◇ 4 ◇
ふと我にかえり、顔から火が出るほどの恥ずかしさに襲われた。
両腕を交差させるように顔を覆ったまま呆然としている。つい先程までの身体が焼け付くような焦れったい感覚からようやく解放されたものの、正気に戻った今の自分の状況に混乱を隠せない。
どうにかこの状態から逃げようと身体を捩るが、相変わらずルイがかっちりと抱え込んだままフランツを見ていた。
「………先生……?」
何故解放して貰えないのか聞こうとルイの顔を見た途端、更に気恥ずかしさに襲われて思わず真っ赤になり、口ごもってしまった。
ルイはまだ微笑んでいる。その笑みの意味がフランツには解らなかった。
「フランツ。」
ルイの響きはとてつもなく優しかった。
「もう少しだけ……我慢してくれるね。」
困惑するフランツを後目にルイは再びすらりとした脚を抱え直し、ぐいっと尻を上に持ち上げた。
突然下半身が天を仰ぐような格好にされたフランツが両脚をばたばたさせたが、膝の裏側を手で押さえられ、更にはルイの肩に掛けられているのでもうどうにもならない。
「フランツ………大人しくして………」
ルイは両脚の付け根の更に奥まった場所にそっと顔を埋め、愛おしそうに唇を這わせた。
「…っ……先生!?……ちょっ………それも嫌です!………先生…………い…や…………あ…ッ……………」
ぴちゃぴちゃと音をたてて舐められ、フランツは半狂乱で叫ぶ。
先程よりもよりいやらしく這い回る舌先が唾液を纏いながらフランツの奥底を侵していく。
「……ん…っ……………ぁ…………あ…………」
今まで体験したことのない感覚がぞわりと押し寄せてきて、フランツは必死で抗おうとシーツを握り締めた。
最も恥ずべき場所を露わにされ、敬愛していた愛しい人間にそこを嬲られる恥辱。
この行為が何を意味しているのかようやく理解出来てくると、恐怖感もより募ってくる。
どうして良いか解らないまま、ただ固く目を閉じた。
「………怖いか?」
ルイが顔を上げ、フランツを見下ろした。閉じた目ををうっすら開けルイの顔を見上げた。その唇が唾液でぬらりと淫らに光っている。
「……泣かないでくれ、フランツ………」
ルイが右手を伸ばして眦から流れ落ちた涙を指の背で拭った。
その時になって初めて、フランツは自分が泣いていたことに気付いた。
「……すみません……先生………」
慌てて手の甲で目元を擦ると、ルイの手がフランツの頬に当てられた。掌の温もりに感情が高ぶってきて、また涙が溢れそうになるのを堪え、ルイの手の上に自分の手を重ねた。
「もう先生と呼ぶのはよしなさい。」
ルイが悲しそうな顔をする。
「……ルイと…呼んでくれないか。」
頬を優しく撫でながら囁いた。
フランツが小さく頷くと、ルイも満足げに微笑んだ。
頬を撫でていた右手がすっと離れたかと思うと、フランツの唇をするりと割って長い指が忍び込んできた。
掻き回すようにして唾液を絡ませ、口の中をいやらしく陵辱する。
たっぷり唾液を纏ったルイの指が口許から引き抜かれ、先程まで舌先で唾液を塗り込められていた場所に音もなく宛われた。
「………フランツ、力を抜きなさい。」
そう言ったかと思うとつぷっ…と小さな音をたてて指が入り口に入り込んだ。
「……っ…………」
声にならない叫び声をあげるが、指は抜かれるどころかより一層奥へと穿たれていく。
暫くじっと動かさずにフランツの様子を見ていたルイは、頃合いを見てそっと指先を動かした。
ゆっくりゆっくりと掻き回しながら、その場所を慣らしていく。なるべく痛くないように、最新の注意を払いながら。
フランツはといえば訳の解らない感覚に翻弄されながら、必死でまたシーツを握り締めていた。
何ともいえない圧迫感が下腹部に押し寄せてきて、泣きたい気持ちだった。
そのくせ気持ちが悪いだけではなく、どこか切なくなるような不思議な疼きが身体の奥底から沸き上がってきて、時折意図しない声を漏らしてしまう。
相変わらず女性のように喘いでしまう自分に嫌悪を感じながら、必死でこの行為が終わるのを待っていた。
