へそぼし
03
それは見事なプロポーションであった。大きい目の乳房はトップレスのラメ入りブラジャーに支えられてそのボリュームをアピールしており、その先に飛び出たサクランボ大のピンク色した乳首には、両方に金色のリングが通されていた。身体のどこの部分も悩ましい曲線で構成されており、ライトの強いめの光を淡く反射しているきめの細かい肌はその触り心地の良さを強調しているかのようである。
しかし観客は、彼女のある部位に目を釘付けにしていた。
緊張のため肩で息をしているために上下に動く胸と、本当に必要最小限隠すべき部分しか隠していないレース地の白いスキャンティーの着けられた匂い立ちそうな腰の間。
それは、たいていの人の場合くぼみのある場所にグロテスクに屹立していた。
まるでスペルマが寒天状に固まったかのように、それは白く半透明で、時折プルプルと震えるその様子は、甘エビすら連想させる。しかしその大きさは、長大を自慢する男の勃起した肉茎以上あり、おそらくはそれ以上に誇らし気に反り返って力強く斜め前に伸びている。その根元には金色のリング二本が左右に通されている。
美しい女体に生える、醜い突起物。
しかし観客の目には、それが余りにも淫靡に映った。さっきからパンツの中できゅうくつそうにしている彼の肉棒が更に熱を持つ。
そんな彼の前で、レザースーツの女が啓子の臍の突起をぐっと握りしめる。
「あうっっんっ!」
それは性感帯をなぞられたかのような反応であった。びくんと身体を跳ね上がらせ、身体から一瞬力が抜けたかのようにふらついた。
「んふふ、ほらぁ、みんなあなたの臍チンポに夢中になってるわ……さ、あなたの口からちゃあんと説明するのよ。私もこれをシゴいて応援してあげる」
むつみの黒い手袋が、啓子の白い突起をゆっくりと、次第に早くシゴきはじめる。
啓子の顔は上気して赤く染まり、むずがゆそうに背筋をくねらせ、先端を硬く尖らせた乳房をふるふると震わせる。
「うあぁあ……ううん、この臍は……この臍チンポは、うああぉ、私の私のぉぁぁぁぁあ、私の一番、はぁはぁ、一番感じるところですぅ、ううううううんっ!」
「そうよね、だからまるでヘンタイみたいに身体ぴくぴくさせてるのよね。いいのよ、素直に反応して……気持ちいいでしょ? 嬉しいでしょ?」
「はひぃぃぃぃぃいっ、う、うれ、嬉しい――いいいい、ああらめ、だめ、イク、イキそおぉぉおおっ!」
目から涙をこぼし、さらに口の端からやらしく涎をこぼして、そばに娘がいるのも構わず啓子は絶叫する。
「イキそう? イキそうなの? ……ああ、その表情見てると私もイッちゃいそおぉ」
うっとりとした目でむつみは啓子の耳をちゅばちゅば湿っぽく吸って舐め、そのままその唇を啓子の口に寄せ、大胆に食らい付く。
女同士のディープキス。ステージ上での大胆なむつみの行動に、観客が鼻息を漏らすようにどよめく。さらに、むつみの舌が啓子の口の中で暴れているさまが、山を作っては消え、あるいはそれが這いずり回る啓子の頬から見て取れた。
ようやくむつみが口を離した時、彼女の突き出した舌先と啓子の口の間にたよりなく架かる唾の糸がきらりとライトに輝く。その妖しい光は、観客席の奥にいる人間にもしっかり見えた。
むつみは啓子の口の中で暴れさせたその舌で自分の唇をなめて、なお啓子の臍をシゴく手を止めない。
「いいわよ、イッちゃいなさい。……でもわかってるでしょ? このままじゃイケないのよね。……お股開いてぐしょぐしょのオマンコみんなに見てもらいましょ。それで、オナニーしてイキなさい」
「い、いやっ! ママっやめて!」
叫んだのは由宇であった。そのまま親に駆け寄ろうとしたが、さっき司会をやっていた男に腕を後ろに回して掴まれているために身動きができない。
「まだゆうちゃんの出番じゃないよ。欲求不満なら僕がいじってあげるよぉお」
