本日の魔王様 番外編1-2


 口の中に何か押し込められたのも、両腕を後ろに回されて手首を破り裂かれた服の布で縛られたのも、あまりにも簡単にされてしまっていて、俺は最初何も理解することができなかった。
 口の中に入れられたのも、布であったろう。
 何か言おうとしても、叫ぼうとしても声にならずに喉の奥で呻き声となってしまう。
「やっぱ、あんまりこういうのは趣味じゃねーなあ」
 獣人は俺の腹の上に馬乗りになって、舌打ち交じりにそう言った。「ま、しゃーねえ、時間ねえし、ちょいと急ぐか」
 俺は背中に当たった地面にあったのだろう、小石が突き刺さる感覚を覚えながらも、必死に抵抗した。
 もちろん、それは無駄であったのだが。
 ギルバートの躰が小さくなった。獣人の姿から人間の姿へ。
 しかし、人間の姿であるギルバートの身体は俺よりも大きく、その筋力も俺の抵抗を簡単に押さえつけてしまう。
 その時の彼の表情は、少しだけ強張っていた。しかし、すぐにその口元に笑みが浮かぶ。
「男にヤられたことある?」
 俺の上であいつは揶揄うように言う。
 俺はただ、彼を睨みつけるだけしかできない。
 すると、ギルバートはぐい、と顔を近づけてきて鼻を鳴らした。
「こんな状況でも上から目線?」
 そして、その大きな手のひらが、服を裂かれてむき出しになった俺の腹を撫でた。

 途端に沸き起こる嫌悪感。

「いいね」
 ギルバートがそう小さく言った瞬間、彼の手がそのまま下腹部と滑り、ズボンを固定していたベルトを乱暴に抜き取った。
 本能的に俺の足が奴を蹴り飛ばそうとしたが、それすらもギルバートはあっさりと受け止めた。そして、奴のもう片方の手がズボンの中へと滑り込んだ。
「可愛いもんじゃん」
 奴の手が俺のモノを掴んだ瞬間、目の前が怒りで赤く染まる、ということを経験した。
 ――殺してやる。
 俺がその思いを込めて口を――口の中にある布を噛み、奴を睨みつけていると、ギルバートの手が少し乱暴に動いた。
 俺のモノを掴んだ彼の手は、ズボンの中でそれを擦りあげるようにして動く。もちろん、嫌悪しか感じない。それでも、しつこく上下に扱かれていると生理的な反応が起きてしまう。
「動かしづらい」
 そこで、ギルバートが俺のズボンに手をかけて引き下ろす。
「ぐ……」
 やめろ、と言いたかった。
 でも、言葉にはならないまま下着ごと膝まで下ろされて俺は目を閉じた。
 膝の辺りで止められたままのズボンが俺の抵抗を邪魔してしまう。何とか奴の拘束から逃げたくて身体を捻っていたものの、ギルバートの手の動きはそこからもっと大胆になった。
 白日の下にさらされた身体。
 それを考えただけで血が逆流したようにも感じる。
 さらに、ギルバートは俺のモノをさっきよりもゆっくりと、そして竿の部分を丹念に擦った。
「男の身体って単純だよな。触られたら反応する。それが蔑んでいる相手、軽蔑してなぶり殺しにしたいと思っている相手でも」
 ギルバートが笑いながらそう言う。「俺を殺そうとしたお前の目、すげえやな感じだった。害虫でも見ているような目」
 ――事実、そうだろう。
 俺は噛んだ唇を震わせながらも思う。
 魔物はこの世界にいらない存在だ。
 殺してもいい。
 むしろ、殺さなければならない。
「そういう相手にこうことされるのは屈辱なんだろーなー」
 そう言った直後、ギルバートの手の動きが激しくなった。どんなに拒もうとしても逃げられず、俺のモノは彼の手の中でゆっくりと反応を示し――そして、これ以上はないと思うくらいの屈辱的な結果を迎えた。
 彼の手でいかされる、という結果を。
 喉が震える。
 身体も痙攣するのを隠せてはいない。
 それでも、俺は何とか目を開けてギルバートに冷ややかな目を向けようとした。人間以下としか思っていない下賤な生き物、そういった相手に向けるような視線を作ろうと思った。
 でも、それは虚勢にしかならなかった。
 ギルバートが自由にならない俺の両足を持ち上げて、絶対に見せたくないと思っていたその場所を見下ろしてきたからだ。