勿論これがまだほんの序の口であることなど、思いも至らずに。
最初は一本だった指が次第に増やされると、その動きも徐々に激しさを増していった。
時折指先がわざと内壁を引っ掻くように擦る度、フランツの身体は敏感に反応していた。
掻き回され、幾度か引っかかれるうちに突然フランツが小さな悲鳴をあげて身体を痙攣させた。
「……ひ…っ……………いや…ッ…………何だか………………や……ぁ……あ…ッ……」
身体を反らせ、シーツを握り締めていた両の手がベッドの上を藻掻くように彷徨っている。
絶頂間にも似た、それでいて焦れったいような切ない感覚がフランツを捉えたまま離さない。
気が狂うような悦楽にびくびくと身体がみっともなく震えた。
「………此処が良いんだね。」
フランツが懸命に首を横に振るが、ルイはやんわりとその場所を弄ぶ。
いつしかフランツの自身は固さを取り戻し、またもや蜜を垂らしてはその白い肌を濡らしていた。
それをぺろりと舌で舐めてからようやくルイの右手の動きが止まり、ゆっくりと奥底から引き抜かれた。
内蔵を引き出されるような感覚に身を強張らせたフランツだったが、ようやく終わったことにほっと安堵していた。
肩に掛けられていた両脚がベッドの上に降ろされたので、ぐったりとベッドの上に顔を押し付けた。
もう何が何だか解らなかった。自分が今何をしているのか、何をされているのかも全く解らない。ただ混乱し、ルイにされるがまま身を任せていただけだった。
そんなフランツの耳に衣擦れの音が聞こえてきて、うっすらと目を開けてみる。
足元にいるルイが身につけているものを脱ぎ捨てたところだった。
流石にびっくりして跳ね起きたフランツの目の前に、一糸纏わぬ姿で泰然と笑むルイが今まさにのし掛からんとしているところだった。
「せっ……先生!?」
そう綴られた唇にルイの人差し指が宛われ、耳元で囁かれる。
「………ルイだ。」
瞼に口付けを落とされる。
「ル………イ……」
怖ず怖ずとその名を口にした。おそれ多くもベートーヴェンの名を呼び捨てにする日が来るとは、思ってもみなかった。
「そうだ。ルイだ。」
満足げに頷きながら袖だけ通されていたフランツのシャツを剥ぎ取り、長い腕でぎゅっと抱き締めてきた。
素肌が触れ合い、温かなぬくもりがその肌を通して身体の奥にまで染み通りそうな感じだった。
「ルイ………」
愛しい者の名を呼びながら、フランツもその背に腕を巻き付ける。
そのまままた唇を貪り合っていると、ゆっくりとベッドの上に押し倒された。
「愛しいお前の全てを私が貰おう、フランツ。お前を……愛している。」
開いた脚の間にルイの身体が割り込むと、腹の辺りに固く屹立したものが当たっていた。
今すぐにでも繋がりたくて充血しているそれに気付いたフランツは、意を決して自分の右手でそっと触れてみた。
固く荒々しくそそり勃つルイの分身をやさしく撫で回しながら、自らルイの唇を求めた。舌先と舌先が絡み合い、互いの唾液が混じり合う。
泣きたいような感情の昂ぶりが再び沸き起こるが、フランツはそれをぐっと抑えた。
ルイが愛しくてたまらなかった。
自ら大きく脚を開き、誘い込むように右手で握ったルイのものを奥底に宛う。
絡ませていた舌を離し、フランツは泣きそうになるのを必死に呑み込みながら笑顔を作ってゆっくりと言葉を綴った。
「ルイ………私を愛して下さい。貴方の思うままに……」
ルイがフランツを見つめる。その表情は笑っているとも泣いているとも取れるような不思議な色合いを含んでいて、ますますフランツの感情を揺さぶる。
ルイがゆっくりと唇に口付けた。愛おしむように優しく唇を重ねると、上体を起こしてフランツの膝の裏に両腕を通す。
少し前までその唇と指先で愛し慈しんでいた場所に改めて自らの雄を押し当て、先走る液を塗りつける。
「少し力を抜いて……フランツ。」
そう言うとゆっくりゆっくりフランツの中に押し入った。
「……ぅ………っ……………あ…………ああ………ッ………………」
