13

 今日もまた、苦痛と快楽の入り混じった時間が訪れる。
 ムラタが持参してきたアルミのケースを開けると、中には医療器具が詰まっていた。
 ねめ回すような視線を感じてカイトは無意識のうちに尻込みしていた。
 これからムラタによる「診察」が始まるのだ。
「準備にとりかかりなさい」
「はいはい、オレがやります!」
 我先に、少年たちがカイトに群がり、たちまちのうちにブルマとパンツを脱がせてしまった。
 カイトは必死に暴れ、うっすらと恥毛に覆われた秘部を隠そうとした。すると、浩司がすかさずTシャツの下に手を入れてきて、乳首に付けられたチェーンを引っ張りあげた。
 乳房がゆさりと持ち上げられ、胸の先端が鋭く痛んだ。
「いたっ、痛いっ!」
 カイトは悲鳴をあげて両手でチェーンを掴み、苦痛を和らげようとする。
 自然と下半身のほうは剥き出しになってムラタの前に晒された。
「ふむ……」
 ムラタは産婦人科の使うような筒状の器具をカイトの秘所に近づけてきた。
 つぷっ……
 異物が挿入される。
「くぅぅぅ……」
 押さえようとしても呻き声が出てしまう。
 体内に異物を挿入される感覚がカイトは大嫌いだった。
 大嫌いだ、と思えるくらいにその感覚はカイトにとって馴染みのあるものになりつつあった。
 そして、挿入された筒がゆっくりと二つに分かれた。
 ムラタはまるで実験動物でも相手にしているように冷静に、割り広げられた女性器を観察している。
 ムラタの視線を感じたせいか、はたまた異物挿入への防衛反射か、秘裂の奥からとろりと愛液が分泌されてきた。
 それをムラタは無造作にガーゼでぬぐった。
 ムラタよりもむしろ浩司たちのほうがその光景に興奮している。
 愛液を拭いたガーゼは少年たちの手に渡り、それからカイトの鼻先に突きつけられた。
「どうだよ、自分の愛液の臭いは? 自分で自分の臭いに興奮しちゃったりすんの?」
「ふ、ふんっ……」
 カイトはただそっぽを向くことで意思表示をした。
 ムラタはひと通りの検査を終えると、器具を引き抜いた。下半身に入っていた力も同時にすっと抜ける。
「どうやらまだのようですね」
「…………」
 ムラタの言っているのは「生理」のことだった。
「でも君の肉体は申し分なく健康に保たれてますからね。これをご覧なさい」
 ムラタが見せてきたのは、カイトの体温を測定したグラフだった。それがいわゆる基礎体温表だということはカイトにも分かる。
 折れ線のグラフは、規則性のあるカーブを描き始めていた。
「おそらく次の周期では排卵と、それに伴う月経が見られるでしょうね。心の準備をしておいたほうがいいですよ、カイト君」
 ムラタの手がカイトの下腹部に触れた。
 きゅっとその部分を手で押される。それに呼応して腹の奥がジンと疼いた。
「子宮の位置ですよ。もうじき君は月に一度、そこから血を垂れ流すようになります」
「血……」
「君がどうあがこうと、その体は男の精を受け入れて妊娠するための準備を始めているといことです」
「冗談だろ……妊娠、なんて……」
「フフ。生ませる側から生む側の性に生まれ変わったのを実感できますね、もうすぐ。生理前になったら感情が不安定になったり、乳房が張ったりして自覚症状もあるはずですよ」
 ムラタは小さく笑ってカイトの乳首につけられたピアスを指で弄んだ。
 すぐさま刺激に反応して乳首が固く尖り立った。
「やめろォ!」
 カイトは胸を掌で押さえて刺激から逃れようとした。
 胸を弄られると、とてつもなくイライラした。屈辱感と不安感と無力感と、その他わけの分からない感情が一緒くたになって襲ってくる。
「なかなか女の子らしい反応をするようになってきたね」
 そう言ってムラタは手を引っ込めた。
 同時に本校舎でチャイムが鳴る。
 じわり……
