11

 雄一郎が二度目の精を長々と亜美の奥へ打ち込むと同時に、亜美も大きな波に流されるようにか細い声を上げて達してしまった。
 四つ這いの姿勢だった亜美は、力尽きたように顔を枕に埋めた。少し息が苦しいが、体が重いような、軽いような不思議な気分だ。
 まだ雄一郎とはバックの体勢で繋がりあっている。
「あっ……」
 ぬるりとペニスが抜けるさびしさに、亜美は思わず声を上げた。雄一郎は亜美をやさしく横向きに転がし、タオルで彼女の股間をやさしく拭いながら唇にキスをした。最初はぼんやりとしていた亜美だが、何度か唇をつつかれているうちに、彼女の方から雄一郎の首に手を回してキスをし始めた。
 ちゅっちゅっと、小鳥のさえずるような音がする。
 しばらくキスを楽しんで、亜美は目を細めるようにして雄一郎をみつめた。眼鏡はベッド横の床に転がり落ちていたので、ほんの30センチほど離れた彼の顔さえよく見えないのだ。
「どうかしたの?」
 雄一郎が言った。
「あの……眼鏡が……」
 これだけの台詞を言って、彼女は雄一郎から顔を背けてしまった。
 自分はどうしてしまったんだろう。
 こんなにも、胸が熱い。
 まるで、そう。恋をしてしまった少女のようだ。
 恋?
 亜美は驚いた。自分が、恋をしている? 初恋の人に、また恋を?
 でもこんな気持ちは初めてだ。
 苦しい。切ない。胸が張り裂けそうなのに、心が満たされている。矛盾しているのに、矛盾していない。奇妙な感情が亜美を迷わせる。
「はい、亜美ちゃん」
 雄一郎が落ちていた眼鏡を拾ってかけてくれた。
 眼鏡をかけてみると、あれほど激しく交わった後だというのに、雄一郎のペニスは地面と平行以上の角度で固くなっているのが目に映った。
「も、もう、お義兄様ったら!」
 亜美は横を向いて、枕を投げる。
「ごめんごめん、亜美ちゃん」
 雄一郎は枕を受け取ってベッドに下ろして言う。
「でも、君が可愛すぎるのがいけないんだよ」
「可愛い……って」
 亜美の顔が熱くなるのがわかった。頬に手を当ててうつむく。彼女は気づいていないが、初心(うぶ)な仕草は悠司の好みそのものであった。
「可愛い亜美ちゃん。今夜は寝かせてあげないからね」
 手を退けてまたキスをする。
 雄一郎は亜美を持ち上げ、まるで花嫁を抱える新郎のように横抱きにして、外へ向かう扉へと歩いていった。
「えっ! あの?」
 亜美は驚いて声を上げるが、すぐに彼の意図を察して小さく抗議する。
「まだ外は少し寒いから……」
「大丈夫だよ。すぐに暖かくなるからね」
 彼が言った意味に気づき、亜美は頬を赤らめて身をよじった。
 何もかもが初めてのようで、刺激的だった。
 薄いブルーのタイルが敷き詰められたテラスの先は、芝生と草木が植えられている庭園だ。まだ少し肌寒い夜気も、火照った体には今はむしろ心地好い。
 亜美は雄一郎の首に手を回して、今度は自分からキスを求める。自分が好みの女性の行動を、彼女は自然に振る舞っていた。それは男にしてみれば、ツボをつく仕草であるのは当然といえるだろう。
 くちゅくちゅと唾液を交換するようなねちこいキスをしながら、雄一郎は亜美を地面に下ろす。まだキスをし足りない亜美は、鼻を鳴らして抗議する。
 裸足の足の裏に、ひんやりとした陶器の感触がして、亜美は思わず体をすくめた。
「冷たいっ!」
 外でセックスをしたことがないわけではない。公園のベンチでしたり、男が勤めている会社の屋上で、全裸になってバックから突かれたこともある。けれど、これはそんなものとはまったく別だった。
 倒錯的、とでもいうべきか。
 裸ではさすがに肌寒いはずなのに、亜美の体はたちまちポッポッと熱くなり始め、寒さを感じなくなっていた。
 こういうのも……いいかも。
「立って、脚を少し広げて」
 雄一郎が耳元で囁く。
 何をしようとしているのかは、薄々想像がつく。
 亜美は恥かしいです、と小さな声で言いながら、踵とつま先を交互に動かしながらじりじりと脚を左右に広げてゆく。
 ちょうど肩幅あたりまで広がった時、ぴちっという音がした。あんなに激しくペニスを受け入れていたにもかかわらず閉じていた秘唇が左右に開いたのだ。雄一郎はしゃがんで、彼女の股間に顔を近づけた。
「ここは君が処女だった時と、ほとんど変わらないね」
「いやっ。お義兄様……そんな恥ずかしいこと、言わないでください」
「恥ずかしくなんか無いよ。亜美ちゃんのおまんこ、こんなにきれいだ」
