◇ 3 ◇
『先生……やはり僕は貴方の傍に居て良い人間ではないようです。僕がいる限り、あの悪霊は先生にも害を及ぼします………』
部屋の端まで飛んでいった手帳を拾ったフランツが、力のない笑みを浮かべながらそう書き込んでルイに手渡した。
『今まで本当に有り難う御座いました……出来ればずっと先生の傍でお世話をさせて頂きたかったですが…もう叶わぬ夢だったと思って諦めます。お世話になりっぱなしの上、こんな形でお別れするのをどうか許して下さい。』
更にそう綴り、フランツは静かに立ち上がった。
名残惜しそうに室内をゆっくり見渡すと、呆然としているルイに向き直り深々と頭を下げてから扉に向かって歩き出した。
静かに腕を伸ばしてノブに手を掛けた。
此処を開ければ、今までの夢のように幸せな生活は終わる。
神のように憧れ、畏怖していた大作曲家の傍にまるで家族のように居ることが出来た、儚い夢のような時間。
今このノブを少し捻っただけで、魔法は全て解けるのだ。
一旦俯いてしまった顔を精一杯の気力で持ち上げ、天を仰いだ。そうしていないと涙が溢れてきそうだった。
出来るだけゆっくりと息を吸い、そして静かに吐き出した。
ノブを握る手に力を篭め、音もなく捻る。
扉は静かに開き、すぐ傍には現実へと繋がる階下への階段が見えていた。
一歩、震える足を踏み出す。そしてまた一歩。
後は扉を閉めればいい。振り返ってルイの顔を見てしまうとそのまま動けなくなりそうだから…そっと後ろ手で。
がたがたとみっともなく震える手で扉を閉めようとしたその瞬間、とてつもない勢いで扉が再び開かれた。
まだノブから手を離していなかったフランツはその勢いで二、三歩よろめいて後ずさり、今必死で出たばかりの室内に逆戻りしていた。
背後にはルイが立っていた。だがフランツは振り返ろうとしない。今ここで振り返ってはようやく決意した事が全て無に帰してしまうことを彼は知っていた。
開かれたままの扉にもう一度踏み出そうとした時、ルイの長い腕が伸びてきてフランツの細い肩をがっしりと掴み、そのまま力を篭めてくる。
「…………行くな。」
静かな口調でルイが呟いた。
「私を置いていくな…………」
その声は僅かに震えていた。
フランツは嬉しさと戸惑いの中で必死に自我を保とうと葛藤していた。
そして何とか自分の中の決意を守るべく、肩に置かれたルイの指先にそっと触れて離そうと試みる。
だがルイの力は緩められるどころか、益々強くなる一方だった。
「………止して下さい……先生。こんな事されたら………二度と出ていけなくなるじゃないですか…………」
聞こえる筈がないと解っていて、フランツはあえて言葉を口にする。そうでもないと挫けてしまいそうだった。
「僕を解放して下さい……貴方から。じゃないともう…………自分の気持ちが保てなくなります。」
必死に上を向き、溢れそうになる涙を懸命に堪えた。
涙が零れてしまった時、自分の不埒な想いも止められずに溢れそうになるような気がして。
そんな事を知らないルイの指先はがっしりと肩に食い込んだまま、力づくでその動きを止めようとしてくる。
懸命に振り解こうと身を捩ったフランツの身体は、今度は長い腕ですっぽり背後から抱きすくめられた。
背中に当てられたルイの胸板からは温かい温もりと、今にも爆発してしまいそうな勢いの心臓の鼓動が感じられる。首筋にはルイの唇がぴったりと押し当てられ、少々硬めの癖毛がフランツの頬を擽る。
「……………聞こえなかったのか。行くなと言ってるんだ、フランツ!」
抱き締めてくる腕には益々力が篭められていた。
何とかこの腕の中から抜け出そうと足掻き始めたフランツが必死になって上半身を捻ると、自然にルイの顔がすぐ近くになってしまった。
慌てて顔を逸らそうと試みたが、真っ直ぐに自分を見つめているルイの視線に捉えられたように身動きが出来なくなる。
「先生…っ……」
その続きを語ろうとした唇が不意に熱いもので塞がれた。