 もし自分の口が自由に動いたなら、やめろ、と叫んだだろう。
 怒りよりも恐怖が生まれた。

「……ちっさ」
 ギルバートは少し、怯んだようにそう呟いた。
 それから、俺の解き放った精で濡れているであろう指をそこに――俺の尻の合間へと滑らせてきた。
「これ、入んないだろ」
 そう困惑したように呟きつつ、彼の指が普通は排泄のために使われる部分を撫でた。途端に俺の身体が震える。
 そして、恐る恐る、といった感じで彼の指がそこに入ってきた。
 どんなにきつく力を入れていても、無駄だった。
 濡れた指がじわじわと進んできて、俺はただ首を振って拒否する仕草を示した。
「時間かければ広がるんかな、これ」
 彼の言葉が頭の中に入ってくるのにも時間がかかる。
 そして俺は、ただクレイグがこの場に早く戻ってくることを願い、そして矛盾することに、戻ってこないことも願った。
 こんな姿を見られたくない、という気持ちと、もう見られてもいいから早く助けてもらいたい、という気持ちが相反しつつ俺の中に生まれていた。
 そこで、ギルバートは俺の膝に絡んだままだったズボンを足から抜き取ると、地面に放り投げる。俺が自由になった両足で彼を押しのけようとする前に、無理やり左右に押し広げられて呻き声を上げた。
「ちょっと頑張れ」
 ギルバートはそうあっさりと呟いた後、また俺の中に指をねじ込んできた。
 指一本だけでいじられていた場所、でもやがて彼の指がもう一本増えて俺の喉から悲鳴じみた呻き声がさらに上がる。
 抜き差しされる指、濡れた音。
 狭い場所を無理やり押し広げられる感触、苦痛、嫌悪、屈辱。
 あらゆる感情が俺の中を渦巻いていく。
「……まだ無理だな」
 気が遠くなるくらい、彼の指の動きは執拗で、容赦がなかった。
 狭くてとてもこれ以上は開かない、と思っていた場所。そこを丹念にほぐし、さらに指を増やして広げていく。
 俺はこの時、自分が泣いていたことも気づかずにいた。

 クレイグは戻ってこない。
 それは絶望にも近かった。

 俺が喉を震わせて呻いている間に、散々弄ばれて広げられた場所。
 そこに、ギルバートのモノが押し付けられた瞬間、俺はギルバートを見上げて首を振った。
 一瞬だけ、彼の目が困ったように細められる。
 罪悪感のような感情も見えた、と思った。
 それなのに、彼はその行為をやめなかった。
 逃げようとする俺の腰を押さえつけ、じわじわとそれは俺の中に入ってきた。

 無理だ。

 俺はただ、目をきつく閉じて呻く。
 そこはそんなものを受け入れる場所じゃない。
 ギルバートのモノは熱く、そして信じられないほど大きく感じた。
 身を引き裂かれる感覚。俺の身体を傷つける凶器。

 厭だ。

 俺のきつく閉じた眦から、涙がこぼれる。
 こんなのは、嘘だ。

「くそ」
 ギルバートの動きが時々とまる。
 じわじわと押し開いて進んでくるそれ。もうこれ以上入らない、と俺の身体が本能的に言葉もなく意志を主張しているのに、ギルバートは休みつつもゆっくりとさらに身体を進めてくる。
 どこまで入ってくるんだろう。
 俺はもう、恐怖に意識を流されそうになっていた。
「ごめん」
 ふと、ギルバートの手が俺の頬を撫でる。涙で濡れた頬を指でなぞり、苦しげに笑う。
「でも、さっきより……いいな」
 何が、だ。
 俺は何とか目を開けた。
 ぼんやりと彼を見上げたままでいると、ギルバートは自嘲の笑みをその顔に浮かべて続けた。
「さっきまでのお前の目と、今。上から俺を見ていたお前が、俺と同じところに落ちてきた、って感じで」
 何を。
 言って、いるのか。
 俺が苦痛に身を震わせている間に、彼の腰がゆっくりと抜き差しを開始した。
 悲鳴は、これまでと同じで喉の奥に消えた。