身体が引き裂かれそうな痛みがフランツを襲った。充分に慣らされていたとはいえ、初めて異物を受け入れる痛みと圧迫感はやはりどうすることも出来ない。
辛そうなフランツを気遣いながらもルイは黙々と腰を動かした。なるべく負担をかけないように本当にゆっくり時間をかけ、無意識に逃げようとする細腰を掴んでは少しずつ中へと侵入していく。
悲鳴が掠れてしまう頃、ルイがようやくほっと息を吐いた。
「………入ったよ、フランツ。」
痛みのあまり固く目を瞑っていたフランツがそっと目を開けてみると、そこには確かにしっかりと繋がった自分たちの下半身があった。
眼鏡をかけたままだったので、固くそそり勃ったルイのものが自分の中に根本まで収まっている様子がはっきりと見えてしまう。
恥ずかしくて顔を逸らし真っ赤になっていると、ルイがゆっくりと腰を使い出し挿れを繰り返した。
「……っ…く………っ…………ん……………」
くちゅ…ぐちゅ……と、水音が響く。ルイが動くたび穿たれたものが出入りし、卑猥な音をたてていた。
相変わらず痛みはあるが、少しは慣れたのか鈍い痛みに変わっていた。
それでも苦しくてフランツはルイの肩口に縋り付き、無意識に爪を立てる。突き上げられる度に無数のみみず腫れを爪先で描き出しながら、フランツは知らず知らずのうちに喘ぎ声を漏らした。
いつしか痛みの中に違う感覚が見え隠れし始め、時折びくっと身体を震わせる。
ルイのもので奥底まで突き上げられる度に、口からは善がり声のようなものまで漏れてしまう。
必死に縋り付きながら、フランツは薔薇色の頬を更に紅潮させて唇を噛む。だがやはり動かれる度に自然と唇が開いてしまい、吐息と共に声が出てしまう。
痛いのに……何故か奥底が疼いてきて焦れったい感覚に翻弄される感覚。
今まさにフランツは悦楽の入り口を覗き始めたところだった。
最初は慎重に抽挿を繰り返していたルイだったが、気が付くと夢中でフランツを突き上げていた。
楔を穿つ度に身体中がうち震えるような喜悦に襲われ、一心不乱にフランツを犯し続けている。
腕の中の愛しき者は痛みを堪えているのか唇を噛んで耐えているのだが、腰を使うたびにその唇は薄く開き、何やら声を上げているようだった。
自分でも可哀相な事をしていると重々解りきっている。本来受け入れるべきでは無い場所に無理矢理挿入しているのだから。
だが理性では割り切れない感情が、ルイを突き動かしていた。
一つになりたい。
相手を求め、乞い、同じ喜悦に堕ちていきたいと心から欲していた。
腕の中のフランツはしどけない顔でルイに必死に縋り付いてくる。二の腕や肩口に無意識に爪を立てながら。
形の良い赤い唇の端からは時折うっすらと光る唾液がしずくとなって滴り落ち、そんな様は益々ルイの中の欲望を煽り立てた。
フランツが少しでも快楽を覚えうることが出来るよう、なるべく長く繋がっているつもりだったがこんな顔をされて抱きつかれては散々我慢していた絶頂への欲求に歯止めが利かなくなってくる。
脂汗を垂らしながら持ちこたえようと努力するものの、どうしても本能的な欲求に敵いそうになかった。
仕方がなくルイは身体の下のフランツを抱え上げ、挿入したまま膝の上に乗せた。
いきなり持ち上げられたのかフランツは目をきょとんとさせていたが、腰を掴み下から揺さぶり上げるとその長く白い腕を首や背中に絡ませて必死に縋り付いてきた。
今までよりもずっと激しく突き上げながら、顔のすぐ傍にあるフランツの耳にそっと囁きかけた。
「………お前の中に出してもいいか?」
フランツは目に涙を滲ませながら、啄むような口付けを唇に落とした。
その口付けが合図になり、ルイはより激しくフランツの中へと入り込んではまた出ていく事を繰り返した。
フランツの中は狭く時折ひくひくと蠢いていて、気を抜くとあっと言う間に絶頂間が襲ってくる。
精一杯の想いを篭めて奥まで突き上げた。
指で弄って反応が良かったあの場所を目がけながら。
程なくルイの呻き声がフランツの耳元で響き、ルイはフランツの中で射精していた。
達した充足感に満たされながらも、ルイはまだ下半身に重く残る飢餓感にも似た欲望を感じていた。
――――まだ欲しい。まだ足りない。
そんな焦燥感が消えない。勿論自分の雄の部分も張りと固さがまだ残っている。
注ぎ込んだ液体がじわりと垂れてくる中、ルイは腕の中で脱力しているフランツをゆるく突き上げ始めた。
「……え…ちょっ………ちょっと待って…………ルイ…………ルイ!?」
てっきりこれで終わったと思っていたフランツが慌ててルイの顔を覗き込むと、その顔は嫣然としている。
「すまん。お前があまりにも可愛くて……まだ全然、し足りないようだ。その証拠にちっとも昂ぶりが収まらん。」
「……うそ…っ……………………………ぁ………………ッ………………」
ぐいっと強く穿たれてフランツがびくりと身体を反らした。綺麗に反った胸元の蕾が赤く凝っている。
ルイはそれに舌を這わせ、余計に跳ねる身体の反応を楽しんだ。
「………少しは感じてくれていると思っていいのかな?」
唇で啄みながら規則的に揺らし続ける。フランツは胸元に吸い付いたルイの頭を両手で抱え、癖の強いカールのかかった髪の中に指を彷徨わせては甘い声で啼いた。
ルイに深く突き上げられるたびもどかしくて切ないような疼きが電気のように走り抜けていく。
あと少しで絶頂に達しそうかと思えば、突然奈落の底に突き放されるかのような何とも言えない焦れったさがフランツのなけなしの理性を侵していった。
「………気持ち………いいです………………」
上気した顔をルイに近付け、フランツの唇がそう綴る。
ルイの顔に満面の笑みが溢れた。
再び唇を重ねて舌を絡め、唾液を吸い合いながら肌が触れ合う淫らな音を響かせた。
ルイの胸元の辺りにフランツの屹立したものが微かに触れて揺れていた。
口の中で達した後は殆ど触れられずにいたそれが自らの力で固さを取り戻して充血し始めている事実に、ルイはフランツがちゃんと自分を感じてくれているのだと感じ取った。言い様のない嬉しさが湧きあがる。
――――もっと欲しい。そしてイかせたい。
そんな欲望が止め処もなく溢れてきて、ルイはゆっくりフランツの中から白い液体にそぼ濡れた自身を引き抜いた。そのまま優しく抱え降ろしベッドに横たえる。
突然の事に困惑するフランツだったが、汗で額に張り付いた前髪を長い指で掻き上げられて口付けを一つ落とされると、蕩けるような表情でルイを見上げた。
今度は唇にもう一つ口付けてから細腰を両手で掴み、くるりとひっくり返して俯せにさせる。
「………な…に……?」
四つん這いにさせられたフランツがそろそろと後ろを向いてルイを見た。ルイは相変わらず泰然としながらフランツの上に馬乗りになった。
ぐっと締め付けられるような圧迫感の後、再びルイが中に押し入ってきたのを如実に感じて、フランツは呻いた。
「………く…っ…………は………ぁ…………ん…ッ…………」
近くにあった枕を思わず手繰り寄せて抱きつき、再度襲いかかってく感覚に堪える。
ぐいぐいと抽挿を繰り返されると、直前までの甘い疼きがすぐに蘇ってきた。
枕に顔を埋めながら腰だけを突き出してルイの雄を受け止めながら、その動きに合わせて甘い声があがる。
下半身の結合部分からはぐちゅぐちゅと淫らな音が響く。少し前に中に放たれたルイの精液が滴り落ち、中では潤滑剤替わりになっている。
そのせいかかなり奥まで突き上げられてしまう。
指先で弄られて感じてしまった部分を容易に刺激するのか、フランツは時折しなやかな身体を仰け反られては嬌声を上げた。
膝の上に抱えられていたときには怖ず怖ずと天を仰ごうとしていたフランツ自身が、今度は張りを保ったままシーツに当たり、突き上げられて感じてしまうたびにだらだらと透明の蜜をその先端から溢れ出させて丸い染みを作っている。
「………ル……イ……………もう……………駄目……………」
何度かその言葉を口にするが、背後から攻め立ててくるルイにはその口許が見えようもない。
