ムラタにとっては、これもカイトの肉体に男性への奉仕と肉欲を関連づけさせるための機械的な手順に過ぎなかったのだ。
 手枷と足枷が外され、カイトは元の鎖に繋がれる。
 舌の使いすぎで顎が痛んだが、精一杯の強がりでカイトはムラタを睨んだ。
「何か?」
「先生よぉ、浩司たちにやらせるばっかだけど、あんたのちん●はほっといていいのかよ」
「下らないことを気にしますね」
「人のモノをバカにしてたけど実はあんた、インポじゃねぇの? それとも、とても人前に出せないほどの包茎短小とか?」
 悔し紛れにカイトは挑発した。
「やれやれ……お喋りなダッチワイフですね」
 芝居じみた仕草で肩をすくめるムラタ。
「そんなに僕のモノに興味があるんですか?」
「へっ。さぞかしお粗末なブツなんだろうな。出し惜しみする奴に限って、そうなんだよ」
「そうですか……」
 ムラタがカイトの前にやってきた。
 カイトはてっきり、ムラタがジッパーを下ろしてペニスを取り出すものとばかり思っていた。
 ところが、ムラタはカイトの姿を見下ろして眉をひそめた。
「ひどい格好ですね」
「なんだって?」
「精液まみれじゃないですか。質の悪そうなDNAの臭いがプンプンしてきますよ」
「ばっ、バカ野郎、誰のせいでそうなったと思ってやがる!」
「……早く洗い流してきなさい」
 ムラタが顎をしゃくると、浩司たちがすぐさま反応した。
 カイトの首輪から鎖を外し、代わって犬の散歩用の手綱を首輪につけた。
「ついてこいよ」
 浩司が力まかせに手綱を引っ張ると、首輪がカイトの頸にくいこんだ。
「うっ、ゲホッ!」
 従わないわけにはいかなかった。長時間の「奉仕」でガクガクと膝が笑いそうになるが、なんとかカイトは後ろに付き従った。
 少年たちはトイレに入っていった。
「ほんとはカイトちゃんは女子トイレ入んなきゃいけないんだけどな」
 浩司が手綱を持ち、ハネダが水道の栓をひねった。ホースの先から錆の混じった水が勢いよく噴き出す。
 浩司が手にしていた手綱を配管に結びつけてから、ハネダのほうに回り込んだ。
「ちょーっと冷たいけど我慢しろよ」
 ハネダがホースの先を向けると、冷たい水流がモロにカイトを打った。
「ひっ、こらイキナリなにすんだ!」
「キレイキレイしましょうねえ♪」
 洗車でもするみたいにバシャバシャと水流を浴びせてくる。水流から逃れようとしたが短い手綱がすぐにピンと張って首輪が喉に食い込んだ。
「ぐえっ」
 そこへ少年たちが笑いながら水流の狙いを定める。
 そうやってさんざん弄ばれ、彼らがようやく蛇口を止めたときにはカイトは体温を震えてブルブルと震えていた。
 もう一度手綱を引かれて教室へと戻る。
 濡れ鼠のカイトを一瞥すると、ムラタは紙袋から乾いたバスタオルを取り出してカイトに手渡した。
「それで体を拭きなさい」
「でも……」
「何か?」
 この場で脱ぐのは……と言いかけて、カイトは口をつぐんだ。
 それではまるで、女として恥じらってるみたいではないか。
 濡れてシースルー同然になったワイシャツ。裾の部分が腰まで覆ってるとはいえ、その下の素肌が露出しているも同然……あるいはかえってそれ以上にエロティックである。
 カイトは無造作に濡れたワイシャツを脱ぎ捨てた。
 浩司たちの喚声は聞こえない振りをした。
 裸になると、胸の二つの膨らみのリアルさ、脇腹から腰にかけてのなめらかなラインがいやでも目に入ってしまう。望みもしないのに押しつけられた少女の躰だ。
 あまりにも細くて非力な躰が心細くて、カイトはバスタオルを羽織った。
「ヒュー、ヒュー。色っぽいぞ、カイトちゃーん」
「カイトたんハァハァ……」
 少年たちの野次を務めて無視し、濡れた体を拭いていった。男ときの感覚でタオルを使っていくと、思いがけず胸や尻の隆起がタオルにこすれる。特に、胸の先端の敏感な部分が擦れたときは危うく声を出してしまうところだった。
「さて。カイト君もさっぱりとリフレッシュしたところで、君にプレゼントをあげることにしましょう」
「どうせまたロクでもないもんだろ!」
「とんでもない。これでも、お金をかけてるんですよ」
 カイトはバスタオル一枚肩からかけた格好のまま、椅子に座らされた。
 ムラタは紙袋の底から何かを取り出そうとしている。
 隙をついて脱走する機会を窺ったものの、抜け目無く浩司が手綱を握っていてそのチャンスはなかった。
「これがプレゼントですよ」
