放課後の鐘が鳴る。
 ムラタが旧校舎の教室に顔を出したとき、カイトは貫かれた張り型の上でぐったりとしていた。
 そこから逃れようとする試みは全て徒労に終わり、囚われ展示される獲物としての哀れな姿をムラタの前に晒すことになってしまったのだ。
「少しは身に沁みましたか?」
 ムラタは真っ直ぐカイトの前までやってくると、服の上からカイトの乳首を摘んだ。
「ひゃうっ!」
 その鋭い刺激で、繰り返す快楽の波に濁っていたカイトの目が、いくぶん生気を取り戻した。
「あれほど逃げてもいいと言ったのに。どうやらカイト君はひどくこの器具がお気に入りの様子だ」
 ムラタがモーター部のスイッチを入れると、カイトを貫いた杭はまたあの振動を開始した。
「あ、あああんんっ……」
 小刻みなバイブレーション。既に何度も快美感を刻印されてきた肉体はいともたやすく反応してしまう。その様子に、ムラタは眼鏡を押し上げ満足そうに頷いた。
「クク……」
「やめ……もうっ、やめてぇ…………」
 哀れったらしく懇願するカイトの姿に、王様然として君臨してきたかつての面影は微塵も残っていない。
 ムラタがさらに力を入れて乳首をひねりあげると、カイトは喘ぎ、仰け反った。腿のあたりがわなないている。乳首を弄られただけで軽くイッてしまったのだ。
 ムラタは少女の花弁を貫くその杭に顔を近づける。「そこ」がどうなってるかを充分知ったうえで。
「おや……これはすごい。杭がびしょ濡れになってるじゃないか。それにこの甘ったるい雌の匂い。まさか、これは君の匂いじゃないだろうね?」
「あ、ああ……」
「どうなんだい。君は男の子なんだから、よもや愛液を垂れ流してメスのフェロモンをあたりに充満させたりはしないよね?」
「うう……ちくしょう……」
 カイトは唇を噛んで、顔をそむけた。
 食ってかかる気力すら残されてはいない。ムラタの手が胸をこねくり回しても、されるがままだった。ときどき堪えかねたように切ない鼻声をあげたりする。
 拷問器具にかけられて放置されてから、学校のチャイムが鳴るたびにカイトは凄まじい女体のエクスタシーに晒されてきたのだ。心身が回復しかけた頃に、次の鐘が鳴り渡る。その繰り返しで、カイトの精神は崩壊寸前まで追い詰められていた。
「安心しなさい。まだまだそんなものじゃない。肉体に馴染むにつれ、君は本物の女体の快楽を覚えることになるのだから」
 ムラタの言葉は死刑宣告にも思え、カイトは身震いした。
 いまでさえ息絶え絶えだというのに、女の肉体の快楽は本来もっと凄まじいというのだ。そんなものを体験してしまったら、脳が焼き切れてしまう。
「もう、いやだ……お願い、だから……」
「おねだりなら、それなりの作法があるでしょう? 本当にお願いしたいことがあるなら、僕に隷属する証のキスをしなさい」
 ムラタの顔がカイトの前に迫った。
 整ってはいるが、レンズの向こうの瞳は氷のように冷たい光を宿している。
(キス……?)
 ぼやけたカイトの思考の中でいくつもの声が飛び交った。
(これで許してもらえる)
(キス?)
(キスすれば)
(楽になれる)
(隷属の証……)
 カイトは自由にならない身で精一杯顔をあげると、ムラタの唇を求めた。
「あン……」
 ぴちゃ。
 瞳を潤ませたカイトのキスを、ムラタは受け入れた。
 だか、突然ムラタの顔が険しくなった。
 さっとカイトから身を引き離す。
 二人の唇の間に、絹糸のように細い血の糸が引いた。
「……危ないところでしたよ」
 唇を押さえ、ムラタはつぶやいた。
「く……そ……」
 ムラタの唇には小さな傷ができていた。
「油断してたら、噛み千切られていた、というわけですか」
「俺を……甘く……見るなよ…………」
「……フフ、そのくらい足掻いてくれなければ、獲物として期待外れというものです」
 ムラタは舌なめずりをして言った。
 廊下のほうから、今日も凌辱の宴に参加できることを期待してカイトのクラスメイトたちがやってきた。浩司、ハネダ、カジの三人だ。
「お前たち。カイト君を台の上に寝かせてあげなさい」
 力仕事は生徒たちに任せ、ムラタはクラスメイトたちにぐったりと身を任せたままのカイトを鑑賞していた。
 机を並べた上にマットレスがひかれ、即席のベッドが作られていた。そこにカイトは横たえられた。
 どさくさに紛れて少年たちはカイトの胸や尻を触ったが、カイトは疲れ果てていて暴れるどころではなかった。
「一時間ほど休息をとらせなさい。それから始めますよ」
 限界に達していたカイトは、マットレスに突っ伏して泥のような睡眠を貪った。
「……まだ『レベル1』ですよ。頑張ってくださいねカイト君。期待してますよ」
 眠りこける少女の耳にムラタはそっと囁いた。

 きっかり一時間後。カイトは再び慰みモノにされていた。
「男性への奉仕のしかたを基礎から覚えてもらいますよ」
 ムラタは顎をしゃくって少年たちに指示を下すと、自分はゆったりと椅子に腰掛け、眼鏡のレンズを拭いた。
「このクサレチンカス先公! テメェには絶対吠え面かかせてやるからな!」
「うむ、元気があってよろしい」
 文庫本を片手で持ちながら、余裕しゃくしゃくであしらうムラタ。
 カイトは少年たちの手によって手足に拘束具をつけられていた。
「……媚薬もだいぶ抜けてきて、頭がハッキリしてきたみたいですね。君たち、カイト君の扱いは慎重にね。くれぐれ油断しちゃいけませんよ」
「分かってますよ。なんたって、こいつの中身は『あの』カイトなんですからね」
「そういうことです」
 カイトに手枷と足枷が取り付けられ、両手と両脚は肩幅より少し広く広げられた。枷と枷の間を鉄棒で連結さるれと、四つん這いのその姿勢のまま自力では起きあがれなくなる。かろうじて床を這うことはできるが、二本足で起きるのは不可能だ。
 枷をつけられたままカイトは机を並べた台の上に乗せられた。
 家畜同然に四つ足で立たされてると思うとカイトの心は屈辱に燃え立つのに、なぜか下腹の奥が甘く疼いて微量の蜜が沁みだした。その生理現象を悟られまいと、カイトはニヤニヤ見守るかつての手下たちに罵詈雑言の限りをぶつけた。
「では、始めましょう」
 ムラタが椅子から立ち上がった。
「ヘヘ、俺が一番手でいいですか?」
「許可します」
「ありがてえ!」
 浩司がカイトの鼻先に立ったかと思うと、やおらズボンのジッパーを引き下ろした。
「きっ、汚ねえモン見せんな!」
 カイトは小鼻に皺を寄せて唸った。
 少年の股間はちょうどカイトの顔と同じ位置にある。ジッパーから「モノ」がまろびでると、それは勢いあまってカイトの頬を叩いた。
「っ……!」
「おっと、失敬、失敬。へへ……ひとつ、ひとのちん●にビンタされ、ってな」
 少年のペニスは根本まで皮の剥けた完全体だった。
 カイトはその場から離れようとしたが、拘束具をつけられて狭い台に乗せられた身では、それもままならなかった。
「なにをぼうっとしてるんですか」
 ムラタの叱責が飛んできた。
「彼のペニスに奉仕するんですよ、カイト君」
「冗談……」
 カイトの顔が引きつった。ゴクンと喉が鳴る。
「口には含まなくていいよ。食いちぎられちゃたまんねぇからな。それより、舌でぺろぺろやってくれよ」
 さも当然のように腰に手を当てて浩司は完全体ちん●をググッと突き出した。
 その先端からは早くも透明な先走りの液体が顔をのぞかせている。