 チャイムの独特の音色を耳にしたとたん、カイトの秘所が濡れてきた。
「!?」
 あわててカイトはそれを手で拭き取ろうとしたが、ムラタの反応のほうが早かった。
 脱脂綿をあてがわれ、濡れた股間を拭かれた。
「パブロフの犬みたいですね」
「なんでだよ!」
「それは条件反射ですよ。いつも鐘の音を合図に性的な刺激を加えてましたからね。肉体がそれを覚えて、自動的に愛液を分泌してるんです」
 その説明の間にもまた新たに液体が染み出てきた。
「順調に性の人形化が進んでますよ、君は。この調子なら遅延なしに完成段階へ持っていけそうだ」
「オレは……絶対あんたの思惑通りになんかならないからな!」
「うんうん。その反応は好ましいですよ」
 ムラタは器具を消毒してケースに戻すと、離れた場所で椅子に腰下ろした。
 入れ替わりに浩司たちがカイトを取り囲んだ。
「あっちいけ!」
 と吠えるカイトを誰ひとりとして怖れる者はいなかった。
「御奉仕の時間だぜ、カイトちゃん」
 浩司のペニスが突き出される。
「この変態ども」
「おやおやぁ。オレのチンポ前にして濡れてきちゃってるカイトちゃんは変態じゃないのかなぁ?」
「くっ!!」
 カイトは屈辱に震えながら腿をとじ合わせた。意思と関係なく濡れてしまった股間のあたりがヒヤリと冷たい。
「ま、いいんだけどね。御奉仕しないってんなら、またメシ抜きになるだけだし」
「卑怯ものォ……」
 くくっ、と笑いながら浩司は手にした菓子パンをちらつかせた。
 浩司を殺しそうな目つきで睨むカイト。
 だが体のほうはパンの臭いに反応してしまう。ぐぅ、と腹の虫が鳴り、口中には涎が溢れた。
 食べ物は一昨日の昼にパンを口にして以来だった。
 昨日もこの「奉仕」をこばんだばかりに食事にありつけなかった。
 夜に訪ねてくる葵も、ムラタの目を盗んで持ってきたという飴玉を差し入れてくれるのが精一杯だった。
 目の前にパンをちらつかされて、空腹感に目が回りそうだった。
「どうもカイトちゃんは今日も断食したいらしいぜ」
 そう言って浩司はパンを後方で待機してた仲間に放り投げた。
「あっ……!」
 思わずカイトはパンの行方を目で追ってしまう。
「うめぇ、うめぇ!」
 ハネダががつがつとパンをたいらげた。
 急速に募る飢餓感がカイトを責め苛んだ。
「おっと。ソーセージパンがもう一本あるんだっけ」
 浩司はそういってポケットからひしゃげかけたパンを取り出した。ビニールパックが破られたとたん、パンとソーセージの匂いが漂い出して飢えたカイトの五感を直撃した。
「う、うう……」
 食い物すら自由にならない惨めさにカイトは嗚咽しそうになり、必死で歯を食いしばった。
「ほらよ……」
 浩司がパンを差し出してきた。
 カイトがそれを手にしようとした瞬間、ひっこめられてしまう。
 代わりに、浩司の下半身が近づけられた。
「世の中タダなモンなんてないんだぜ。ソーセージパンが食いたいんだったら、まずオレのソーセージから味わって貰おうか?」
「この……カス野郎……」
「んん、なんか言った?」
「………………」
 カイトは目を瞑り、ゆっくりと浩司のペニスに顔を近づけた。
「舐めて気持ちよくしてくれよ。ほんとは口の中に突っ込んでやりたいとこだけど、万が一噛まれたりしたらたまんないからさァ」
 突き出した舌の先端が熱く張り詰めた肉茎の表面に触れるまでにずいぶんと時間がかかった。
 ぴちゃっ。
 妙にイヤらしい音がして、カイトは舌をひっこめそうになってしまった。
「時間内にイカせられなかったら、パンはやらないぜ。制限時間、あと5分!」
 浩司の言葉がカイトを縛りつけた。ここまでやって、食べ物が得られなかったら元も子もない。
 必死でカイトは舌を動かした。
