憎しみの檻

続編 レリア編 13

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 アシルの告白を受けて、わたし達は正式に恋人としてのお付き合いを始めた。
 それと同時に、アシルは城内で自室を持つことになった。
 わたしの記憶が戻ったので、寝かせるために添い寝をするという名目が消えてしまったからだ。
 恋人になったとはいえ、すぐに体を許す気にはなれず、手を繋いだり、口づけをしたりはするけれど、まずは会話を優先することにした。

 記憶を失った後のわたしがある程度聞き出していたものの、わたしはアシル自身のことをそれほど知ってはいなかった。
 向こうもそうだったようで、食べ物の好き嫌いや、好む趣味、子供の頃の話など、話すことはたくさんあった。
 アシルは性に関心が強すぎただけで、それ以外では意外に子供っぽい所が多く、何なら少し可愛いと思うほど無邪気な一面を持っていた。
 今の彼となら、あの記憶も、うまく上書きできるかもしれない。
 やり直しの続きを、そろそろ進めてもいいのではないかしら。




「今夜は一緒に寝ましょう」

 なんて誘いかければいいのかわからなくて、ついそんな言い方をしてしまった。
 アシルは戸惑った顔をして、窺うように問いかけてきた。

「また眠れなくなったのか?」
「違うわ、今のはお誘いよ。その気になれないなら、断ってくれてもいいけど」
「断らない! 口にしたからには取り消しはなしだぞ!」

 食い気味に迫られて、思わず一歩引いてしまった。
 随分とご無沙汰だったはずだから、よっぽど溜まっていたのね。

「あのエロい下着着てくれよ、あの時は襲いかからないように抑えるのに必死でよく見られなかったんだ」

 アシルは期待と興奮を隠すことなく要望まで口にした。
 あの下着は子供のわたしが考えた精一杯の誘惑方法ではあったけど、今のわたしが着たら、ただのお誘い以上の効果を発揮しそう。

「調子に乗らないで。初めてのやり直しでもあるんだから、初々しい処女を相手にするように気を使って欲しいわ」

 落ち着いた雰囲気の中で、ゆっくりと進めて欲しいの。
 愛を語らって、キスから始めて、優しく抱きしめてから、初めての扉を開いていく。
 少々夢見がちだけど、処女ってそういうものでしょう。

 アシルは興奮を抑えると、重々しく頷いた。

「初めてのやり直し……。そうだな、今度はちゃんとやる。いきなり突っ込んだりとか絶対にしないし、キスをいっぱいして、おっぱいもたっぷり可愛がって、あそこもぐちょぐちょに濡れさせてやるからな」
「卑猥なことを具体的に言わないで! いやらしい男ね、そこだけは変わらないんだから!」
「ああ、そのきっつい言い方は確かにレリアだ。でもな、今までの可愛いレリアも捨て難い。大好きって言ってくれてたお前も出てきてくれていいんだぞ」
「可愛いレリアは過去の人よ。今のわたしは大人なの、好きの安売りはもうしないわ」

 高飛車に言い返しているのに、アシルは何だか嬉しそうだった。
 この男、罵られたい願望でもあるのかしら?
 気をつけないと、変な趣味に目覚められたらたまらない。
 もうちょっと優しくしてあげましょうか。




 どこでするのかということになって、アシルの部屋に行くことになった。
 彼の寝台は天蓋付きの大きなもので、二、三人は余裕で寝られそうな広さだ。
 ちらりと視線を向けると、アシルは焦った顔をした。

「いや、オレは体が大きいだろ。寝台もでかい方が手足伸ばして眠れるし、決してお前と寝るために選んだわけじゃねえ!」
「何を必死で言い訳しているの。いつかはそうなるんだから、想定していたとしても変に思わないわよ」