 考えてはいけない。
 これは、何でもない。
 大丈夫だ。
 終わったら、こいつを殺せばいい。
 クレイグが戻ってくる前に、こいつを殺せば全て終わる。
 殺さなきゃいけない。

 意識を切り離すことができたらよかった。
 今、起きていることから目をそらせたら。
 そう願っても、彼が身体を揺するたびに苦痛の声が喉の辺りにせり上がる。

 だんだん激しくなる抽挿と、そのたびに少しずつ俺の中にあるギルバートのそれが、膨れ上がってくるかのような感覚に気が狂いそうになった。
 熱い。
 彼のモノが刺さっている部分が、痺れたような感覚と、焼けているかのような痛みにも近いもの。
 そして、凄まじいまでの熱を俺の中に感じて――俺は喉を鳴らした。

「感じてねーのな」
 ギルバートがやがて不本意そうに言う。
 彼のモノが引き抜かれ、どろりとした感触がそこから伝わっていくと、俺は現実に急に引き戻された感じがした。
 魔法が使えたら。
 呪文の詠唱ができたら、こんな奴、簡単に殺せるはずなのに。
 俺が必死に彼を睨もうとすると、ギルバートは苦笑した。そして、無理やり広げた両足を見下ろし、その内腿に手を這わせた。途端、俺の足が震える。それは嫌悪からくるものだったと思う。
「男って、『ここ』じゃ感じねーの?」
 ギルバートは俺のそんな表情など気にした様子もなく――いや、少しだけその瞳の中は何かの感情が揺らめいていたけれども、表面上はとても楽しそうに言葉を続けた。
「どうせなら感じた方がいいよな。つか、感じさせたいし」
 そう言いながら、彼の指がまた俺の中に入ってきた。
 彼の――吐き出したもので濡れている場所。そして、一度緩んでしまったそこは、簡単に彼の指を受け入れてしまった。
 感じるわけなどない。
 俺は痺れたような感覚に囚われている両足を何とか閉じようとしたが、ギルバートはそれを許さず、ただ俺の中を指で探った。
 それは、何かの実験のようだった。
 少しずつ、内壁をくすぐるように動く指。
 何かを確かめるように動く指は、やがて。

「んん……」
 喉が、腹が、そして足が今までとは違う感覚に震えた。
 びりびりとした痺れが、その場所から背中、そして首筋にまで一気に伝わって俺は必死に腰を引いて逃げようとした。
「んー?」
 俺の上でギルバートが不思議そうに唸る。「ここ感じる?」
 感じるはずがない!
 そう言いたくても。
 ギルバートの指が引き抜かれ、またそこにギルバートのそれ――男性器が押し当てられた。
 もう、厭だ。
 駄目だ。
 なりふりなど構っていられなかった。
 俺は気が付けば、ギルバートを見上げて必死に首を振っていた。
 入れられたくない。もう厭だ。
 哀願にも近い表情だったと思う。
 そんな感情を、ギルバートは困ったように見下ろして、それでも容赦なくそこに己自身を突き入れた。