 タオルで軽く拭っただけの秘唇に、雄一郎は口付けた。おもわず、亜美が腿で彼の頭を締め付ける。それにも構わず、彼は唇と舌を使って執拗に秘唇とその奥をまさぐり続ける。
「いやっ……お義兄様、ダメです……き、汚いか、ふぁぁっ!」
 快楽のパルスが走って、下腹部がぴくぴくと痙攣する。
 女だって、舐められるのは気持ちがいい。まだ身体の芯にあった快感の残り火が、またたくまに燃え上がり始める。
「もう、だめです。汚いから……」
 うわずりそうになってしまう声を懸命に押し殺し、亜美は自分の人差し指を咥えて噛んだ。短く刈られた雄一郎の髪の毛が腿をこすり、彼女に一層の快感を与える。
「どうして?」
 雄一郎が顔を上げて亜美を見つめる。
「……だ、だって。その……」
「僕が亜美ちゃんの中に出しちゃったから?」
 亜美の顔が、瞬時にしてかあっと紅潮する。
「いじわる」
 不意に亜美の眉がひそめられた。
 内股気味に脚を閉じて、雄一郎に背中を向けた。
 膣にたまった精液が外に流れ出してきたのだ。
「ん……っ!」
 指でラヴィアを開いて、中を覗きこむ。睾丸がないのがなんとなく不思議な気がするが、ペニスがあるわけではないからそんなものあるわけがない。
 まるで剃ったように恥毛の気配も無いふっくらとした丘に切れ込んだ秘唇の中から、とろり……と黄色味がかった精液の塊がこぼれ出る。液体というよりむしろ、柔らかめのゼリーといったところだろうか。ところどころ、粒のような塊まで見受けられる。
 お義兄様、よっぽど溜めていたんですね……。
 長い間精液を溜めているとこうなることを、亜美は悠司の知識で知った。それでもこの濃さも量も、ただごとではない。
 ぽってりとした粘塊を指ですくい出して口に運び、嬉しそうに言った。
「先生のこれ、すごく濃いです……」
 こんなものがおいしいわけがない。
 それなのに、亜美にはそれがとても美味に感じた。二度目に出したらしい精液は亜美の腿を伝って、足首まで長くなめくじが這った跡のような軌跡を描いている。
 こんなに濃い精液を射ち込まれたら、絶対に妊娠しちゃう。
 妊娠。
 亜美の芯に、ずしんとくるフレーズだ。
 怖いのに、濡れる。恥ずかしいのに濡れる。いや、恥ずかしいから感じてしまう。だから濡れるのだ。
 亜美はしゃがんで、まるで小用を足すような姿勢で精液を押し出し始めた。
 嬉しそうに膣から精液をこじり出してる亜美を見ながら、雄一郎は金属製のベンチに腰を下ろした。一瞬ひやっとするが、すぐに体温で暖まって体に馴染む。続けさまの2連発には、さすがに雄一郎も少し堪えたようだ。
「あはっ! 美味しいです。お義兄様の精液と、亜美のおつゆが一緒になって、とっても美味しい……」
 だが、股間から精液をこじり出しては嬉しそうに舐めたり、股間にこすりつけて気持ち良さそうにしている亜美を見ているうちに、彼のペニスはまたもやむくむくと大きくなり始めていた。
 無節操だなとは思うが、無理もない。亜美のような美少女を相手にして勃たない男の方が変なのだ。例えそれが妻の妹であろうとも、彼女の中に男の心が潜んでいようとも……。
 一人遊びを続けていた亜美は、雄一郎のペニスが復活してきたのを見て、膝でにじりよってきた。
「ねえ、お義兄様。私のおっぱい、大きくなったでしょう?」
「あ、ああ……大きくて、形がよくて……おいしそうだね」
「うふふ。ありがとうございます。さあ、おっぱいちゃん。お義兄様にご挨拶しましょうね?」
 亜美はそう言うと、両手で胸を下から持ち上げ、ぷるんと震わせた。
 雄一郎は唾を飲み込んだ。
 彼女の意図を汲んで、雄一郎はベンチに浅く腰掛けなおして脚を開き、そこに亜美が体をいれる。亜美が大きな双球を両側から真ん中へ寄せるようにすると、赤銅色のシャフトは雪白の塊の中に埋没してしまった。思わず雄一郎は目を見張る。
 亜美は悪戯っぽい表情で顔を上げて、舌を突き出した。舌先から唾液がとろとろと谷間に向かってこぼれ落ちてゆく。柔肉に埋まったペニスが亜美の唾液に塗れてゆく。
 びくん、とペニスが跳ねて彼女の胸から飛び出ようとするのを、
「だぁ、めっ!」
 右手を乳房から離して、亜美がペニスを乳房の中に埋め直す。唾液と先走りの液でぬるぬるになったシャフトを、亜美は体を前後に揺らすようにしながらこすり始めた。
