煎餅屋・神代京介の毎日G

                    血の繋がりちゅうもんは、確りしとる様で
                   案外脆いもんや。
                    其の脆い絆を繋げるもんは何か言うたら…
                   さあ、なんやろなぁ。一言で言えたら大した
                   もんやで。

                    国松が東京に来てから5年になる。上京し
                   た理由は単に生活の為だ。私生児の息子の忘
                   れ形見を育てた祖母と死に別れ、双子の姉は
                   思い切り良く年上のご亭主に輿入れ。
                    血縁の祖父である門野貴邦との親交はあっ
                   たものの、お互い一緒に暮らすのはどうもピ
                   ンと来ない。
                    『このまま同居で、上手く行く思う?』
                    『…多分、無理だろうな』
                    意見の一致をみた上での結論。許嫁未満の
                   佐々木はるかの実家に転がり込んだという訳
                   だ。無論、はるかも一緒に。
                    其の実家、佐々木家が本来営んでいたのが
                   羅宇屋であり、煙草屋であった。祖母が器用
                   に煙管を扱っていた姿を好んでいた国松が家
                   業に魅入られ、後継ぎになるにはそう大した
                   時間は不要だった。

                    「相変わらず、此処の濡れ煎はええ味出し
                   てますなぁ」
                    無論、国松が口にしているのはさっき別に
                   取り置いた分ではない。話をしながら焼いて
                   遣った分だ。国松にとってはこれが時に昼飯
                   になり、罷り間違えば朝飯にもなる。
                    「最近、駒形には喰いに行ってるのか?」
                    「中々。昼間は店開けとかんとお客さんに
                   気の毒やし、夕飯に行く言うても、混みます
                   もん」
                    「でも、最初から良く喰ってなかったか?
                   あの…仲見世迷子の時」
                    「ああ、香澄が迷子ンなった時ね。そら、
                   腹減ってたし、美味かったし」
                    「地の連中意外は気味悪がるかと思って」
                    「其れ言うたら鰻も喰えませんやん?結構
                   何でも喰いますよ。今度仕事明けにでも味噌
                   カツ喰いに行きません?」
                    「ああ、名古屋のだろ?この辺に店、ある
                   のか?」
                    「なぜかW代前に出来ましてん。言ってみ
                   たらこれが結構いけますねん」
                    「か…蒼とは、行った?」
                    「何度か。好き嫌いなく育ちましたなぁ」
                    「場所塞ぎの馬鹿のお陰、かもな」
                    「何や、惚気に聞こえまっせ、其れ」
                    「……店、いいのか?」
                    「せやせや。忘れるとこやった。ほな、行
                   ってきまっさ」
                    最早昼下がりであった。


                    《コメント》
                      別の意味で落ちも山もありません。
                      本当に日常の一コマだけを綴ってます。
                      文中に出てくる「駒形」とは、
                      浅草にあります「駒形どぜう」の事。
                      2、3度喰いに行った事がありますが、
                      泥鰌鍋他泥鰌料理が本当に美味かった。
                      ガイドブックにも確り掲載されている筈です。

煎餅屋・神代京介の毎日H



煎餅屋・神代京介の毎日F

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル