい。嬉しい」

 嘘じゃない。好きだ。好きだから寝た。痛くても我慢した。何でもないふりをした。
 全部全部、君のことが好きだったからだ。だから嬉しかった。たとえ身体だけの関係でも。

「離れてくれ」
 私は必死に言う。彼の言葉は嘘だろう。嘘に決まっている。
 でも心のどこかで、彼の言葉を信じたいと願う自分がいた。馬鹿みたいなことだ。
「もういい。帰ってくれ」
 やっと彼から視線を引きはがしてそう言うと、藤崎の手が私の顎を掴んだ。
「好きだ、倉知」
 そのまま、彼の顔が私に近づいて。
 私の手が彼を押しのけようと力が入ったのは本当に一瞬のこと。
 彼の唇が私の唇に押し当てられた時、我を忘れた。

 彼の舌が私の中に入ってきた時、私は自分からそれに舌を絡めた。彼とのキスは久しぶりで、だからこそ眩暈がするくらいに嬉しかった。今までだって情熱的に感じた彼のキス。でも、今日はさらに濃厚だと思った。
 ドアに身体を押しつけられ、私は必死に彼のキスを受け止める。あまりにも心地よくて、夢中になることしかできない。
 藤崎はやがて私の身体を抱き寄せ、自分の足を私の足の間に割り込ませた。
「んん……っ」
 まずい、と意識のどこかで思う。
 彼の太ももがちょうど私の男性の証のところに当たり、彼の体温が伝わってくる。たったそれだけで、わたしのモノがびくりと反応したのが解った。
「……は……」
 彼の唇が離れた時、私は切ない吐息を漏らす。身体の奥が熱い。でも、その事実を否定した。
「帰ってくれ」
 力の入らない腕。それでも、彼の胸に手を置いて押しのけようとする。すると、藤崎が私の耳元で囁いた。
「部屋の鍵、開けてくれるか」
 心臓が、身体が期待に震える。違う、これは違う。
「駄目だ」
 必死にそう応えると、藤崎がズボン越しに私のソレを撫でた。
「じゃあ、ここでやる?」
「ば……」
 途端、私の頬が羞恥のために熱くなった。つい、辺りを見回してしまう。よかった、誰もいない。でも、いつ誰が通るか解らない。誰かに見られてしまう。
「駄目だ」
 必死に首を振るが、藤崎の目は本気に見えた。彼の手が私のズボンの前に伸びて、ジッパーを下ろすのが解った。
「ま、て!」
 私は慌ててポケットの中にあった部屋の鍵を取り出した。後ろ手に部屋の鍵を開けようとするものの、藤崎の手の動きに惑わされて上手くいかなかった。彼の手はズボンの中に伸び、下着の上からそろりと撫でる。
「頼むからっ」
 鍵を落としそうになって慌て、それでも何とか鍵穴に鍵を差し込んでドアを開けると、藤崎の手から逃れるために身体を捻る。そして、真っ暗な家の中に入り込んで電気のスイッチを探した。
「倉知」
 玄関先で藤崎の声が聞こえる。「上がっていいか?」
 厭だ、とは言えなかった。
「……ああ」
 だから、消え入りそうな声で応えた。