 雄一郎のアヌスが、きゅっと締まった。一撃で出してしまいそうな衝撃で息が止まりそうになる。危うい所で出さなかったようだが、亜美の胸の感触は想像していたよりもずっと気持ちのいいものだった。
 しかも飛び出た亀頭の部分を、舐めたりしゃぶったりされるのだ。亜美が時折、雄一郎が気持ちいいのかどうか確かめるように彼の顔を見上げるが、彼の方はそんな様子を気にしていられないほど夢中になっていた。
 ううっとうめく雄一郎を見ながら、亜美は豊かな胸を自在にこねくりまわし、彼のペニスに愛撫を加えていた。
 亜美はいつの間にかできるようになっていた、男の射精をコントロールできる技で雄一郎の射精を抑制していた。今日の昼間、ナンパしてきた男を一瞬にして腎虚に陥れた技だ。
 雄一郎と姉が交際していると知る前に姉に教えてもらったものの、今まで知ってはいても使うことができなかったのだが、今日になって突然できるようになったのだ。これだと長く楽しむことができるが、やりすぎると男の精神に変調をきたしてしまうので気をつけるようにと、姉に釘を差されていたのを思い出す。
 でも、せっかく初めてのパイズリですもの。簡単に出してしまったら、お義兄様も気の毒ですわ。
「どうですか。姉様のおっぱいではこんなことできないでしょう?」
「あ……ああ……き、気持ち……いいよ……ああっ!」
 まるで女の子のように喘ぐことしかできない雄一郎を見て、亜美は魔性の笑みを浮かべた。
 姉様にはできないことが、自分にはできる。いつもかなわなかった姉に意趣返しができたのが嬉しかった。姉に取られてしまった人は、今自分の目の前にいるのだ。
 たとえそれが、一夜の夢に過ぎないとしても。
 亜美は左右から寄せた乳首で亀頭をなでまわしたり、時には胸でなでまわすのを休めて睾丸を口に含んだり、太腿の内側に舌を這わせたりと、常に雄一郎に新しい刺激を与え続ける。
 耐えられないとでもいうような雄一郎の低い押し殺した声が亜美の耳を楽しませる。以前は、雄一郎にしてもらうばかりだった。でも今は、男がどうして欲しいのか、どうすれば喜んでくれるのか、感じるのか、全てが手に取るようにわかる。
 亜美はもっと雄一郎を喜ばすべく、自分の股間がぬるぬるになって挿入を待ち焦がれているのもがまんして、テクニックの限りを尽くす。心の中にある、どこか醒めた部分が、彼女を一層倒錯的な快感へとかきたてる。
「だ……だめだよ……亜美ちゃん」
 ついに雄一郎が彼女を制止した。
 かちかちに張り詰めた剛直を、ソフトクリームを削ぎ取るような舌使いで愛撫していた亜美は顔を上げて不思議そうな顔をした。
「なんで、どうしてですか?」
 すぐにも射精しそうなペニスの先端を指でいじくりながら亜美が言った。この場で出させてしまうのは簡単だ。顔と胸に精液を浴びせてもらって、それを手のひらでぬるぬると広げたらどんなに気持ちがいいだろう。
 それでも彼女は、雄一郎の返事を待った。
「だって、今日は亜美ちゃんの中だけに出すって決めてるからね」
「そうなんですか」
 そのまま亜美は裏筋にあてた親指を小刻みに震わせ始めた。
「だ、だめだって!」
「大丈夫ですから……お義兄様、私に任せてください」
 目を閉じ、アヌスに力を込めて必死で射精をがまんしている雄一郎の表情がなんともかわいかった。ペニスが今にも精を出そうと震えるが、ほとんど精液は漏れてこない。
 おそらく雄一郎は苦痛を感じているはずだ。彼がどんな苦痛を感じているか、亜美にはわかっていた。しかし、少しの間だけがまんすれば、大きな快感が与えられるはずだ。亜美は親指と人差し指で作った輪で亀頭のくびれを包むと、揉むような指使いをした。
「うっ!」
 雄一郎がうめくと同時に、精液が勢いよく飛び出し、すぐに止まった。
「うあああっ!」
 一瞬の解放感の後に訪れた苦痛に、雄一郎の腰が揺れた。亜美はペニスを握ったまま離さない。空いた左手で、飛び出た精液を乳首に塗りつけて、くりくりと指で揉む。
 変態的で興奮した。やっぱり、一度はやってみるものね。亜美は心の中でそう呟いた。
「お義兄様。ごめんなさい」
 亜美は手を離し、ベンチに上がって、荒い息を吐いている雄一郎にまたがった。
「私の中に、またたくさん出してくださいね」
 そして亜美は雄一郎の首に手を回し、バランスをとりながらそろそろと腰を落していった。

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