クレームドカシス

逃避−3(薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク/金×日→)

「まだまだ、足りないだろ。」
光伸が汗に濡れ乱れた要の前髪を丁寧に整えながら言った。
媚薬に犯され、欲望のままにすがりつく要を離して、光伸は倉庫の隅へと足を進めた。
そして小瓶を手に取り、要に軽く笑みを送る。
「金子さんっ!」
要が叫ぶのも聞かず、小瓶の液体を一口含み、ゆっくりと味わうように飲み込んだ。
光伸の口の中、喉の奥へと、順に甘みと熱が広がってゆく。
「いくら頼まれたからとはいえ、素でメートヒェンをとことんいたぶる自信は無いのでね。」
「でもっ!」
「いいんだ。俺もそういう気分なのだから。」
要をきつく抱きしめて言った。
「見せつけてやらないとな。」


光伸は熱と疼きに支配されながらも身体を動かし、要の肌を執拗に貪る。
要も求めるがまま、求められるがままに任せ感じていた。
幾度となく押し寄せる波に意識を失い、そして連れ戻される。
「はぁっ...」
声と呼吸の間の音が互いの口から漏れ、汗が身体を伝う。
何度それは繰り返されたのであろうか。


ふと、要は自身の中に埋め込まれたものの異物感によって目を覚ました。
腰の位置をずらし、そろりと引き抜く。
内壁の擦れる感覚に思わず声が漏れたが、要の中を占拠していたものの主は動く気配がなかった。
要は隣に横たわっている光伸を見つめた。
まだ赤く上気している頬に乱れた髪が汗で貼り付いている。
それを整えようと、そっと撫でた。
「あっ...」
光伸の首がのけぞり、唇から甘い声が漏れた。
――金子さん、もしかして、まだ薬が効いている?
要はもう一度、光伸の髪に触れた。
びくりと反応して、光伸がせつなげな視線を返してきた。
「......メートヒェンは...もう...いいのか?」
熱い呼吸に言葉が途切れ途切れになっている。
「ええ、まぁ。」
要の方は、体中に鈍い痛みはあるものの、火照りや疼きは殆ど無くなっていた。
「で...気は晴れた......のか?」
「おかげさまで。」
そう答えた要の顔には表情が戻っていた。抱月に抱かれていた時とは別人のように。
「ならっ...んっ...よかった。」
光伸の意識がだんだんとはっきりとした為か、媚薬の支配する感覚もはっきりと伝わり、作ろうとした笑顔が歪む。
「あの? 金子さん、大丈夫ですか? その...薬がまだ」
「いささか...飲みすぎたようで......その...正直辛い。」
息を乱しながら光伸が苦笑する。


「僕でよければ、お手伝いしましょうか?」
予想だにしなかった要の申し出に光伸は目を丸くした。
「すまない。...頼む。」
要はにっこり微笑むと横たわる光伸に軽く口付けをした。
そして少し横にずれ、耳たぶを咬む程に唇を寄せて小声で言った。
「ただし、僕がする方で。」
これも予想外だったが、こっちはあまり嬉しくない。
光伸はあわてたが、文句を言う以外どうする事もできない。
「あの...なぁ......メー...じゃない...要」
「何ですか?」
返事を返す時も要の手は止まらない。
「どうしても...君が...うっ...するのか?」
「お嫌でしたら、やめますが。」
胸の辺りを撫でる要の指が肌に触れるか触れないかの所で動きを止める。
それがなんとももどかしい気分を煽る。
「ちがっ...やめて欲しいわけでは...なく...だ...ぁっ」
要がため息をついて光伸の上に乗った。その顔は恥ずかしそうに赤らんでいる。
「確かにお願いしたのは僕ですけど、金子さん、本当に容赦してくださらなかったから、これ以上は...その...だめです。/////」
光伸は思い切り噴出した。
「それは、それは...うわっ」
いきなり膝が曲げられ、光伸の中に要の指が侵入してきた。
光伸は抵抗するのを諦めて要に身体を任せた。
――あのうつ状態だったメートヒェンがここまでになるとはね。どっかの誰かと月村を重ね合わせて、従順に抱かれているよりは、遥かに今の方がいいのだが......あー、もうっ
ともすれば何処までも流されそうになる意識の中で、光伸は要を抱きしめて言った。
「俺は...側にいるから。」
光伸の感触を全身で感じながら、要は静かに涙を流していた。





前回書いたのからだいぶ日数が経ってしまい、いったい何を書きたかったのだろうって思い出すことができませんでした。なので新たに考えたわけですけど...ハッピーエンドが思いついてよかったなぁと。金子君も要ちゃんも救われて。2004/04/03


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