へそぼし
04
ステージの熱気は二分されていた。
むつみにひたすら臍の醜い突起を弄ばれてやるせなく喘ぐ啓子に、司会の男の赤黒い一物をその小振りな尻たぶに挟まされた由宇。
それぞれの身体で行き場なく暴れ回る性感に拒み切れず、母娘はせつない嬌声をあげる。
「ああぁあ、許してもういやぁあ……」
「いやああっ! お尻いやあああっ!」
喘ぐ二人の口から漏れる拒絶の言葉も全く報われない。どころか、むつみは啓子の臍陰茎に指を食い込ませてさらにしごき続け、男は由宇の尻の谷間の快感を貪らんとばかりにその腰を激しく動かして肉棒のたくましく盛り立った筋を彼女の菊門にすりつける。
恨めしさがないまぜになった二人の喘ぎ声は、しかし観客たちのボルテージをさらに高めていく。その中には、ズボンの中で限界まで屹立した肉棒が暴発するのを必死に耐え忍んでいるルデニフも含まれている。
せめて絶頂を迎えることができれば、彼女たちは心地よい安堵の境地を得ることが出来ただろう。だが、二人は絶頂を目前にしてそこまで達することができなかった。はけ口のない快楽は苦痛となって彼女たちの意識に変調をきたす。
啓子はむつみの手に握られた自分の身体の醜い部分がより擦られるように、自ら腹をよじらせた。臍陰茎はまるでむつみの手を犯そうとせんばかりに強く突き、大きくうねる。
「凄い……ああ、凄いわ啓子さん! すごくダイナミック。それでいいのよ。積極的にHな気分にならなくちゃね。私もがんばって盛り上げてあげるわ」
もっと強く、もっと激しく、むつみは啓子の醜い臍を我がもののように強く握りしめながらしごき続ける。
「ふあああああああぁぁぁっ!」
卑猥な叫び声をステージ一杯に響かせる啓子。その横では、由宇が自分から自分の尻を男の一物に強く擦り付けていた。
「おおっ、すごいよゆうちゃん、そんなにお尻でキュッキュ締め付けられたらボキもうイッちゃうよぉお」
すっかり由宇がノリ気になったと勘違いした男は、自分からも腰を突き上げてその一物で少女の尻の谷間をえぐる。
「あああぁあ、いやぁあ、やあぁ、やああああっ!」
もちろん由宇はそんなおぞましい行為など望んではいない。だが、男の熱くたぎる肉棒が敏感な肛門を擦るたびに、彼女の身体にむずがゆい快感が駆け巡る。それは中途半端に悶々と淀み蓄積されて、やるせない疼きとなって由宇を悶えさせる。
身体に蓄積された性感が臨界に達することのないまま、せつなく悶え続ける二人。観客たちは食い入るように淫らな小躍りを続ける母娘を見つめている。彼女たちの息遣いと喘ぎ声だけが会場内に響き渡る。
「ちょっとあんた」むつみが、由宇の尻に夢中になって腰を振り立てる男に声を掛ける。「一人楽しんでないで、ほらっ、ゆうちゃんこっちに向かせて」
ズボンをまくったために丸出しになった男の筋肉質の尻を平手で叩いて促すと、むつみは啓子を由宇の方に向かせた。
尻をさすりながら男も由宇の尻から一物を離すと、そのまま啓子の方に向かせた。
臍から雄々しくそそり立った白い肉茎を微かに揺らして、むつみに羽交い締めで立たされる啓子。
尻への執拗な責めからようやく解放されたと思ったら、男に強い力で胸を反らされた由宇。
母娘はステージに上がって初めて真正面で向かい合う。
啓子の目には、由宇の臍一杯にはめこまれたルビーが。
由宇の目には、啓子の臍で屹立する白い半透明の肉茎が。
血の繋がったもの同士の醜く改造された姿を、お互いに正視することはできなかった。自分と相手を不憫に感じて、二人は唇を噛む。
「ごめんなさいね、みなさん。私達だけで楽しんじゃって」啓子の両肩をがっちり固めながら、しかし余裕な声でむつみが観客に謝った。「でもこれからがメインディッシュよ。よおく見ててねぇ」
そこで一旦言葉を区切ると、啓子の注意を向けるためか、彼女の耳朶にふっと息を吹きかける。
「ねぇ啓子さん。感動の再会早々悪いんだけど、実はゆうちゃんを叱ってもらわないといけないの。あの子ったら、啓子さんが手術の間ひどくインランだったのよぉ」
