12

 雄一郎の肩で体を支え、少し前のめりになりながら亜美は腰をゆっくりと落してゆく。ぐい、と肉の杭が突き刺さる。
 亜美は長い髪を舞い上がらせて、のけぞった。
「おに、いっ……さまぁ……いいっ! いいのぉっ!」
 自分の体重が一点に集中してしまったようだ。まるで内臓を突き抜けて口元までペニスが突き刺されたような気がする。恐くなって腰を上げるが、すぐにまた奥まで欲しくなって腰を落すことを繰り返す。
 雄一郎は亜美が倒れないように腰に手をやり、彼女が思うように動けるよう手助けをする。
「あ、んっ! あはんっ! お、おかし、く……な、なっ……ちゃうっ!」
 途中で膝が崩れ、最も奥深くまで突き刺さる。
 空気が口から一気に抜けた。魂まで抜けたんじゃないかと思うほどの衝撃だ。
 しばらく惚けたままの亜美に、雄一郎も一息をつく。やがて回復した亜美は、今度は前後に揺らすような動きで快感を貪る。
「んー。あむふぅ……んっ!」
 目の前にある耳に熱烈なキスをして、穴の中まで舌をこじ入れる。彼女の中で、雄一郎のペニスが跳ね上がる。
 シーソーをこぐような前後の動きを楽しむ。奥底が圧迫されているのに、まだ余っている。しばらくそうしてから、亜美は彼の唇を求める。雄一郎もそれに応えた。
 軽いキスの応酬をしてから、亜美が肩にまわしていた手を離して、まるでブリッジをするような感じで、後にのけぞった。
 また、力の入る場所が変わる。
 雄一郎が亜美の脚を持ちながら、ゆっくりとベンチから立ち上がった。繋がったまま逆立ちに近い姿勢になると、亜美の額にまでずれていた眼鏡が、音を立ててタイルに転がった。
「あ……眼鏡が」
「あとで拾ってあげるからね」
 交差位の変形というか、立ち松葉崩しとでもいうのか。雄一郎にとって視覚的には非常にエロチックな体位だった。
 月明かりの下で、薄青のタイルに浮かぶような白い体の義妹が自分に貫かれている。
 そのまま体を沈め、亜美を折り曲げるようにして上から貫く。なんどか抜き差しをして新たな快感が生まれてきたと思うと、雄一郎は突然動きを止めた。
「亜美ちゃん、部屋に戻ろうか」
「……そ、そうですね。それが、いいです」
 ゆっくりと変わる体位と新しい刺激に身を委ねていた亜美は、雄一郎の言葉で我に返った。
「それじゃ」
 繋がったまま、亜美の体を抱き起こす。
「僕の首に手を回して。しっかり握っているんだよ」
「え?」
 雄一郎は腰を軸にてこの要領で亜美の体を自分の膝の上にのせ、お尻を両手でしっかりと握った。
 亜美は思わず、きゃっと小さな悲鳴を上げた。少し、漏らしてしまったかもしれない。感じからすると小水ではなさそうだが、おそるおそる股間を見てみると、灯りに反射して細い筋が雄一郎の腿から脛にかけて走っているのがわかった。
「立つよ。しっかりつかまってないと頭から落ちちゃうからね」
「あ、いやっ!」
 抗議する間もなく、雄一郎は軽々と立ち上がった。俗に言う駅弁というあれだ。そのまま雄一郎は芝生の方へ歩いてゆく。
「だめ、いや、お義兄様、そっち、違い……あふっ! 部屋が、違いま、いやんっ!」
「亜美ちゃんの部屋に送っていてあげるよ」
 きっと雄一郎は悪戯っ子のような表情をしているに違いないと思ったが、歩く度に走る刺激の前に、亜美はすぐに息も絶え絶えになってしまった。
 外で姉と、裸でいけない遊びをしていたこともある。亜美から羞恥心を無くしてしまったのは、かなりの部分で姉の影響が強い。女子校でもなければ、絶対に男に襲われているほどの無防備ぶりだ。
 しかし今は、悠司の精神と溶け合って羞恥心が蘇っている。いや、むしろ男の部分が屈辱的だと感じれば感じるほど、亜美はより羞恥心を感じ、背徳の快感はいや増すのだ。
 そんな彼女のことを知ってか知らずか、雄一郎は時々立ち止まっては、亜美を四つ這いにさせてバックから突いたり、雄一郎が寝転がって亜美が上になって動いたり、木に体を預けて立ちバックやその他の立位プレイを楽しんだ。
 最初こそ気になっていた土などの汚れも、夜空の下でするセックスの快感で吹き飛んでしまった。
 普通なら5分もかからない距離を30分以上もかけて移動し、ようやく2人は亜美の別館の前にたどり着いた。まだ繋がったままの亜美は雄一郎にキーコードを打ち込んでもらうことにした。簡単なセキュリティーではあるが、敷地内ではこれで十分なのだ。