「んんーっ!」
 俺は涙を流しながら首を振ることしかできなかった。
 駄目だ、これは嘘だ。こんなのはあり得ない。

 彼のモノは、さっき見つけた俺の身体が跳ねる場所を狙って擦りあげる。
 そして、絶対に認めたくなかった。
 彼が腰を動かすたびに、俺自身――俺の男性器がゆっくりと立ち上がっていくことなど。彼の手が触れているわけでもない、ただ女のように突き入れられているその行為で、俺のモノが熱を帯びていくことなど、ただの悪夢のように思えた。
 厭だ、厭だ、厭だ。
 俺のプライドが壊れていってしまう。
 男であるというのに、男である――しかも、殺すべき相手である魔物に犯されて感じているなど、これ以上の屈辱があるはずがなかった。
 それなのに、それはとても気持ちよくて。
 絶頂が近くなると、俺は泣き声のようなものを喉から上げることしかできなくなった。
 厭だ、いきたくない。
 こんなのは。
 そう、最後の理性が俺の意識に歯止めをかけようとした。
 なのに、もうすぐ絶頂を迎える、という時になってギルバートが動きを緩める。そして、別の場所を攻めてくる。感じるのに、一番感じるわけではない場所を。
 そうなると、さっきまでのプライドなど消し飛んでしまいそうになる。
 魔物に犯され、感じているのを受け入れたくないと思いつつも、早くいかせて楽にしてもらいたい、という気持ちと。
 俺はもう、抵抗することなど忘れ、ただ泣きながらギルバートを見上げていた。

 彼の腰の動きが激しくなった。
 肉がぶつかる音が生々しく響く。
 俺のモノも限界にまで達して、俺の中にあったギルバートのモノも一際激しく擦り上げ、同時に達したのを感じた。

 こんな絶望は知らなかった。
 何も考えることができなかった。腹の上に飛び散った自分の……白濁の温かさも、ギルバートの唇が俺の喉仏に落ちてきて軽く吸ったことも、そのまま首筋へとキスが落ちて、そこに赤い痣のようなものをつけていく彼の行為も、何もかもが現実味がなかった。

 これは、嘘なんだ。
 俺はぼんやりとそう思った。
 現実じゃない。これは、現実なんかじゃない。

 彼が俺の上から身体をどけたことも、俺は気づかなかった。
 だから、突然、クレイグの姿が俺の前に現れた時には何が起きているのかすら解らなかった。
 気づけば、クレイグが何か叫びながら俺の身体を起こしていた。優しく、俺を気遣うような彼の腕と、怒りに満ちたその瞳が誰か他の相手に向けられた、と気づいた時、俺はやっと現実世界に引き戻された。
「コンラッド」
 クレイグがそう言って俺の拘束を解く。
 自由になった腕を見下ろすと、そこにはぐるりと手首を取り巻く赤く鬱血した輪があるのが見えた。

 ――犯された。
 性処理の道具にされたのだ。

 突然、そんなことを改めて思う。

「結構よかったぜ、お前」
 そんな声が背後から聞こえた瞬間、俺は悲鳴じみた声を上げた。
「貴様、殺してやる……」
 憎悪に満ちた目を獣人に向けても、彼は悠然と俺を見つめていることに気づく。すると、急にさっきまでの行為が頭の中に蘇ってきて、俺は思わず口を押えた。
 気持ち悪い。
 吐きそうだった。実際、何か喉の奥からこみあげてくるものがあって、それを飲み込むのに必死になった。
「すまない、コンラッド」
 俺の背中をさすりつつ、クレイグが苦痛に満ちた声を上げる。でもそれ以上、何も言えないようだった。
 でも、それが有り難かった。
 もし、それ以上何か言われていたら、俺はクレイグすらも許せなくなったかもしれないからだ。
 お前があの銀色の魔物と一緒にこの場所を離れたから。
 お前のせいで、と。
 そう、怒鳴っていたかもしれない。

 でも、この結果は間違いなく、俺が引き起こしたことだった。
 どんなに認めたくなくても、俺が原因を作ったことだった。

 だから、絶対に自分の手で決着をつけなくてはいない。
 ギルバートを殺すことで、自分の矜持を取り戻す。そうしなければ、もう生きていくことすらつらくなりそうだった。

 ギルバートとシェリルがこの場から立ち去ったのも、俺には見えていなかった。ギルバートもシェリルも何か言葉を発したのかもしれない。でも、それすらもどうでもいいことのように感じた。
 俺はクレイグの肩にもたれかかりながら声を押し殺しつつ涙を流し、クレイグはただ俺の背中を軽く叩いていた。


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