 若いオスの分泌物がほとんど直にカイトの鼻腔に飛び込んできた。咽せそうになる臭気だ。
 沼作のときより濃厚で、甘い麝香臭の成分が強く感じられる。
 カイトは顔をそむけようとして、オスの匂いに惹かれている自分に気づいた。これ以上ないというほどのおぞましさを感じてるのに、鼻先に突きつけられた若々しいオスの性器を無視できない。
 また喉が鳴った。
 先ほどとは微妙に違う、生唾をのむ音だった。
 カイトの意志とは関係なく、さかんに生唾が湧いていた。
(こんなモン、近づくのもイヤなのに……)
 意志の力でそれから目を逸らそうとしても、匂いに反応してつい惹きつけられてしまう。
 男のモノを見せられて何度も生唾を呑み込んでる自分が信じられなかった。
「葛藤してるようですね」
「そ、そんなことないね……」
「それも当然ですよ。あなたの、そのメスの肉体は、異性の放つ性フェロモンに惹きつけられる仕組みになってますからね」
「ヘッ! こんな粗チンに誰が惹かれるってんだよ」
「おや……。カイト君の持ってた『モノ』に比べれば充分に立派だと思いますけどねえ」
「うわあっ、なんてこと抜かしやがる!」
 ハネダがさっと挙手した。
「先生、カイトのアソコは大人でしたか、子供でしたか?」
「……可愛らしいレザーアーマーを装備してましたよ」
 クイッと眼鏡を持ち上げてムラタは質問に答えた。
 どっとクラスメイトたちが爆笑する。
「うわぁぁぁぁん!」
 女にされたうえ、男としてのプライドまでガタガタにされ、カイトは泣き叫んだ。
 すると、カイトの涙に反応してか、浩司のモノがクンッと上向いた。
 ぎょっとするカイト。
「うへへ、盛り上がって参りましたーっ」
「このチンカス野郎が……」
「ちん●も持ってない女の子に言われてもこたえないね」
 ついに浩司のペニスは水平以上の角度にそそり立った。
 たちこめるオスのフェロモンにカイトはクラクラと目眩を覚えた。肉体が勝手に反応して、心を置き去りにしていく。
「舐めなさい」
 冷たくムラタが命じる。
「それとも、もう一度あの杭の上にまたがりますか?」
「い、いやだ! アレだけはもうイヤだ!」
「だったら、手間どらせないでさっさと奉仕を始めなさい」
「あうう…………」
 浩司のペニスに少しでも顔を近づけると息を吸い込んだだけで、全身が火照った。
(しかたない……いまは大人しく従うフリして…………)
 観念したように目を閉じると、カイトは舌先を少しだけ突き出した。
 カイトのその表情に、浩司のペニスはさらに仰角を増す。
(ままよ!)
 やけくそのようにカイトは舌先を伸ばした。
 ちょんっ。
 熱くヒートした肉棒の表面に触れた瞬間、カイトは舌を引っ込めた。
「あひぃっ!」
「オエエエッ!!」
 二人の声が同時に響いた。
「も……もうだめぽ〜〜〜〜!!」
 浩司の体がびくんびくんと痙攣し、その男性器の先端から液を迸らせた。
「ぎゃっ!」
 ねばっこい液体はモロにカイトにかかり、ワイシャツの胸元を汚した。
「あははは〜〜…………でちゃった」
「この役立たず!」
 ビシッ!
 ムラタに蹴飛ばされて浩司は転倒した。
「それじゃ奉仕にならないだろうが、ヴォケ!」
「ひぃぃぃ。だって、溜まってたんだよぉ」
「もういい。次!」
「押忍!」
 カジが張り切って浩司にとって替わった。
「さあ、舐めてくれやカイトちゃん」
「調子乗りくさって……あっ」
 カジのペニスが突き出されると、またもやカイトの肉体は意志を裏切った。敏感に空中のフェロモン臭に反応して、乳首までしこってくる。
「王様カイトも、女になっちまったらしおらしいもんだよな」
「俺は女じゃねぇ!」
「ほらよ」
 カジの黒々とした得物が固く勃起して差し出された。意に反してカイトの目は釘付けになってしまう。
「ペロペロやってくれや」
「こ、この借りは100倍返しにして……」
「早くしろ!!」
 カイトはもう一度目を閉じると、舌を出した。
 命令に従うフリをして油断させてやるんだ。そう自分に言い聞かせ、そっと舌を男のものに近づけた。
 最初は舌の先端で、ほんの少しだけ触れた。浩司と違ってカジは、まだ余裕があるようだった。
(こんなこと、早く終わりにしてくれぇ!)