男はねちっこい声で由宇の耳にささやいて軽く前歯で噛むと、すかさず片腕を彼女の身体の前に回し、若々しい乳房を手の平にすっぽり納めて揉みしだく。さらに彼は自分のごつい脚を彼女のすらりと伸びた素脚に絡ませて逃げ出せないようにした上で、もう一方の手の指で彼女の口の中の舌をつまむ。
自由になった両手で由宇は彼の手をのけようとするが、それもままならない。乳房を弄ぶ手は引き剥がそうとすると乳首をひねり、舌をいじくる手は引き抜かんばかりに指に力を入れてくる。
どうしようもない由宇の目の前では、彼女の母があられもない格好をし始める。
啓子はゆっくりと、思いきり股を開きながらしゃがみ込む。観客の目が、啓子の豊かな曲線を描いた両太ももの付け根に刮目しているのが、司会の男やむつみ、それを止めようともがく由宇や、啓子自身にもはっきりわかった。
完全に腰を落とすと、啓子は観客にもっと見せつけんばかりに腰を前に突き出し、それがためにのけ反った上半身を片手をついて支える。
もう片方の手指が、ぬれそぼった自分の赤黒いラビアをおそるおそるなぞっていく。
「ん、ううっ」
ようやく啓子が自分の恥部をいじり始めた時も、むつみは彼女のいびつな臍をいじるのを忘れない。自らも彼女の後ろにしゃがみ込むと、人さし指で臍をつっついてメトロノームのように揺らしてみたり、おもいきりぎゅっと握りしめたりする。
そのせいで、啓子の性的ボルテージは醒めるどころか臨界まで舞い上がり、それが彼女の身体を、さらに露濡れの陰華を激しく燃え上がらせる。
「ひいいいいい、いい、いい、ううぅいいいいっ、イ、イ、イク、いっ――」
背筋を何度も反り上がらせて、啓子は目から涙を流してまでも自分のオナニーに夢中になる。もう我慢できないところまでそれを引っ張ったあとで、彼女はぷっくりと赤く膨らんだクリトリスを指で弾いた。
声にならぬ、しかし張り裂けんばかりのいまわの声。思いきりブリッジを描いてそのまま彼女はステージの床に倒れ込んだ。
あらあら、とまるで地面に泣き臥せった子供にそうするかのように抱き起こすと、むつみは再び啓子のへそをしごき始めた。
「……まだまだ気持ちよくなれるよねぇ〜?」
「……う、ん、ひぃあああぁ」
頬を寄せてむつみがにこやかにそう言うと、啓子がまるでそれに答えるように、けだるさから起き上がるかのようなか細い嬌声をあげる。
「そうよね、今回の手術で啓子さん、すっかりエッチびたりの身体になっちゃったもんね。あれだけ思いっきりイッちゃったのに、またまたアンアン言ってるもん」
むつみにいいように臍を弄ばれる啓子を、その後ろでただ見ているだけしかできない由宇。
「ああ、ママ、そんな……」
男のいやらしい愛撫はそれほど感じることはなかったが、束縛は固い。母の元に駆け寄りたくても、その隙が全くない。
男は彼女の耳朶を頬と一緒にぺろんとなめると、またねちっこく囁く。
「ゆうちゃんも十分やらしいじゃん。さっき自分から腰振りながらオマンコおっぴろげてたの誰だったかなぁ?」
「そんな、あれはママのため……」
「ぐっちょんぐっちょんに濡れてたじゃん。大義名分とはうらはらに、もうすっかりエッチなダンスに夢中になっちゃったんじゃないの?」
「違うっ! そうじゃ……ひっ、いやあ、アソコに指入れちゃ、うううっん!」
「自分から欲しがってんじゃないの? ひどくびしょびしだし、中は嬉しそうにヒクヒクしてるじゃない。なんだか僕、ワクワクしてきたなぁ、チンポが」
「ひっ、ひいいい」
いやがる由宇に、男は遠慮ない。ズボンの中で膨れ上がった自分のナニを由宇の尻の谷間に押し付けて、その肉の棒一本で彼女の身体を突き刺さんばかりにくいくいと腰を動かす。
「すっごく柔らかい……あああ、きっとゆうちゃんのオマンコの奥もこんな感じなのかなぁ?」
