幸福論
名前の意味が知りたい、ねぇ。 お猿坊やと八戒の遣り取りを物陰から聴いてて、柄にも無く 俺ともあろう者が考え込んじまった。 名前に意味があると額面通り受け取るとしようや。するってぇと 俺と兄貴…ここだけの話でいっちまえば王子様の御付のあの むさいオッサンね…に関して言えば、名前倒れも良い所だぜ。 『この安らぎ』に『清らかな悟り』だぜ?兄貴にはちとそう言う 部分が在るかも知れねぇが、俺の何処が清らかだって? …まあ、あの高ビーなオバハン(だよな?)が観音様だって ご時世だから、俺だって『清らか』に見えるかも知れんが… 考えるのは止そうか。 まあ、兄貴の名前ってのはもう一つ字があって…そっちに なると『安らぐのみ』って事になるらしい。 だーっ、余分な事を考え出しちまったじゃねぇかよ! それにしてもあの二人も極めつけの言葉を言ってくれるぜ。 『三蔵に聞いても教えてくれない』 ちょいと違うんだな、ニュアンスと言う奴が。 正確に言うんなら多分こうだ。 『そんな事程手前で考えて答えを見つけろ!』 じゃ、ねぇか、と俺は睨んでる。 あいつもきっと俺と同じく、幸福を最初から割り引いて 考えないと生きて来れなかった口だろうから。 母さんが死んだ上で、俺は生きてる。 光明三蔵の犠牲があって、玄奘三蔵は生き延びた。 母さんが俺を愛して生きていて、 光明三蔵が殺される事なく、其の元で健やかに 玄奘三蔵が修行に勤しんでいたら、 其れは其れなりに、俺達は幸福だったろう。 しかし、この出会いはあったんだろうか? 裏返していえば、俺達にとっての幸福って奴は、 この出会いを元に誰かが…? …けっ、馬鹿馬鹿しい。 下手な考え休むに似たり、ってね。 手前で無きゃ見つけられない答えだ何てのは百も承知しているさ。 只まだるっこしいだけでよ。 と、もひとつ。 あのオバハン以外に上からもう一つ視線を感じるってのは、 俺の思い過ごしか? 「あの河童…もう少し血の気を抜いてやろうか」 「図星指されて怒るんじゃないよ。あの子等にしてみればこちとら 生きた化石だ。好いじゃ無いか。まだ若く見られて」 「お前はいいだろうさ、地蔵よ。俺はまだ独身だ」 「こっちもそうだ。そんなアホな根拠をだすな。ところでな」 続けられようとした口調を不意の口付けで止める。 「残念でした。今3分の2は揃ってるから大丈夫なんだな」 「李塔天の頼み、断ったらしいな。何故だ?」 「一部始終を知っててそう聞くか?」 其の口調からは、彷徨える衆生に対しての慈悲の欠片さえ 消えている。 「平和主義のお前さんにしては珍しいと思っただけだが?」 「見損なって貰っちゃ困る。あの4人の彷徨いを長引かせてるのは 元はと言えばあの狒々爺だ。自分の尻拭いもしない馬鹿の頼みを 聞く義理は、流石の菩薩にも無いよ」 「自分の子供を犠牲にして、な」 「お前さんだって最愛の甥をあんな目に…」 「同情なら要らんぞ」 「いや、対菩薩用の慈悲だ。にしても、問答の好きな連中だねぇ」 地蔵菩薩は面白そうに、尚且つ慈悲深く悟浄を見ていた。 「ああいう連中こそ、幸せを掴めるんだがね」 (2000.12.30)
《コメント》 まだ終らんな、これは。それに余分な伏線まで出てきやがった。 外伝GETしたのは不味かったかなー。膨らんで仕方ない。 続きはもう年明けだけど…後2回になっても好い? (誰に聞いているんだろう)