 カイトは内心叫びながら、もう一度舌を突き出した。
 そのときである。
 下半身のほうで思いがけない痺れるような快感が走った。
「ひゃああああんっ!」
 思わず振り返ると、ムラタがカイトの剥き出しの股間の前に立っていた。電動のローターを持って、それを秘部に押し当てている。充血していた花弁は甘美な振動を受けて、ざわざわと反応していた。
 カイトの反応に気づくと、ムラタはローターを離した。
「何をしてるんですか。奉仕を続けなさい」
「でも!」
「杭にまたがりますか?」
「ちっ……」
 渋々、カイトはカジへの「奉仕」を再開した。
 するとまた、秘部にローターが押し当てられた。
「あっ、あっ、それダメ……気持ち……」
 気持ちよすぎる、という言葉をかろうじて呑み込んだ。刺激に反応して腰を振りそうになってしまう。
「奉仕を続行しなさい」
 冷たく響くムラタの声。
 カイトは声を殺してローターの刺激に耐えながらペニスに舌を這わせた。
(俺、どうしちゃったんだろ……)
(男のちんぽしゃぶらされて、なのにこんな体が火照ってるよ……)
 ぺろ、ぺろ……
 色黒のペニスの表面を舐める。
 干物のようなすえた匂いさえ、カイトには媚薬に等しかった。
 嫌悪からではなく、恍惚感からうっとりと目を閉じてクラスメイトのペニスを舐め上げた。
 下半身にはローターの刺激が心地よく響いてる。
(男だぞ、俺は男だぞ)
(でも)
(こんな気持ちいい……)
 いつのまにか、甘ったるい鼻声を出しながらペニスにむしゃぶりついてる自分がいた。
 それを見計らったようにムラタが言った。
「奉仕のたびにこうして性感を刺激してあげますよ。パブロフの犬を知ってますか? カイト君、やがて君は男のモノを目にしただけで体がこの快感を思い出して欲情するようになります」
「い、いやだっ!」
「君の意志なんて関係ありません」
 カイトがさらに抗議しようとしたとき、カジが「うっ」と低く呻いて精液を吐き出した。カイトの顔一面にねばつく液がまとわりついた。
「ふぅ……なかなか良かったぜ」
 カジは犬か何かのようにカイトの頭を撫でた。
「後始末も頼むわ。きれいにしてくれ」
「……せいぜい今のうち楽しんでな」
 虚勢を口にしてから、カイトはカジのペニスに残る精液を舐め取った。その行為に連動して、ローターが押し当てられる。
「ふあああっ……ああっあん!」
 そのときの刺激でカイトは軽いエクスタシーに達してしまった。ヴァギナがヒクヒクと緩やかに痙攣した。女としてのエクスタシーをまだ充分に自覚できないカイトは、下腹部で内臓が裏返ったような感覚にパニックを起こしかけた。
「君はずいぶんと可愛い逝き方をしますね」
「ちが……」
 ムラタの指が秘裂の内部にさしこまれた。
「ひんっっ!」
「膣が周期的に締め付け運動をしてますね。ペニスに快感を与えて少しでも多くの子種を絞りとるためのメスの体の生理反応ですよ」
「ち、ちがう、絶対にちがう!」
 だが、ムラタのその指摘でカイトは下半身に生じた感覚を正確に理解できたのだった。
「否定しても無駄ですよ。僕の与えたこの体は完全なメスの肉体で、君の意志なんておかまいなしに生理だってくるし、精子を注ぎ込まれればちゃんと妊娠だってするんですよ」
 冷酷な言葉がカイトを打ちのめす。
 悪夢のような……悪夢以上に酷い現実だった。
「なんなら今、試してみますか?」
「!」
 これまで感じたこともない種類の恐怖が背筋を駆け抜けていった。
「それがイヤなら、大人しく奉仕を続けることですね」
「………………」
 カイトは押し黙ってカジのペニスに残った汁を舐めた。
 塩辛い体液が絡みつくようにいつまでも舌に残った。
「ぅぇぇぇ……」
 カイトに「後始末」をさせてるうちに早くもカジの分身は硬度を取り戻していった。
「おっと、復活しちまった。悪いけど、もう一ラウンド頼むわ!」
「してあげなさい」
 カイトは震えながら奉仕を再開した。


 少年たちは入れ替わり立ち替わり、カイトの前に立ち奉仕を強要した。
 ティーンエイジの際限ない性欲のせいで、彼らは一度精を吐き出してもしばらく休むと元通りに回復してカイトの前に戻ってくる。
 無限地獄のように感じられた奉仕は、三時間にも及んだ。
 少年たちはまだ続けたがったが、カイトの感度が鈍ることを懸念したムラタが途中でストップさせたのだ。

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