「ははっ。亜美ちゃんも大きくなったから、片手だとちょっとつらいな」
「もう! ……それって、太ったということですか?」
「そんなことは言ってないよ。お尻もこんなに大きくなって、手触りもすごくいいし」
 膝と手で巧みにバランスをとりながら、ドアについたテンキーからコードを打ち込む。ぴっ、と軽い電子音がしてドアのロックが解除された。
「ちょっと泥で汚れちゃったね」
 土が汗と精液と愛液で溶けて、まるでチョコレートでデコレートされたように亜美の下半身に張りついている。
「一緒にお風呂に入ろうか」
「……はい」
 雄一郎と亜美はおでこを突き合わせて笑った。
 風呂は24時間風呂になっていて、いつでも入れる。雄一郎は洗い場にやってきて、ようやく亜美との結合を解いた。
 長い間体の中にあったペニスが抜かれることにさびしさを感じているのに気づき、亜美は驚いた。確かにまだ嫌悪感は残ってはいるが、男のパーツに対しての、震えがくるような絶対的な生理的嫌悪感は、もうすっかり消え去っていた。
 完全に抜き去られる直前、カリの部分が最も感じる場所を通過する時に亜美は、抜かれないように力を込めたが、無情にもペニスは亜美の中から去ってしまう。しびれるような快感は収まるが、温もりがまだ胎内に残っている。
 亜美は起き上がってすぐに、雄一郎の股間に手を伸ばした。
「まず、先にシャワーだよ」
「はぁい!」
 くすくす笑いながら、シャワーを浴びる。その後、ボディーソープを互いの体に垂らして体を擦りつけあう。
 亜美は雄一郎のたくましい体を楽しみ、雄一郎は亜美のやわらかい体を思う存分堪能した。やがてどちらからともなくキスが始まり、顔を舐めあい、そして泡だらけになりながら互いの体を愛撫し始めた。
 ふと、雄一郎は風呂場にあったある物に目を止めた。亜美のものではないようだが、彼はそれを手に取って、目を閉じてすっかり桃源郷気分に浸っている亜美の股間にぴたりとあてて軽く引いた。
 しゃりしゃりしゃり……。
 手とは違う感触に亜美が股間の方を見ると、泡まみれの下腹部に一直線に走る地肌のラインがそこにあった。
「お義兄様、何を……?」
「見て分かるだろう? 亜美ちゃんのヘアーを剃っているんだ。君には余計なものが無いほうが似合ってるよ」
「嫌ぁ! お義兄様。剃ると、あとでチクチクして痒いんですぅ」
 亜美は体をくねらせて抵抗するが、雄一郎が手にしている安全剃刀に脅えたように、逃げ出さなかった。
「じゃあ、毎日剃ればいいよ。僕のヒゲみたいにね」
 雄一郎はわざとゆっくり亜美のヘアーを処理してゆく。
 もともと薄かったヘアーはあっという間に剃りつくされたが、雄一郎はラヴィアを広げるようにしてまで、わずかな恥毛まで剃ってしまう。恥ずかしながらも、亜美は自分が剃毛されていることで濡れているのが自覚できた。
 ひっくり返されて、お尻まで広げられ、アヌスまでしっかりと見られてしまってから、ようやく亜美は解放された。子供のようにほっぺたを膨らませ、口を尖らせて、よく見えない雄一郎を睨みつける。
「お義兄様の、いじわる! エッチ! 変態!」
「ごめん。本当にごめん。謝るよ。亜美ちゃんがそんなに嫌がるだなんて思っていなかったから。ほら、女の子って水着の時に処理したりするって……」
「それとこれとは違いますっ!」
 雄一郎に最後まで言い訳を言わさずに、亜美が腕組みをして宣言する。
「本当に悪いと思っているのでしたら……お義兄様のも剃らせて下さい」
「ぼ、僕のを? いや、それはちょっと」
 今度は雄一郎が亜美に襲いかかられる番だった。彼女の手にはいつの間にか安全剃刀ではなく、黒い柄のついた鋭利な剃刀が握られていた。
「お義兄様。今の私、眼鏡が無いですから、手が滑っちゃって切れてしまうかもしれませんよ?」
 舌で剃刀の金属部分を、ちろりと舐めて見せる。
 そのあまりの妖艶さに、雄一郎が魅入られたように亜美の前で女性のように足を開く。
 亜美は手際良く剃刀を操って、まずは彼女の手の中で固くなった竿から処理してゆく。それが終ると、今度は下腹部の処理。周りから剃るようにして、最後は陰嚢の毛を剃ってゆく。袋を伸ばすようにして、剃り残しがないようにていねいに手を動かす。