 リビングの電気をつけて、私はその場に立ちつくした。一体、何をしているんだろう、私は。
 気がつくと藤崎が私の横に立っていて、彼はやがて私の腰を引き寄せて背後から抱きしめる。その腕の力強さが気持ちよかったし、抱きしめられているだけで胸が高鳴った。
 彼の唇が私の耳の付け根の辺りに押しつけられ、私はたまらず甘やかな声を漏らした。でも、やっぱりこの行為は後ろめたいような感情を引き起こす。
「無理強いはしない。倉知のことは大切にしたいから」
 ふと、藤崎が真剣な口調でそう言って、ゆっくりとその腕を緩めた。そして、身体を離してしまう。
 ひどい、と思う。
 私の身体にはもう熱がこもっていて、あまりにも正直な反応を見せ始めている。
 勝手にこんな風にして、突き放すのか。
 そう思うと、藤崎が憎らしくなる。
 でも、そんなこと正直になんて言えるはずがない。私は自由になった身体を持てあましつつ、必死に深呼吸を繰り返してその熱を静めようとした。
「座ろうか」
 藤崎はリビングにあるソファに目をやって、にこりと笑う。でも、その表情はぎこちない。
 私は少しだけ警戒しながらソファに腰を下ろすと、藤崎がそんな私を見下ろして続けた。
「楽にさせてやっていい?」
 何が、と眉を顰めると、藤崎は私の前に膝をついた。そして、困惑する私の表情を見つめた後、そっと手をズボンの前に伸ばしたのだ。
「何を、藤崎!」
 さっき私が閉めたばかりの場所。反応しかかったままのソレを下着の中に押し込んでいた。
 でも、藤崎は私の抵抗などあっさりと封じ込め、ズボンのベルトを引き抜いた。あっという間に私のモノを引っ張り出し、その形に添って撫で上げる。
「んんんっ」
 私は唇を噛んで声を押し殺した。そんな私の反応を楽しむかのように、彼は私のモノを弄び、ぴくぴくと震えるその感触に笑みを漏らす。
 そして、こう言うのだ。
「倉知が厭なら、セックスはしない。でも、このままだとつらいだろ?」
「……君、はっ」
 言っていることとやっていることが違う。恨みがましい目で彼を睨みつけると、藤崎は少しだけ申し訳なさそうに微笑んだ。
「倉知が気持ちよければいいんだ。だから、俺のことは二の次」
 藤崎はそう言った後、少しだけ躊躇ったように私のモノを見つめ、やがて続けた。「やったことないから、下手かもしれない。でも、許してくれ」
 何を、と訊く前に、私は息を呑んだ。
 藤崎はゆっくりと私の男性器に顔を寄せ、そのままソレを口の中に含んだ。ぎこちなく這わされる舌の感触。
 でも、でも!
「や、やめ、駄目……!」
 私はソファの上でのけぞった。急激に駆け上っていく快感。膝が震え、爪先が引きつる。
 それは何かを確かめるようにゆっくりと、私の形に添って動く。もちろん、藤崎がこんなことをするのは初めてだろう。女性としか経験がないはずだから。男性と寝るのは、多分私が最初……だと思う。
 羞恥に頭の芯が犯されていくような気がした。
 藤崎が私のモノを舐めている。その事実が信じられない。それと同時に、藤崎の舌を意識するだけで欲情した。欲しくてたまらなくなった。
「頼む……からっ、もう……」
 やめてくれ、と言おうとした。
 それなのに、喉の奥が引きつって何も言えなくなる。あまりにも気持ちよくて、喘ぐことしかできない。すぐに絶頂が近づいてきて、私は慌てた。
 藤崎の頭を両手で包み込むようにして、必死に彼を引きはがそうとする。腰がびくびくと震え、自分でも情けないくらいに感じている。
 だんだん、藤崎の動きが激しくなる。頭を上下させ、硬くなったソレの感触を嬉しそうな表情で見下ろしているのが解る。
 身体の奥がずきん、とした。
 何て顔をしてるんだ。
「や、だ、だめ……だっ」
 このままだと、イってしまう。彼の口の中に出してしまう。厭だ。それは駄目だ。
 私は必死にそれを堪え、さらに自分の手に力を込めた。藤崎を何とか押しやらないと。そうしないと。
「頼む、頼むからっ、お、ねが……」
 まるで女のように身悶えながら、私は彼の頭を遠くに押しやった。でも、彼の口が私のモノから離れる瞬間、藤崎は強く吸い上げて。
「あ、あああっ!」
 堪えきれず、私は達してしまう。
 脳天を突き上げるような快感。そして、どこかに墜ちていくかのような感覚。
「……ん……」
 乱れた呼吸の合間にそっと藤崎の方を見つめた時、私は泣きたくなった。どうしたらいいのか解らず、身体を震わせる。
