煎餅屋・神代京介の毎日E

                    建築は、マラソンみたいに研究していっても
                   まずは大丈夫。
                    でも煎餅は焼きたてが美味いし…湿気った煎
                   餅なんて不味くてしょうがないだろう?
                    珈琲飲んで本と睨めっこも楽しいけど、焼き
                   立て煎餅のあの匂い…嵌ったな、我ながら。

                    京介が2足の草鞋…建築研究と煎餅屋…を履
                   く決心をしたのは大学院卒業の半年前。それま
                   でにも時々神代の実家を手伝う事はあった。煎
                   餅を焼いた事だってある。
                    率直に言えば日々の糧の為だ。でもどうせ得
                   るなら自分の好む仕事で得たい。それが神代京
                   介にとっては煎餅屋だった、という事だ。
                    修行は苦にはならなかった。職業選択が上手
                   く行ったらしい。独立も、予想より早く出来、
                   店番の合間に研究書を読むのが習慣となり、そ
                   れが又人を呼び込む。
                    いつしか「千草」はW大御用達の店になってい
                   た。何となれば図書館で調べものをするよりも
                   店主と話をした方がより多くの知識を得る事が
                   出来たからだ。

                    「煎餅屋学士、ねぇ。評判になってるよ」
                    「口の悪い人が冷やかしてるんじゃないです
                   か?」
                    「そう言う能しかない奴も居るけどね。概ね
                   はあんたに感心してるさ。世辞抜きでね」
                    「恐縮ですね。僕は只自分の我儘を通してし
                   まっただけですよ」
                    言いながら徐に煎餅を焼き始め、焼けた傍か
                   らたれに投げ込んでゆく。所謂「濡れ煎」とい
                   う奴である。20枚ほど作って袋に詰めて、レ
                   ジの下に隠す。
                    「香澄へのお持たせかえ?」
                    「今日は確か場所塞ぎな馬鹿が帰ってくるん
                   です。あいつ、これ結構好きだから」
                    「唐辛子の1枚ぐらい、混ぜてやったらどう
                   だい?」
                    「あいつ、結構苦手なんですよ。見掛けに似
                   合わず」
                    「本当、見掛けに似合わないねぇ」
                    「辛いのがすきなのは寧ろ香澄でね…僕が最
                   初に食べた奴でも『甘口だ』って言われました
                   し」
                    そして、開店時間は訪れるのである。


                   《コメント》
                     沙耶さんに出て貰った事でこのシリーズは
                     膨らみを持ちました。原典にも出て来て貰
                     いたいですね。神代教授の過去を暴露して
                     欲しいです。

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