ルイの唇が押し当てられていた。
ほんの僅かの間の出来事だったが、フランツには永遠にも思われる一瞬だった。
唇がそっと離れ、もう一度同じ言葉が綴られた。
「私を置いていかないでくれ……フランツ。」
ルイの瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいる。そしてもう一度ゆっくり唇がフランツの唇に近づき、そっと重ねられた。
今度は長くゆっくりと味わうように、深く重ねてくる。
それらをフランツはまるで夢でも見ているかのように、ただ為す術もなく受け入れていた。
そう、これはもしかしたら夢なのかもしれない。
そんな事を思いながらフランツは怖ず怖ずとルイの背中に腕を回した。
幸せな夢ならもう少し醒めないで欲しい。
フランツの頬に雫が一筋、音もなく伝って流れていった。
何度も何度も唇が重ね合わされ、やがて抱き締めていた腕がフランツの細い身体を弄ぐるかのように動き始める。フランツは自分の身の上に何が起きているのか解らずに身体を強張らせると、慌てて動きが止まった。
「すまない、フランツ…………私も君に言わなければいけないことがある。」
ルイが再び力強く抱き締めてきながら、耳元で囁く。
「君が好きだ……ずっとそう思っていた。だが伝えるつもりは無かった。親子ほど年の離れた、ましてや息子の友人である君にこんな感情を抱くことは罪悪だと………解っていたつもりだった。……だが………」
ルイの指先に信じられない程の力が篭められた。
「だが……今ここで君を失うことは………私には到底耐えられんのだ。」
フランツの身体を抱き締めている腕が小刻みに震える。
「何と思われても良い………気狂いの沙汰だと蔑まれても良い。だが頼むから……傍にいてくれないか。」
ルイはそれだけ言うとまるでしがみつくように腕の中の華奢な身体を抱き締めてきた。
熱い腕の中で、フランツはまだこれが本当に現実の出来事なのかどうかを見極められずにいる。
ルイの言葉はあまりにも衝撃的で、それが本当の事なのかどうか疑わずにはいられなかった。
どう考えても、まさかルイが自分を好きだったなどと……信じられそうにない。
ルイはあくまでも雲の上の存在であって、自分が傍に居られることなど奇跡中の奇跡としか言い様がない。
ましてや今までの経緯を考えれば多少好意を持たれていたとしても、つい今しがたの告白で何も彼も全てが終わる筈―――フランツにはそうとしか思えない。
だが現実はこうしてルイに抱き締められている。これはやはり自分の願望が見せた夢なのでは……そんな風に逡巡してしまう。
けれども心の何処かで、この腕の温もりと抱き締めてくる力強さは本物だと信じたかった。
意を決してフランツはそっと唇を動かした。ルイが読みとりやすいように、ゆっくりと。
「……信じて…いいんでしょうか。先生が僕のことを想っていていてくれいたなんて……」
その続きがどうしても言えない。自分の気持ちを伝えようと思っていても、胸の奥に何かが詰まったようになってしまっていた。
そんなフランツの頬にそっとルイが大きな掌で触れた。
「信じてくれないのであればそれでいい。だが私の気持ちはいつまでも変わらない。」
温かな掌が金茶色の前髪を掻き上げ、白い額に唇を押し当てた。
「こうして君をこの腕に抱いているだけで、想いが胸の内から溢れてきて……どうしていいか解らなくなる。君を愛しいと思う気持ちが止められなくなってしまう。」
ルイはどこか寂しげな表情でフランツを見つめていた。
真っ直ぐな瞳がフランツを捉えて離さない。
何か言おうとした唇が僅かに震え、フランツはどうしていいか解らないまま自分の両の腕をルイの首に回した。
背の高いルイにぶら下がるように抱きつくと、震える唇をルイの唇にそっと寄せた。
何とも不器用な口付けだった。
柔らかな唇を数回ゆっくりと重ね合わせてから、ほんの少し離す。
そして小さな声で呟いた。「……貴方が好きです。」と。
