浅人5

「ありがとな。わざわざ送ってもらって」
前田家自宅、門前。浅人と沢田は別れの挨拶を交わしていた。学校から徒歩十数分、既に二人のぎこちない緊張は解けていた。・・・外見だけでは。
「気にすんな。何処にあいつ等が隠れてるかわからないからな」
「ホント、助かった。それじゃ、また明日な!」
片手を挙げてくるりと振り向くと、浅人はすたすたと家に入っていってしまった。まだ恥ずかしさが残っているらしい。
そんな浅人を苦笑混じりで見送った後、沢田は一人駅へと向かい歩き始めた。

帰宅した浅人を待っていたのは、仕事から帰ってきて、一人ソファに座りビールを飲みながらテレビを観ている父と、台所で夕飯の支度をしている母の姿であった。
「ただいま」
浅人がそう告げると、前田父が驚いた表情で振り向いた。
「・・・どちら様?」
「お母さんから聞いてないのか?お母さん、ただいま」
唖然とする父親をスルーし、浅人は台所に入っていった。そんな浅人を迎えたのは、いつもの笑顔。
「あら、お帰り。部活やってきたの?」
「う、ん・・・一応ね」
言葉を濁す。
あの事件の後、事の詳細(教師が知っている限りの、ではあるが)と『正式な処分が下るまで野球部の停止処分』が各保護者に連絡されている。
つまり、自分が部活で何をしていたのかは、全て親に筒抜けなのである。
「あんまり無理しちゃ駄目よ?今は女の子なんだし」
浅人母はそれだけ言うと、再び夕飯の準備に戻っていった。
強く優しい母に、浅人は感謝の意を表した。