「ごめ……ん」
 彼の口の中に出すということはかろうじて避けられたようだったが、その代わりに、彼の頬から顎にかけて、私の解き放ったものが滴り落ちていた。
「顔射が趣味?」
 藤崎が笑いながら言う。
「すまない……」
 血の気が引く思いでそう繰り返すと、藤崎は嬉しそうに目を細める。そして、自分の頬に飛んだそれを指で掬い、ぺろりと舐めた。赤い舌にまとわりつく、白い液体。それを見た瞬間、また心臓が跳ねた。
「倉知のものだと思うと、興奮する」
 そう言って指先を舐める藤崎の瞳は情欲に潤んでいて、それを見てしまった私も少なからず似たようなものなのだろうと思う。呼吸が乱れ、どうにもならない。
「今夜はここまで」
 藤崎はそう言いながら、私の身支度を整え始めた。「倉知が認めてくれるまで、これ以上は何もしない」
 何?
 私はぼんやりと彼の顔を見つめる。
 すると、藤崎は笑みを消して私を見つめ直した。
「俺が倉知のことを好きだと信じてくれるまで、倉知が俺のことを欲しいと思ってくれるまで、待つよ。俺、待てると思う。何だってできるさ、倉知のことが好きだしな」
 何……?
 私はぐらぐらする頭をどうにかしたいと思った。
 これ以上は何もしない?
 嘘だろう?
 私は途方に暮れた。確かに私は彼のさっきの行為で達したけれど、それだけじゃ物足りないと感じている自分がいることにも気づいていた。彼に突き入れられることで得られる快楽を知ってしまっている今、身体の奥に蠢く何かをとめる術など私にはなかった。
 でも、言えるはずがない。
 して欲しい、などとは。
「明日も仕事だよな」
 藤崎はゆっくりと立ち上がり、その動きの流れで私の顔に自分の顔を寄せ、軽い触れるだけのキスをした。私は目を見開いたまま、彼を見つめている。すると、それに気がついた彼が苦笑した。
「……おやすみ、倉知。その、嬉しかった」
 そう言った彼は本当に嬉しそうに笑い、私の頬を優しく撫でる。「まだ、望みはあるよな? 少しくらいは……期待してもいいよな?」
「藤崎……君は」
 どうしよう。
 どうしよう。
 そうだ、私は君のことが好きだ。誰よりも好きだ。
 でも、でも。
 どうしたらいいのか解らない。
「おやすみ」
 藤崎がそう言って、部屋を出て行こうとする。玄関へと向かう彼の背中を見ていたら、私は急に苦しくなった。
「藤崎っ」
 私は何とかソファから立ち上がり、彼の方へ向かって歩き出す。そして、その腕を掴んで引き留めた。
「……信じていいのか」
 私は振り向いた彼に向かってそう訊く。すると、彼は一瞬、何のことを言われたのか解らなかったらしく、困惑したような目で私を見つめた。
「……私を、その、好きだと……その」
 そう言いかけると、急に頬が熱くなった気がした。頭がぐらぐらする。どうしよう、倒れそうだ。
「好きだよ」
 藤崎はひどくあっさりとそう言う。「だから、時間をかけて口説くよ。覚悟していてくれ。頑張って、その気にさせるつもりだから」
「え、いや、その」
 どうしよう。
 彼の顔が正面から見られない。混乱していたし、恥ずかしかったし、期待していたし、とにかく嬉しかった。
 嘘じゃないと信じてもいいのかもしれない。
 でも、どうしよう。
 好きだ。そう言ってしまっていいんだろうか。でも、もともと彼は女性が好きな男じゃないか。もしも、私に飽きてしまったら?
 ……切ない。
「何て顔をしてんだよ」
 藤崎がそんな私を見て笑う。「苦しめるつもりはない。倉知が迷惑なら、何もしない。もう、充分……色々してもらったし。他に好きなヤツができたら、言ってくれ。迷惑はかけないようにする」
「違う……そうじゃない」
 私はそっと首を振る。
 そして、少しだけ……いや、かなり悩んでから行動した。
 藤崎の唇に、そっと自分からキスをした。そして、ぐちゃぐちゃになった頭のまま、「好きだ」と囁いた。恥ずかしくて藤崎の顔を見つめることができず、その直後、彼に抱きしめられたときも、どう反応したらいいのか解らなかった。
 でも、幸せだと感じたのは間違いなかった。

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END

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