頭の中はもうイく事で占められ、ただ喜悦に身を震わせるばかりのフランツが無意識に自分の右手を下半身に這わせた。
いきり勃って絶頂に達しそうでそれも叶わない自らの自身に指を絡ませたところで、上から大きな手で押さえ込まれた。
「………まだ駄目だ。」
右の手の甲を掴まれてそのままシーツの上に置かれ、上から抑え込まれる。
フランツは気が狂いそうになりながら叫ぶが、やはりルイには聞こえはしない。
時折背中に口付けを落とされながら、背後から情熱的に中を抉られ続け、口からは悲鳴とも喘ぎともつかない声が駄々漏れになる。
抱え込んだまくらが掛けっぱなしだった眼鏡を押し付け、鼻の付け根がずきずきと痛んだ。
声をあげっぱなしなので喉がからからになり、声はどんどん掠れていく。
何とか逃げ出そうと右腕を動かすが、上から抑え込む腕は頑として動きはしない。それどころかしっかりと握り締めてくる。
何も彼もがギリギリだった。
意識が吹っ飛びそうになる直前、ルイが荒々しい呼吸のまま動きを止めた。
背中に感じていたルイの重さがふっと消え、あっと言う間に喪失感にも似た切なさに襲われたフランツだったが、再び腰を掴まれて仰向けにされた。
「………やはり顔が見えないのは、味気ない。」
そう言って上に覆い被さってくるルイを全身で受け止める為、フランツは両腕を広げた。
首筋や耳たぶを舐め上げられ、柔らかな唇の愛撫を受けながら、ルイの背中に腕を回して抱きついた。決して筋肉質ではないが、綺麗な筋肉が付いた胸板や背中。
思う存分縋り付いてその腕の中にすっぽりと収まると、汗の匂いに混じったルイの匂いに包まれた。
まるで媚薬のような香りに包まれ、フランツは大きく脚を開いてルイの身体を受け入れる。再び押し入ってきた侵略者は、もはや何の苦もなく動くことが出来た。
激しくリズミカルに突き上げられ、フランツはその動きに合わせてまた声を漏らしていた。
そんな様子をルイが何とも言えない征服者の顔で見つめ続ける。
自らに犯され、善がり声をあげているであろう愛しき者の痴態を。
「フランツ………私の可愛いフランツ………」
ルイは汗で頬に張り付いた金茶色の髪を指先で掻き上げながら愛しげに囁いた。
フランツがルイを見上げながら、その赤く色づいた唇で言葉を綴る。「……ルイ」と。
「もっと呼んでくれ。私の名を。」
フランツが再びその名を綴る。苦しげな吐息の合間に。
ルイは規則的に打ち付けながら、小さく呟いた。
「…………聞こえるよ、フランツ。お前の声が。」
フランツの白い指がルイの頬を掴み、小さく口付けをする。
「………ル……イ…………」
切れ切れに綴られる言葉を満足げに見ながら、ルイも口付けを返す。
いつしかその頬にひとしずく、涙が伝った。
「ちゃんと聞こえる…………私の心に。お前が呼ぶ私の名が………」
頬から顎に伝い落ちたしずくを舌先でフランツが舐めてすくい取り、そのまま小さく笑った。
「………貴方に会えて………良かった………」
フランツの言葉が綴り終わるか終わらないかのうちに、また口付けをされた。
今度は舌先を絡め、荒々しく貪る。
規則正しかった腰の動きは気が付けば狂ったように打ち込まれていた。
ルイは右手をそっと下半身で息づいたまま放置されているフランツのものに這わせ、親指の腹でゆるゆると先端をさする。
溢れていた蜜が指に絡まり、小さな水音が響いた。
「……っ……や……あ…ッ……………」
フランツが身を震わせながらルイにしがみついた。正確に打ち付けられる刺激と直接自身に加えられた愛撫で、限界寸前のようだ。
ルイも時折苦しげな吐息を漏らしながら、更に激しく中を抉る。
背中にぴりぴりとした痛みを感じながら左手で強くフランツを抱き締め、同じ絶頂を目指した。
「………ルイ……ッ…………」
ぎりっと一際強い力で爪を立てられ、フランツが身体を反らせて硬直した。
ルイも大きく息を吐きながら、動きを止める。
大きな開放感に包まれながら、ルイは腕の中でぐったりと脱力していくフランツの瞼に何度も優しく口付けを繰り返していた。