制服のまま夕飯を終えて、部屋に戻った浅人。バタン、とドアを閉めてバッグを放る。
「はぁ、疲れた・・・ん」
ベッドに飛び込もうとした時、視線の端に姿身が映り、何となくその前に立った。
「・・・・・・」
鏡の向こうには、青い髪を靡かせた可愛い少女が佇んでいる。そっと手を伸ばし、それに触れる。
三日。三日前、自分はこの鏡の前で投球フォームの確認をしていた。監督から「肘の使い方が変だ」と言われて、必死に考えながら鏡と睨めっこをしたものだ。
だが・・・その野球少年の姿は、今は無い。
あの逞しい肉体も、男らしい顔つきも、坊主頭も。
あの速球も、あの変化球も、あの打力も、あの足の速さも。
野球部としての地位も、培われてきた技術も、楽しかった日々も。
『彼』が『彼女』になった時から、それらは一瞬にして崩れ去った。
「・・・っ」
自分の両肩を抱いて、顔を伏せる。
怖い。自分の今までの結果が、全て無くなるのが。自分の力がなくなるのが。
浅人の頭の中で、あの瞬間が甦る。四番に打たれたピッチャーライナー、そして沢田に打たれたホームラン。
自分が信じてきたものが崩れていく。もう、自分は駄目なのか。
「こわい・・・こわいよ・・・」
部屋の電気を点けていない効果もあるのか、体は小刻みに震え、少女は恐怖に飲まれてしまった。
そんな時、また別の風景が頭をよぎる。
沢田の───ドアップ。
「・・・ぷっ」
瞬間、浅人は吹いてしまった。あの時の真剣な表情といったら、面白いったりゃありゃしない。
それと同時に、浅人の中に燻りが生まれた。
左手は抱いたまま、右手をそっと持ち上げる。人差し指を、自分の唇に当ててみる。
(俺・・・あいつとキス、したんだよな・・・)
そう認識した瞬間、下半身がキュン、とした。今まで感じた事のない感覚。
「え・・・あ・・・」
気がつけば、肩を掴んでいた筈の左手は、右の乳房を鷲掴みしていた。無意識だったために、浅人本人が一番驚いてしまう。
「・・・あん・・」
そして、おもむろに握り締める。柔らかい触覚と、まだるっこい気持ちよさが、浅人の思考を鈍らせる。
「・・は、あ・・・」
左手の動きが止まらない。ゆっくりと吟味するように、左手は優しく自分の胸を揉み解す。
(や、止めないと・・・でも・・・)
そんなつまらない思考は、快感の前では呆気なく吹き飛ばされる。右手を下ろし、ブレザーを脱ぐ。
一旦胸から手を離し、左手の袖からも服を通し、茶色のブレザーは完全に床に落ちる。
「・・・ぁっ、んぅ・・・」
シャツのボタンを一つだけ外し、そこに侵入した左手が再び胸を掴む。下着越しに揉まれる感覚は、先程よりも何倍も感じるように思える。
「は・・ふ・・」
甘い声と吐息が浅人の口から漏れる。それにハッとして、無理矢理手を服から引っこ抜く。
(な、何やってんだよ、俺は・・・)
慌ててボタンを留めようとする。しかし、腕が震えて上手くできない。
(早く・・・早く留めなきゃ・・・)
何に焦っているのか、しかしその焦りは浅人の手元をより一層狂わせる。
そんな時、おあずけをくらった『何か』から、浅人の脳に信号が下る。
『早ク・・・続キヲ・・・』
「え、あぁんっ!」
そんな声が聞こえて来たと同時に、ボタンを閉めていた筈の手が、自分の両胸をしっかりと掴んだ。
突然のこそばゆい感覚と甘ったるい快感に思わず声を上げて身を捩る浅人。
(な、何で・・・でも、今の・・・)
「気持ち・・・いい」
認めてしまった。その瞬間、『男浅人』の壁が呆気なく崩壊する。
「んぁ・・・あぅん・・・」
手は、左右非対称に自分の胸を揉みだす。ぐにぐにと、見ているほうが心地良い程に形が崩れ、元に戻ろうとする弾力が、浅人の手に伝わってくる。また、その姿を見ているのは浅人だけである。
(こんな・・・柔らかい・・・)
それが自分の胸だと認識するのに、浅人の脳は若干も時間が必要であった。そして、それを意識した瞬間、言い表せぬ快感の波が浅人の体に波紋を作る。
「ぁはぁ・・・ふぅぁ・・・」
服の上からではまどろっこしくなったのか、手を休めてボタンを外し始めた。今度はスムーズに上手くいく。
ボタンを全て外すと、今度はスカートを脱ぎ捨てた。上下の下着と靴下だけという姿になって、浅人は自分のベッドに寝転がる。
「あふ、あぁん・・・」
停止していたのはそれ程長い時間ではない。むしろほぼニ十秒足らずだ。しかし、それだけの時間でも浅人の体は待ってましたと言わんばかりに、胸への愛撫による快感を普通以上に受けようとする。
『貪る』とは、このような事を指すのだろうか。
やがて、ブラジャーからでもしっかりとわかる様に、二つの丘の上に小さな膨らみが立っていた。
(あ・・・これって・・・)
そう思うよりも早く、手は両方のそれにしっかりと食いついていた。
「ひゃっ!」
ビクン、と背筋が伸びる。程よく勃起した乳首を掴んだ瞬間、体中に雷が走ったような感覚が浅人を襲う。
「んんっ、ひぁぁっ・・・!ぅぁあっ・・!」
親指と人差し指で挟むようにして、クリクリとこねたりギュッと掴んだりするだけで、その度に快感が浅人の中を駈け巡り、脳に舞い戻る。余った指で乳房を押し込むように揉むのも止まらない。
すぐに、下着の上からでも足りなくなった。ブラを上に上げて、その拘束から解放させる。ぷるん、と胸が震えるのを見て、浅人の『何処か』が欲情した。
──それは、何処か?『男』の浅人か、『女』の浅人か。
「ふぁ、あぁあん・・・!」
生の乳房に喰らいつく両手。乱暴に揉んでも、その痛みすら浅人の脳を蕩けさせていく。
ふと。右手が名残惜しそうに胸から離れると、真っ直ぐに下半身・・・秘部へと伸びていく。
(あ・・・ま、待て・・・)
だが、『男』の浅人の思考は、最早その肉体には届かない。
「んあっ!ひうっ!」
ビクビクン!
浅人の体が痙攣する。ただ、下着越しに触れただけなのに、浅人は軽く達してしまった。
(あ・・・な・・・?)
よく、わからない。頭の中は一瞬真っ白になり、元に戻るのには時間がかかりそうだ。
だが、意識が甦るよりも早く、体が動いた。
「は、ぁぅっ!」
ショーツを横にずらし、中指をおもむろに秘裂に差し込む。それを簡単に受け入れる程、浅人のそこは十分に湿っていた。
「あ、あ、ぁぅ、あ」
膣の襞を擦るように中指を動かす。ほぼただの上下に近い運動でも、浅人の膣は十分に快楽を享受し、またそれを数倍にして躰と脳に伝えていく。
(そんな・・・っくぅ!)
僅かに残っている男浅人にとって、それは正しく既知外じみたものであった。
腰ががくがくと揺れる。それに合わせるように、左手が胸を激しく揉んでいく。
「あくっ!はぁああぁん!んんんっ!」
上下から襲い来る快感に、口が開きっぱなしである。そこからは涎が滴り落ちる。
そして、火照り、白から紅色にかわった肌にぽつぽつ・・・と浮き出る汗。
さらに、秘裂の中から泉のように湧き出る愛液・・・。
全身を濡らし、浅人は喘ぐ。腰を振って、快感を貪る。
「ふあぁん!あうっ、ぁぅんっ!」
指は二本に増えていた。それくらい、今の浅人の壷は湿り、滴っていた。
ぐちゃ、ぐちゃ・・・という淫らな水音が部屋に響く。いつからか、鼻をつく妖しい香りが充満していた。
そして、右手の親指が、それを捉えた。
「!!!?」
稲妻が疾った。少なくとも、浅人にはそう感じれた。
隠核。クリトリス。ただ快感を与えるだけの場所に触れたのだ。
「ああぁっ、んはあぁぁっ!!」
最早、家族のことは頭に入ってなかった。絶叫に近い喘ぎ声をあげながら、浅人は隠核をいじり続ける。
(気持ちいいっ・・・駄目、壊れるっ!!)
既に壊れていた。
「くあ、ひああああぁぁぁっ!!!」
引っ掻くように刺激を与えた瞬間、浅人は背筋をピーンと伸ばし、それと逆に膝はガクガクと震え・・・。
絶頂に達したのだろう、そのままで暫し固まった後、どさっと力無く崩れ落ちる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
荒い息を整えるために肩で息をする。まだ波のように広がった快感の灯火が残っている。
(昨日やった時よりも・・・気持ちよかった・・・何でだろう・・?)
冷静な思考が戻り、そう思った瞬間、再び沢田のドアップがフラッシュバックする。
「ばっ・・・」
そんな自分の考えに顔を真っ赤に火照らせて、浅人は裸のまま布団に潜った。全身がびしょびしょな事を忘れて。
(何だ・・・何で鼓動が治まらねぇんだ・・・)
素っ裸な自分の胸に手を当てて、深く深呼吸・・・そんな事を繰り返している内に、想像以上に疲れたのか、浅人の意識はまどろみに溶け、深い闇に吸い込まれていった・・・。

・・・暗闇に潜む、妖しい笑顔の存在も知らずに・・・。

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