 ムラタは宝飾店で指輪やネックレスを入れるような小箱を取り出すと、カイトの目の前で蓋を開けてみせた。
「……なんだこりゃ」
「強いていえば、君が他人の所有物になることの証、でしょうかね」
 小箱の中には金色に輝くリングと、ビー玉大のイヤリングらしきものが入っていた。リングもイヤリングもそれぞれ二つずつ並んでいる。
「まさか、これを俺に……」
「ほかに誰がいるっていうんですか?」
 椅子を蹴って逃げ出そうとしたカイトは無情にも手綱で引き戻され、三人がかりで椅子に座らされてしまった。
「君たち、そのまましっかりと押さえてなさい」
 三人に頭、肩、腕としっかり固定され、カイトは椅子の上で微動だにできない。
 ムラタの手にはいつのまにか注射器と消毒用の脱脂綿があった。
「やめろォォォォ!!」
「少しは静かにしたまえ」
 なおも喚こうとするカイトの口にすっぽりとボールギャグがかまされた。
 それを境に、カイトはただ苦しげに呻くことしかできなくなってしまった。
 ムラタは淡々とカイトの耳たぶを消毒し、そこに注射針を刺した。チクリと鋭い痛みがあって、それから徐々に耳たぶの感覚が麻痺していった。
 ムラタは小箱からイヤリングをつまみ上げる。ピアス式で小さな金属球を吊るような形のイヤリングだ。銀色のボールの上下には金属の輪が幾つも重なっていて、ちょっと揺れるだけでチャラチャラと音がする。
「これを耳に飾ってみたいと思うでしょう?」
「んんっ! んーっ、んーっ!!」
 カイトの叫びはくぐもった呻き声にしかならない。
「イヤならイヤとハッキリ言わないと。イヤです、と言えたらやめてあげますよ」
「んむうーっ! んんんっっ!!」
 小さな口にゴルフボール大のギャグをくわえ込まされて喋れる筈もない。ムラタは残酷な冷笑をたたえてカイトの無駄な努力を見守っていた。
「……どうやら異議なしのようですね」
「んーーーーーっっ!!」
 抗議の声を張り上げようとしても、ギャグの穴からむなしく唾液が漏れるだけだった。
 ピアス穴をあけるための器具が耳たぶに当てられた。耳の感覚は麻痺していても、ムラタの手の動きで、穴を開けられていることが分かる。
 まず、右耳に穴が貫通した。間をおかずに左も。
「知ってますか? ピアス穴を開けたら、穴が固定するまでの数ヶ月、ピアスを外しちゃいけないんですよ」
 ボール型のイヤリングがゆっくり近づいてくる。カイトは恐怖に目を見開いた。
 イヤリングの発する小刻みなチャラチャラという音が耳のすぐ横で聞こえた。今まさにピアス穴にリングが通されているのだ。
「……もっとも君の場合は、一生ピアスをつけたままなんですがね」
 リングの切れ目を繋ぐビーズが取り付けられていく。そしてリングが閉じられると、大型のペンチでビーズを圧迫する。
「こうするとネジ穴が変形して、二度とピアスを外せなくなるんです」
 ムラタはさも楽しそうに告げた。その言葉はカイトの脳裡で何度となく繰り返し響いた。
 そして他方の耳にも同じようにしてリングが固定された。
 事が終わると、カイトの口に突っ込まれていたボールギャグが外された。
「ああ、思った通りだ。とてもよく似合ってる。かわいらしいよ」
 耳からぶらさがる銀色の球をムラタは指先でピンと弾いた。高い音が響いてイヤリングが揺れる。
「そのイヤリングが揺れるたび、音を鳴らすたびに思い返しなさい。君が誰かに所有される快楽のための道具に過ぎないということを」
 少女のピンク色の唇はわななくだけで言葉を発することができずにいた。
(殺す)
(コロス)
(ブッコロス)
(惨めすぎる……)
(道具?)
(カイラクノタメノドウグ……)
 カイトの頭の中は赤黒い色のペンキをぶちまけたように混乱した負の感情が渦巻いていた。
「残りの二つはまた次の機会にプレゼントしてあげますから」
 そう言ってムラタは小箱を閉じた。
「さあ、今日はここまででいいでしょう。出ますよ」
「うぃーす」
 ムラタの走狗となり果てた三人の少年たちは声を揃えて返事した。
 カイトは引きずられて鎖に繋がれた。
 少年たちは去り際にひとりひとり、イヤリングに触れていった。
「一段と色っぽくなったぜ!」
「ピアスでおめかしとは、さすが校則違反のカイトさんだよな!」
 少年たちの手で弄ばれるたびに耳から吊されたボールはユラユラと揺れ、金属環がチリチリと音を立てた。

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