 つい数日前までは自分にもあった器官を前に、それを玩具のようにして辱めを与えることに興奮した。時々泡を塗りつけ、わざと手が滑った振りをしたりして雄一郎の反応を楽しむ。
 やがて完全に剃り終わると、亜美はお詫びのしるしとでも言うように、袋と竿に情熱的なキスをした。
「ごめんなさい、お義兄様。さあ……綺麗になった者同士で、楽しみましょう」
 マットに仰向けになって寝転がったままの雄一郎は、無言で亜美を上に乗せ、彼女のタイミングで挿入できるようにした。亜美はすぐに腰を落して、深い挿入を貪る。
 こつん、と子宮口に亀頭が突き当たる感触がする。
 亜美が短い悲鳴を上げて、顔をのけぞらせた。雄一郎が彼女の顔を覗きこんで言う。
「ふぅん……さっき気づいたんだけどさ、亜美ちゃんってこんなところでも感じるんだね」
 本来は感覚がほとんど無い鈍感な場所だ。なにしろ赤ん坊がそこを押しのけて通るのである。敏感だったならば、出産など不可能だろう。でも、確かに感じるのだ。
「観夜とそっくりだ。さすがは姉妹だね」
 亜美が恥ずかしがるのを知って、わざと雄一郎は言う。そのままじっとしていると、亜美が絞り出すような声で言った。
「お願いですから……もっと強く突いて下さい」
「チンポ大好きって言ってごらん。エッチな亜美ちゃん」
「やぁあ……そ、そんなこと、言えない」
 両脚を投げ出している姿勢の雄一郎が手を床について、腰を跳ねあげた。
「ひゃあぁぁぁんっ!」
「ほら、言わないと、もっとこうしちゃうよ?」
「も、もっと、してください!」
 亜美が叫んだ瞬間、雄一郎は腰の動きを止めた。
「ああ……やぁん! どうして、お義兄様?」
「ほら、言わなきゃだめだろう?」
 そして亜美は、いつもの笑みを浮かべた。
 いや。溶け崩れそうな表情は淫靡さよりもむしろ、幼さと、どこか爽やかささえ感じさせる不思議なものだった。
 頭が真っ白になって、無数の映像が亜美の頭蓋の中を駆け巡る。
「せ、せんせぇ、すごいのぉ……つぐみのおまんこに、いっぱい、いっぱいせいえきをどぷどぷしてくれるの……」
 自分に犯されている自分の姿が、万華鏡を覗いたように乱れ舞う。悠司が悠司にアナルを貫かれて悶え、亜美が悠司を襲い、亜美同士が絡み合い、悠司が亜美を犯している。
 まるで、彼から注がれた精液で心がドロドロに溶けてしまったようだ。
「私、おちんちん、大好き。ペニス、大好き。チンポ、だ〜い好き! お義兄様、私の中に、いっぱいいっぱい精子出して……亜美が妊娠するくらいにっ!」
 雄一郎が腰を突き上げると、亜美はそれだけで達してしまった。がくんと体が崩れそうになるのを、支えてもらう。
 体位を替え、マットに横たわった亜美に雄一郎は正常位で亜美を突く。
 まだいける。
 まだ、翔べる。
 亜美の体はまだ、快感が絞り出せそうだ。
 体がばらばらになり、弾け飛んでしまいそうだった。何度となく体位を変えられ、その度に彼女は違う快感で感じまくった。
 何度目かおぼえていない激しく吹き出す精液を体の内で感じつつ、亜美の意識は快楽の濃霧の中へ落ちていった……。

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 亜美はわずかな揺れで意識を戻した。
 すぐ側にあった暖かさが、すっと遠退くのがわかる。音を立てないように、そろそろと動いている。衣擦れの音がして、ドアが開き、そして閉まった。
 風呂場から上がり、体を拭いてもらってからも、二人はまるで明日が無いかのように激しく互いを貪りあった。
 いや、確かに明日は無いのだ。所詮は許されぬ関係……。
 一夜の夢と割り切ったはずなのに、亜美の目からは涙がこぼれ落ちる。
 何度達したか、はっきりとおぼえていない。
 十人以上の男達と乱交をした時でも、こんなに気持ち良くなることはなかった。
 今は一抹のさびしさは感じるが、空しさはない。
 肌に残った義兄の温もりを抱きしめるように、亜美は胎児のように身を縮こまらせて、泥のような眠りに就いた。

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