 ちっとも良い雰囲気にならないので、自分からアシルに抱きついてやった。
 そういえば、あの最後の情事の時もそうしたわね。

「ほら、早く。でも、がっついちゃだめよ、優しくしてね」

 優しい声で誘いかけると、アシルは緊張気味に唇を重ねてきた。
 触れ合わせるだけの口づけから始まり、舌を絡める深いキスへと、じっくりと進めていく。

「ぅ…うん……」
「好きだ、レリア、可愛い……」

 わたしがしないと言ったからか、今度はアシルが好きの安売りをすることにしたらしい。
 甘い囁きを聞いていると、気分が盛り上がってくる。

 舌を絡み合わせているうちに、抱き合うことで触れている場所が熱くなってくる。
 まだ布越しなのに感じる熱は、わたしの中から生まれてきている。
 体の奥がむずむずと疼きだして、足を擦り合わせてしまう。
 それに気づいたアシルが、わたしを抱き上げて寝台に運んでいった。

「脱がせるぞ」
「いいわ」

 許可を出せば、前開きの寝間着の釦が外されていく。
 胸を覆う下着は着けていない。
 唾を飲み込む音が聞こえて、彼の大きな手が、わたしの膨らみに触れた。

 乳房を掴んでいる手には力が入ってなくて、壊れ物を扱うようにやわやわと揉んで感触を楽しんでいるみたい。
 指の腹で乳首を擦られ、軽い快感が走った。
 揉まれて、舐められて、吸い付かれたら声が出ていた。

「ああんっ、やぁ……気持ちいいっ」

 前は我慢していたけど、今はもう感じていないフリなんてしなくていい。
 アシルがわたしの体を愛でていくのを悦びと共に受け入れた。




 くちゅくちゅと水音がわたしの足の間から聞こえてくる。
 アシルの指が動く度に、快楽の波に浚われて腰が跳ねた。

「あっ、あんっ、あんっ」

 さっきから喘ぐことしかできていない。
 ちゅうっと乳首が吸われて、きゅうっと奥が締まると、また愛液が泉を潤わせて、彼の指を濡らした。
 視界の端に、赤黒い肉の棒が雄々しく起立しているのが見える。
 初めて見た時は恐怖の対象でしかなかったそれを、今はすごく欲しいと思っている。

「怖くないか?」
「平気、不思議ね。あの時のことを思い出しても、もう少しも怖くない。同じ物で、あなたも同じ人なのに、はしたないのはわかっているのに早く入れて欲しいって思ってるの」
「積んだ経験は無駄にはなってねえな。これからは気持ちいいことしかしないからな」

 濡れた秘部に肉棒が触れた。
 入り口を擦られて、それだけで達してしまう。

「まだ先っぽ入れただけだぞ、お楽しみはこれからだ」

 ゆっくりとした動きで侵入してきた彼は、すぐに奥には向かわずに、膣内を往復しながら、わたしの中を少しずつ進んでいく。
 仰向けのわたしに、アシルは覆い被さっていた。
 わたしの膝を抱えて持ち上げて、剛直を突き入れている。

 見上げれば、恍惚とした表情が目に入る。
 気持ちいいんだ。
 わたしも気持ちいい。
 アシルはわたしがどうすれば気持ちよく感じるのか知り尽くしてる。
 昔はわたしを嬲るための悪趣味な意地悪だとしか思っていなかったけど、あなたができる愛情表現はそれぐらいしかなかったのだと今ならわかる。

「アシル、大好き」

 抱きついて囁けば、蕩けるような笑顔になった。
 きっとわたしも同じ顔をしている。
 初体験のやり直し。
 うまくできたんじゃないかしら。




「はぁ、あんっ、やぁ、ああんっ」

 幸せを感じつつ、和やかに終わった一回目の後、アシルは萎えることなく営みを再開した。
 彼はわたしをうつ伏せにして、再び固く起ち上がった肉棒で蹂躙している。
 拒むこともできたのに、流されるまま受け入れて、一緒に腰を振っていた。
 気づいてなかったけど、わたしも溜まっていたのかも。

「あっ、そこいいっ、もっとぉ!」

 わたしも理性をかなぐり捨てて、欲望の虜になってしまっている。
 気持ち良い声を出しているからか、アシルはますますやる気になってしまう。

「すげぇ締め付け。喘ぎ声も可愛い、もっと聞かせろ」

 彼はそう言って、突かれる度に揺れ動いている乳房を掴むと、絶妙な力加減で揉みしだいた。
 また体が高まっていく。

「顔見ながらイキたい。座るから一旦抜くぞ」

 わたしの体を満たしていた肉棒を抜かれて、切ないため息が溢れた。
 体の奥が疼いて、蜜に濡れた割れ目にそれが戻ってくるのが待ち遠しい。
 抱きしめられて一つになりたい。
 頭の中に浮かぶのはそれだけ。

 体を起こしたアシルはわたしを招いて、自分を跨ぐようにと促した。
 彼の足の間にある欲望は、まだ勢いを失ってはいなくて、そそり立っていた。

「ほら、そんな物欲しそうな顔で見てないで、もう一回入れてやってくれよ」

 自分から入れるなんて、恥ずかしい。
 理性ではそう思っても、わたしの体は欲望に忠実に従い、彼の上に跨がって腰を落としていく。
 逞しい腕がわたしを支えて、交わるために導いていく。
 
「ああんっ」

 いい、気持ちいい。
 腰を動かすたびに擦れ合って、快感が体の奥まで貫いて痺れる。
 正面から抱き合っているから、胸の膨らみが彼の胸板に押しつけられて、胸の蕾が擦られて、新たな快感がわたしをさらに翻弄した。

「レリア、愛してる。気持ちいいか?」
「うん、いい。好き、イッちゃう、あっ、あんっ」

 囁きですら、快楽を誘う。
 感じる度に締め付けていたら、アシルの息が荒くなってきて、律動が早くなっていく。
 昂ぶっていく体の熱を一緒に感じる中で、わたし達は絶頂と射精を同時に迎えた。




 精も根も尽き果てて、ぐったりと体を横たえた。
 背後からアシルにすっぽりと抱きしめられる形で寄り添い合っている。
 わたしは抱きしめられると安心するけど、アシルは抱いていると落ち着くらしい。
 互いの需要と供給が一致して、わたし達はくっついている。

「そろそろ、どんな家を建てるか考えてもいいわね。もちろん、あなたと住む家よ。贈り物じゃない、わたし達が帰る家が欲しいの」
「いいな、姫も大人になって手が離れて、四六時中見守る必要もなくなったしな。その前に婚約からだ。一緒に指輪、選びに行こうな」

 婚約に結婚式と、アシルは手順を守って求婚をしてくれる。
 想像するだけで楽しくなってきた。

「ええ、結婚式をしたら、みんな来てくれるかしら」
「この城使って祝われそうだぞ。領主夫妻を筆頭に、侍女に騎士に大勢だ。アーテスの王都からだって来るやついるだろ。お前、人気あるからな」
「あなたもお友達がたくさんできたでしょう、すっかり馴染んでいるじゃない」
「脳筋過ぎてイカれてるけど、気持ちのいい連中ばっかりだよ。面倒な社交辞令とかいらねえし、オレの性に合ってる」

 ネレシアで騎士団が結成され、アシルは副団長に任命された。
 ここに来てから一緒に鍛錬をしたり、手合わせをするうちに、こちらの兵にも認められて、仲間意識も芽生えて受け入れられたみたい。

 こうして語り合っていると、望まぬ形で純潔を奪われ、幸せな未来も全て失ったと絶望したかつての自分を思い出す。
 真っ黒に塗りつぶされたはずの未来を、今はこうして明るい気持ちで思い描いている。
 わたしから奪ってばかりだったとアシルは悔やんでいたけど、彼は奪ったものを全て返してくれた。
 そして、それ以上にわたしに幸せを与えてくれる。

 わたしを捕らえていた憎しみの檻はもうどこにもない。
 泣いて逃げることしかできなかったわたしも消えた。
 ここにいるのはわたしの最愛の人。
 あなたを愛することができて、わたしは幸せよ。


END



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