母娘は口々に「い、いやっ!」「違うぅ、違うぅ!」と反論するが、さっきさんざん喘いだために息絶え絶えの弱々しい声がむつみと男の胸のマイクに拾われることはなかった。
「楽屋で見たでしょ? あの踊り。『ママの手術代を稼ぐ』とは言ってるけど、本当はお客さんに自分の恥ずかしいオマンコ見てほしくてしょうがないのよ。で、踊りが終わったあとなんかいっつもオナニーぶっこいてんだから」
「ああぁ、嘘、嘘……」むつみのマイクが啓子の声を小さく捉える。
「そればかりじゃないの。自分の親の手術代稼いでる身分のくせにこの子、稼いだお金を自分のために使ってるのよ。――ちょっと見てもらいたいのがあるの」
むつみが男に目配せする。
男の指が、由宇の臍のルビーの縁をつまむ。
「あ、ああああああ! 嫌ああああああ!」
ステージに由宇の叫び。男の片手の握力のみで両腕の自由をすっかり奪われた彼女は、ひたすらに背筋をゆすって男の手からルビーを守ろうとする。
だが、無駄であった。
男はルビーの縁を摘むと、ゆっくりとそれを取り出し――いや、引き抜いていく。
「……え……」
目の前の娘を見てあ然とする啓子。
観客も同様であった。
なにしろ信じられない光景であった。さっきまで自分達が臍にはめ込まれた大きめのルビーだと思い込んでいたものが、
陰茎をかたどった赤いコケシだったとは。
「ああ、や、うあああああぁぁぁ!」
必死に顔を横に振りつつも、その悲鳴は嘔吐でも覚えたかのように喉にくぐもった。
「見た? ゆうちゃんったらオナニーしながら『ママと一緒にしてほしい』って叫んで聞かないから、仕方なく手術してあげたの。でもあなたと全く一緒じゃ面白くないとおもって、臍マンコにしちゃった」
「嘘、そんな、こんな……」
コケシが抜かれた由宇の臍は、しかし普通の人と変わらない、縦割りの小さな穴であった。
嘘に思えた。だが、さっき見たのは幻覚ではない。顎を震わせて静かにかぶりを振りつつも、彼女は目の前の光景を凍る表情で見つめるのみであった。
「ち、違う、違うのママ……見ないで、見ないで……そんな顔で私見ないでぇ!」
絶叫する由宇の臍に、男が人さし指を入れた。
途端に彼女は身体をビクンとはずませた。
「うあああぁ、ああああ、ぃやあああああっ、お腹のな、ならえいじらあああええええぇっ」
苦しそうな声をあげる由宇の顔は、しかし苦悶とは別の表情をかたどっていた。何か堪え難きものを必死に堪えているような――しかしそれが何であるかは、啓子にはわかった。
「ほんとにあの子ったら……親の前であんなにヨガっちゃって。……さ、啓子さん。親としてあの子にお仕置きしてあげて。この、臍チンポでね」
ぴん、とむつみが白い臍肉茎を指で弾く。
「ひっ! ……ああ、あ、な、何するの、やめてそんな、いやっ!」
ぐいぐいと由宇のそばに押されるのを足を踏ん張って拒み続けるが、それもかなわず、啓子は身体を必死によじらせる娘の目の前まで突き出された。
それでも後ずさろうとする啓子とはうらはらに、彼女の臍から雄々しくそそり立った白肉茎はまるで由宇を求めているかのようにみえる。
それをしかと握りしめると、むつみは鉾先を定める。標的は――由宇の臍。
「い、いやっ! お願いそれだけは堪忍してっ! こんなのだめぇえ!」
「啓子さん、学習しなきゃだめよ。――やめないに決まってるじゃん」
嬉しそうに言うむつみの顔には、よこしまな小悪魔の笑み。
無慈悲に、啓子の背中が強く押された。
「――ひっ」
「うあああああああぁ……っ!」
啓子の白く太く醜い肉茎が、由宇の小さな臍を先端に捕らえると、肉をかき分けるようにそのままずぶずぶとめり込んでいく。
「あああぁ、ぐあああぁあ……!」
「ふあぁ、きつぅ……ああ、由宇、ゆうぅっ!」
文字どおり、腹を抉られたような声を出して母娘は互いの腹をぴったりとくっつけた。
それはもちろん、啓子の臍肉茎が由宇の臍の中に根元まですっぽり入ったということでもある。