囁きは聞こえなくとも唇の動きはしっかりとルイの目に焼き付き、ルイは驚きのあまり目を見開いていた。
「自分の言っていることが解っているのか? フランツ。………フランツ!?」
今度はルイが衝撃を受ける番だった。信じられないといった驚愕の表情を浮かべて、まじまじと腕の中の若い作曲家を見つめた。
フランツは泣きそうな顔をしながら、うっすらと笑みを浮かべていた。
このベッドに横たわるのは三回目だった。
一度目も二度目も意識を無くしていたからよくは覚えていなかった。気が付いたときは此処に寝かされていた。
そんな事を何となく思う。
今、自分の目の前にはルイの顔があった。上にのし掛かり、優しく髪を撫でながら唇を啄んでくる。
ほんの少し前、入り口に立ち竦んだままだったフランツをまるで女性にするかのように軽々と抱きかかえて運び、ここに降ろしたのだ。
気恥ずかしさと混乱でじたばたと暴れるフランツにルイは、ベッドに到達するまでの短い間に耳元で甘く囁いていた。
「……覚悟しておきなさい。私はもう自分の心を押し留めるタガなどとうに外れてしまった。絶対に君を逃すような事はしない。」
女性を扱うかのように丁重に抱え降ろすと、ルイはベッドの縁に腰を掛けながらもう一度フランツを見据えた。
「少々手荒いかもしれないが許してくれたまえ。今の私は君を手に入れることなら何でもする。たとえ君が嫌がろうと……もうこれ以上この想いを抑えることなど、出来はしないのだ。」
真っ直ぐに見つめる瞳はその言葉に嘘偽りがないことを語っていた。
そして最早フランツには逃げる術も無いことを。
反論する間もなくルイがのし掛かってきた。左手でフランツの手首を軽く押さえながらやや強引に唇を重ね、右手でフランツの髪の中に手を差し入れてくる。
ゆっくりと髪を梳かれながら、次第に口付けは甘さを帯びてきていた。
やがて薄く開いた唇の隙間に柔らかい舌がするりと滑り込んできて、生き物のように口中をねっとりと這い回り、フランツの舌を捉えた。
舌先で擽られ、あっと言う間に絡め取られる。
息が出来ない程に甘くて情熱的な口付けをされ、忘れていた官能の記憶が奥底から呼び覚まされるような気がした。
まだ少年の面影が残る頃に付き合っていた幾人かの女性との情事で覚えた快楽への本能的な欲求は、ここ数年身体の奥底でなりを潜めていた筈だった。
今それがルイの口付けによって呼び起こされ、むくむくと鎌首をもたげている。
抗う事も出来ず口中を犯されていく。舌先は自在に跳ね回り、歯列をなぞってはまたフランツの舌に絡み付いた。唾液までが絡み合い、時折いやらしい水音が響いた。
いつしかルイの両手はフランツの身体を弄ぐりだしていた。強引な手つきで華奢な身体のラインをなぞりながら情熱的に唇を貪る。
息苦しさに逃れようと藻掻いていたフランツにようやく気付いたルイが慌てて顔を離すと、唇と唇の間にぬらりと淫らに光る糸が現れた。
しっとりと濡れて光るフランツの唇に目を奪われながらも、ルイはそっと手を伸ばして胸元のタイに手を掛けた。
きちんと結ばれていたそれを指先で解くとしゅるしゅると衣擦れの音が響く。
まだ状況をあまり理解していないのか、それともとうに覚悟が出来ているのか……フランツはただ呆然とされるがままになっている。
タイを外し終えると今度は襟元に指先を伸ばした。
昨晩、酔って寝てしまったフランツの襟元に手を掛けた時の映像が頭の中で交錯した。手が届く筈ではなかった禁断の果実。
一晩でこんなにも状況が変わってしまった事に驚きながら、嬉しさを隠しきれ無かった。
期待と興奮に震える指が一つずつフランツの襟元の釦を外してゆく。
その度に少しずつはだけるシャツの下からは、まさに禁断の木の実としか言い様がない白く透き通る肌が姿を現した。
「……先生……あの………何を……」
フランツが困惑した表情で下からルイを見つめてきた。