腰を動かしながらも男は、濡れて薄黒いしみのできたスキャンティーの中の手の動きを止めない。さらに奥深く、さらにいやらしく。もちろん由宇の着ている衣装はシースルーそのものだから、観客にもその愛撫の様子が丸見えだ。
その羞恥心からか、あるいは男のナニの動きが気持ち悪かったのか、由宇は思わず腰の筋肉に力を入れてしまった。臀肉が谷間にむかってキュッとしまる。それが男のモノまで締め付ける。
「おぅっ、そんなに締め付けれくれるのゆうちゃあん。そっちがソノ気ならボキも生でいっちゃおっかなぁあ?」
カチャ、カチャ。男がベルトを緩める音だ。
「いやああああっ! やめて、ほんとにいやあっ!」
由宇の悲鳴に、啓子は振り向こうとする。だがむつみは彼女の視界を自分の顔で遮ると、臍をシゴくその手をさらに激しくする。
「ああああっ、や、あああ、ああああぁ!」
「気持ちいいよね、臍チンポ。もっとヨガりなさい。そのエッチな声を観客の皆さんに聞いてもらいなさい」
合間合間に、むつみは啓子の臍を親指と人さし指の間で翻弄させる。揺れる啓子の臍は頼りなげにぷるぷる揺れ、ステージの光につやつや表面を輝かせている。
「うふうう、んんんうぅ」
啓子の喘ぎがせつなさを帯びる。まだ食い足りぬと快楽を求めるように白い肢体をよじらせる様子は、先程絶頂を迎えたとは思えぬ程だ。目蓋を閉じて眉間に皺を寄せ、まるでだだをこねるような表情でかたをすくませて甘い声をもらす彼女に、もはや自分の娘をかえりみる余裕はない。
今ステージで大股を開いているのは、年頃の娘を持つ母ではなく、身体を駆け巡るむずがゆい感覚に弄ばれる一人の淫乱な女である――啓子はその醜い臍のために、そこまでに堕ちてしまった。
*
ルデニフの肉棒はズボンを引き裂かんばかりに屹立していた。彼自身いっそファスナーを引き降ろして外に出したいくらい窮屈に感じていた。常日頃紳士のモラルを遵守していると自負する彼も、ステージで淫らな姿をさらす母娘に我を失いかけていた。もしステージと観客席の垣根がなければ、彼はそのまま二人に飛びかかっていったかもしれない。
そう、二人だ。
娘のほうももちろんだが、母もまた……いやそれ以上に官能的なプロポーションを持っている。あれくらい大きな娘がいるのだから、母はどれだけ若く見積もっても三十半ばくらいの歳のはずだ。だが、とてもそうは思えないくらいだ。ルデニフはつくづく日本人の美しさのレベルの高さに感心するばかりだ。
悩ましく弾む形よい乳房は鮮やかなピンク色を帯びた乳首を持ち、大きく開いた柔和そうな白い太ももは挑発的な曲面で構成されていて、それだけでも女の花びら足りえる程である。
その上に、太すぎず細すぎない絶妙なバランスのウエストの中央から伸びた「臍チンポ」である。亀頭らしき部分がない以外は明らかに男根のフォルムをまねたかのようなその乳白色の寒天のような突起物は、しかし不思議と啓子の身体にマッチしていた。
おまけにそれが性感帯ときている。
――自分もまた、彼女をあぐらの上に座らせてあの臍をいじくり回してみたい、生娘さながらのあのかわいらしい喘ぎ声はを毎日でも聞きたい!
またも、彼の肉棒が危う気にひくつく。ルデニフは、娘同様に、彼女の母まで欲情してしまっていた。
しかしその気持ちはルデニフだけではないだろう。誰もがステージの痴態に釘付けになっている中で、何人かは母娘二人にその陰茎を膨張させているはずだ。
だが、ルデニフ自身はまだ自分の心の奥深くで、紳士以前に人間として抱いてはならぬ禁断の感情が芽生え初めているのに気付かない。ましてや、それが後に彼を暴走させてしまうことすら、今は予知する術すら持っていなかった。
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