むつみと男はそれぞれ彼女達の両脇腹を掴む。そして、互い違いに円を描くように二人の胴体を回す。
「おぐぉああぁあああ……!」
「ひぎゃあああああぁ……!」
交合う獣さながらの吠え声をあげる啓子と由宇。内臓をかき回されるような複雑な圧迫感と行き場のない壮絶な性感が二人の身体を這いずり回っているのだろう、二人の口からはおびただしい涎がだらしなく流れ出す。
さらにむつみたちは二人に揺さぶりをかける。
互いの腹を押し付けあう前後の反復運動。
「うぉあぁ、あがぁ、ぇあああぁ」
母の醜い突起物に臍を犯される由宇は、苦悶と悦楽の狭間をさまよっているかのようであった。その顔はすっかり惚けきって、目の焦点すらあっていない。
「あぅ、ああああ、あああああ……あ……」
啓子もまた、白い臍肉茎の刺激に翻弄されて、半ばその意識を朦朧とさせていた。
二人を支配するのは、逃げ場のない快楽のみであった。
むつみと男は既に手を離していた。だが母娘は、身体の中で膨れ上がる壮絶な性感を高みに押しやろうとしてか、自分達で身体を動かしていた。
互いに腹を突き付け合って、背筋を仰け反らせる。その合間合間に漏れる、かすれた喘ぎ声とひるがえる啜り泣き。
観客の誰も見たことのないレズシーンであった。誰もがその壮絶さにすっかり閉口してしまっていたが、しかし同時に、二人の端正な体つきが織り成す妖しい動きに目を釘付けにしている。
互いの乳房は赤く染まった先端を当てあいながらこすれあう。
腕は互いに救いを求めるように相手の背中にまとわりつく。
尻は一番彼女達の身体の中を暴れ回る性感のおびただしさを物語っていた。肉感ある海月の泳ぐ様よろしく、不自然な腹のピストン運動につられて突っ張ったり引っ込んだりをくり返しながら、時折快楽のうねりに襲われてかプルプルと臀肉をふるわせる。
その股からのぞける二人の陰唇からは、太ももに垂れる程にねっとりとした愛液にあふれていた。
余計な感情は今の二人からなくなっていた。そこには性的カタルシスを求める本能的な二人の女の痴態があるのみだ。
しかしこのまま放っておくわけにもいかない。絶頂に達しないまま放っておけば、廃人同前になってしまいかねない。
むつみは二人に近付くと、ゆっくりとその両手を彼女達の股間に忍ばせた。
彼女の指は、女性の一番感じやすい部分――淫楽の奈落にさまよう二人の、愛液したたるクリトリスを摘まみ上げた。
思いきりひねり上げる。
「ひぃあああああぁぁあああああああ!」
啓子と由宇、二人同時にいまわの絶叫をあげた。
だがその壮絶な叫びとはうらはらに、彼女たちの表情は狂気的な至福の表情に満ちみちていた。
お互いを抱き締めながら、母娘はステージの床に崩れるように倒れた。
同時に、観客の一人が力任せに扉を開けて勢いよく外に飛び出していった。
*
「ぐううぅぅぅぅぅ……ううぅっ!!」
洋式便所の中に勢いよく飛び散る、おびただしい精液。
ルデニフは力強くそそり立った自分の肉刀を見つめながら、自分の精力にはなはだ驚いた。
(もう終わったと思っていたのにな……)
肩で息をしながら、ルデニフは鈴口からじわりと湧き出る最後の精液を見つめる。
彼自身いままであらゆるストリップを見てきたが、ここまで欲情したのは初めてであった。
そのことがさらに、彼の気持ちをかきたてる。
性というものを意識して以降心の中に抱きはじめた一つの感情が、この歳になって最高の形となって報われそうである。
母と娘なんてことはどうでも良かった。あの二人が欲しいのだ。
再び彼の肉刀が力を吹き返す。太い血管に覆われたその煮えたぎる茎の中は、二人への妄想がいっぱいいっぱいにつまっている。
肉刀をズボンの外に放り出したまま、ルデニフは背広のポケットから携帯電話を取り出した。短縮モードで電話をかけると、相手の応答を聞き取ってからこう切り出した。
「銀行から引き出せる限りのキャッシュを全て引き出して、今から言うところに持ってこい――」
|
|
|