どうやら状況を理解していない方だったようだ。自分の上に馬乗りになっているルイに戸惑いと少しばかりの恐怖を感じているらしい。
「泣いても止めてやらんから……いいね。」
そういって笑うルイの顔はいつものルイではなかった。目の奥をぎらつかせ、男の欲望に満ちた艶を含んでいる。
この時になってフランツはようやく事の次第を理解したのだった。
「せ…っ……先生…っ……………冗談ですよね? まさかそんな………僕相手に……………!?」
顔を引きつらせて問い掛けた唇を目で追ったルイが、更に淫靡な笑みを浮かべながら甘く囁く。
「だから最初に言っただろ? 覚悟しておけと。それにこんな綺麗な身体を見せられて、今更私が後に引けるとでも思ったかね?」
幾分楽しそうな口調でそう言うと、微かに震えるフランツの肌の上に唇を近付けた。
まずは首筋に一つ、軽いキスを落とす。それから耳たぶ、そして鎖骨。幾度かちゅっと音をたてて啄む。その度にフランツの身体には今まで経験したこともないような甘い疼きが沸き起こった。
音をたてて吸われる度、小さな痛みが身体に走る。だがそれはすぐに言葉では言い表せないような疼きに変わり、その度に身体がじわりと熱を持っていくようだった。
「綺麗な肌だね……フランツ。こんなにすべすべで肌理の細かい肌は見たことがない。」
ルイは掌で撫で回しながらうっとりと呟き、またそっと唇を近付けた。今度は舌先でちろちろと舐める。
生暖かくて柔らかいものが突然肌の上を這いずり回る感覚に、フランツは小さな悲鳴をあげた。
「せんせ…っ…………先生……………それ、いやです…っ…………止めて下さ…っ………………」
必死で叫ぶがもはやルイはフランツの唇など見てはいない。目の前の白い肌に夢中で唇を押し当てては舌先で舐め回している。
やがて胸元の二つの突起を交互に舐り始めた。薄赤く色づく小さな蕾の周りをゆっくりと円を描くように舐め、焦れたところでその中心にそっと触れた。
舌先でほんの少しつついただけでフランツは思わず声を上げてしまう。先程の疼きよりもより激しい疼きが身体を電気のように走り抜け、びくびくと身体を震わせてしまった。
「や……っ…………やめ………………せんせ……………」
上手く言葉が出てこない。自分でも信じられないような声を上げてしまう事に、フランツは泣きたくなった。
ルイに聞かれる心配が無いことだけが救いだが、自分の耳を塞ぐか口を塞ぐかしないと気恥ずかしさで頭がどうにかなりそうだった。
なんとかルイを引き剥がそうと両腕で頭を掴んでみたものの、どうしても力が入らずにむやみにルイの癖毛を掻き乱してしまう。そんな様子を時折楽しそうに見ながら、ルイは執拗にフランツの胸元を攻め立てた。
ぷちんと立った乳首は赤く色付き、ルイの唾液に塗れて光っている。舐められていない方も常に指の腹で容赦なく弄られ続け、痛いほどに凝っていた。
「……もう本当に…………止めて下さい……………」
フランツは自分の身体に起こっている如実な変化に恐怖すら抱いていた。
舐め回され続けているうち、どんどん自分の下半身に血が集まっていく感覚。それは今まで経験したことのない勢いでフランツの理性を奪おうとしている。
なんとかその流れに呑み込まれないようにと必死で足掻き始めたフランツだったが、ルイはそんな様子を見逃さなかった。
「………フランツ………」
優しい声でそっと囁きながら、右手を下半身へと伸ばしていた。素早くスラックスの釦を外し、中へと忍び込むと下着の上から目的のモノに触れてくる。
「あ…ッ……………」
びくんと身体を竦ませたフランツを上から見下ろしながら、ルイはその手の中にフランツの自身をそっと握り込んでみた。しっかりと反応して固くなりつつあるソレを掌でゆるくさすると、更に固く大きくなってくる。
「……………さ……わら……ないで…っ………」
哀願のような叫びを口にしたフランツに、ルイが薄く笑いながら答えた。
「触らなければ……君を気持ちよくしてあげられないよ、フランツ。せっかくこんなにも感じてくれているのに。」
指先で軽く引っ掻くように触るとベッドの上でフランツがびくびくと小さく震えていた。
そんな姿もまた愛しくて仕方がないといった顔で、ルイが微笑む。
下着の中から一旦右手を引き抜くと、ほっとしたのかフランツの身体が力が抜ける。ルイはすぐに身体を下にずらし、両脚をぐいっと大きく開かせて肩に担ぐようにして両手で抱えた。
あっと言う間に下半身の動きを制された挙げ句、大きく脚を開かされてしまったフランツが恥ずかしさに抜け出そうと足掻いたが、最早後の祭りも良いところだった。
即座にスラックスと下着を引きずりおろし、暴れるフランツを押さえつけながら剥ぎ取る。
シャツに袖を通しただけであとは何も身につけていない身体が目の前に現れると、思わずルイは感嘆の声を漏らした。華奢なだけに見えた身体にはしっかりとした筋肉が付き、腹から腰骨のラインなどは見惚れるほどに美しかった。
じっくりと眺めながらルイはその中心に息づき始めたフランツ自身にそっと顔を寄せてみる。程良く固さを持ち始めたそれの先端からはうっすらと透明な液がまとわりついていた。
「フランツ………可愛い私のフランツ。」
呪文のように囁きながら唇をゆっくり押し当てた。途端に組み敷いている白い身体がまるで痙攣でもしたようにびくっと跳ねる。
もう一度唇を押し当て、そっと舌を這わせた。
「………っ!?」
舌先はうっすらと絡み付いていた液をなぞるように動き始めていた。生暖かくてねっとりとしたものが生き物のようにぬめぬめと這い回っている。
今まで性器を舐め回される経験などした事がなかったフランツは、その焦れったいまでの甘い快楽にみっともないほど身体を震わせてしまった。
まるで女性にでもなってしまったかのような淫らな吐息を漏らす自分に困惑しながら。
ルイの舌先はゆっくりといやらしい動きで舐め上げては時折口付けを繰り返す。その度にフランツの自身はその先端からじわりと蜜を漏らし、綺麗に割れた腹筋の上を生々しい色合いに光らせている。
「フランツ………君は舐められるのが好きみたいだね………」
どこか遠い場所から聞こえてくるようなルイの言葉にふと正気を取り戻したフランツが、慌てて首を横に振った。
ルイはそんなフランツをじっと見つめながら、ふっと口許に笑みを浮かべる。
「……素直になってごらん。」
そう呟いた唇が今まで決して触れなかった先端部分に押し当てられる。
赤く光った長い舌がするりと伸びてきて、いまもまたじわりと蜜を溢れさせていた先端に触れた。垂れてくる蜜をそっと舌ですくい取ってから鈴口を割るように舐め上げると、今までよりもずっと強い疼きがフランツを捉えた。
「……せん………せ…いっ………………それは…………ッ…………」
泣きたくなるような甘い快楽がルイの舌先によってもたらされる事に、フランツは酷く混乱していた。
だがそんな混乱など吹き飛ぶような更なる快楽が立て続けにフランツに襲いかかってきたた。
今まで舐め回されていたそれが突然ルイの温かい口の中に呑み込まれていく。
「……………嘘…ぉ…っ………………」
くちゅ…と唾液が絡まる音をたてながら、ルイの顔がゆっくり上下していた。
「駄目……駄目です……先生!………こんな………の………だめ……ッ………………」
叫んでみたところで届くわけもなく、行為は続けられていく。
何とかルイを引き剥がそうと試みたが結果は前とほぼ変わらず、指先はただ虚しくルイの髪を掻き乱すだけだ。
フランツの身体がびくびくと震えた。一気に血液が逆流していくせいか頭がぼうっとなり、もう抗議の言葉を吐く余裕すらない。
再び理性が侵され、身体が本能のままにうち震える。
もはや目の前は真っ白でもう何も考えられなくなっていた。
一際大きく身体を反らせたフランツは、あっと言う間にルイの口の中に自分の精を吐き出しす。
ルイはその様子をうっとりと眺めながら、口の中のものを飲み下してぺろりと舌なめずりをしていた。