 嫌悪感をこらえ、かつては自分の手下だった少年のペニスを舐め回す。浩司が陰部を清潔に保っていたのがせめてもの救いだった。
 ぴちゃぴちゃと動物のような音を立てて、少年のペニスに文字通り奉仕をする。
「んんっ……残りあと2分だよ。だいじょうぶ〜?」
「!!」
 浩司のペニスは舌の刺激で屹立してはいるものの、いまだに射精の兆候はみえない。
「カイトの喘ぎ声とか聞いたら、オレすぐにでもイッちゃいそうだけどなぁ〜」
「オレに……そんな器用なことできるわけないだろ!」
 浩司はひょいと手を伸ばしてカイトの乳首を摘むと、絶妙な力加減でそれを擦りあげた。
「あっ、はぁぁぁっ!」
「そうそう、そういう声で鳴いてくれりゃいいんだよ……おっとあと1分30秒!」
 幾分息の荒くなってきた浩司がニヤリとする。
 カイトは早くことを終わらせたい一心で、とぎれとぎれの媚声を出した。
「アンッ、アッ……アッ、アッ、ハァン……」
「そうそう……」
 舌を動かすリズムに合わせて、いつのまにか自然に鼻にかかった甘い声が出ていた。
 そのときカイトの後ろに回り込んだカジが、無防備にさらけ出されたままだったカイトの秘所にバイブを突き立てた。
「あ、やめっ……はうううっ!」
 カイトが慌てて制止するより先に、バイブの先端が潜り込んできた。
 ずにゅううう……
 肉をかきわけて異物が入ってくる挿入感。そして、クリバイブの部分が敏感な突起にあてがわれる。
「スイッチ、オン!」
 ヴンッ……
 低いモーター音がして強烈な刺激がカイトの下半身を襲った。
「あ、あ、あ……」
 腰がくだけ、舌を動かすことも一瞬忘れてカイトはバイブを抜こうとした。
「そのまま! おっと、あと40秒だ」
「あああっ」
 男のペニスに奉仕させられてるという事実と、下半身を責め立てるバイブの刺激。両方の相乗効果でカイトは頭の中が真っ白になっていった。
「あと30秒……」
 ペニスの根本を細い指で掴むと、カイトは思いきってそれに口づけた。亀頭をかすかに舌で刺激し、次にペニスの裏筋の部分へ顔をもぐらせ、舌先を何度も往復させる。
「おぅ……いい…………」
 さすがに浩司の体が力んできた。
 同時にカイト自身もバイブに刺激されて、演技でなく甘い喘ぎ声をもらしていた。
 となりでカジやハネダたちが何やら作業をしていたが、カイトにはそれを確かめようとする思考力さえ残ってなかった。
「はぁっ、はぁっ……」
 浩司の呼吸が激しくかつ単調になってくる。そして、睾丸のあたりがひきつるような動きをみせた。
(お願い、イッてぇ!)
 最後の瞬間、カイトは夢中でペニスを頬張っていた。唇と舌で包み強く吸った。
「うっ……!」
 浩司が呻いて、大量の精液をぶちまけた。
 カイトの頭に手をつき、しばらく放心したようになる浩司。
 しばらくして、唾液にまみれたペニスが引き抜かれた。そのときのカイトには、ペニスを噛みきろうという考えすらなかった。
 ただひたすら頭の中が真っ白だった。
「やべぇ……気持ち良すぎて最後のほう、時間見てなかった」
「なっ!」
「ま、いいや。サービスで合格にしといてやるよ。おっと、ちゃんとザーメンは飲み込めよ」
 浩司の放った濃厚なザーメンは喉の奥にからみついていつまでも感触が消えそうになかった。
 そして挿入されたバイブを抜こうとしたとき、浩司が逆にバイブを奥へと突き入れた。
「んうっ! な、なにしやがる……」
「オイオイ! まだオレの番が終わったばっかじゃん。この場にあと4人もいるんだぜ?」
「次、オレぇ!」
 ハネダがいそいそとズボンのジッパーを下げた。
 カイトの目の前が暗くなった。たかがパン一個のために、この場にいる少年たち全員のペニスをしゃぶらなければいけない……。

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